アイデス山口 iラヴ将棋「下手の中飛車→風見鶏β」 -5ページ目

将棋を地政学で考える9 棋譜解説「かたちのない銃撃戦。足の速い駒をうまく使った方が勝つ」

将棋は宇宙だ!
アイデス山口@アプリde将棋入門です。

地理的条件で国家の軍事などを考える地政学を、将棋に応用して考えてみよう、というコラムです。
地政学自体、付け焼刃の知識ですし、あくまで私個人的な見解ではありますが、
最終的には、棋力アップの方向にも繋がれば、と思っておりますので、よろしくお願いします。

前回から将棋の地政学を使った棋譜解説を行っています。
前回は、形のない将棋でも、序盤の手が最後に影響を及ぼすこともあり、それを将棋の地政学で予想ができる、といった話でしたが、
今回も形のない将棋から、考えていきたいと思います。





 

上記は序盤の局面。角交換して、互いに打ち合ったところです。
角換わりの将棋ではありますが、お互い居玉で、先手に至っては金銀が全く動いていない展開で、
その陣形が整う前のスキをついて、互いが角を打ち込んだ、といったところでしょうか?

どこで戦いがおきるかわからない感じで、完全に遠距離ミサイルや爆撃機の戦いになりそうです。
したがって、飛車角桂といった足の速い駒が活躍するエアーパワーの将棋です。
エアーパワーの場合、地理的条件はあまり影響しないので、互いに平地の将棋と考えて良いでしょう。

まず、先手は歩、桂、角しか動いておらず、角以外は攻めの態勢すら作れていません。
唯一角が銀をタダ取りしようとしているのが攻めの手ですが、次に受けの手を指せば受かるので、あまり良い状況ではありまえん。
5五に角を打つのは利きが多く、地政学的に見ても、エアーパワーとしては影響力が強いはずですが、活かせてないです。

対して後手も居玉ですが、銀が動いており、守りにも攻めにも活きてきそうです。
それ以上に8筋に歩が伸びており、飛車先の歩を切ることができれば、利きが直撃するので、飛車が活きてきそうな展開です。
角も歩の両取りになっており、1歩得は確実です。

エアーパワーは足の速い駒の働きが重要なので、飛車角の働きをみれば、すでに後手が良くなっています。




少し手が進んで・・・
まず、後手が8筋を飛車の利きを活かして押さえこんでいます。
反対に右側では、角が成り込むところを、先手は飛車で受けざる得ない状況に追い詰められた挙句に、桂に狙われてしまいました。

先手は飛車は受けに使われ、角も効果的でない、桂も跳ねただけ、ということで全く働いていません。
後手は、飛車は左辺を押さえ込み、角で飛車を押さえ込み、桂で飛車を取りにいくという見事な躍動です。
急所となりそうなところを的確に爆撃する体制を築いている、と言えるでしょう。



本格的な爆撃を受けてはかなわないと、先手は飛車角交換して、敵陣に角を打ち込み、金を取りにいきます。
しかし、この将棋はエアーパワーの将棋。角は遠距離射撃に使わないといけないのですが、ちょっと狭すぎる場所のようです。
例えれば、スナイパーを敵陣のど真ん中に置いてきてしまった、という感じでしょうか?
もちろん、この角が逆に狙われる結果になります。



前図で打ち込んだ角は、何とか敵玉近くで馬になり、一見後手玉も危なくなったように見えますが、実際は後手の角得。
6一の金取りになっているとはいえ、簡単に受かります。
後手も金駒の1枚でもあれば、駒損でも攻めが繋がるかもしれませんが、歩2枚ではどうしようもありません。
無謀な攻めから戦力を減らしてしまう結果でした。
その後、この馬は追い払われてしまい、敵陣で拠点になることもできませんでした。

この時点で大差の勝負になってしまいました。



大勢は前図で決していたので、もう投了図でも良いかと思いましたが、もう1つだけ取り上げておきます。

後手の6四の飛車は、8二にいたものです。
右側を制圧して、先手玉に迫る段階で、前に出てきました。左側の逃げ道だけでなく、上部への脱出もふせいでいます。
序盤で8筋を押さえ込んでいたのが、飛車の活用に繋がった、と言えるでしょう。



上図が投了図。右側の戦いを制して、打ち込んだ飛車が最後は龍となり、と金とのコンビで上手く詰ましました。
先手玉は、ほぼ中央から動くことなく、追い込まれてしまいました。後手の駒台には、まだたくさんの戦力が残っており、これで詰ませられなくても、追い込めるだけの余力はあります。

序盤で大駒を交換し、互いに玉を囲わないような将棋は、
航空爆撃や遠距離ミサイルを中心としたエアーパワーの将棋になります。

エアーパワーの戦いは、どこで戦いが起こるかわからず、その爆撃がうまくいくかによって勝敗が分かれます。
将棋で言えば、飛車、角、桂の足の速い駒の利きをうまく活かす、ということになり、
うまく使った後手、使えなかった先手では大差になる、というのがよくわかる対局だったと思います。


これまでは形のない棋力の低い対局を地政学で解説してみましたが、
次からはよくある駒組みの将棋を取り上げてみたいと思います。

 

将棋を地政学で考える8 棋譜解説「かたちのない将棋でも『将棋の地政学』を活かす」

将棋は宇宙だ!
アイデス山口@アプリde将棋入門です。

地理的条件で国家の軍事などを考える地政学を、将棋に応用して考えてみよう、というコラムです。
地政学自体、付け焼刃の知識ですし、あくまで私個人的な見解ではありますが、
最終的には、棋力アップの方向にも繋がれば、と思っておりますので、よろしくお願いします。

長々と地政学の知識を将棋に当てはめて考えてきましたが、今回からは実際に棋譜を見ながら、地政学を応用していきます。
棋譜はコンピュータVSコンピュータで適当に選んだものです。

最初に弱いコンピュータ同士の対局で、将棋としてあまり形の良くないものを選びました。
定跡系は私もどういった展開になるか読みやすいですし、
定跡系で指せるだけの棋力で指せるレベルなら、「将棋の地政学」よりも「定跡」を覚えた方が得
なので、
そういったものに当てはまらないものからやってみたいと思います。

まずは序盤の局面を見ていきましょう。



まず、先手は7、8筋で位を取り、左側が戦場になりそうです。
玉は戦場から1マス遠いところにあり、隣には金がいるので囲いというわけではありませんが、低く構えているので、少し防衛体制を築いた状態です。
ただ、角と桂で位を確保しているとはいえ、後続の攻め駒がいません。向かい飛車になっていれば良かったのですが、この2枚だけではすぐに押し返されそうです。
玉も右側に逃げられそうもなく、狭さを感じます。

イメージとしては、先手側の国境線に細い川があり、左側にある橋から、一部の血気盛んな兵士が戦闘態勢が整う前に攻め込んでしまった、という感じでしょうか?

いわば暴走(笑)

対して後手は、居玉で攻めの態勢も築いていませので、現状では平地の戦いです。
3~5筋の歩が伸びていて、2枚の銀が前に進んでいきそうですので、左側からの攻めに耐えられれば、中央に広く押さえ込んでいけそうです。

イメージとしては、平地での機動力をいかし、先手国にある川の対岸になるべく多くの兵士を配置して、先手国に身動きを取れなくしようとしている、といったところでしょうか?

そのため、先手は左側を制して、守りの甘い右側から左右挟撃できれば、後手の玉の薄さをつけますし、
後手は左側の戦いを無難にまとめて、中央を押さえ込みながら、ジワジワと迫っていけば、相手の狭さをつけそうです。

本譜では、△9五歩と角頭を狙って、後手がカウンターを仕掛けました。

次の図は、左側の戦いのあとです。



左側の戦いは、後手のカウンターがうまくいきましたが、先手も踏ん張って、互いに相手陣に拠点を残す結果となりました。
現状は、左側にあった先手の橋が、後手に押さえられてしまった感じでしょうか?

先手としては、状況を変えるしかありません。
右側からの戦いを仕掛けて、新たな火種を作って、バランスを保つ(地政学用語でいうオフシェアバランス)しかなく、右側から桂を打ったのが上図です。
ただ、1枚だけの攻めは繋がらず、簡単に受けられてしまいました。せめて、飛車先の歩が切れていれば・・・という展開です。



右側で火種を作れなかった先手は、左側で作ったと金を中心に強引に玉に迫ろうとしましたが、後手玉は上部脱出を図ったのが上図。
序盤で中央の歩を進めていたのが活きました。この玉の軽さは平地の戦いならではの展開と言っても良いでしょう。
対して先手は、2~4筋を歩で押さえられている状態。右側には橋がなく、川を渡れず、逃げ場がない状況といったところですね。



上図が投了図で、右側に逃げ場がなかった先手玉は、脱出できないまま追い詰められてしまいました。
平地での機動力を活かし、玉を中心に川の対岸を押さえ、最後は橋を渡って追い詰めた、といったところでしょうか?


少し将棋を知っている方なら、この対局が棋力の低いもの同士であることは理解できると思います。
そういったレベルでも、序盤に伸ばした歩が玉の逃げ道を作っていたわけで、
指した手が最終的にどう活きてくるか?というのは、棋力には関係なく影響してきます。

どう影響してくるかを予想するに必要な知識が、将棋の地政学だと思いますし、その一端が見えた対局だったのでは?と思います。

本当に強くなろうとしたら、先を正確に速く読む力や定跡の知識が必要かと思われますが、
この将棋の地政学は、構想という意味では、将棋の強化に役立つと思われますので、もう少し実戦の対局を見ながら考えていこうと思います。

次も形があまりないような対局を見ていきたいと思います。
 

将棋を地政学で考える7 将棋の初期配置から地政学で考える「戦場と玉の距離で地形を想像する」

将棋は宇宙だ!
アイデス山口@アプリde将棋入門です。

地理的条件で国家の軍事などを考える地政学を、将棋に応用して考えてみよう、というコラムです。
地政学自体、付け焼刃の知識ですし、あくまで私個人的な見解ではありますが、
最終的には、棋力アップの方向にも繋がれば、と思っておりますので、よろしくお願いします。

これまで、地政学の基礎に対して、将棋を例えて、どんな戦いになりそうか考えてきました。
これからは、実際の棋譜を見ながら、地政学的に解説してみようかと思いましたが、その前に

初期配置は地政学的に見てどうなのか?

というのをやらないといけないことに気づきました。

そこから陣形を築いていく上で、どのような地形が想像できるか?が、将棋に地政学を応用する意味であって、
それを説明する前に、地政学の基礎知識の解説がてら、将棋に当てはめて考えてみてしまいました・・・
この「将棋の地政学」を出版する際(もちろんそんな予定はなし)は、今回の記事が最初の方がいいかもね(笑)
でも、将棋ファンには、将棋を直接当てはめちゃった方が親しみを持てるかな?
まっ、いっか。

さて、将棋の初期配置を見てみましょう。
まず、考え方は非常に単純で、自国、敵国、地形の3パターンしかありません。



初期配置の歩は国境線みたいなイメージですかね。戦力でもあるので、国境警備隊みたいな感じでしょうか?
その国境線も利きのない場所があります。具体的には、先手から見て8、6、5、4列で、国境警備の弱いところです。
もしこういった弱点がなければ、初期配置は動かす必要がなく、
それが防衛としては最強となりますが、そうではないので、国境線を引き直して守りやすい形に変化していきます


同時に相手に降参させなければ、戦争も将棋も終わりませんので、攻めないといけません。
守りやすいだけでなく、攻めやすくするために、これまた国境線を引き直さないといけません。

自国、敵国の国境線に間にあるマスを、地形として考えてみたのが、将棋の地政学になります。

その地形がどんな地形かを判断するには、いくつかの要素があると思いますが、
戦場になりそうな場所と玉までの距離が判断の基準として比重が大きくなります。

つまり、遠ければ遠いほど、海や山脈などに国が囲まれていて、相手国は攻めが届きにくい、と考えるわけです。

少し余談になりますが、将棋の初期配置というのは、実は防衛に優れていると言えます。
まず、何と言っても陣形が低さが特徴です。

陣形が低いことで、攻撃に時間がかかるのに対して、弱点を補うには最短2手で大丈夫。
時間があれば、その防壁を厚くすることも可能です。
歩を前進させない、というのは、実は防衛に優れている陣形なのです。

実際にそれを証明したのが、将棋プログラムの稲庭将棋です。



元々相手のコンピュータを混乱させ、時間を使わせて、時間切れ勝ちを狙ったものでしたが、
歩を動かさずに、歩への利きを増やした陣形ですから、結果として攻略しにくくなったわけです。
高い山脈に囲まれた地形で、戦う前に上るだけでもひと苦労って感じでしょうか?

稲庭将棋からもわかるように、囲いの高さ、低さも遠さに影響します。

遠いと言えば、端まで移動する穴熊や米長玉は、戦場と反対側に囲えば、地政学的に防衛に優れていることになります。
反対に、矢倉は、金銀が連結した堅い囲いですが、基本飛車側から戦いが始まるので、戦場から近く、地政学的には危険な地域となります。

その優れた防衛力を地政学的に防衛に優れた島国と考え、危険な場合は平地と捉えるのが、将棋の地政学の考え方です。

遠さを軸に、どういった地形が築かれていることを予想し、

現実の地政学から応用で、
その地形に活かした戦いはどういう構想が最適か?
それを逆手に取る方法はあるのか?といったことを、序盤から中盤の状況で判断するわけです。


具体的には、棋譜を見ながら次回以降から考えていきたいと思います。