医学ニュースの深層 -73ページ目

<新型インフル>企業の損失437億円 休校時に親も休むと

毎日新聞の報道ですが、他紙でも同様。

ほらね、やっぱり、出たでしょ、「試算」が。


新型インフルエンザの感染拡大を防ぐため、小学校や幼稚園、保育園が1週間
休校すると、共働きの親のどちらかが仕事を休むことで企業が被る経済的損失
は首都圏で437億円に上るとの試算を、富士通総研経済研究所(東京都港区)
がまとめた。親が休まなくてもすむような国の保育・教育体制づくりが急務と指摘
している。

同研究所の渥美由喜(なおき)主任研究員は「家族看護」を理由に従業員が
欠勤した場合、業務の中断や同僚による代替などにかかる費用を職場が
被る損失コストとして試算。

さらに、1人で家庭に居させることが不安な0歳から小学生までの子どもを持つ
共働きの親の割合、子どもの数など厚生労働省のデータと組み合わせた。

実際には、父母のどちらかが1週間すべて休めるケースは少ないとみて、平日
5日のうち母が2日、父が1日、残り2日は祖父母などに預けたと仮定。その結果、
経済的損失は東京都158億円、神奈川県113億円、千葉県87億円、埼玉県
79億円とはじき出した。

一方、今回の新型インフルエンザで休校休園が実施された兵庫県、大阪府では
実際の休校休園数から児童、園児の数を割り出し共働き世帯の割合をもとに
分析。兵庫県は109億3000万円、大阪府は70億6000万円の損失と試算した。

渥美主任研究員は「共働き世帯を支える国や職場の体制は先進国の中で最も
遅れている。強毒性の新型インフルエンザが流行すると、このままでは損失額は
10~100倍以上になるとみている」と話している。【石塚孝志】



コメント:


 こういう試算をする組織を維持するコストが一番の損失では?

こんなもん、ほとんど算数じゃないか。


 いいなあ、こんな計算で高給もらえて(笑)。


医療業界の摩訶不思議(連載するか否かは気分次第)

 読者の薬剤師さんから、直前の記事にコメントいただきまして・・・。

コメント欄で返事するより、他の方々も知っておかれたほうが良い事項を含むので、

本篇に書きます。まあ「特許の話の記事」に直接は関係ないですが。。。


下記のようなコメントでした(注:少しだけ業界用語は補足してあります。)

 

「ジェネリックメーカー・・・いわゆる「ゾロのメーカー」が ハワイに家族をつれていったり、新社屋を建設したり、スポーツ施設を作ったりと、、、納得いきません。私たちは、ゾロ変更のために時間と労力をかけて、(報酬が)3点ですよ(=30円)。たったの!!」


コメント:


 今、厚生労働省の肝いりで、医療費削減の錦の御旗の元に「ジェネリック医薬品」が台頭しています。皆さんも、TVのCMなどで散々、眼にするでしょう。


 まず、(特許切れの)ブランド医薬品と同等の効果・安全性を示し、安いといううたい文句ですが・・・。


 同等の効果が、一番?なのです。だって、患者さんでの長期観察の結果、同じだと証明されているものは、非常に少ないですし。


 それと、安い・・・それほど安いくなるわけではない。特に日本の「ジェネリック医薬品」の場合。


 だから、多くの医師は、まあ、「ジェネリック医薬品」でもいいか・・・患者の希望もあるし・・・とか使うにしても、消極的です。まあ、ゾロメーカーから、お金を貰っている「積極推進派の医師」もいますがね。


 私ですか?基本的に積極的ではありません。

患者さんにとって「安物買いの銭失い」になる可能性が高いものがまだ、多々ありますし・・・。


・・・で、こういうときに、プロの薬剤師さんの登場です。

特に長期間の服用になる場合は、彼らに相談します。

まあ、私も研究で医薬品を創っている関係上、そうは、引き下がりませんがね(笑)。

ただ、医師も薬剤師さんも、ここまで労力かけても、この国では経済的には報われません。


 本当はね。薬の処方は、プロの薬剤師さんが主導でやれるようになればいいのですが(医師とも相談の上でですが)・・・。ただ、まあ、医師会の御年寄は・・・そんなもん「医師の処方権」の侵害だ!許さんと、凄い剣幕ですわ。今後も課題でしょう。


 ここで、話変わって、冒頭の読者さんの意見・・・「ゾロ会社の社員の贅沢三昧」か・・・(笑)。今は、「開発型の医薬品メーカー」より、ゾロ会社のほうが、おおむね儲けています。株価をみていてもわかります。


 まあ、私の個人的な意見ですがね。私は「他人が汗水たらして創った業績・製品(知の結晶)を、平然とパクリ、気楽で良い生活をしてる奴ら」が大嫌いです。


 まあ、こういう奴らが「勝ち組」なんでしょうがね・・・。

私は、世界に通用する「価値組」でいたいと思います。

「薬の飲み方も特許認定、政府が審査基準を改定へ」とiPS細胞研究

まずは、読売新聞の昨日の報道から・・・


 政府が6月中旬にまとめる「知的財産推進計画2009」に、

薬の服用法を新たに特許として認める方針が盛り込まれることが、わかった。


 同じ薬でも飲み方や飲む量を工夫することで副作用が少なくなる事例があり、

こうした分野の研究開発を促す狙いがある。

 政府は推進計画に基づき特許の審査基準の改定作業に入り、早期実現を目指す方針だ。



 現在の特許制度では、薬自体や薬の用途などに関する特許は認められているが、

服用法にまで特許を認める考え方は日本では採用されていない。


 しかし、毎日服用するように開発した骨粗しょう症の治療薬を

1錠あたりの量を増やして服用回数を週1回に減らしたところ、

副作用が小さくなる事例が見られるなど、服用方法の研究が進めば

患者の負担軽減につながる医薬品は多いと見られている。



 製薬業界からは服用方法の研究開発には、

新薬の開発同様多大な費用と時間がかかるとして、

この分野での特許を認めるよう要望が出ていた。



 知的財産戦略本部の「先端医療特許検討委員会」で検討した結果、

特許を認めるべきだとの結論に達し、同推進計画に盛り込むこととした。


 今後、服用法の特許が認められることにより、

新薬としての特許が切れて同じ成分の後発医薬品(ジェネリック医薬品)

が販売されている薬についても、新たな用法・用量を発見すれば、

特許を申請して取得することができる。



 この場合、旧用法・用量で販売していた製薬会社が新たな用法・用量で販売しようとすれば、

特許を取得した会社に特許料を支払うことになり、薬が割高となる可能性もある。



コメント:


上記の記事で書かれていることは、

米国では採用されている、いわゆる「医療方法特許」です。

ちなみに欧州では、あまり採用されていません。


 この種の特許は、医療費の高騰を確実に招きます。

反面、患者さんにとって上記のような医学上のメリットもあります。

そして、特に「開発型の医薬品企業」にとっては、大きなメリットがあります。

ジェネリック医薬品メーカーにとっては痛手でしょうが。


 私が注目しているのは「疾患特異的iPS細胞」を利用した

医薬品の最適使用法の研究・臨床応用が、

この「制度」の成立によって加速されるということです。

ただし、患者さんにとって「費用効果」が良いものになるか

否かが課題ですが・・・。


 なお、上記の研究成果を米国に先に押さえられると

非常に難儀なわけです。昨日の記事にも書いたように・・・。

解散総選挙の時期予想・・・の中間報告(笑)

 麻生太郎首相は1日、今国会の会期を55日間延長し7月28日までとする方針を決定、公明党の太田昭宏代表と官邸で会談し、正式合意した。与党は会期延長を衆参両院議長に申し入れた。2日の衆院本会議で議決する。首相は臨時国会を召集せず、今国会で衆院を解散する考え。8月上旬の衆院選を模索するが、民主党の出方や世論の動向次第で8月30日や9月6日の衆院選も検討する。

 麻生首相は1日午後、自民党の細田博之幹事長、大島理森国対委員長らを官邸に呼び、会期延長を指示した。公選法は衆院選に関し「解散の日から40日以内に行う」と規定。7月28日に解散した場合、9月10日の衆院議員任期満了直前の日曜日に当たる9月6日の衆院選がぎりぎりで可能になる。

 延長国会後に臨時国会を召集し、任期満了の9月10日に解散すれば、10月20日まで投票日を先送りすることもできるが、首相に近い大島氏は国会内で記者団に「55日間で首相が決断すると思う。新たに臨時国会を召集して解散というのは政治の常道として採ってはならない」と強調した。

 与党は2009年度補正予算関連法案の成立に万全を期すため、「60日ルール」を使った衆院再可決を視野に、8月上旬までの60日程度の延長幅を軸に検討していた。(共同通信)




コメント:


 フ~ン、前に、ここの記事でも、8月解散、9月総選挙って書いていたけれど、ほとんど当たりそうだな。小沢氏が辞めるのも、当てたけど・・・。


 これじゃあ、「中連立」も当たるのかな?

このことは、選挙後にな(笑)。


 円ードルも、当てただろ。まっ、日経平均株価は、はずしたけれど(笑)。

それは、「粉飾株価」だからな。

今の雇用状況とか見ていて、違和感を感じる人が多いんじゃないかな?


 インフルエンザの状況は、当たってほしくないけどね・・・。





新型インフル:初の感染確認ゼロ 大阪・兵庫、5月16日以降・・・との発表後にまた。

 新型インフルエンザの感染が拡大した大阪府と兵庫県の新たな感染確認の発表が31日、5月16日の国内発生確認以降、初めて2府県ともにゼロになった。

 大阪、兵庫両府県では、ピークの17~18日には計70人以上が確認されたが、感染確認がゼロとなったことで沈静化が明確になった形。ただ大阪府の担当者は「たまたまゼロだっただけかもしれず、しばらくは推移を見続けたい」と警戒を緩めていない。

 5月16日に神戸市で高校生の国内初感染が判明して以降、両府県では大阪府157人、兵庫県195人の計352人の感染が確認され、数人程度の他都府県の感染者数を大きく上回った。

 大阪府では5月16日と29日はゼロだったが、兵庫県では連日、新たな感染確認を発表。ただ最近は減少傾向で、24~30日は両府県合わせても1けたにとどまっていた。

 矢田立郎神戸市長は5月28日、「ひとまず安心」と宣言。これに対し市医師会は「性急すぎるのでは」と反論するなど、感染動向の現状認識は見解が分かれている。



コメント:


この31日の発表直後に・・・


神戸市で新たに1人感染 新型インフル、高1女子生徒


 神戸市は1日、新たに1人の新型インフルエンザ感染を確認したと発表した。新型インフルエンザの感染が拡大した大阪府と兵庫県での新たな感染確認は5月30日以来。

 神戸市によると、感染者は、同市内の高校1年の女子生徒で自宅療養中。国内での感染者は計380人となった。」


・・・ということになるのだから、昨日書いたように、「天気予報」のような「安全宣言」は、出さないほうがよいと思うけどね。





iPS細胞特許、具体例を審査基準に明記へ・・・に関するコメント

政府は、国際競争が激しさを増す新型万能細胞(iPS細胞)の分野で特許取得を促進するため、
特許の対象になる技術の具体例を、特許庁の審査基準に明記する方針を決めた。

 来月から知的財産戦略本部で基準作りの作業に入る。

 細胞を扱う技術は、特許の対象になるかどうかの判断が難しい。
このため、本来は重要な特許になるはずの技術でも、研究機関が申請を手控える例があった。
今後は、同じ細胞を使った製品でも治療する臓器や器官が変われば新たな特許の対象となることなど、
審査基準の中で実例を挙げて説明し、申請を促進する。

 iPSなど細胞に関係する特許登録数は、日本は米国の10分の1にとどまっている。
(読売新聞)



 コメント:


 これは注視せざるを得ない。

何か、これで、「日本万歳!」のような書き方だが・・・。

呑気に喜ぶ気になれない。


上記報道の最後の行を見てみよう。

ヘタな基準を創れば、それこそ、米国の餌食だ。

iPS細胞の改良編・応用編では、まさに米国の独壇場の様相を呈しているところに、

まだ、米国に塩を贈るようなことになる。


 携帯電話でも、数百の特許から成り立っている。

iPS細胞も、応用段階では、恐らく結構な数の特許の組み合わせになるだろう。

そこの大半を米国に押さえられる情況を想像してみるといい。

山中先生らの「基本特許」が取り囲まれる姿を、そして、特許料込みによる「(主に米国産の)高額医療商品」が出来上がり、それを日本人患者さんらが買わざるを得ない情況を。


 相当な知恵を絞らねばなるまい。


 だが、ほんの数年前の「バイオ・バブル」での「日本の戦略」は、どうだったか?

知的財産立国の名の下に、様々な「せこい案」が実現したが、結局は、倒産・経営破たんするバイオ・ベンチャーの山々。日本発の戦略商品なんて、ほぼ皆無・・・。

 株価対策だけで、富を得ようとする輩の出現。雇用創出?・・・雇用喪失へ。・・・これが、竹中ー小泉のラインで作られた「知的財産戦略本部」の「成果」だ。


 これが、日本の数少ない宝である「iPS細胞」で繰り返されては、眼も当てられない。


 「知的財産戦略本部」の委員の構成から、考えて欲しい。

前にいた人は、責任をとって今回は、できれば関わらないでもらいたいと思う。

評論家は、絶対いらない!


 本当に能力のある弁護士(弁理士というよりは、弁護士)・MBA取得の経営者を中心に、優秀な医学者・生命科学者もふくめて、公募で選抜し、時限つき・成果主義の特別チームを構成して、ことにあたってもらいたいもんだ。

 同時に次代を担う若手人材の養成も含めてな。


「2、3種の行動計画を」 インフル政府諮問対策委員長・尾身茂自治医大教授が提案

共同通信報道から・・・

 新型インフルエンザウイルスの発生から一カ月が過ぎた。政府の新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会委員長の尾身茂・自治医大教授(59)が二十九日、下野新聞社の取材に「病原性の強、中、弱に応じた二、三種類の新たな行動計画を設けたい」と政府や世界保健機関(WHO)に今後提言する考えを明らかにした。また近く新型ワクチンの国内生産体制が決まり、早ければ半年後に供給できる見通しを示した。


 尾身教授は東京都出身で自治医大卒。WHO西太平洋地域事務局感染症対策部長、同地域事務局長などを歴任した。新型インフルエンザ発生後の五月一日から、麻生首相が本部長を務める同委員長に就任している。

 国は強毒性の鳥インフルエンザ発生を想定して行動計画を策定したが、今回のような弱毒性に備えた計画は設けておらず、政府も地域の実態に応じた新たな対策に迫られた。

 尾身教授は「最悪のケースを想定して計画をつくるのは危機管理上当然のこと」としつつ、「病原性に応じた二、三パターンの行動計画があれば、どのようなタイプの新型が発生してもある程度対応できるだろう」と今後の課題に挙げた。

 発生国のメキシコでは三月ごろから新型感染が緩やかに広がり、患者の急拡大や重症化が目立ち始めた四月に入って新型が確認された。発生当初は軽症者が多く、異変にも気付かなかったという。

 尾身教授は「国内感染は終息しつつあるような意見もあるが時期尚早だ。流行の第二波が来月訪れる可能性もある。確かな事実は国内にウイルスはあるということ。知らず知らずのうちに地域で『静かな感染』が拡大することが怖い」と指摘。

 「警戒を緩めず、医療機関は少しでも患者に不審な点があれば詳細(PCR)検査に回してほしい。地道なサーベイランス(監視)が早期発見や拡大防止につながる」と訴えた。


コメント:


 まず、このブログ記事でも私が再三、述べてきた重症度評価についてですが・・・


「尾身茂・自治医大教授(59)が二十九日、下野新聞社の取材に「病原性の強、中、弱に応じた二、三種類の新たな行動計画を設けたい」と政府や世界保健機関(WHO)に今後提言する考えを明らかにした。」



・・・尾身先生、そんなこと、私が前から既にず~っと言ってるよ(笑)。

WHOも、そのつもりだけど、今、細かいところで難渋してるんだよ・・・。



 さらに・・・尾身教授は「最悪のケースを想定して計画をつくるのは危機管理上当然のこと」としつつ・・・」


 ・・・以前から再三、このブログにも書いてきたし、関係者に言ってきてるけど・・・、ようやく上にまで伝わったのか?


 

 また・・・「(尾身教授は)・・・国内感染は終息しつつあるような意見もあるが時期尚早だ。流行の第二波が来月訪れる可能性もある。確かな事実は国内にウイルスはあるということ。知らず知らずのうちに地域で『静かな感染』が拡大することが怖い」と指摘。 」



・・・ハイハイ、これもずっと、私も、他の専門家も、言い続けてますが。

ただし、「第2波」が来月くるっていうのは、極端に違うけどな(笑)。

尾身先生、これは煽り過ぎです。。。


 「警戒を緩めず、医療機関は少しでも患者に不審な点があれば詳細(PCR)検査に回してほしい。地道なサーベイランス(監視)が早期発見や拡大防止につながる」と訴えた。

・・・だから、東京でPCRに当初から回しておけば、今頃、日本の患者数は、1000人近くいってるだろうな。


 私は今まで、散々、「インフル・ネタ」を書き散らかしてきていますが、案外、先んじて、結構、重要な提言まで、書いてきたでしょ?


 いつも不真面目なのにね・・・私は。

一体、どうしたんでしょうかねえ?(笑)。



ヒトiPS細胞研究の最近の展開

  昨朝、私は、Nature Reports Stem Cellのブログを、ツラツラと見ていて知ったのですが・・・。

昨日の各新聞報道などで、ご存知のことと思いますが予想通り、たんぱく質から、ハーバード大学と韓国のチームが、ヒトiPS細胞を樹立しました。しかし、ものの見事に著者らは韓国人ばかりですね(笑)。(11人中10人?)。だから、Nature、Science誌はだめだったのでしょうかね?・・・前の「大事件の余韻」がまだ・・・。

まっ、推測ですけどね(笑)。じゃ、Cell誌へはというと、いい感じではなかったので、「これほどの発見」が「Cell Stem Cell(Cell誌の姉妹誌)・・・ただし専門分野別では、かなりの一流誌とされています)での、なぜか「Brief Report」(短報論文)での発表ですからね。

 まあ、これを超えるであろう研究が既に、Cell誌、Nature誌、Science誌に出されては・・・いますけれどね・・・(笑)・・・これは本当。


 さて、今回のNewsの概略は・・・


 「米研究機関「Stem Cell & Regenerative Medicine International(幹細胞と再生医療に関する国際研究所)」とハーバード大学(Harvard University)は28日、皮膚細胞から安全に幹細胞を誘導する方法を開発したと発表した。万能細胞の臨床用途としての可能性が一段と高まったことになる。

 研究チームは、細胞に浸透するペプチドを用いて遺伝子を融合させるという手法で、遺伝子を誘導することに成功した。この手法だと、遺伝子突然変異のリスクはないという。

 従来のiPS細胞の作製にはウイルスを使用するという負の側面があった。ウイルスを使って細胞を再プログラミングすると、DNAが異常を起こしてがん化、または遺伝子が変異しやすくなると指摘されていた。

 そして、これまでにも、DNAトランスフェクションと呼ばれる手法や化学洗浄を用いて遺伝子導入に成功した例はあったが、いずれも健康被害をもたらす可能性があった。でも、今回のは、そういう心配がない。来年、後半には臨床試験へ・・・」という内容の報道です(主に、AFPBB Newsから)。


 本件に関する丁寧かつ詳細な報告は、京都人さんのブログ記事も併せて、ご堪能くださいませ。


さて、論文も読みましたが・・・。


 最近出たばかりの、トムソン先生らの最新の方法(Science誌)をやろうが、他の最新の方法(Natureなど)でやろうが、いずれも健康被害をもたらす可能性がある・・・と論文の中では書かれています。・・・まあ、そりゃそうですがね。

 そして今回の「最新の樹立方法」ならば「遺伝子突然変異のリスクはない」、「癌化しにくい」と報道でもいわれますが・・・。本当に、ヒトiPS細胞の「癌化」が防げた・・・という証拠までは、さすがに示されていません。


 染色体を傷つけづずにヒトiPS細胞ができたのは、トムソン先生らの「最新型」と同じ。

タンパク質だけでヒトiPS細胞ができたというのが、今回の最大の新しい点。


 まあ、これで、より一層「拒絶反応がなく、倫理的にも問題の無い、ヒトES細胞が創れるようになった」と、ほぼ同義かな?と思います。ただし、そのヒトES細胞でも、まだ癌化リスクの懸念がありますからね。

は、細胞のリプログラミング自体が癌化と隣り合わせであることは変わりません。

 ただ、ヒトES細胞の場合は、その懸念も、かなりクリアされてきており、今、臨床試験に入れるようになっています(例えば、ジェロン社の試験などが、その代表例)。


 ちなみに「マウスES細胞においてEras遺伝子を除去することで腫瘍形成が正常マウスES細胞の10%以下になった。たぶん、ヒトES細胞でも、そうすることで安全性は高まると期待される」・・・という論文を書かれたのは、山中先生です。(←どうも、このマウスを用いたNature誌の仕事とCell誌のNanogの仕事(2003年)が評価されて、山中先生は京大教授になられたようですね。)


 ・・・で↑よりも、かなり優れた「多能性幹細胞(特にヒトiPS細胞にフォーカスしていますが、ヒトES細胞でも同様)の癌化監視マーカー」をどうにか発見できたので、そろそろ世に問おうかとしているわけです。


 でも、新型インフル対応のおかげで、遅れましたがね・・・。

新型インフル:「安心・安全宣言」と「天気予報」

 報道によれば、神戸や大阪、京都の飲食店の売りあげは、通常の30%くらいにまで落ち込んでいるようだ。


神戸の、あるレストランの店員へのインタビューにもあるように「これから梅雨になるから客が戻るか否か不安」という声もある。梅雨の時期のレストランは、ただでさえ、客足が鈍るからな。


 今回の日本経済(ただでさえ、景気が悪い)への悪影響は、相当なものだ。

誰か試算する「経済学者」が出てくるだろう。


 さて、こういう事態も考慮して、患者数が急に増加することがなさそうだという判断で、大阪知事の橋本氏は、「安全宣言」を来週末に出すそうだ。

 新規の患者が1週間で出ない場合だそうだが。


 しかし、前から言ってるように、やめておいたほうがいいと思うがな。

例えば「宣言を出した翌日に新型感染者、1人発見。」ということは十分考えられる。


 まるで、気象庁が、梅雨明け宣言を出した、翌日に雨が降るようにな・・・。

まあ、天気予報が外れても、「いつものことだ」くらいで済むのかもしれない。

しかし、今回のケースは、人命にかかわる話。

もし、上記のようなことになったら「政治責任」を問われますよ。 


今、やらなきゃならないのは、医療体制を整えること。

 そして、大阪らしく「来るなら、かかってこいや!」宣言のほうが、よろしいのではないかと。


そのうち、秋には、台風がくるのか・・・第2波とともに・・・。

 だから、今、できうる限りの「医療体制」を整えて、それをもとに「安心」を宣言することが、危機管理に精通した政治家としてやらねばならないことだ・・・と思うけどね。

エジプトでの鳥インフル・新型インフル同時流行が及ぼす意味について

昨日、エジプトの鳥インフルに関するネタを書いたけれど・・・。


 「読者様」から「なんで、怖いか、わかりやすく教えろ」という主旨の「ご質問」が、コメント欄に書かれたので、ここで回答しておきます。


 エジプトは、東南アジア地域以外では、最もH5N1(鳥インフルエンザ)による死亡者が多いところ。確か、今のところ世界3位。


 これまで、鳥インフルエンザの流行については、今の「新型インフル(H1N1)」(S-OIV)に比べても、地域限定的でした。致死率は非常に高いけれど、感染能力は低い。


 まあ、今のところ、エジプトでは新型インフルエンザの感染例は報告されていないようです。・・・しかし、今後、エジプトで新型インフル(S-OIV)が流行りだすと、S-OIVとH5N1の2種類のウイルスの間で、遺伝子交換が起こる可能性が十分考えられます。要は、毒性も更に増して、感染能力も高いウイルスができてしまう・・・。

 さらに、エジプトは「渡り鳥」の飛行経路に位置しています。


 ということで、「空飛ぶ(感染能力も高い)、強毒性ウイルス」が、国際的に巻き散らかされる可能性があるから、まともな専門家の皆さんは、あらゆる最悪の事態を想定し、それらを回避するために頭をひねってるわけです。(私もその1人ですが、おかげさまで、本命の「iPS細胞研究」はちょっとお休みせざるを得ませんでした。)


 まあ、この回答で、わかりやすいか否か知りませんけどね・・・。


 さて、私は、前から言ってる「インフルエンザ論文」も投稿審査中だし、本命の「iPS細胞研究」論文の改訂版も、ようやく無事に投稿完了!


 ゆっくりしていたいけれど、間髪いれずに、昨日、Cell Stem Cell誌で発表された「ハーバードの別チーム」での研究成果を超える結果については、もう論文あるいは学会発表したほうがいいので、また、そちらのほうに、力を注ぎます。


 これから学生のレポートも採点しなきゃならんし、臨床も、もちろん大変だけど・・・。