いつもお世話様です、一葉ですヾ(@^▽^@)ノ
弊宅500記事を記念して、ちびぞう様からお与かり致しました記念リクをお届けいたします。
大変お待たせいたしました。
前話からだいぶ間が開いてしまいました。…ので是非とも最初から…。いえ、せめて4話から読み返して下さい。恐らく出だしから「?」だと思いますので。
こちらは現代パラレル蓮キョです。
お楽しみいただけたら幸いです![]()
前話はこちら⇒それが世界の終わりでも【1 ・2 ・3・4 】
■ それが世界の終わりでも ◇5 ■
それだけに、撮影時に現れる衝動はとてつもなく俺のことを困惑させた。
「 れーんくん♡ 調子はどうかな~? 」
「 社さん。今日はまた一段と嬉しそうですね…… 」
「 そりゃあ、もう!!!京子を見つめながら抱きしめたい衝動に駆られているのにそれを必っっっ死に押し殺すお前を見るだけで愉快でしかたなくてぇぇぇ。
いや、いいね!!いっそ抱き締めちゃえばいいのにってつい思うね♪ 」
「 …っっっ!! 」
「 蓮く~ん?いっそ抱き締めちゃえばいいのにぃぃ 」
「 …っ…勝手なこと言わないで下さい。指示されていないことなんて出来ませんよ 」
「 はー、もう素直じゃないなぁ。ナチュラルなままのお前でいいのに。だいたい、お前の心はもうとっくに気付いているだろうに 」
「 ……何か言いました? 」
「 いや、別に~♪ 」
最初の頃はそうでもなかった社さんは、けれど撮影が進むにつれ徐々に俺をからかうようになっていって、CM撮りの内容が中盤にまで差し掛かったいま、まるで俺を試すように煽るようなことをなぜか毎回言うようになっていた。
社さんが何を考えているかなど俺に判るはずもない。そしてこの時点で俺の意識はだいぶ呪縛されていたのかも知れなかった。
CMは短ければ15秒。長くても60秒が枠の区切りとなっている。
そのため異なるシーンごとにロケをすると時間とお金がかかるため、そういうことは一切せずに撮りはスタジオ内のみで行われていた。
このシリーズCMはいわゆるはめ込み画面で合成される作りであるため、撮影中、自分達の周りにはただ青い空間があるだけで、たった一つ色づいているのは相手役の京子だけ。
だからそうなってしまうのだ…と、俺は自身に向けてそう必死に言い訳していた。
自分が京子だけに意識が向いてしまうのは、そういう事情だからに違いないのだと。
「 いよっし、OK!次、衣装チェンジ、よろしくなー 」
「 はい 」
撮影は監督に言われるままに幾つものパターンを撮影し、終わると衣装チェンジやメイク直しが入りそれごとに撮影スタジオを後にする。
設備として整えられているメイクルームというのは大抵貸し切り状態ではなく共同で使用されるのが普通で、その部屋はどこにいってもそれなりに大きい。
俺の名前と外見も少しは浸透し出しているのだろうか。
メイクルームに入るとテレビ画面で見知った顔の人達が俺の姿を見てひそひそ話し出すことが増えたような気がしていた。
「 ねぇ。君ってモデルの敦賀くんっていうんでしょう? 」
「 はい。そうです、初めまして。俺、身体が大きいので目障りかもしれませんがなるべくお邪魔にならないように気を付けますのでよろしくお願いします 」
こんな風に話しかけてくれる女性もいたけれど、これ以上の厄介事を抱える気が無かった俺は、不愛想に会釈をして早々に会話を打ち切ることを信条としていた。
なぜかこの撮影中に限り、社さんはそれを俺に注意することをしなかった。
広いメイクルームの中には既に見知った顔のスタッフがいて、礼儀正しく一礼をした俺は、入り口から一番近い隅っこの鏡前に立っているその人の元へわき目もふらずに歩み寄り、お願いしますと言って早々にイスへ腰を下ろした。
ニヤニヤ笑いながら社さんが俺の肩をポンと叩いた。
「 ……あーあ。ウチの蓮くんはつれない男だねぇ。可愛いって評判の芸能人から話しかけられたっていうのにバッサリ会話を切るんだから 」
「 必要最低限以上の会話をする気はありません。それに俺は芸能人として活動する気もありませんから自分を知ってもらいたい欲求もありません。
更に言うなら俺には恋人がいます。他の女性なんて興味ありませんし、だいたい見分けることすら出来ないのに知り合い顔をされたらそれこそ困りますから 」
「 ふっ。そんな事とっくに知ってるって。でもぉ~ 」
「 なんです? 」
「 でも京子だけは他の子とちょっと違うだろう~?ぐふふ… 」
「 やめて下さい、その下品な笑い方… 」
俺が苦虫を潰したような顔で真横にいる社さんへ顔を向けると、男性の割に女性を思わせる丁寧な言葉遣いのメイクさんが強引に俺の顔を鏡に戻した。
「 ほんとよ。からかうなんて社ちゃんはイケズよね~。はい、敦賀くん、前を向いてちょうだい!黒崎監督から指示を貰っていますからね~。その通りに顔とヘアをメイクしますからね~ 」
「 はい、お願いします 」
京子を見つけて来たのは社さんだから、自慢したくなる気持ちは判らなくもない。
けれど本心から言えばそれは止めて欲しかった。
なぜなら社さんが言った通りなのだ。
京子は何かが違うのだ。
ときどき、本当に不意に
京子がキョーコに見えるときがある。
たとえば振り向きざま、俺を見上げる瞳の角度にドキリとする。
俺を見つめたまま優しく目を細めるタイミングとか。
ためらいがちに手を差し伸べて来る仕草とかはもう、付き合い始め頃のキョーコそのもの。
だから本気で俺は躊躇ってしまうのだ。
抱きしめたい衝動に駆られるのはいつだって京子の中にキョーコを見つけた時に起こり、そのたびに俺を引き止めてくれていたのは、扇風機の風に揺れる彼女のロングウェーブだった。
決してキョーコが持っていない、腰まで伸びた長い髪。
メイクルームの扉がノックされ、続いて相手役の京子がメイクルームに現れた。
彼女の傍らには最初に姿を見たときと同じようにジェリー・ウッズの姿がある。
二人に気付いて俺をからかうのとは全く違う紳士的な笑顔を浮かべた社さんは、二人に話しかけたあと、ようやくソコに気付いた風で俺に向かって口を開いた。
「 おお~!!そのワンピース、可愛いねぇ。うん、似合ってる。おいで、京子ちゃん。蓮の隣があいているからここに座ればいいよ。
どうぞ、ミス・ジェリー。今日はまた一段と刺激的な服ですね 」
「 あら、ありがと社ちゃん。京子ちゃんが清楚系だからあたしは小悪魔系にしてみたのよ。はぁい京子ちゃん、ここに座ってぇ 」
「 はい!ミューズはいつも素敵です 」
「 ん?あれ、そういえば蓮。お前… 」
「 はい? 」
『 蓮。女性二人が見えるだろ?あの小っこい方は… 』
『 知っています。美容業界の魔女と呼ばれている人ですよね。ミス・ジェリー・ウッズ 』
「 お前、よく判ったな、ミス・ジェリー・ウッズのことが。いつも違う格好をしてんのに…。なんでだ? 」
「 あ、それは…… 」
確かに俺は女性を見分けるのがひどく苦手なのだけど、それには例外が存在していた。
実はこれ、キョーコと付き合い始めてから気付いたこと。
俺がジェリー・ウッズの事を知ったのは、キョーコが彼女の特集記事を読んでいたことがきっかけだった。
顔を覚えたのもそのときで、キョーコは俺に記事を見せながら興奮気味にこう言った。
『 キョーコ。何を熱心に読んでいるの? 』
『 聞いてくれる?!あのね、このひと美容業界の魔女って呼ばれているスゴイ人なの!本当に凄いのよ、この人。どんな人でも素敵に変身させることが出来ちゃうの!
ああ~、一度でもいいから私もこの人にメイクされてみたい。すっごい憧れちゃう♡ 』
『 ……俺は、キョーコはこのままで充分可愛いと思うけど? 』
『 も…もう!!そんなこと真顔で言われたら照れるでしょぉぉぉ!! 』
『 だって本当のことだし。なに?もしかしたらキョーコには変身願望があるの? 』
『 願望っていうか…。でも、ないって言ったら嘘になるかな 』
『 ……なんで? 』
『 だって、だるまやは飲食店でしょ。だからバッチリメイクって出来ないじゃない?だから。
一回ぐらい、してみたいなって思って 』
『 キョー…… 』
『 あ!!でも誤解しないでね!!私、お店のお手伝いが嫌とかそういうんじゃないから!! 』
でも二人を悲しませたくはないから、いま私が言ったことは大将やおかみさんには内緒にしてねって
いつもと同じ薄いメイクのキョーコが俺に柔らかく微笑んだのを覚えている。
キョーコが好きって言ったものは
俺の頭に簡単にインプットされるし
反対にキョーコが嫌いって言ったものも苦も無く俺の脳裏に焼き付く。
どうやら俺の記憶力はキョーコに関することならすんなり受け入れることが出来るらしい。
この事実に気付いたとき、改めてキョーコは自分にとって特別な存在なのだと思い知った。
間違いなく俺のすべてはキョーコを中心に回っていた。
「 それは? なんだよ、蓮。お前いま話の途中で自分の彼女の事を思い出して俺との会話を忘れただろう? 」
「 あ、すみません。ついうっかり 」
「 うっかりじゃないだろ。ベタ惚れなのを知っているから俺はいいけどな 」
「 あれ?ジェラシーですか、社さん。男の嫉妬は醜いですよ 」
「 何ぬかす。ここぞとばかりに言うな、お前も。なんか、無性に虐めたい気分になってきたぞ 」
「 なに言って…… 」
隣に座っていた京子がそこでクスクス笑っていた。
軽く結んだ右手を口元にあてて笑う仕草がキョーコにそっくりすぎる。
引き寄せたい
抱きしめたい
そして思いきりキスしたい。
こんな瞬間でもそんな感情が容易に浮かび、俺は奥歯を噛みしめた。
「 まぁ、振られまくった挙句にようやく捕まえられた愛しい彼女だもんな。そりゃあキョーコちゃんが可愛くて仕方ないよな 」
「 ふふふっ。そうなんですか? 」
そのとき、鏡越しに俺をみつめてクスクス笑っていただけの京子が初めて撮影以外で口を開いた。
彼女の笑顔は本当に嬉しそうに綻んでいて、それが俺の心を複雑に歪めた。
このCM撮りで唯一救いだったのは、京子が俺に対して何のアクションもして来ないことだった。
前のCM撮影の時はまるで競い合うかのようにほぼ全員の女性が俺に告白をして来たから、とにかく捌くのが大変だったのだ。
それを思い出して苛立った。
なおも嬉しそうに微笑む京子の横顔を俺は鋭く睨んだ。
「 キョーコ違いだ 」
「 はい? 」
「 言っておくけど。俺の恋人のキョーコって君のことじゃないから 」
「 ……え? 」
「 君が俺の恋人なのはCMの中でだけ。俺が愛しているのは君じゃない 」
そうだ。
俺の恋人はキョーコだけだ。
言った言葉はもちろんゆるぎない俺の本心。
だけど悲しそうに眉をひそめ、俺の目の前で一瞬のうちにいっぱいの涙をためた京子を見て俺の心が激しく揺れた。
「 あっ、京子ちゃん!? 」
「 ……待っ…!! 」
素早く立ち上がった京子の手を
なぜ俺は咄嗟に引き止めようと腕を伸ばしたのか。
捕まえることは叶わず彼女は風のように俺の目の前からすり抜けメイク室から逃げ出した。
「 もしもし、黒崎監督?はい、社です。例の件お願いします。ええ、いま! 」
一体どんなタイミングで電話を取ったというのか
そう言ってから通話を切った社さんはやけに意味深な笑みを浮かべ、俺の頭をコツンと小突いた。
⇒それが世界の終わりでも◇6へ続く
※ちょっとイイワケ。
実はこのお話、リクエスト下さったちびぞう様から「コミカル調で」と御指示を頂いていたのですがっ。
一葉、シリアスは割と得意なのだけどコミカルがどうにも難しくてですね…。
どう執筆したお話だったら読み手様は軽め受け(←この時点ですでにコミカルを諦めている)になるかと色々試行錯誤している間に時が流れ…。
ええ、全然コミカルじゃないですよね。はい、判ってます。こんな奴ですがどうか見捨てないで下さい~。
そしてどうぞラストまでお付き合い下さいね。
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