SS その男、策士につき ◇4 | 有限実践組-skipbeat-

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 一葉です!!о(ж>▽<)y ☆

 現代パラレル蓮キョの最終話、お届けいたします。


 これもやっぱり長いですよ。ご了承下さいね。

 お楽しみ頂けたら幸いです♡


 前話こちら⇒その男、策士につき【1


■ その男、策士につき ◇4 ■





「 ……ありがとう。嬉しい。おいで? 」



 おいで…って、愛犬相手に言うセリフでしょって思ったけどさすがにツッコむことは出来なくて、拡げられた腕の中に自分から入り込み、頭をナデナデされて照れてしまった。



「 ああ、やっぱりかわいいな、君は…。もう頭は痛くない? 」


「 ちょっとまだ響きますけど 」


「 そうか。早く治るといいね。でも明日になっても治らなかったらそのままここで寝ていてもいいよ?土曜で休みだしね 」


「 いえ…それはさすがに… 」



 キュッと抱きしめられて敦賀さんの胸に寄りかかった姿勢になったとき、自分の頭部にチュ…と音が触れて私は何事かと目を見開いた。


 顔を上げようとしたけど私の頭を敦賀さんの片手が固定していたので目的の動作は出来なくて、頭のあちこちにキスが落ちて、たまらず声を漏らした。



「 あのっ…敦賀さん!! 」


「 あ、ごめん。リックのつもりでつい調子に乗っちゃった…。寝ようか 」


「 ……はい



 腕の力が弛んだので顔を上げると敦賀さんは私を見てもう一度ごめんね、と軽く頭を下げたけれど、特に悪びれた様子も動揺も見せずに敦賀さんは掛け布団を引き上げた。

 彼の動きに合わせて互いにゆっくりと横になる。


 ひとつの枕に二人で頭を預けたとき、敦賀さんは懐かしそうに目を細め、もう一度私の頭を撫でてから半ば強引に私をそばに引き寄せた。



「 嬉しい。リックとはね、一緒のベッドでよく眠ったんだ 」


「 ……そうなんですか 」


「 起きた時は毛だらけで大変なんだけどね。やめられなくて 」


「 ぷっ 」



 こんな大きな人なのに

 毎晩、愛犬を抱きしめて寝ていたのかなって想像したら微笑ましくて


 だけど先ほど連打になった不意打ちキスはあまりにも罪深すぎる…と少しの不満を滲ませながらも私はなんて幸福な時間だろうかと敦賀さんの腕の中で複雑な笑みを浮かべた。



「 最上さん 」


「 はい? 」


「 リックのことは誰にも話したことが無いんだけど、リックの写真、見たい?…なんて、興味ないか 」


「 え?そんなことないですよ。見たいです! 」


「 本当に?…うん、じゃあ明日の朝ね。起きたとき 」


「 はい 」


「 あったかいね。本当に嬉しい。ずっとこうしていたいよ… 」



 心が弱いときって、たぶん誰にでもあるものだ。


 可愛がっていたのならなおさら。


 そばに居て欲しいって願う気持ちは当たり前で、私の頭を撫でながら恋しそうに呟いた敦賀さんだって、これがひと時の夢だと判っているはず。

 それでも口にせずにはいられなかったのだろうと思った。



 敦賀さんの寂しさを少しでも癒してあげたい。

 哀しみを抱いているだろうこの人の心を優しく慈しんであげたい。



 誰にも話したことがないという愛犬の写真を私にだけ見せてくれると言った彼のそれは、自分だけが敦賀さんの特別になれた気がして嬉しかった。


 でも本当は判っているの。

 こんな幸せなことは今夜限り。


 だからつい、本音が溢れてしまったのだと思う。



「 ……本当ですね。ずっとこうしていたくなります 」



 このつぶやきが敦賀さんに聞こえたかどうかは分からないけど

 私たちは互いの体温を感じながら二人で深い眠りに落ちていった。







 翌朝、敦賀さんは私より早く目覚めていた。

 いつ起きていたのかも分からないけれど、少なくとも敦賀さんは隣で寝ていた私をずっと見つめていたらしい。


 寝入った時と同じ、彼の腕の中で目覚めた私と目が合った途端に敦賀さんは満面に笑みを浮かべた。



「 最上さん、おはよう。君が起きるのを待ってた 」


「 ……え 」


「 写真!!ね? 」


「 え……あ、はい… 」



 そんなに待ち遠しかったのだろうか。…と思うほど敦賀さんの顔からは笑みが溢れていて、起きぬけにその笑顔は眩しすぎる…と思いながら寝ぼけ眼をこすった私に、敦賀さんは上を見て…と指示を送った。その言葉に従う。



 いつの間に腕枕になっていたのか。私の頭の下を通っている敦賀さんの右手が私の肩を抱き寄せると二人の顔が自然と近づく。

 敦賀さんがもう片方の手で持ち上げていたスマホ画面を見つめると、そこにはベッドで寄り添う私たちの姿が映っていた。



 次の瞬間、私の意識は強制覚醒させられた。



「 …っ!???? え?? 敦賀さん、ちょっ…。

 なに、いま……え? …っ?? 」



 確かにシャッター音がしたのだ。

 私はスマホと敦賀さんを見比べる様に何度も顔を振ったけど、敦賀さんは何食わぬ顔でスマホ画面をツイツイ操作していて、それが終わってから私を見てにーっこりと微笑んだ。



「 よし。君の初お泊り記念写真。欲しいと思っていたんだ♡ 」


「 な……え?…え? 」


「 あ、最上さんも欲しい?この画像、送ってあげようか? 」



 それ!!

 欲しいか欲しくないかで問われればもちろん欲しいような気がしますけれども。


 でも何もそんな寝ぼけ眼の私を撮らなくてもいいと思う…って!!

 いえ、問題はそこじゃなくてっ!!



「 敦賀さん、どうしていま写真を… 」


「 だって、音声があるから。証拠画像も欲しいな、と思って 」


「 音声? 」


「 そう 」



 そう言って敦賀さんは再びスマホの画面を操った。

 何のアプリかは知らないけど、再生されたのは昨夜寝入りばなに私が呟いたセリフ。




 ――――――― 本当ですね。ずっとこうしていたくなります…




「 これね、自慢しようと思うんだけど、してもいい? 」


「 は??…え???? 」



 何の言葉も浮かばない。

 ナニソレ、一体どういうこと?


 私が呟いたそれが、敦賀さんにとって一体どんな自慢になると…?



「 え…と、あの???敦賀さん、それナニ自慢になるんですか?しかも私なんかとの寝起きの写真は一体なんのために? 」


「 ……なんか…なんて言って欲しくない。俺はね、これでも苦労して来たんだ。どうしたら君に近づくことが出来るかってそればっかり考えて… 」


「 はい? 」


「 今年の春。LMEに受付が出来ただろう。あれが社長の発案だってことは君も知っているだろ? 」


「 そりゃもちろん、知ってますけど 」



 そう。私が入社した年にはまだLMEに受付は無くて、出来たのは今年に入ってのことなのだ。

 最初は派遣を雇うつもりだと聞いていたのに、社長は突然方向を変え、それを総務に一任すると言って来た。



 みんなは面倒がっていたけど私は嫌だと思わなかった。

 だって、受付に出ることで少しでも敦賀さんの姿を見られるチャンスができると思ったから。



 でも、それが…?



「 俺が社長に進言したんだ。会社のことを何も知らない外部の人間を受付に据え置くのはおかしいって。

 それなら組織全体に関する事務を扱っている総務にして欲しいって、俺が言ったんだ 」


「 はいぃぃぃっっ?? え?敦賀さんが? 」


「 営業部と総務部にはほとんど接点が無いから。もしそうなったら君に近づけると思ったんだ。なのに迂闊だった。よく考えればそうだ。接点が増えるのは俺だけじゃなかった 」


「 へ? 」


「 春過ぎ、君の姿を受付で見つけるようになって、これでようやく道が開けたと思った。俺の当初の予定では夏頃には普通に挨拶を交わせるぐらいになって、秋ぐらいには立ち話とか出来る仲になっているつもりでいたのに、君とは挨拶だってろくに出来なくて… 」


「 だって敦賀さん……受付を通られるときはいつも人だかりの中心でしたから 」


「 だよ!!!ただでさえ仕事が忙しくて思う様に時間が取れないっていうのに会社に着いた途端いつも誰かが周りに寄って来て思う様にならなくて…。一体、俺にどんな恨みがあるって言うんだ 」


「 いえ、どなたもお持ちでは無いと思いますけど。敦賀さんに恨みなんて… 」



 そこで一呼吸置いた敦賀さんは身を起こし、ベッドに座って寄りかかった。

 寝転がっている訳にもいかず私も中途半端にお布団から起き上がると、敦賀さんは近くにあった自分のガーディガンを私に羽織らせ私の両腕を両手で掴んだ。



「 俺、知っているんだ。受付に立つようになってから、君、何人もの男に告白されているだろう 」


「 は?……いえ、何人もだなんて… 」


「 されているだろ?それを知って俺がどんなに焦ったかなんて君、知らないだろう。

 互いの部の忘年会をぶつけてそこから君と仲良くなるつもりでいたけど、既に俺より先に君と親しくなった男は大勢いる。そう思ったらもう我慢も限界で…。

 だからこの前、屋上に行ったんだ。君に話しかけるつもりで… 」


「 は??? 」


「 君が昼休みにいつも屋上に行くのを知っていたから。けれどいざ足を運んだら悩んだ。

 声をかけるだけにしようか、いっそ告白をしてしまおうかって。考えているうちに緊張感が高まって、君が来たのにも気付けなかったんだ 」


「 ……っ… 」



 それ、まさか嘘でしょう?

 確かに敦賀さん、どこか緊張している風だったけれど。



「 君は俺の姿を見つけてすぐ踵を返しちゃったんだろう?気配を感じて顔を上げたとき、最上さんはもう後姿だった。ものすごく後悔した。だからその時決めたんだ。

 合同忘年会では手を緩めないって 」


「 で…でも敦賀さん。忘年会はその前から決まっていて合同になるかどうかなんて… 」


「 なるように策を講じていたんだよ。なのにさらに追い打ち。昨日、君が忘年会に遅れたのは別の課の男に告白されていたからだ。

 君がOKしたらどうしようって気が気じゃなかった。断っているのを見て俺がどれだけ安堵したか判る? 」


「 え? 見ていたんですか? 」


「 忘年会ではもう絶対失敗したくなかった。確実に君の隣に座りたくて、俺は君のあとを付けていたんだ。告白現場を目撃したのはそれで…だった 」


「 …じゃ、敦賀さんが私とほぼ同じタイミングで忘年会に来たのは… 」


「 必然ってことになる 」


「 じゃあ、美味しいよって言いながらたくさんのお酒を私に勧めたのは… 」


「 もちろん君に近づくため。もし君が酔わなかったら、俺達気が合うねって言って、時間を気にせず飲まないかって俺の家に誘うつもりでいた。でも本音を言えばツブれて欲しかった

 だから、君が俺に抱きつきながら寝ちゃった時は本当に嬉しかったんだ。俺、君を送る気なんかなかったから。初めから君が俺の家に来てくれるのが理想だった 」


「 …ど、して? 」


「 仲良くなるだけなんてぬるい。でも酔った勢いだって思われるのも嫌だ。

 誰にも邪魔をされずに君を口説き落とすには一晩越える必要があったから 」


「 ……あの、敦賀さん。

 昨日、肩を震わせながら私にしてくれた愛犬の話って… 」


「 肩を震わせていたのは窓から伝わる冷気で寒かったからだけど… 」


「 は… 」



 そうだ。敦賀さんがベッドに入ってこようとしたとき、冷気を感じて目覚めたのは自分だった。



「 でもリックの話はもちろん嘘じゃないよ。そう、約束だったね。写真、見せてあげる。はい、どうぞ 」


「 ありがとうご…… 」



 画像はスマホの中にあるのだろうと思っていたのに敦賀さんはプリントアウトされた写真を一枚私に差し出した。

 受け取ったそれには大型犬が一匹と……。



「 面影ありますけど、これ敦賀さん? 」


「 そ。その写真は俺が高校生になったとき。そのあとすぐリックは旅立ったんだ。

 この時期になると不意に思い出して時々ナーバスになったりするけど、でも昨日はただ君を抱きしめて寝たかっただけ。ああ言えば君は首を縦に振ってくれると思って… 」


「 ……っ… 」



 もう私、一体なにに驚けばいいのだろうと思ったけれど、次の瞬間、私は心臓が飛び出すかと思うほど驚いた。



「 ……最上さん 」


「 はい 」


「 君はフリーだって聞いている。…のに、今まで告白されたそれを全部断っているだろう。それってもしかしたら誰か好きな奴がいる? 」


「 ……っ!! 」



 小首を傾げて問いかけて来た敦賀さんの顔は真剣そのもので、それはあの日、昼休みの屋上で見かけた敦賀さんを彷彿とさせた。



 私の心音が高まったのはこの時。

 ようやく自分の理解が及んだからだった。


 さっきからずっと、この人は私を好きだと言っているのだ。

 そんな夢みたいなことを…。



「 好…きな…… 」


「 いや、答えなくてもいいよ。君の心に誰かが居るなら追い出すまで。誰もいないなら棲み付くまで。俺はね、絶対に諦める気はないんだ 」




 まるで狩人を連想させるような強い光を放った瞳を見て

 私はこの人にまつわる噂を思い出していた。



 営業部のエースである敦賀さんはかなり遣り手の営業さんで、彼が獲ると言った契約が他社に渡ったことは過去に一度も無いらしい。




 ――――――― 私の口元に笑みが浮かんだ。




「 敦賀さん 」


「 うん 」


「 私、敦賀さんを知っていましたよ。部署配属された初日、混み合ったエレベーターであなたと一緒になったんです 」


「 ……え 」



 それはたったの一度きり。

 エレベーターでのニアミスが私の心に生んだ恋。



「 すごくいい香りがして、この人かも知れないって顔を上げてあなたのことを知ったんです。

 昨日あなたに抱きついたとき、やっぱり敦賀さんだったって知りました 」



 なのに、ねぇ、信じられる?

 自分が秘かに恋心を抱いていた相手から、まさか狙われていたなんて。



 自分が受付に立った頃にはもうこの人の策がスタートしていたなんて、一体だれが気付くだろう。



「 そうですよ。私が告白を全て断って来たのは好きな人がいるからです 」


「 …っ…最上さん。俺は君が何を言っても諦める気はないよ! 」



 そう言ってくれた敦賀さんの顔はやっぱりすごく真剣だったから


 堪らないほど嬉しくて、同時にひどく愛しくなって



 私は敦賀さんの肩にコツン…と自分の額を預けた。



「 昨日のお酒、美味しかったですね。いつもはあんなに飲まないのに、好きな人に少しでも良く思われたくて勧められるままにガンガン飲んじゃったせいでまだ少し頭が痛いです 」


「 ………もが… 」


「 敦賀さん、どうしてくれるんですか? 」



 もちろん意味は伝わったのだろう。


 上目づかいで見上げた敦賀さんは真剣だった眼差しをふにゃりと緩め、とても神々しい笑みを浮かべた。



「 じゃ、今日はここで休んでいけばいいよ。でね、今度は軽めに飲みに行こう?まだ俺が知っている美味しいお店、いっぱいあるから。今度は始めから二人きりで 」


「 はい。行きます 」


「 俺、月曜に自慢しまくろう。可愛い彼女が出来たって… 」


「 それ、私も自慢していいですか?素敵な彼氏ができたって 」


「 して!!しよう。幾らでも 」



 敦賀さんはそう言うと優しく私の頭を撫でて嬉しそうに目を細め

 私の頬を両手で抱いてソフトな仕草で私の口に噛みついた。






     E N D


一葉脳内策士率78%蓮君♡(〃∇〃)大満腹


↓おまけ

■ その男、ベタ惚れにつき ■



 彼女と両片想いだったことを知って、天にも昇る心地だった。

 そして俺はあれこれ考えていたすべてのことを実行したい気分になった。


「 最上さん。朝食、用意してあげる!実は一週間、毎日練習したんだ! 」


「 は… 」


「 もちろん、君の胃袋を掴みたくてね 」


「 それ、逆じゃ… 」


「 ちょっと待ってて 」



 毎日繰り返し練習したのはフレンチトーストだった。

 フライパン一つで作れて、手が込んでいるように見える。


 それに、甘くてソフトなこれが彼女に似ていると思った。


「 お待たせ 」


「 いただきます……あ、美味しいです 」


「 ふ…。嬉しいな。それと、食べ終わったら一緒にシャワーを浴びよう? 」


「 シャワー? 」


「 浴びたいだろ?だから一緒に… 」


「 浴びたいですけど、でも一緒に??? 」


「 うん、一緒に 」


「 だっ…ダメです、そんなの!! 」


「 ……なんで?俺、入りたい。本当にダメ?リックを洗ってあげたときみたいに君を洗ってあげたいのに 」


「 もうその手には乗りません!! 」


 真っ赤な顔でそう言った彼女の必死な顔を眺めて、まあいいか、と思った。


 まあ、いいよ。

 これからいっぱい、君とラブラブするつもりでいるから。


 END



⇒その男、策士につき◇4・拍手

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※こちら、本編は4話で終わりなのですが、2話を書いた時に思いついたおまけをお届け致します。お付き合い頂けたら嬉しいです。

ヤッシーside⇒「その男、相棒につき」




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