化学流産(生化学的妊娠ともいう)は、
【妊娠検査薬で陽性の反応があったにもかかわらず、
超音波検査で胎嚢などが確認できず、
妊娠が成立しなかった状態】を言います。
つまり、着床はしたものの着床の継続できずに、
妊娠に至らなかったものを指します。
一般的な妊娠検査薬によって妊娠判定が可能となるのは、
通常最終月経初日を妊娠0週0日とした場合、妊娠4週以降です。
超音波検査でほぼ確実に胎嚢が確認できるようになるのは、妊娠5~6週以降です。
つまり、胎嚢が確認できる妊娠5~6週より前に
妊娠の継続ができなくなった状態を『化学流産』と呼びます。
化学流産が起こる原因ははっきりとわかっていませんが、妊娠初期に起こる流産のほとんどの場合は受精卵の染色体異常によるものと言われていますので、化学流産も同様に受精卵の問題が
大きいと考えられます。
しかし、体外受精で化学流産となった場合には【移植した時期と着床の窓がズレていた】という可能性も有り得ます。
着床の過程は
①胚盤胞が子宮内膜上皮に接着し、浸潤する。
②胚盤胞が侵入するに従い、絨毛組織と
呼ばれるものが形成される。
③胚盤胞が子宮内膜に完全に包みこまれて、羊膜、胚盤、卵胚嚢が形成され、着床が完了する。
という段階によって構成されます。
②でできる【絨毛組織】はHCG(ヒト絨毛性
ゴナドトロピン)というホルモンを分泌します。
絨毛は胎盤の元となる組織です。
妊娠検査薬は尿中のHCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を検出することにより、妊娠の有無を判定する試薬です。
つまり、胚が子宮内膜へ侵入し始めて絨毛組織が作られ始めると、着床が完全に完了しなくても、HCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の分泌が行われ始め、妊娠検査薬の陽性反応や、血中のHCG濃度の上昇がみられるようになります。
移植した胚が着床を完了するまでの間、
着床の窓が開いている必要はありません。
しかし、胚が着床を始めようとした時期が
着床の窓が開き始めたばかりの時期であったり、
逆に着床の窓が閉じ始めてしまった時期
であった場合、胚は着床するかもしれませんが、
うまく定着することが出来ずに
化学流産の経過になってしまうことが考えられます。
胚移植の結果が化学流産であった場合、
もしかすると、本当に最適な胚移植の時期は
違っていたのかもしれません。
※今回のブログのテーマは「化学流産は着床の窓がズレている可能性がある」というものですが、やはり、化学流産や初期流産の原因のほとんどは受精卵の染色体の数的異常です。
その中で、化学流産の一つの可能性として着床の窓のズレが考えられ、「(化学流産であったとはいえ)着床したことがあるから、着床の窓にズレがない」という訳ではないです。というのが本来の趣旨となります。
誤解を招いてしまいましたら、申し訳ございません。(2019/3/5)