プロチョーネです。ハチは大量に発生しているようですが哺乳類にはヒトであろうとアライグマであろうと苛烈な暑さが続いています。台風も来週に来そうな程度で雨は降る気配もないわでアライグマもハクビシンもどこか涼しい所に潜んでいるとは言いましたが、だんだんそれも限界になってきたのかもしれません。今日になって久しぶりにアライグマが捕獲されたので、おそらく飢えと脱水に耐えられなくなって出てきたと推測しています。アライグマは冬なら2ヶ月程度は何も食べずとも生きていけるようですが(関西野生動物研究http://www.kansaiwildlife.com/の方が言ってました)、熱には耐えられないはずです。お互い辛い季節です・・・。
ところで以前から5月に開催したセミナーについて書くと言っていたのですが、その目標にしていた某新聞社の取材記事の掲載が見送られてしまったと確定したのが先月のこと。当日取材に来てくださった記者の方はこの問題を是非とも掲載したいと仰っていましたが、上層部の「判断」(アライグマ問題が深刻なのは今に始まった話ではないのでわざわざ掲載する緊急性が薄い)があったとのことでした。しょせん新聞を始めとした報道機関も発行部数とそれに伴う収入が大前提として成立しているにすぎないものですから、そこに直結しやすい話題性のある記事、「緊急性のある」(広告費などで稼げる)記事が優占されるのも当然の話です。ただでさえ発行部数がここ数年で激減し、存続すら危ういメディアの態度としては妥当なものでしょう。この状況をいくらでも口撃もできますけれども、やはりメディアがどうなろうともアライグマたちや他の生物たちが列島で日々増えて広がっていることも違いは無いのでこの問題を伝えるにも旧来のメディアとは違う発信方法を模索した方が建設的でしょう。
このブログなんかも細々書いてますけれども、一旦オンライン上に投げ出されると抹消するのがほぼ不可能になって残り続けるのがネットの特徴でもあります。それで深刻な問題が起こる人々もいますけれども、何万年もの前の古代遺跡が発掘されてその意味や発見が現代人に見出されるように、こうして書いていることも思わぬ人、思わぬ時に省みられることもあるかもしれないと思って書くとします。できるだけ読んだ方々に日本列島の生物問題について今後もお伝えできるよう努力します。
で、前置きが長くなりましたけれども今更ながら5月23日に開催したアライグマ対策セミナーの内容についてお伝えします。もう丸2ヶ月以上前の話とはいえ過去はいくら振り返った所でこの暑さの中でも腐るものでもないですし、戦国武将や新撰組みたいな一般受けのいい歴史上の人物なんてどれだけ振り返られて脚色されてるかって話です。現代において深刻なはずの(メディアはまともに取り上げないですが)生物問題について立ち向かおうとしているセミナーについて振り返ったところで構いはしないでしょう。
2019年5月23日
5月23日、大宮ソニックシティの会議室に半年ほどの協力取り付けや宣伝の結果なのか主に埼玉県内の自治体の担当部署、農林系の組織を始めとして民間からも県外の業者、全国的な環境系の団体の方々30機関、35人ほどの方々にお集まりいただけました。何ら後ろ盾のないところから始めた割には多くの方々に来て頂くことができたと思います。ありがとうございます。そして弊社に協力を頂けた先生方には改めて感謝を申し上げます。
で、まず最初に講演をして頂いたのは埼玉県の農業技術センターで長年鳥獣被害対策の中心的な役割を果たしてきた古谷益郎先生。当然アライグマの問題が取り上げられる度に取材をされたり本も出され、そして何より、日々県内はもちろん全国各地を回って鳥獣被害対策の講演を精力的に行われている筋金入りの専門家です。
古谷先生は鳥獣被害の現状の問題点を述べてくださり、要点は
「正しい事実」・・・これだけアライグマが増えているにも関わらず、一般の方はもちろんのこと行政の担当者や民間業者ですらアライグマの生態、繁殖時期など抑えておくべき情報を知らないのが現状です。
「正しい技術」・・・これも同じくアライグマに対処する立場にいる人間でも基本的な知識を持っていない為、対策方法に捕獲方法も知らず、さらには特定外来法のような超重要な法律も知らないために未だに自称「駆除業者」が許可も得ずに捕獲をして、いざ処分方法も分からないので逃がすような場合がまだまだあります。
対策する人間の問題に加え、環境的な問題もアライグマ増加に大きく関わってます。
人間が勝手に輸入して、勝手に可愛がって、手に負えなくなったので勝手に逃がした。この流れは一般の方もなんとなくご存じかと思います。しかしそれだけでは何十年もの間日本列島の各地で生存するだけでなく何万もの数まで増える事もできなかったでしょう。それができるだけの環境が日本列島には整っていたのです。ここに挙げてある通り、食べ物が豊富で休息場所、生息できる場所が列島には豊富だったという条件が重なったからこその現状なのでしょう。
さらに「食べ物」といっても単に自然環境だけでなく大きいのは当然、これも人間による餌の提供です。ここに関して古谷先生は二種類の餌付けがあると分類しました。
意図的な餌やりは言わずもがな、見た目の可愛さ、駆除されていることからの憐みから野良猫と同じようにエサをやるようなことですが、無意識な餌やりの方が問題としては深刻です。これは野生動物に漁られる形で出される家庭ごみ、飲食店などの生ゴミはもちろんのこと、特に問題なのが放棄作物です。
最近は農家だけでなく環境意識の高まりから郊外で畑を借りて週末農園をやったりする人も増えていますし、さいたま市近郊でもあちこちに田畑が点在しています。そういったところは専業農家のものでもないので対策も怠りがちです。また、専業農家の出す大量の放棄作物も野生動物にとっては最高の餌場です。
大量のスイカが捨てられることもあったり、同じくミカンやブドウなども生産地では大量に作られ、大量に捨てられています。むしろそれを野生動物が食べることでありがたいとすら思ってる農家もいると古谷先生は言っていました。
そして、どこにでもある柿の木。土地が放棄されたところで一旦実をつけるところまで大きくなった果樹は何十年も実をつけつづけますから、そんな場所が全国無数にあると考えると、どれだけの野生動物を賄えるのかという話になりますね。それでいてこうした場所で捕獲をしようにも、もはや所有者が定かでなくなったり、許可が得られなかったりで手を出せないという行政上の問題も絡んでくるわけです。
農家の問題、放棄作物、無意識の餌付け問題、そして対応人員の数でも質の面でも不十分な点・・・。問題は山積みです。
今回はここまでにしておきましょう。続きは次回で。
次回