前回1-2
https://ameblo.jp/ids-gaichu-h/entry-12510789027.html
さてさて、今日うってつけの実例があったのでセミナーの内容に合わせてお送りします。
アライグマの行動には大きく時期がありまして、この図のように
幼獣の捕獲はほとんど5月~8,9月に渡って発生します。そして彼らの被害(特に住宅被害)も春先から5,6月から増加します。これもこの時期に住宅や建物に侵入し、子育てをして糞尿、騒音などの被害が目立つためです。そこから子供が歩けるようになるにつれて住宅被害は減り、農作物被害が増えてくるのが6月以降から秋。親子が一緒に行動しているためです。そして秋から冬にかけては捕獲も被害も減っていき、彼らの気配も減っていきます・・・。
つまり、アライグマは11月のあたり(9月の時点でもオスがうろついている気がしますが)から生後10か月近くを迎えた子供は独立分散し始め、成獣のオスたちの移動範囲はさらに拡大します。なぜか?近親交配を避けるためと、できるだけ自分の遺伝子を広く残すためです。で、この11,12月はだいたい発情期を迎える為に各地で人知れずアライグマの出会いがあり、だいたい60数日くらいの妊娠期間を経て出産が行われます。早い者なら1月から、遅くて4月くらいから各地で順次子供が生まれていくわけです。
皆さんにしっかり知ってほしいので箇条書きでも。
・アライグマの発情期(通常)は11~12月。
・60数日の妊娠期間を経て1~4月にかけて子供が生まれる。
※ただし、古谷先生の次に発表して下さった加藤先生の研究では、この通常の発情期で交尾の機会を逃す、出産しても子供をすべて失うなどしたメスは夏場から秋にかけて2度目の発情期を迎えることが分かっています。これにより、アライグマの生まれる時期は晩冬~春の他に夏から秋でもある・・・つまりほぼ一年中あり得るということになります。非常に厄介ですね。道理でこれだけ増えるわけっすね。だからたまに冬なんかにかなり小さな子供が捕まったりもします。
次は、彼らの学習能力についてです。
こうして複数の罠にアライグマが捕まっていますが、よく見ると
こうして親や子供が捕まった仲間の近くをうろつきます。
見づらいですが同じ位置に朝になってもいます。アライグマの習性として、仲間が捕まっても2,3日は捕獲場所にやってくる点があるようで、いかに捕獲をしてすぐに回収をするのは勿論、捕獲地点に出来るだけ早く罠を再設置するかが重要になるわけです。でなければ獲り残されたアライグマは各地に逃げ出し、さらに仲間が捕まった罠のことを学んでいますのでかなり捕まりにくくなってしまいます(まだ数日であれば捕まる可能性はあります。目の前で捕まってるのを見ているのに、何故か捕まります)。
このような形で罠を学んだり、元から警戒心が強いアライグマは厄介な対応を見せてきます。
これは今日罠を巡回した所の様子です。罠の中には餌をぶら下げるフックがあるのですが、見ての通り、外側から手を突っ込んで引き寄せられて餌の入った袋が破られています。この罠には両脇に手を入れられないように猫よけのシートを張り付けているにも関わらず、さらに外側から手を突っ込んでいるわけです。このような真似はハクビシンやタヌキには絶対不可能で、アライグマの仕業であると断定できます。この点に関しては次回詳しく扱いますね。
こうやられてしまうと捕まえるのは困難で、せいぜいこうして手を入れていた場所に板を立てたりして防ぐ他ないです。(後ろとか上がガラ空きとか言わないでね・・・)こうした連中を捕まえる可能性を増やす罠はあるのですが・・・、これも次回で。
で、こうした連中はまだ罠と餌への興味を持っているのでまだ捕まる可能性があるのでいいですが、さらに厄介な連中がいます。その名も・・・ トラップシャイ と呼ばれている個体たちです。
このスライドにもあるように、彼らはそもそも罠に近づかない、興味を示さない個体の事です。おそらく仲間が捕まった姿を見てきて学習したのか、どうやっても捕獲が出来ないので現状では対処が困難となっています。先日神奈川の環境保護団体の方と会った際にも話したように、神奈川はまだ一定数アライグマを減少させることに成功しているのですが、それはトラップシャイ個体が多く残ることを意味し、今残っているアライグマはそうそう捕まらず、タヌキが捕獲のほとんどを占めるらしいです。こうした個体への対処も先を見据えると考えなくてはなりません。
アライグマたちを仮に減少させることが出来ても、トラップシャイたちへの対処ができないことにはアライグマの根絶は不可能なのです。
これまた大きな問題です・・・。今回はここまで。