いつもありがとう、一葉です。(。-人-。)
12月に入って色々な兼ね合いから連載が進みません…。ので、気分を変えてお仕事中にふと閃いた(←こら)現代パラレルをお届け致します。
思いついた時は前後編ぐらいだろうかと予想したのですが、書き出したら案外長かったことにびっくり。
こちらは全4話で完結します。少しでもお楽しみいただけたら幸いです。
■ その男、策士につき ◇1 ■
これがスタートだったなんて、一体だれが気付くだろう。
「 敦賀君、また契約取って来たんだって?一体どんな秘策を使っているのか一度ご教授願いたいね 」
「 そんなの持っている訳ないだろ。偶然、運が良かっただけだよ 」
「 偶然や運の良さだけで毎月トップになれるほど営業の仕事は甘くないだろ。もっと自慢して秘策を喋れよ 」
LME営業部に所属し入社以来トップの営業成績を驀進中という敦賀蓮さんは、男女問わずどの社員さんにも、他社企業さんにも人気のある、かなりの実力を有した男性であるともっぱらの噂で、総務を兼ねて受付業務をしている私、最上キョーコからしてみたら話しかける勇気を奮い立たせるのもおこがましいほど遙か雲の上の人。
容姿端麗、眉目秀麗とはあの人の為にある言葉なのだろうと思うほど整った外見もさることながら、腰砕けにさせるほどのフェミニストぶりを発揮する彼の態度に、彼の仕草に、彼の笑顔に社内女子の誰もが黄色い声を上げる。
もちろん私もその一人ではあったけれど、幸いなことに私は自分を知っていたから、分不相応な片想いは心の奥に閉じ込めていた。
1Fロビーの壁沿いにひっそりと設置されている受付エリアから、敦賀さんを中心とした人だかりを眺める。次の瞬間、彼と目が合った気がして私は急いで顔を逸らした。
ああ、ビックリした。さすがにこれは心臓に悪い。
チラリと視線を戻せばもうそこには誰もおらず、先ほど見たばかりの敦賀さんの笑顔が簡単に思い浮かぶ。
そっと瞼を伏せた私は、もう大丈夫なのだろうか…とひっそりと彼を案じた。
一昨日の昼、私は偶然目撃してしまったのだ。
肩を落としていた敦賀さんの姿が蘇る。
株式会社LMEビルの屋上には、緑化活動の一環として屋上庭園が存在している。
春から初秋にかけては訪れる人も割と居て、特に夏は木陰の涼しさを求めて多くの社員が足を運ぶ。
けれど12月ともなれば寒風も厳しく、また紅葉植物などは一本も無いため屋上の景色は殺伐としていて誰もが見向きをしなくなる。
けれど私は木々の葉擦れが好きだった。
北風の厳しさにも負けずに身を任せながらさざめく音が好きなのだ。
昼食後のいつもの時間。
いつもと同じように私は屋上庭園に足を運んだ。
誰も居ないと思っていたのに人の気配を感じて思わず足音をひそめた。
寒々しいベンチに腰を下ろしていたのは敦賀さんで、いつも華やかな人なのにその時はなぜか一人で、見えた横顔は真剣そのもの。それはどこか緊張している風でもあり、意気消沈している風でもあり。
……どうしたんだろう。何かあったのかな。
気にはなったけれど、営業部と総務部にはほとんど接点が無かった。
自社ビルの屋上だし、そもそも制服を着ているのだから同じ会社の社員だと判ってもらえるはずだけど、敦賀さんとは入社期も4年離れているし、受付業務をしている間にお決まりの挨拶を交わすことがある程度で自分の顔を覚えてもらえるほど言葉を交わしたことも無かった。
きっと向こうは私を知らないに違いない。
そんな確信が持てる以上、どうかしたんですか…なんて、気軽に自分から話しかける勇気は持てなかった。
そんな私が敦賀さんと言葉を交わす出来事が起こる。
奇しくもそれは本日夜。
総務部の忘年会に遅れて顔を出した私は、通された個室の大きさと聞いていた人数を遙かに超えた頭数に驚いて目を見開いた。
個室の上座に居た総務部の責任者である椹主任の隣には、椹さんと同期だという営業部の松島主任の姿がある。
まさか…と私が思ったとき、私に気付いてくれた石橋光先輩がことの経緯を教えてくれた。
「 こぉらぁぁ~、おっそーいぞぉ 」
「 すみません。ちょっと所用で遅れてしまって…。あの、これはどうしたんですか? 」
「 うん~?なんか、偶然、同じ時間の同じ店で営業部も忘年会だったみたいで、しかも隣りあわせだったんだ。…で、椹さんと松島さんが合同にしちゃおうって言って、仕切りを取り払ってこうなっちゃったんだぁぁ~ 」
「 …って、光先輩、飲み過ぎじゃないですか?大丈夫ですか?! 」
「 だいじょーぶ、だいじょーぶ。ま、キョーコちゃんは俺の隣に座りなさい、ほら 」
「 え?ちょっ…… 」
「 すみません、敦賀、遅れました!! 」
入り口のふすまを塞ぐ形で中を覗き込んでいた私の腕を光先輩が強引に引っ張ったとき、遅れて顔を出した私よりさらに遅れたと言って入って来たのは敦賀さんで、私の背中に大きな彼の身体が迫った。
「 あ…… 」
振り向きざまに彼を見上げ、思わず胸が高鳴った。
シャープな顎の下に見える男性特有の喉仏。
壁に寄り添う大きな手。
敦賀さんは男の人なのだ…となぜか強く思った。
「 …っと、ごめん 」
「 いえ、私こそ入り口でもたもたしていてすみません 」
「 こら、敦賀ぁ!何をしていたんだ 」
「 色々とあるんですよ。来たんだから文句言わないで下さいよ 」
「 遅れた奴はあっちの空いている席!そっちならまだ食べる物残ってるだろ。そこの総務部の彼女も 」
「 あ、はい、判りました。すみません 」
「 はいはい、了解しました。君も遅れたんだね。じゃ、俺は君の隣にいいかな? 」
「 はい、もちろん、どうぞ! 」
思わず笑顔がこぼれた。
だってこんなラッキーなことなんて滅多にないもの。
「 忘年会、総務と一緒になったんだね。君、ビールと日本酒どっちにいく? 」
「 私、どっちでも平気なんです 」
「 え?それは珍しい。イケる口?じゃあ、俺と一緒に日本酒いかない?ここの地酒、美味いよ 」
「 そうなんですか?じゃあそれ、頂こうと思います 」
「 俺、営業部の敦賀蓮。君は総務部の… 」
「 最上キョーコです! 」
「 じゃ、最上さん、どうぞ 」
「 はい、いただきます。あ、敦賀さんもどうぞ 」
「 ありがとう。いただきます 」
初めての自己紹介に、初めて交わす挨拶以外の会話。
秘かに思いを寄せていた敦賀さんとの隣りあわせに私は完全に舞い上がっていたと思う。
トップ営業というだけあって敦賀さんの話題はとても豊富で、何より厭味の無い彼の笑顔に勧められるまま、コップを空けては何種類もの日本酒を飲んでしまっていた私は忘年会終了時には遅れて参加したとは思えないほど出来上がった状態になっていた。
⇒◇2へ続く
一葉、実は現代パラレルに限り、一度使った職業は使い回さないことを信条にしているのですが(特に蓮くんのを)、何の会社か知らんけど同じ会社に勤める二人…というシチュエーションは一番スタンダードな設定なので色々なパターンでお話が生まれそうでちょっとイイよねと思っています♡(〃∇〃)
12月と言えば忘年会。久しくしていないから懐かしいです。飲めないのですけどね(笑)
Please do not redistribute without my permission.無断転載禁止
◇有限実践組・主要リンク◇