アイデス山口 iラヴ将棋「下手の中飛車→風見鶏β」 -4ページ目

将棋を地政学で考える12 棋譜解説「稲庭将棋は日本?孤島の専守防衛では勝てない(当たり前、笑)」

将棋は宇宙だ!
アイデス山口@アプリde将棋入門です。

地理的条件で国家の軍事などを考える地政学を、将棋に応用して考えてみよう、というコラムです。
地政学自体、付け焼刃の知識ですし、あくまで私個人的な見解ではありますが、
最終的には、棋力アップの方向にも繋がれば、と思っておりますので、よろしくお願いします。

将棋の地政学を使って、定跡系の将棋も触れてきてましたが、1度小休止。
対コンピュータ用戦略の稲庭将棋の棋譜を、地政学的に取り上げてみようと思います。

稲庭将棋は、世界コンピュータ将棋選手権で独創賞を取ったコンピュータプログラムで、
初期配置から歩を突かず、自ら攻めないという戦法。

世界コンピュータ選手権では、時間が切れたら負けというルールがあるために、
定跡から外れた将棋にして、相手のプログラムに思考時間を使わせて、最終的には切れ負けを狙ったものです。

人間ならば、攻めてこないなら、1つのマスに利きを集中させて打開する、など考えますが、
コンピュータにはそういった考え方がないので、混乱して打開が難しいわけです。



先手が稲庭将棋の駒組み。
歩になるべく2つ以上の利きを利かせ、簡単には突破させないようにしています。
あとは飛車が行ったり来たりの反復運動などをしながら、相手が攻めてくるのを待ちます。
現時点では、低く構えており、敵からの攻撃が届くに時間がかかるので、防衛としては優秀です。

対して後手は三間飛車の美濃囲い。
もう少し手を進めてみます。



先手の駒組みは変わりませんが、後手は全列で歩を伸ばしています。
どこから攻めるかわからず、全体的に駒組みが高くなってしまった、という状況かと思います。

これまで穴熊を島国、としてきましたが、先手の稲庭将棋も島国的です。
全く敵陣に向かって進まないんので、大海の中の孤島ってイメージです。
先手は、専守防衛で水際で反撃するという戦い方になります。現在の日本の国防システムになりますね。

後手も銀冠に組み替えて半島国家に見えます。
ただ、戦場が敵国だけになりそうなので、本土から遠いところで戦うシーパワー国家と言えると思います。

本体局は、シーパワー同士の将棋と見ても良いでしょう。
広い海が遠さを作っていたのですが、全く攻めてこないので島を取り囲むところまでは無傷で進んだ、といった感じでしょうか?

シーパワー同士の戦いですが、先手稲庭将棋の本土水際の戦いになるので、
後手が先手陣を突破できれば、すぐに終盤となります。
したがって、専守防衛で突破を防げるかが争点になりそうです。



6筋の歩をぶつけて、継ぎ歩をしました。
それまで飛車を移動させたりしながら、攻め手を探していましたが、2、4筋の歩を切って、2枚の歩を手にしたところで、打開の方法を見つけたようです。



銀冠の銀が前に出てきて、6六の歩をアシストしています。
玉のコビン(斜め上)は急所ですし、「銀は千鳥に使え」という格言もあるように真っ直ぐ前に進むよりは斜めに使いたい駒なので、後手は6七の地点が急所とみたようです。



前図から△6七歩成から銀交換され、玉をつり出されて歩に叩かれています。
逃げても攻めの拠点となるし、取ればさらに釣り出されます。



結局先手玉は釣り出されてしまい、あっさりとつまされてしまいました。
どれだけ低い堅陣に構えても、玉がその中にいなければ、意味はありません。

大海の孤島が遠く攻めにくいと言っても、

攻めてこなければ、時間(手数)をかけてもいいし、
時間をかければ、島を包囲することだってできます。

専守防衛の限界ってところでしょうか?

地政学上では攻めにくくても、攻守のバランスが悪ければ意味をなさない、ということがよくわかる対局だったのではないか?と思います。

次回は定跡形の将棋に戻って、もう少し棋譜を見ながら考えていきたいと思います。

将棋を地政学で考える11 棋譜解説「地形に適した指し方を構想できるのが将棋の地政学」

将棋は宇宙だ!
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地理的条件で国家の軍事などを考える地政学を、将棋に応用して考えてみよう、というコラムです。
地政学自体、付け焼刃の知識ですし、あくまで私個人的な見解ではありますが、
最終的には、棋力アップの方向にも繋がれば、と思っておりますので、よろしくお願いします。

将棋の地政学を使って、前回から定跡系の将棋にも触れてみていますが、

今回は居飛車対振り飛車の対抗系。
初心者にも人気の戦型です。



ここまでは後手は居玉の四間飛車で、端歩の突き越しており、藤井システムっぽい進行です。
先手が穴熊なら、穴熊側から戦いを仕掛けることもあります。

この藤井システムを地政学で例えるのは相当難しいですね。
穴熊なら自ら強襲、急戦なら先に玉を固める、という可変的な戦術ですので、どこが戦場になるかわからないですし、右から仕掛ければ、居玉の方が戦場から遠いことになるため、居玉だから危険というわけではありません。
少し小高い山の上にある城みたいに、全体的に守られている、という感じなんでしょうか?
今後の宿題にしておきます・・・



先手は穴熊を選びましたが、後手は左側からの攻めでなく、美濃囲いを選びました。持久戦になります。

先手玉は、右側で戦いを行えば、戦場から最も遠い。穴熊は大海に浮かぶ島国のようです。
戦場は海となりますが、とりあえず局地戦を互角に切り抜ければ、その遠さで有利になります。

後手は美濃囲いで、こちらも十分堅い囲いですが、穴熊には及ばず、局地戦は確実に成果を上げていかないと負けです。

あと美濃囲いのままで戦うか、銀冠に発展させるかによって、少し状況が変わります。
美濃囲いは低く、横からの攻めには強いです。
飛車交換などになったとしても、互いに相手陣に打ちあった際に、何か有利な点があれば、相手が穴熊でも戦えるかと思います。
銀冠になった場合は、囲いが高くなり、玉頭戦も視野に入ります。その分横からの攻めには弱くなっていますので、飛車の突破は簡単には許せません。

こう考えると、振り飛車の美濃囲いは、地政学的には海に面した半島っぽい感じですね。
海からの攻めを水際作戦で対抗する強さを持っていますが、半島の根元を狙われた際に、逆に海へ追い詰められることもある。
ということで、ポイントは

・半島の根元にあたる右側3段目がどのようなタイミングで突破されるか?

ここが焦点になりそうです。



ファーストコンタクト。先手浮き飛車に対して、角で遠距離射撃。

先手は金銀4枚の穴熊が完成。後手は囲い側の歩が伸びており、銀冠に組み替えそうなようです。
飛車交換を迫りたい先手に対して、右側の戦いをのらりくらりと戦いながら、左側でも何かしらを仕掛けたい後手、という戦いに見えます。



▲5七角は後手玉方面にも利かせた手ではあるのですが、
△6五歩▲同歩△同桂が角銀両取りになってしまい、これは後手が一本取った感じになります。

先手が右側でモタモタしている間に、本土に手を出されてしまい、後手のペースになってきたようです。



先手も4筋から反撃を試みますが、後手は角筋が止まったのを利用して、飛車角交換に出ました。
銀冠になって横からの攻めに弱くなっているので、自陣に飛車を打ち込まれるのは嫌ですが、角なら馬を作られてもそこまで速い攻めはない、ということになります。そういう地形になっているということです。



後手のうまい攻めがあったのですが、長くなりそうなので省略(笑)
まとめれば、飛車角交換は行われず、6筋の歩の取り込みから角交換になり、後手は龍を作るに成功しました。
飛車成りが金のタダ取りになっていたので、先手は受ける必要があり、後手は△3三歩で受けることで先手の飛車成りを防ぎました。
後手だけ龍を作れたとなると、先手は防戦一方になりそうです。いくら穴熊でも耐えられないでしょう。
「空母が本土の側まで迫ってきた」そんな感じでしょうか?



後手は、龍が横から迫り、端攻めも絡めて、先手玉を追い詰めました。次の△7七桂成に適当な受けがないようです。

先手はせっかく4枚穴熊に組めたにも関わらず、全く相手玉に迫ることなく終わってしまいました。
後手にもムダな指しまわしもありましたが、先に飛車が成って、次に相手の飛車成りを防ぐというのは、局地戦で勝つという今回の将棋に適した考え方だった、と言えるでしょう。

どんな陣形に組むにしても、適した指し回しをしないと、どんなに囲いを堅くしたって意味はありません
どういう構想で指していくかは、「将棋の地政学」がヒントになりそうです。

次回は少しイレギュラーな対局を取り上げてみようかと思います。
 

将棋を地政学で考える10 棋譜解説「戦場から離れた玉が強力な地形となる」

将棋は宇宙だ!
アイデス山口@アプリde将棋入門です。

地理的条件で国家の軍事などを考える地政学を、将棋に応用して考えてみよう、というコラムです。
地政学自体、付け焼刃の知識ですし、あくまで私個人的な見解ではありますが、
最終的には、棋力アップの方向にも繋がれば、と思っておりますので、よろしくお願いします。

将棋の地政学を使って、形のない将棋を棋譜解説してきましたが、今回から少し定跡系の将棋にも触れてみたいと思います。

まずは角換わりの将棋を取り上げます。
角換わりの将棋は、最初に角を交換するので、乱戦になりやすく、エアーパワーの将棋にもなりやすい反面、腰掛け銀先後同型みたいなしっかり組み合って全面戦争になりそうな将棋もあり、序盤で判断が難しい戦型でもあります。



先手は早繰り銀で、3筋から戦いを仕掛けました。
先手玉は囲いに入っているわけではありませんので、戦いが右側で始まっているため、左側に1つ寄っていますし、金銀も左に寄っていて、数手で矢倉囲いになりそう。9筋の歩は突き越しているので、上部脱出も考えられることから最低限の守りはできている、との判断でしょう。
島国とか半島のように大きな海に囲まれていたわけではないですが、先手は小さな山脈の陰に隠れた国、といった感じでしょうか?

対して後手は居玉。金銀も左右に分かれていますし、8筋は位取りしているものの、飛車先の歩を交換できるわけでもなく、まだ攻めも守りも不十分。
小川が国境線に流れているくらいで、ほぼ平地に近い状態に見えます。

堅い地形の国が先に仕掛けたわけですから、現状では先手が良さそうです。
右側の戦いで、先手が相手陣に拠点を作る、駒得するなど、何かしらの成果を上げれば、先手のペースでしょう。
後手は、右側の戦いを捨て8筋の戦いに勝つ、玉を左側まで逃げるなどして、バランスを保っていかないとズルズルといきそうです。



後手が銀得していますが、と金が金取りになっており、取れば飛車で取り返される上に龍を作られてしまい、先手満足な展開。
そこで後手は、飛車を狙って角を投入。
突撃していると金ではなく、援護射撃している飛車を狙って、と金を孤立させ、自分も右側に拠点を作る作戦のようです。

双方が相手陣に拠点を作ることになれば、堅い先手が有利に見えます。
何とか敵国に進入したが、目の前にあるものが山脈か?小川か?では、兵士もモチベ―ションも変わってくるでしょう。



思わず「渋谷の将棋指し」と言いたくなるような(笑)渋すぎる玉の早逃げ(▲7九玉)。
右側の戦いにもひと段落。駒割は飛車銀と金の交換で後手が有利なのですが、駒の効率に大きな差があります。

まず、先手はと金2枚を相手陣に残しており、非常に効率の良い攻めです。敵玉は居玉ですので、金駒などが入れば、と金を拠点に玉を追い詰めることができそうです。
対して後手は、右側の戦いで飛車を追い込むために、角と銀を使ってしまい、敵玉に迫るには時間がかかりそうです。
その上でさらに遠いところに逃げたし、王手をかけたとしても、▲8八玉とすれば囲いに入ることもできます。
最初に築いたのが山脈か小川かの差がここで出ていますね。



とうとう後手の玉が逃げることになりました(△6一玉)。駒割りは飛車桂交換で後手駒得で龍までいますが、先手は金銀3枚の堅陣です。
攻め切れなければ、と金が寄るだけで王手がかかり、手番が奪われてしまいます。その前に逃げるしかありません。
先手はまだ高い防衛力があり、時間がありますので、次に▲4五桂と跳ねました。▲5三桂成で守りの金に迫れますし、△同銀でも守り駒がつり出されます。遊び駒を使った余裕のある攻めです。



先手の堅陣は守られたまま、後手玉がつり出されてしまいました。小川の陰で陣を作っていた王様が、小川を渡らされてしまって挟み撃ちにあっている状況です。



これも「渋谷の将棋指し」な一手。
△2六角と攻防に利かせたのですが、そこから▲6二ととひょいと開き王手。王手なのでと金は取れず、玉が逃げる間に金を補充する手です。
これは地政学とはあまり関係なかったのですが、目を引いた手だったので、思わず取り上げちゃいました(笑)



その後は、後手玉が逃げ回り、必死の抵抗を試みましたが、先手玉は危なくなることもなく、ついに力尽きました。
驚くべきことに、5一のと金は、最初に作ったと金です。攻めの拠点となり、最後の詰みにまで役立ちました。


普通に考えれば、相手より玉を固めて先に仕掛けたわけですから、先手が勝つのは容易に想像できます。
しかし、中盤は後手が駒得しており、カウンターがうまくいったようにも見えるわけで、最終的には大差がつくような将棋には見えません。

勝敗を分けたのが、戦場からの距離だったと思います。
最初の戦場の近くに、攻めの拠点が築かれる場合が多いので、玉が戦場に近ければ、状況によってはすぐに詰むや詰まざるやの展開になってしまいます。
両方とも戦場に近くに玉が入れば、スピード勝負になりますが、片方だけなら「終盤は駒得よりスピード」というように、遠さによるスピードの差は、多少の戦力の有利さはあまり関係なくなるようです。
そのあたりの判断を将棋の地政学で、構想のヒントにできれば、多少は役立つのかな、と思います。

次は居飛車対振り飛車の対抗系を考えてみたいと思います。