いつもありがとうございます。一葉です。
弊宅閲覧者数・延べ50万人様を記念して、GREEN23様からお与かり致しました原作沿い記念リクエストの続きをお届けです。
■ 極上の厄災 ◇5 ■
敏腕と称されるだけあって社さんの仕事は早かった。
午前中のうちに元共演者二人と連絡を取ってくれていた社さんは、ついでにアイツのスケジュールも手に入れていた。
「 俺、何も言ってないのに… 」
「 なに言ってんだ。インスタのあれをキョーコちゃんのファーストキスにするってことは、その前にあった出来事を抹消する必要があるだろ。いくらキョーコちゃんを始めとする俺たちがあれをアリクイ被害だと思っていても 」
「 ふっ… 」
すっかり見通されている。
「 んで今夜、泥中の蓮の現場に二人でキョーコちゃんを迎えに行くぞ 」
「 え? 」
「 恐らくアリクイ本体が来る。不破のスケジュールによると、移動の際にキョーコちゃんの現場近くを通りかかりそうなんだよ 」
「 そうなんですか。それじゃ…えっと、どうしようかな 」
「 問題ない。偶然にもいま大原さんと百瀬さんは揃って同じ舞台に立っている。しかも都合がいいことにキョーコちゃんの現場から30分と離れていないんだ。…ってわけで、花束を用意しておいたから。お前の分と、キョーコちゃんの分な 」
当たり前顔でシレっとそう言った社さんが敏腕過ぎて笑いが浮かんだ。
「 それは何とも。
手っ取り早くアリクイ退治が出来そうで良かったです 」
その後、俺は俺でスケジュールを淡々とこなして、ほぼ社さんの予定通りに最上さんを迎えに行った。
とはいえ俺は部外者だから入ることは出来なくて、だからこれはあとで社さんから聞いた話。
社さんが現場に立ち入った時、ちょうどあの子は撮影現場の隅っこにいて、共演者の女性たちに囲まれながらものすごく本格的に羨ましがられていたらしい。
「 素敵な相手とのファーストキスなんて羨ましい~!! 」
「 ほんと、一生忘れられない思い出になるわよねー 」
「 ねぇ、彼の写真あるんでしょ?せめて顔を見せてくれない? 」
「 それが、すみません。残念なことにその時は余裕がまるでなくて… 」
「 えー?ないのぉ?ざんねーん 」
社さんが最上さんを迎えに行って、俺のところに来るまでおよそ20分強の時間を要した。
着替えてようやく顔を見せてくれた最上さんに事情を説明。
これから元共演者の楽屋に激励の花束を届けに行くよ…と言うと、最上さんは喜んで車に乗り込んだ。
全員が車内に収まったタイミングで一台の車が駐車場に現れる。
俺たちは不破とすれ違う形で発車して、わざと奴の目の前を通り過ぎた。
「 …っっっ…ざけんな、キョーコ!!お前のファーストキスの相手は俺だろうが~~~っ!! 」
…と、車内でアイツがそう叫んでいる声が聞こえてきそうな形相。
案の定、追いかけてきていることを目視した俺は、腕が鳴るな…と、アイツの事にはまるで気付いていない最上さんの隣でほくそ笑んだ。
それからはほぼ流れ作業だ。
社さんが用意してくれた花束を最上さんと一つずつ持って二人の楽屋を訪れる。
舞台は時間的にちょうどカーテンコールが終わった直後で、舞台裏はまだ活気に満ち溢れていた。
大原さんに続いて百瀬さんも俺たちに気付いてくれて、また同時に俺たちの存在に気付いた舞台記者もこちらに近づきながらカメラを向けていた。
「 大原さん、百瀬さん、お久しぶりです。覚えていますか?京子です 」
「 やだ、忘れるわけないわ。お久しぶり 」
「 京子さん、敦賀さんとわざわざいらしてくださったんですか。感激! 」
「 そうなんだ。でもごめんね。俺たちいま到着したばかりで、舞台を拝見する時間までは持てなくて… 」
「 そんなこと気にしないでください。来てくださっただけで嬉しいんですから。わあ、素敵な花束。ありがとうございます!
…ところで、京子さん、見ましたよー!インスタで騒がれているあの写真!とっても素敵なキスシーンですよね 」
「 やだぁぁぁっ、お恥ずかしいです!そんなこと言わないでください! 」
「 ふふ…。これだけ騒がれちゃったらもう今更でしょ。本当にドラマみたいなキスシーンだと思ったわ 」
「 二人が言う通りだよ。俺としては羨ましく思った。なんていったって俺の物理的なファーストキスはたらこ唇がチャームなサラリーマンの男性だったからね(笑) 」
「 敦賀さん…以前自分でそんなのキスだと認めてないとか言ってらしたのに 」
「 もちろん俺は認めてないよ。前にも言ったけど、ファーストキスは自分で決めるものだと思うから。だからその話は軽く流してくれる? 」
「「「 あはははは… 」」」
「 笑いごっちゃねぇっっ!! 」
「「「 ……っっ??! 」」」
最高にいいタイミングで不破が乱入してきた。
突然現れたアリクイの姿を見つけた女優二人は笑顔をひそめ、最上さんと奴の顔を頻繁に見比べた。
「 言っておくけどな、お前の相手は俺だろうが、キョーコ 」
「 はい?何の事かしら? 」
「 なにがグアムの地で金髪男と夢のようなファーストキスだ。嘘つきだな、お前。お前のファーストキスの相手は俺だろうが?忘れたとは言わせねぇぞ 」
ニヤニヤ笑いながら奴が近づく。
不破もまた百瀬さんと大原さんを交互に眺める。
あの出来事に物理的な証拠はない。
だからだろう。
不破は不敵な笑みを浮かべて、目撃者である二人の女優に声を掛けた。
「 なぁ?あんたら、見ていたから知ってんだろ。証言してくれねぇか?コイツのファーストキスの相手が俺だってことをよ 」
瞬間、バシャバシャとフラッシュが光った。
記者たちの質問がボリュームを上げて盛り上がる。
二人の女優が最上さんの前に自然と歩み寄る形で記者との間に立ちはだかる。
ちなみに俺は彼女の真横。すぐ守れる位置にいた。
あの時の光景がよみがえる。
今だって簡単に呼び起こすことが出来るあの出来事。
心の底からショックを受け、泣き出してしまった最上さんを。
そんな彼女を懸命に慰めてくれていた二人を。
そして嫉妬にまみれ、悔しさをにじませたあの時の自分の想いを……。
「 ……なんであんたがこんなトコ… 」
「 え?不破さん、何の事ですか?私には全く分からないです 」
「 は? 」
「 大原さんはどうですか?そんなこと、ありましたっけ? 」
「 えー?さぁ、私にも全然記憶がないわー。あ、それってもしかしたら夢だったりしないかしら?ほら、たまにいるでしょ。夢と現実をごっちゃにしちゃう人って。
ドラマに感情移入しちゃって、自分なら幸せに出来るのにとか言って近づいてくる人がたまに居ますよね 」
「 ああ、そう言えば。そういう経験なら俺もあるよ。…っていうか、そうだったんだ。不破くんはそんな妄想しちゃうほど実は京子のファンだったんだな。俺、知らなかったよ 」
「 …な訳ねーだろうが!! 」
さらにフラッシュが瞬く。
再び記者たちの質問が矢継ぎ早に飛び交い始め、その一つを拾い上げた俺が、この場を代表して紳士的に答えてあげた。
「 真実はどっちなんですか?!あの写真はフェイクってことですか?それとも真実ですか!? 」
「 フェイク?とんでもない。俺と彼女が所属している事務所が公式に認めているように、インスタグラムに載っていたあの写真が彼女のファーストキスで間違いないですよ。…ね? 」
「 あ、はい、そうです。あれが私のファーストキスなんです…って!!これ、いつまで言い続けなきゃいけないんですか~。ファーストキス宣言なんて、もう本当に恥ずかしいのに!もうそろそろ私の心の中に大切にしまわせてください!! 」
――――――― と言いながら
京子さんは元共演者や事務所の先輩に囲まれて
ほのぼのした笑いに包まれながら、それは幸せそうに記者たちの前でファーストキス宣言を。
この帰り際、彼女の事務所の先輩である敦賀さんの一言が
ライターとしてではなく
一個の人間として
私の心にとても深く響きました。
『 もしかしたら
彼女はたまたま
幸せに思い出すことが出来るファーストキス体験をしたのかもしれない。
でももし今そうじゃない人がいたとしたら
こう考えればいいと俺は思います。
どんなシチュエーションで
誰としたのがファーストキスか、なんていうのは気の持ち様。
自分がファーストキスだと思えるものが
あなたの大切なファーストキス
それで良いのだと俺は思います。
俳優兼モデル 敦賀蓮 』
発売になったばかりの女性週刊誌から顔を上げて俺に視線を移した社さんは、右手の甲に顎を乗せた。
「 さすがだな、蓮。見事にアリクイキスが抹消されたぞ 」
「 お褒めにあずかり光栄です 」
だが不破は
ここで引き下がるような潔い男ではなかった。
⇒極上の厄災6 に続く
怒涛の展開(笑)
ところで、未成年者でも舞台ってやったりしますよねぇ?プロのは観た事ないから判らないけど。
⇒極上の厄災◇5・拍手
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