お付き合い頂きまして有難うございます。一葉です。
弊宅500記事を記念して、くりくり様からお与かり致しましたリクエスト最終話をお届け致します。
こちらは現代パラレル蓮キョです。
お愉しみ頂けたら嬉しいです。
前のお話はこちらです⇒絵本の外の王子様<1 ・2 ・3 ・4 ・5 ・6>
■ 絵本の外の王子様 ◇7 ■
――――――― キョーコちゃんだよね。俺、分かる?子供のころ隣に住んでいた蓮だよ。
今日、日本に戻って来たんだ。
キョーコちゃんと再会したあのとき
君を迎えに来たよ…って俺が言えていれば、こんな一週間を過ごさずに済んだのだろうか。
俺がそれを言えていたら
キョーコちゃんはあの懐っこい笑顔を浮かべて、ずっとずっと俺を待っていたって、俺の腕の中に飛び込んできたのかな。
「 ……なんて。こんなこと、今さら考えてもな… 」
LME大付属高等学校校門前で自嘲した俺は、気持ち頭を下げた姿勢で軽く握った右手を額に押し当てた。
絵本の中の王子はいいよな…と思う。
城で催した舞踏会で、残されたガラスの靴を手掛かりに家来に命じて探し出した靴の持ち主を、一つの苦難も味合わずに妻として迎えたり、眠っている美女にキスを施し、目覚めさせたことをきっかけに、何の憂いも滞りもなくその彼女を妻に迎えたりが出来たのだから。
どちらの場合も結婚までの道のりは恐ろしいほど平坦で、苦悩や苦汁は一切なく王子自身は大した努力すらせず倖せを得ているように見える。
「 羨ましい限りだよな、ほんと 」
それに比べて俺はどうだ。
自分で努力をしなければキョーコちゃんの笑顔すらまともに見ることも叶わないただの男でしかないのだ。
だから、たとえ最初からそのつもりで日本に来ていたとしても、いざプロポーズとなれば緊張しないはずがなかった。
4日前と同じ。
学校が終了したのだろう生徒たちが一斉に出て来た気配を感じて俺は校舎側へ振り向いた。
学生服の波間に目ざとくキョーコちゃんを見つける。
否応にも高まる緊張感。
キョーコちゃんへのプロポーズに、この時、この場所を指定した藤道さんを少しだけ恨めしく思った。
……そう。
昨日、キョーコちゃんのお母さんが俺に頭を下げて間もなく、いつの間にキョーコちゃん家から出て来ていたのか藤道さんが乱入して来た。
どこから聞いていたのか
それとも雰囲気から感じ取ったのだろうか。
平然とした顔で玄関扉を開けた藤道さんは前と同じ余裕綽々の体でニッコリと微笑んだ。
「 答えは出たみたいかな? 」
「 え?……え? 」
「 藤道さん、どうして?蓮くんは私に任せるって… 」
「 ん?思った以上に最上の戻りが遅かったから…とでも言っておこうか。
こんばんは、蓮くん。先日はどうも。呼び鈴も無くお邪魔して済まないね 」
「 え、あの、はい、どうも……じゃない!先日は大変失礼しました!! 」
「 いやいや。頭を下げる必要はないよ。君とのやり取りは楽しかったし、有り余ったエネルギーの行き場に困り、大地に鉄槌をくらわす雷!…みたいな無鉄砲さを感じてしみじみとね、若いっていいよねぇ…って思ったよ 」
「 は…… 」
「 ほら、雷ってワクワクするだろう?いつ自分に落ちて来るかと思うと。あれに比べたら全然。スリルやワクワクは無いに等しかったから心配しなくていいよ 」
「 ……はい? 」
「 ところでね、プロポーズ、するんだろう? 」
「 はい!します! 」
「 うん、いい返事だ。じゃあね、あの子の未来の父親として一つだけ君に注文がある 」
「 はい? 」
ほら。善は急げ、悪は延べよってよく言うだろう?
だから、キョーコちゃんへのプロポーズは明日!あの子の学校の校門前で、下校時にすること!いいね?
「 ………いいねって… 」
藤道さんとはトータルで10分も話していないと思うけど、なんだかとんでもない性格の持ち主のように感じるのは俺だけだろうか。
キョーコちゃんを大切に思っている気持ちだけはビシビシ伝わってくるからそれがまたタチが悪い気がする…。
「 ぎゃふっ!? 」
「 あ、この人、この前の?! 」
羊の群れのように校門前を通り過ぎる学生たちの視線を物ともせず、キョーコちゃんだけを見つめる。
俺が持つ緊張感が周りの子たちに伝わるのか、校門近くで足を止めた女子高生たちはけれどこの前のように俺を取り巻いたりはしなかった。
「 最上さん、最上さん!! 」
「 はーい、また明日ね~ 」
「 じゃない!違うよ。ね、あれ!!見て、あれ!! 」
「 え? あ……っ…… 」
俺を見つけた途端に喉の奥で、キョーコちゃんが蓮くん…と呟いた声が聞こえた気がした。
そう。
俺自身はね、藤道さんも言っていたように君だけからは、いつでもどんな時でもどんな場所でも蓮くんって呼ばれたい。
「 キョーコちゃん。君を迎えに来たよ 」
「 ……え? 」
まっすぐ俺に向かって来てくれたキョーコちゃんの目の前で、見下ろした姿勢から腰を落とした俺は彼女の前で跪く。
すっかり女の子らしくなった華奢な手を掬い上げ、戸惑い顔で俺を見下ろす彼女を見つめる。
ああ、ほんと。
会えなかった9年の間にこんなに可愛くなるなんて。
君のこと、忘れられないはずだよね。
だって俺は9年間ずっとこの日を夢に見ていた。
君を迎えに行ける日を……。
「 ちょっと、なに……? 」
「 キョーコちゃん。遅くなってごめん。本当は悩んだんだ。君が16歳になった時に迎えに行くべきかもって。
でも、俺としてもけじめをつけたかった。だから、社会的に大人と認められる年になってから君を迎えに行くと決めたんだ。そのせいで泣かせたね 」
「 なに言って…… 」
「 俺はね、約束を果たしに来た。どうか俺の家族になって、キョーコちゃん 」
まさかこれってプロポーズ?…って、はしゃぐ声が周りから聞こえた。
その瞬間、キョーコちゃんが俺の手を振りほどく。
急いで捕まえた彼女の腕には拒絶の色が滲んでいた。
「 キョーコちゃん!! 」
「 いや!!どうして人前でこんなこと…。からかうにしてもひどいと思う!! 」
「 からかう?冗談じゃない!!こんな人前で君に振られたら恥ずかしいのは俺の方だ!からかうはずが無いだろう、キョーコちゃん!! 」
「 信じられない!だってこんなの絶対に嘘だもの!! 」
「 なにが嘘?俺が信じられない?16歳になったらうちの子になるって約束を守ってあげられなかったから? 」
「 違うわ!!だってこんな事ある訳ないじゃない!!ずるいよ、蓮くん、こんな、こんな王子様みたいにカッコよくなるなんて!!
こんな私じゃ蓮くんとは釣り合わない!! 」
「 ……っ?!! 」
――――――― だって藤道さん、蓮くん、ずるい!!
昨日、藤道さんの顔を見た途端、このセリフを思い出した俺は、キョーコちゃんが言っていたのは何だったんですかって聞いたのに、彼はニヤリと笑ってただ俺の肩を叩いただけだった。
教えてくれてもいいだろう…って、心の中で文句を呟くことしか出来なかった俺。
なんなんだよ、もう。あんなに不安に思っていたのが嘘みたい。
なんで君はこんなに俺を嬉しくさせることばかり……。
「 キョーコちゃん!!! 」
「 やだっ!やめて、抱きしめたりしないで!恥ずかしい、蓮くん!! 」
「 なんで恥ずかしい?俺はすごく嬉しいのに!!キョーコちゃん、俺、カッコいい?君の目から見たら王子みたい? 」
「 やめてって言ってるでしょ!それに、ひどいよ蓮くん!!蓮くんは私より先に20歳の大人になっちゃったのに、でも私はこんな平平凡凡な子供のまま…。
だから自分を納得させたのに!こんなにステキになっちゃった蓮くんが私を相手にする訳ないって、再会した夜そう自分を納得させたばかりなのに!放して蓮くん!! 」
「 離さない。放せない。放す意味が分からない 」
「 蓮くん!!! 」
腕の中で暴れようとするキョーコちゃんを抑え込むのはそれほど難しい事ではなく、キョーコちゃんの言葉通り、自分は大人になったんだなと思った。
子供の頃、転んで膝小僧を擦りむいたキョーコちゃんをおんぶすることさえ出来なかった俺は過去にしかいないのだ。
抱き締める手に力を籠める。
自分の腕の中にすっぽり収まってしまう彼女は女性なのだと実感する。俺がこれから守っていくんだ。
「 キョーコちゃん、聞いて。君は決して平平凡凡な子じゃないよ。だって俺は知っている。君はこんなにも可愛くて、こんなにもとびきりの美人だって 」
「 私のどこがっ!! 」
「 どこって…全部だよ。俺は見たよ、この前。この校門前でそういう君を…… 」
相手の気持ちを考えず、そのまま口にするのはブス。
相手の気持ちを察して、相応しい言葉を選ぶのが美人。
批判しかしないのはブス。
アドバイスをするのは美人。
他人を妬んで何もしないのがブス。
出来る事から始めるのが美人。
周りに期待して動かないのがブス。
自分の力で頑張ろうと動くのが美人。
「 9年前からずっと、キョーコちゃんが英語の勉強をしていたことを聞いた。そしてこの校門前で俺が出した意地悪な英語の質問の答えが判らなかった友達に丁寧に解説する君を見た。
どうして自分を卑下する必要がある?キョーコちゃんはとても素敵な子だよ。それは周りにいる君の友人たちを見たって判る。だって類は友を呼ぶって言うからね 」
「 ……蓮…くん 」
「 君は頑張り屋だから、色んな夢をこれからも君自身の力できっと叶えて行くんだろうね 」
――――――― キョーコちゃん。女の子は頑張ればなんにでもなれるのよ。お姫様にだって、女神さまにだって……。
……うん、母さん。嘘だなんて言ってほんと、ゴメン。
キョーコちゃんは母さんが言った通りの子になっていた。
とびきり素敵なレディに……。
「 キョーコちゃん。俺、君を迎えに来たんだ。俺と結婚しよう。俺と一つの家族になろう。9年間、俺は一日だって忘れたことはなかった 」
「 ………ほんとに?蓮くんは本当に私でいいの? 」
「 俺は君がいいよ。キョーコちゃん以外の子なんて考えたことすら無い 」
「 ……私も。ほんとうはずっと忘れなかっ…… 」
「 ちょーっと待ったぁぁぁ!!!! 」
「 光くん?! 」
「 なんで?!一体いつそういう事に?!だいたい、キョーコちゃん、好きな男はいないって言ってたじゃないか 」
「 それは… 」
「 おっと、気軽に手を伸ばして来るのはやめてもらえる? 」
「 あっ!!ちょっと!俺より少しぐらい背が高いからってキョーコちゃんを抱き上げることないじゃないか!! 」
「 言っておくけどね、俺はもう二度と、黙って見送ったりする気ないから…… 」
「 ひぃぃぃぃっ?! 」
このとき、俺達のやり取りをこっそり車から見守っていたという藤道さんは、ハンドルに突っ伏してブホっと吹き出したらしい。
助手席にいたキョーコちゃんのお母さんは、やっぱり複雑そうな顔をしていたという。
「 すごいな、最上。あれが大魔王か。僕のときには現れてくれなかったのに 」
「 ……子供の頃から蓮くんはキョーコのことを特別可愛がってくれていて、キョーコがいっつも隣の家にいたのは実は蓮くんのせいで… 」
「 ああ、聞いた。キョーコちゃんがどこかに遊びに行っちゃうと必ず蓮くんが連れ戻したんだろ。その相手が男だったと知った時は物凄かったっていうそれを僕は見たかったんだ 」
「 いま思えば、もしかしたらもう、その頃から決まっていたのかも知れないわ 」
「 ふっ。そんな幼い頃から伴侶を決めていたなんて羨ましいぐらいだ 」
そんな会話が交わされていたことなど露知らず。
「 キョーコは俺の妻になるんだ。俺の妻に友人として話しかけるのは構わないけど、邪な感情を持つ男は別。どんな奴でも俺は容赦しないよ? 」
「 なんでいきなり呼び捨て?!しかも妻?妻ってなに?!キョーコちゃん、どういうこと!?好きな男はいないって言ったのは嘘だったの?! 」
「 ん?それは聞き捨てならないな。どういうこと、キョーコ。こいつにそんなこと言ってたの? 」
「 そんな怖い顔しないで、蓮くん。私、嘘は言ってない。
だって蓮くんは私の好きな人じゃなくて……私が心から愛している人だから…… 」
「 なんだ、そういうことか。いいよ、赦す。それで?俺は君のなに?言って? 」
「 …………蓮くんは、私がずっと待っていた王子様みたいにかっこいい大切なひと 」
照れに照れながらそう言ってくれたキョーコちゃんを
俺は力いっぱい抱きしめた。
E N D
完結ラリホ~♪о(ж>▽<)y ☆
頂きましたリクエストはこちらでした↓
蓮とキョコは幼なじみという設定で、家が隣同士、子供の頃から仲睦まじい二人が、蓮の父親の都合で引っ越ししてしまい、二人は幼いながら将来結婚しようねと誓い合う。
そこから月日は流れ、二人が高校生の時に再び蓮一家が隣家に。
子供の頃より格段に可愛くなったキョーコ。そしてモデルや芸能界にスカウトされるほどの男前になった蓮に戸惑うキョーコ。
キョーコとの温度差に凹みつつ、他の男に渡してなるものかと画策する蓮(魔王発動)
蓮の懸命なアプローチによって自分の気持ちに素直になるキョーコ。最終的には両想いに…。
…というご依頼でして、かつ二人は同学年で…と頂いていたのですが、その設定は既に私が執筆済みでしたので丁重にお断りし、原作通りの年齢差でご容赦頂きました。
また引っ越しのきっかけや、蓮くんが同じ家に戻って来る理由付けのために一部変更を加えた形ではありましたが、ほぼリクエスト通りにお応え出来たのではないかと。
ちなみに藤道さんを登場させたのは完璧に一葉の欲望です(笑)…藤道さんのおまけ、書いてもいいですかね?
お付き合い頂きましてありがとうございました!!
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※おまけに続きます⇒「絵本の外の王子様・おまけ」
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