お付き合い頂きまして有難うございます。一葉です。
弊宅500記事を記念して、くりくり様からお与かり致しましたリクエストの続きをお届け致します。
こちらは現代パラレル蓮キョです。
お愉しみ頂けたら嬉しいです。
前のお話はこちらです⇒絵本の外の王子様<1 ・2 ・3>
■ 絵本の外の王子様 ◇4 ■
そのあとの俺はもちろんニヤニヤ笑いが止まらなかった。
嬉しさをこらえきれずに朗笑浮かべて、一人だらしなく恵比須顔。
俺の前をスタスタ歩いているキョーコちゃんは一体どんな風にバツが悪かったというのだろう。
こっちを振り向いてくれないばかりか、以降ひと言も口をきいてくれなくて、そんなキョーコちゃんがいまどんな顔なのかが気になって、緩んだ顔のまま歩調を速めた俺はキョーコちゃんの顔を覗き込んだ。
「 …っ!!…なにっ… 」
「 いや。照れた顔が可愛いなぁって思って… 」
「 照れてない!怒っているの! 」
「 …………なんで? 」
「 蓮くんがあんなことするからでしょ!! 」
「 あ、蓮くんって呼んでくれた。なに、さっきの。敦賀さんって 」
「 周りに人が大勢いたからでしょ。察してよ、それぐらい 」
「 意味わからない。人がいるとどうして名字呼びになるんだ。俺は、周りにどんな人が居たってキョーコちゃんからは以前と同じ風に呼んで欲しいよ。蓮くんって 」
「 ……あ、そ!! 」
「 ところでキョーコちゃん。あんなこと…って何?俺がみんなの前で君の肩を抱いたこと? 」
「 違う!! 」
「 そっか、良かった。それを怒っている訳じゃなかったんだ。…じゃ、なに?何でも俺に言ってごらん? 」
「 ……っ!!なんなのよ、その余裕顔は!!蓮くんが!!皆に英語で話せって言ったやつのこと! 」
「 ん?それ?……なんで君が怒るわけ? 」
「 プン!! 」
プン…なんて言ってそっぽを向いちゃう仕草さえ可愛いなんて、時の流れに感謝しかない。
でも、ねぇ。
そんなに怒ることないだろう?
だって仕方ないじゃないか。
手っ取り早く俺は君と二人きりになりたかったんだから。
「 キョーコちゃん。あれはさ、キョーコちゃんが英語部の部長としてどれだけ部員達の面倒を見ているのか知りたくなっちゃったんだよ 」
「 嘘ばっかり!昔は優しかったのに、蓮くんってばずいぶん意地悪な大人になっちゃったのね! 」
確かに嘘は否めないけど。
「 君こそ…。昔は可愛いだけだったのに。
ずいぶん賢くなっちゃって 」
「 バカにしてるの? 」
「 なんで。してないよ。どうしてそういう受け止め方をするんだ 」
「 誰だってそう思うでしょ、今の会話の流れなら 」
「 俺は思わないよ。だいたい、本当に凄いじゃないか。関東地区で常に上位に名を連ねる英語弁論大会の覇者なんだろ、君は 」
「 別に!すごくも何ともない。去年の優勝者が今年は卒業して居なくなっていたってだけの事だもの 」
せっかく足を止めて俺を見てくれたのに、キョーコちゃんはそう言い捨てるとまた脇目もふらずに歩き出した。
それでもね。
俺は充分嬉しかった。
まるで母国語のように英語を話す君の姿を見たことも。
そんな君を慕って周りの子達が君を頼っていたことも。
面倒臭がりもせず、英語部の部長である君を頼って来た子達に、君が懇切丁寧に説明する姿が見られたことも、俺はとても嬉しかった。
そう。
LME大付属高等学校の校門前で、俺を取り巻いた女子高生達の波は、俺がキョーコちゃんを迎えに来たことを説明したあとも全く引き潮にならなかった。
だからなんだ。
ほんの少しの意地悪心がポン…と顔を出したのは……。
「 ねぇ、敦賀さんって言うんでしょう? 」
「 ……うん、そうだけど 」
「 じゃあ、敦賀さん。一緒にお昼をどうですか?私たち今日から期末試験で半ドンなの。もうお昼だし、どこかに食べに行きませんか? 」
「 きゃー!!それいい!!私も行きたい!このへん美味しい所いっぱいあるんですよー。ね、最上さん。いい? 」
「 別に私は…… 」
「 ……うーん、そうだなぁ。じゃ、それを英語で言って? 」
「「「「「「「 ……………え? 」」」」」」」
「 それを英語で言って俺を誘って?俺、こう見えても昨日9年ぶりにアメリカから帰国して来たばかりなんだ。だから。
君たちが英語を使って正しく俺を誘ってくれたら考えてみようかな 」
「 え?え?……ねぇ、お昼に行くって何て言うの? 」
「 それ、have a lunchで良くない? 」
「 そうそう。それで、~しませんかって、Would you likeじゃない?だから… 」
「 だね!よし。Would you like to have a lunch? 」
「 うーん、残念。それだと俺は行く気ないな 」
「 どうしてぇ?合ってるでしょ~? 」
「 全然合ってない。……どう?キョーコちゃん 」
「 本当にぃ?最上さん、どこがダメか判る? 」
「 lunchにaを付けたからだと思う 」
「 えー?でもhave a lunchってよく言うじゃない?コマーシャルとかでも良く聞くよ? 」
「 そうだけど、a lunchって言っちゃうと一人分のご飯って意味になっちゃうの。つまりいま、一人分のご飯を食べませんか?って聞いたことになってた。aを抜けば良かったの 」
「 そっか、分かった。じゃあ…… 」
「 だめだよ。答えを聞いたあとは無効に決まってるよ 」
「 あーん。もう一回!もう一回だけチャンスをちょうだい! 」
もう、面倒だな。
一回で諦めて欲しかったんだけど。
「 ……そう。じゃあね…… 」
「「「 簡単なのがいい~ 」」」
嘘だろ。いまのより簡単にしろって?
だったら思い切ってこれはペンです…とでも言わせてみるか。
いや、冗談だけど(笑)
「 じゃあ、この中でウィンドウショッピングとか、いわゆる街をぶらぶら歩くのが好きって人はどのぐらい居る? 」
「「「「 はい、はーい!!好き、すっごく好き!!! 」」」」
「 うん。じゃあそれを英語で言って?これが正しく言えたら……いいよ 」
「 やったー!これ、簡単!!
I like street walking!どうだぁ!!! 」
「 ぷっ。そうだったのか。そういう子は俺、やだなぁ……。それ、英語の先生の前で言ってみて?出来れば男の先生に 」
「 ちょっ…!!!ダメよ、何てこと言うの?!ダメよ、そんなこと言っちゃ!!間違えてもダメだからね?! 」
「 え?……なに、最上さん 」
「 もしかして今のも間違えているってことですか?部長 」
「 ……~~~~~~~っっっ……あのね…… 」
……とまぁ、こんな感じで。
俺の自信を回復してくれたことは有難かったけれど、いつまでも俺達を解放してくれない女子高生たちの群れが少々煩わしかった俺は、手っ取り早くキョーコちゃんと二人きりになれるようにしてみただけだったのだけど。
――――――― 蓮くん。あなたは知らないでしょうけど…
キョーコちゃんと二人、懐かしい感じがするのに所々違和感が漂うこの街を、俺の存在を無視しながら歩き続けるキョーコちゃんの後ろを追うように歩いていた俺の脳裏に今朝ほど聞いたセリフが甦る。
あの時、ひどく焦った様子で外に飛び出した俺を、キョーコちゃんのお母さんはどんな風に見たのだろう。
「 ……あ、おはようございます 」
「 おはよう、蓮くん。久しぶりの日本でよく眠れた? 」
あなたの娘のおかげでほぼ一睡も出来ず…とか冗談でも言えない。
「 はぁ、それなりに…… 」
「 あなたも、テストの時は睡眠時間を削ったりした? 」
「 え? 」
「 蓮くん。あなたは知らないでしょうけど、この先の大通り手前の小道を左に曲がってまっすぐ行った所に大きな空き地があったでしょう?覚えている? 」
「 ……ええ 」
「 そこにね、LME大付属高等学校が出来たの。あなたがアメリカに行って2~3年ほどしてからだったかしらね。キョーコはいまそこの学生でね、いくら言ってもやめないのよ。試験になると睡眠時間を削って勉強するの。効率悪いって、いつになったら理解できるのかしら 」
……LME大付属高等学校…
「 あの子、今日から期末テストだから学校はお昼までらしいんだけど。いいわよね、学生は。なんだかんだ言っても気楽で。
社会に出て働くとその頃が懐かしくなるわ。だからあなたも、今の内に学生時代を謳歌しておいた方がいいわよ。後々後悔しないように 」
俺がそれを聞く前に、キョーコちゃんのお母さんの方からキョーコちゃんの学校の話をさりげなく振ってくれた気がするのは気のせいだろうか。
いや、気のせいじゃない気がする……と思うのは気のせいだろうか。
ちなみに何故いま俺がこれを思い出したかというと、帰路から徐々に外れていくキョーコちゃんの歩みが気になったからだった。
「 キョーコちゃん 」
「 ………… 」
「 キョーコちゃん。一体どこに向かってる?俺達の家はあっちだろう 」
「 ………いいの。英語の先生の所に報告に行くんだから 」
「 英語の先生? 」
「 そう。ここにいるの 」
「 え? 」
立ち止まったキョーコちゃんにここだと言われて見上げた場所は、弁護士事務所が入ったビル。
俺の記憶が正しければこの弁護士事務所は彼女のお母さんの職場のはず。
だからてっきり俺は、キョーコちゃんのお母さんがキョーコちゃんの英語を見ていたのか…と自分の中でその答えを出してしまって、ゆえにキョーコちゃんがてらいのない笑顔で、ビルの階段を降りてきた中年男性に話しかけた時は予想外過ぎて面食らった。
「 藤道さん!ちょうど良かったです。いま伺おうとしていた所で… 」
「 やぁ、キョーコちゃん。試験どうだった? 」
「 もちろんバッチリでした。90点は固いはず! 」
「 そう。それは、それは。テスト返却が楽しみだね。……ところでそっちのイケメンの彼は? 」
「 昨日、隣に引っ越して来た敦賀蓮さん 」
「 ああ!!そうなんだ、君が!……ふぅん、なるほど? 」
「 そんな意味深に笑わないで下さい! 」
「 これが笑わずにいられるか 」
なぜ俺を知っている風?
それより、なるほどって言うのは何なんだ?
いぶかしんだ俺には気付かなかったのか、それともどうでもいいと思ったのか。
なにかを隠しているような
そんな含みのある笑顔を浮かべた藤道さんと呼ばれた男が、俺に向かって右手を差し出す。
一応礼儀だから俺も差し出しはしたけれど、握手を交わした瞬間、俺の右手に力がこもった。
「 どうも。初めましてだね、敦賀くん。僕は藤道奨 」
「 初めまして。敦賀蓮です 」
「 そう、敦賀くん。僕はね、この弁護士事務所で弁護士をしていて、ついでに言うともうすぐキョーコちゃんと家族になる者です 」
!?家族っっっ!?????!!!
突如突き付けられたその衝撃なセリフのせいで
俺の目と口がぱっかりと開いて、俺の思考がぶっ飛んだ。
⇒◇5 へ続く
藤道さんの登場はこのお話で一葉が一番楽しみにしていたところ(笑)
ついでに言うとこのお話で私が最高に萌えているのは、キョーコちゃんが蓮くんを「蓮くん」と呼ぶとこ♡(///∇//)蓮くんのキョーコちゃん呼び然り。
幼い頃からの付き合いならそれが何より自然かな、と考えた結果の設定に超絶萌え♡
ちなみに街をぶらぶら歩く…は『I like walking through the streets.』が正解。
※street walkingは売春という意味になりますのでくれぐれもご注意を★
⇒絵本の外の王子様◇4・拍手
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