いつも有難うございます。一葉です♡(*⌒∇⌒*)
2017年キョコ誕最終話お届けいたします。
いつものことですが鬼のように長いです。
原作沿い両片想い蓮キョ。
お楽しみいただけましたら幸いです♡
前のお話はこちらです↓
2017年キョコ誕おめでとう・最終話・後編
■ きずな結び ◇後編 ■
ほぼ予定通りの時間に駐車場に到着し、車を降りるより前に先ほど震えた携帯を手に取った。
画面に表示されたのは社長からのメッセージ。
内容はなんてことない、ささやかな最上さん情報のみが書き込まれていて、一読した俺の口元から笑いともため息ともつかない小さな空気が抜け落ちた。
「 どうした、蓮 」
「 いえ。社長からでした。最上さん、一階ロビーにいるみたいです 」
「 ああ… 」
「 社さん、ありがとうございました。スケジュール調整していただいて 」
「 なー!ホントだよなー。何も打ち明けられていないのに俺って本当に親切だよ 」
社さんは朗らかに笑いながら助手席のドアを開けた。続いて俺も車を降りる。
本当に社さんが言った通りだと思う。
緩く調整し直されたスケジュールを見て、さりげない気遣いが有難いと思った。
もっとも、もしかしたら…という微かな期待を抱いて社さんに情報漏洩したというのが俺の本音ではあるのだけど。
「 あと3時間でキョーコちゃんの誕生日が来るな。時間が過ぎるのなんかあっという間だ 」
「 そうですね。社さんも楽しんで下さい。せっかく社長が忘年会を兼ねて開催して下さったんですから 」
「 ああ、もちろんそうする。
けど俺はお前がキョーコちゃんに何をプレゼントするのか、そっちが気になってそれどころじゃないんだけどな 」
「 ダメですよ。今は教えられません 」
「 判ってる。お前の邪魔にならないよう早々に離れてやるから。…ま、頑張れよ 」
「 ありがとうございます 」
一階ロビーの半分はすごい賑わいを見せていた。
社長が周辺の商店主に声を掛け、臨時で作られたアメ横もどき買い物横丁が出来ていたのだ。
その売り場の隅っこで最上さんはいつもと変わらぬ姿勢で立ち尽くしていて、けれどいつもより少し雰囲気の違うワンピースを着ていた。
「 最上さん 」
「 敦賀さん!!お疲れ様です。社さんも!お疲れ様です!! 」
「 お疲れ様 」
「 お疲れ様、キョーコちゃん。なに?いつもと少し雰囲気違う感じ 」
「 えへへ。そうですよね。実はこれ、社長が用意して下さったんです。メイクもミューズがして下さって… 」
「 へー…社長が。これ、ドッキングワンピースってやつだよね。リボンで結んだ袖のデザインが女の子らしくていいよ。キョーコちゃんに似合ってる! 」
「 うん、可愛いね。背伸びしていないデザインだから余計に可愛く見える。社さんが言う通り、本当に君に良く似合っているよ 」
「 ふえっ……えっへへへ…… 」
褒められて恥ずかしくなったのだろうか。少々挙動不審な笑いを浮かべた彼女はやっぱりいつも通りの最上さんで。
どんな姿をしていても、愛しいことに変わりない…と改めて感じた。
「 ところで、キョーコちゃんはなんでこんな所に? 」
「 あ!実は私、社長さんから指令を頂いて敦賀さんをお待ちしていたんです 」
「「 指令?なんの? 」」
「 えっと…あの……。私が敦賀さんをエスコートする様に…と仰せつかりまして… 」
「 君が、俺を? 」
「 はい、そうなんです!判ってますよ、敦賀さん。そりゃちょっとは不安かも知れません。でも大丈夫ですので!この最上キョーコ、必ずや敦賀さんをお守りします!! 」
「「 守るって何から… 」」
「 そりゃ……敦賀さんはトップ俳優でいらっしゃるから、あちこちからお声がかかってお疲れになるかもしれないじゃないですか!そういうのをですね…わたくしめが、さりげなくガードする…というのが本日の私の仕事だと言い渡されまして…… 」
「 …………。 」
――――――― つまり、最上さんが俺から離れないよう、社長が配慮してくれたってことだろうか。
「 なるほど。じゃ、君のエスコートを受けようかな 」
「 はい、お任せください!!ステージがあるお部屋にお食事と飲みものがありますからそちらに移られますか? 」
「 そうだね。君にお任せするよ 」
「 はい!こちらへどうぞ!! 」
社長の指令を受けていたせいもあって、それから最上さんはほぼ俺から片時も離れず、おかげで俺はいたく楽しい時間を堪能できた。
絶えず笑いを浮かべる最上さんを見つめながら、君の笑顔がそのまま咲き誇ってくれることを俺は祈る。
……夢を見たんだ。
ほら、あの時の夢だよ。君も覚えているだろう?
夜中の公園。
寒々しいベンチに一人、腰を下ろしていた君。
俺をコーンと間違え、俺に縋り付いて泣き叫んだ君の姿を俺は再び夢で見たんだ。
――――――― ああ、この子の涙には敵わない…
夢だと判っているのに俺の胸が引き裂かれそうに軋んだ。
君の泣き顔は確かに可愛いけれど
そんな風に涙を流す君は可哀想で見ていられないと思った。
そして決めた君へのプレゼント。
その原因を払拭できればいいと俺は考えた。
25日0時が来る少し前。
俺の胸ポケットで小さな振動を感知した。
それは合図。
君への贈り物が無事に届いたという社長からの合図だった。
健気なまでに俺のそばを離れない、彼女の耳元にそっと唇を近づけた。
「 最上さん。お願いがあるんだけど… 」
「 え? 」
「 俺と一緒に一つ上のフロアに移動してもらいたいんだ 」
「 …? ……はい 」
二人でパーティ会場の喧騒から離れ、少々寒々しい廊下で肩を並べた。
目的地は階段を昇ってすぐの部屋。
少しでもドキドキ感を演出したくて俺はわざと最上さんの顔を覗き込んだ。
「 最上さん 」
「 はい 」
「 ごめんね。俺が連れて行ってあげるから俺の手を取って目を閉じてもらえる? 」
「 え?どうして… 」
「 実はね、君にプレゼントがあるんだ。それ、直前まで見られたくないから 」
「 ええっ!?プレゼント?!ですか?? 」
「 そう。言っとくけど受け取れないは無し。はい、目を閉じて?それで俺のエスコートを信じてもらえる? 」
「 ……はい 」
「 ありがとう 」
最上さんの手を取り
一歩、一歩と丁寧に階段を昇った。
俺に導かれるまま段を踏みしめている最上さんが何を考えているのかなど俺には全く分からない。
ただ、笑ってくれたらいいと思う。
今もまだ迷ってはいるけれど。
このプレゼントにしようかと悩んでいた夜、今度は別の夢を見た。
夢の中で君は、それはキレイな笑顔を俺に見せてくれたんだ。
ドアを開けて、変わらず最上さんを導きながら二歩進んだところで扉を閉じる。
プレゼント側の条件は、誰にも見られないこと…だった。
「 最上さん、いいよ 」
静かに開かれた彼女の視界に映ったその人の姿はよほど君を驚かせたのだろうと思う。
最上さんが大きく唾を飲み込む音が俺にも聞こえたから。
25日午前0時。
今日は君の誕生日。
プレゼントを見ても口を開こうとしない最上さんの背中に俺は自分の右手を添え、数歩彼女を歩かせた。
「 ……どうやら頑張っている様ね 」
知っている。
娘を産みはしたけれど、この人は決して聖母ではないことを。
それでも最上さんにとって大切な肉親であることに変わりない。
この子はいまも、あの頃と変わらず母親を慕っていることを俺は知っているのだ。
「 この前、あなたが映画に出演したって話を藤道さんから聞いたわ。藤道さん、観に行ったんですって 」
そのことを母親も察しているはず。
なのに最上さんの母親は、誕生日を迎えた娘に向かっておめでとうの言葉も無く、顔色すら変えずに最上さんに話しかけていた。
――――――― せめて、抱きしめることは出来なくてもせめて頭を撫でるぐらいのこと、してあげられませんか?
俺がそうお願いすると
最上さんの母親はそれは出来ないと断った。
そのご褒美の約束は少し前にあの子としてしまっているから…と。
「 でもまだまだよ。分かっているわね? 」
そして俺の予想に反し、最上さんは母親に対して一言も発しなかった。
ただコクン…と小さく頷いただけ。
だったらいいわ、と溜息を吐いた母親は、そのまま部屋から出て行ってしまった。
たった一分間の母子の会見。
静まり返った空気が重い。
黙ったまま佇んでいる小さな背中がさらに小さく見えて、失敗してしまっただろうかと思った。
正直に言えば、さんざん悩んだんだ、俺は。
そして何度も考えた。
ただの事務所の先輩が、後輩のプライベートな問題に踏み込むのは如何なものかと。
だけど俺は、母親のことで泣き叫んだあの子の姿を夢で見たときこう思った。
君にとってコーンが君の哀しみを受け止める妖精であるなら
いま君の前で蓮の姿しか取れない俺は
せめて君に喜びを届ける男でありたいと。
恐る恐る最上さんに近づいた。
こんな場を用意した俺を彼女はいまどう思っているのだろう。
「 ……最上さん? 」
怒っているのかも知れない。
何でこんなことをと理不尽に思っているのかも知れない。
俯いた顔を覗き込むと、最上さんはいつの間にそうなっていたのか目にいっぱいの涙をためていた。
必死に泣くのをこらえていたのかも知れない。たまらず最上さんを抱き寄せると彼女はすんなり俺に身体を預けた。
―――――― ごめん。やっぱり失敗だったんだろうか。
君に辛い思いをさせただけかも。
細い身体が震え出し、最上さんに声を掛けようとしたとき、くぐもった最上さんの声が聞こえた。
「 ……ありがと…ました 」
「 ……え? 」
「 敦賀さん……ありがとうございました…… 」
「 え? 最上さん? 」
明らかな泣き声だった。
その顔を見られたくないから、だから俯いているのだろうと思ったけど、最上さんは涙をこぼしながら静かに顔を上げるともう一度お礼の言葉を口にした。
「 敦賀さん、ありがとうございました……っ… 」
「 ……最上さん… 」
「 …っ…めて、なんです……っ… 」
「 え? 」
「 初めてなんです!あの人が、来てくれたの…。
私の誕生日にあの人と会うの……私、生まれて初めて…… 」
「 ……は、じめて? 」
「 初めてです。…っ…初めて…初めて来てくれた。私を産んだ日に…あの人が……はじめて……っ… 」
その告白は別の意味で俺を驚かせた。
同時に泣きながら繰り返し嬉しいと涙を流す最上さんが、かわいそうなぐらい愛しくて……
愛しすぎて仕方がなくて、抱きしめる手に力が入った。
「 敦賀さん……嬉しい。うれしい、敦賀さん……っ… 」
「 うん、ごめん 」
初めてがこんな場所で……。
「 違う…謝らないで下さい。…ありがとうございました。本当に、ありがとうございました…… 」
「 ……っ… 」
守ってやりたいと思った。
そして今度こそ笑顔にしてみせたいと。
だけど俺も嬉しかった。
いま素直な感情のままに俺に涙を見せてくれるこの子のそれが。
細く扉が開き、隙間から社さんの顔が見えた。
俺に縋り付いて泣いている最上さんの姿が見えるのだろう。
社さんは俺の顔から視線を落とし、最上さんを見て微笑ましそうに目を細めるともう一度俺に視線を投げた。
軽く右手を上げた社さんの姿が映り、先に帰るぞ…の意味だと悟る。
「 ……最上さん 」
「 ……っ… 」
変わらず俺の腕の中には涙を流す最上さんの温もりが揺れていて、俺の頭の中に、自宅の冷蔵庫で火が灯されるのを今か、今かと待っているバースディ・ケーキの姿がほわんと浮かんだ。
さて、この後どう言ってこの子を自宅に連れ帰ろうか。
それを考えてみたけれど
俺に甘えるように縋り付く細い身体を今すぐ離したくはなくて
最上さんを抱きしめる両手に更なる力を込めた俺は
愛しさのまま彼女をギュッと抱きしめた。
E N D
頂きましたリクエストについてですが…。
元々は、蓮とキョーコが出演する映画orドラマでキョーコの誕生日パーティが秘密裏に計画され、監修を務める冴菜がキョーコの女優姿を目の当たりにして驚く…というようなものだったのですが、冴菜さんがキョーコの誕生日を祝うために来る…という、いたって単純な内容に変更させていだきました。
原作沿いで考えますとどうしても冴菜さんが人様の前でキョーコの誕生日を祝いそうにない…と想像できることと、それでもどうしても無理のない範囲で冴菜さんに来てもらいたいと考えこの様な内容に…。
一応、登場人物リクエストさえ叶っていれば内容は一葉オリジナルに委ねますとありましたので真っ向からお言葉に甘えました♡
そして、特にキョコ誕や蓮誕は二人がイチャイチャする話が横行する時期ですので、それがメインでないお話というのが素敵だな、と思って選ばせて頂きました。
リクエスト本当にありがとうございました。
あんな邂逅でも泣きながら喜ぶキョーコちゃんがもう、とんでもなく愛しくて可愛くて仕方ないなと思いました!!
キョコ誕なのにキョコsideがひとつも無いという2017年、お付き合い頂きましてありがとうございました。
⇒2017年キョコ誕③・きずな結び◇後編・拍手
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