いつもありがとうございます、一葉です。(。-人-。)
前後編で終わる予定でいましたのにまさかの中編でお届け(笑)そしてお話に入る前に注意点を。
今回、実在する地名を使用しておりますが、実は一葉、その地に赴いた事がありません。
さらにいまはネット検索をすれば現在地図すら容易に手に入る時代ですが、私としてはそうまでしてリアルにこだわる気もないのです。
なぜかというと街の様子と云うのは時間の移ろいと共に変化してゆくのが当たり前ですので。
…ということで、お話に出て来るお店や景観等はあくまでも想像上のものだとご理解した上でお付き合い下さいませ。
ちなみに中・後編は蓮くんsideとなります。お楽しみいただけたら嬉しいです。
前のお話こちら↓
①ニヤリはっと …キョーコちゃんside
②相宿秒読み …社さんside
③親密な夜長 …蓮くんside
⑤真夜中の揺籃…キョーコちゃんside
⑥尊敬人 …蓮くんside
⑦暗中飛躍 …キョーコちゃんside
⑧寄り添いめぐり◇前編 …キョーコちゃんside
■ 寄り添いめぐり ◇中編 ■
週に一度という約束で始まった俺の家のお泊り3回目となる今日。
自分を追いかけるように東京から新潟へ、遅れて到着する最上さんからの電話を待っていた午前中いっぱい、俺は適宜に仕事をこなしつつ、たった一つのことで頭を悩ませていた。
「 カーット!!OK 」
「 では出演者の皆さま、少しお待ちくださーい 」
「 お疲れさま、蓮 」
「 お疲れ様です 」
「 あと30分ほどでキョーコちゃん、駅に到着する時間だな 」
「 ええ。何事もなければそうですね 」
悩んでいたのは至極単純な内容で、お泊り3回目である今日、どうやったらまた最上さんと一緒に寝られるだろうかとその策を思案していたのだ。
社さんのセリフに何食わぬ顔でニッコリと笑ってみせた俺に、マネージャーは目を細めてから少々イジケ気味に背中を向けた。
「 あ~ぁあぁ~。俺が担当している俳優はひどいよな~。スケジュール組んでいるのは俺なのにさぁ。いくらプライベートだからってさぁ~。ちょっとはマネージャーを信頼して話してくれてもいいだろうにね~ 」
「 社さん。その件は先週ちゃんとお話したじゃないですか。いい加減に機嫌直してくださいよ 」
「 違うだろぉ。それは俺に打ち明けたんじゃなくて、致し方なくそうなっただけじゃないか。キョーコちゃんがお前の家に泊まった翌日、お前とキョーコちゃんが朝一から一緒に居た理由を俺が聞いて、うっかりキョーコちゃんがそれに答えたからそうなっただけだろぉぉぉ 」
「 ………… 」
社さんはこういう時、少々鬱陶しくなる。
確かに社さんが言う通り、俺はあの子が俺の家に泊まりに来ていることを社さんにも黙っていた。
その理由は二つある。
打ち明けた所でからかわれるのは目に見えていたし、周知しておくことで後日浴びせられるだろう質問に答える気がなかったからだ。
2回目のお泊りで発生したハプニングは俺が予想していたよりずいぶん早くに訪れた。
自分が想定できる事態だったとしても、たとえばああいう彼女のプライベートの…とかくデリケートな内容のそれを俺は冗談でも第三者に吐露したくはなかったのだ。
もちろんそれは色々な意味も含めて……。
「 敦賀さん、社さん。お待たせしました、今いいですか? 」
一時的に腰を下ろした俺達に男性スタッフが声をかけた。
このロケは予定外に発生しただけあって撮影スケジュールはひどくおおらかで、よく言えば自由闊達、悪く言えばグダグダだった。
「 はい。どうしました? 」
「 お昼より少し前ですが休憩することになりました。一度ここは撤収になりまして、再び撮影に入るのは14時からになります。どうぞよろしくお願いします 」
「 はい、了解しました 」
外ロケは土地や場所を借りる関係から、こちらの都合に合わせてサクサク進まないことの方が案外多い。
ましてや今日は本当に急だったから撮りの間が開くのは仕方のない事で、それは社さんも理解していた。
「 …ま、予定外の外ロケだから仕方ないよな。けどお前はむしろ好都合だろう、蓮 」
「 そうですね。否定はしません 」
昼過ぎにあの子が到着する予定だから、上手くいけば俺があの子を迎えに行けるかもと予想していたけれど、今から2時間以上が自由時間となるのなら迎えに行くだけじゃなくて、一緒に昼も行けるだろうしあの子に付き添って職人さんの所へ顔を出すことも出来そうだと思った。
「 ま、キョーコちゃんも昼過ぎに来るってことだし、ちょうどいい具合に昼休憩になったんだ。キョーコちゃんに美味いもんでもご馳走してやれよ。どうせ週一でキョーコちゃんに食事を作ってもらってるんだろ? 」
「 そうですけど。社さんはどう… 」
「 俺はお前が頑張って作ったささやかな楽しみの邪魔者になりたくない。…から別行動で、のんびりしておく 」
「 ……ひょっとしてお腹の調子でも悪いんですか? 」
「 そうじゃないって。出掛けるたびに俺が消化不良を起こしているみたいに言うな 」
「 あ、違うんですか。なら安心しました 」
このあとすぐ共演者たちに声を掛けられ、地元の美味しいものを食べに行きませんかと誘われたけれど、俺はそれを丁重に断り最上さんを迎えに行った。
新幹線の改札口より少しだけ離れた場所で、そこから出て来たあの子を簡単に見つけた俺は、改札口を通り過ぎてすぐ壁際に寄って、約束通り俺に電話を掛けようとしているのだろう最上さんの姿を微笑しながら見つめていた。
いつもとは全く違う場所での待ち合わせ。
それが俺の心を軽くしているのは明らかだった。
通話を終え携帯を両手で持ったまま、実に疑り深いまなざしで手元を見下ろしているのはきっと俺が言った、いま行くから…の意味を考えているのだろう。
そんなあの子に声を掛けたのは通話を切って数秒後で、最上さんは実に大きく目を見開いて俺を見上げた。
「 最上さん。お待たせ 」
「 つぅるがさんっ?瞬間移動ですか?!なぜこんな早く… 」
「 ん?実は俺、そこで待機してたんだ。君が到着する時刻は知っていたし、まるでそれに合わせたように現場が昼食休憩に入ってね。
最上さん、着いたばかりでお昼まだだろう?俺と一緒に食べよう 」
「 えー?でも敦賀さんは現場でお昼が用意されているんじゃないですか? 」
「 ところが。今回のロケは本当に急だったからそこまで手が回らなかったみたいだ。お世話になっているホテルで食べるスタッフもいるだろうけど共演者のほとんどはどこかのお店に食べに行ったよ 」
「 ホテル…? 」
「 そう 」
いくら大きな車でも、撮影に必要な機材類や衣装等を積んでしまえばそこにはいくばくの余裕もない。
だから現地のホテルに協力を仰ぎ、衣装替えやメイクのためにいくつか部屋を借りていて、それとは別に各個人の荷物もまとめてホテルに預けていた。
スタッフ達がホテルで食事をするのはお礼の意味もあるのだが、加えてホテルのサービスの方がスムーズに食事が出来るという利点も関係しているだろう。
ちなみに俺と社さんの荷物はそれとは別に借りた一室に置いてある。
過去の経験から、自分たちの荷物が一つも無くならないようにするためのそれは俺達の智慧でもあった。
何しろ荷物を一緒に預けると、あとで拾ったとか何とか言ってわざとプライベートな時間を狙ってコンタクトを取ってこようとする女性が必ずいるので。つまりこれは自己防衛に近く、俺と社さんの間では暗黙の了解となっていた。
「 じゃあ、私のことは気にせず敦賀さんはそのどちらかに顔を出して下さい。私、もともとこっそり敦賀さんを追いかけるつもりで来ましたのでその方が良いと思いますし… 」
「 そうした方が良い?でも俺、誘われたとき断っちゃったし、それに君を迎えに来る途中で地元の野菜をふんだんに使っているっていう創作料理のお店を偶然見つけちゃってね。話を聞いたら個室もあるって言うし、いまなら予約も可能だって言われて実は予約してきちゃったんだよな。
君が行かないって言うならお店の人に迷惑がかかるんだけど…。どうする? 」
「 う…。そんなの行かざるを得ないじゃないですか… 」
「 だろ?良かった、理解してもらえて。ここからすぐのお店だから行こう、最上さん。
はい、手を繋いで 」
「 うえっ?!敦賀さん、そんなことしなくても平気ですよぉ 」
「 はぐれ防止のためなんだからゴチャゴチャ言わない 」
「 はぐれって…。いくら何でもはぐれないですよ、私だって 」
「 いいからおいで 」
「 あうぅぅぅ… 」
最上さんはこっちが気恥ずかしくなりそうなぐらい真っ赤な顔になってしまったけれど、俺の手を振りほどくような真似をこの子はしないと判っていたから強引につないだ手を優しく引っ張った。
この確信を持ったのは先週のこと。雑誌のインタビューを受けていた間、インタビュー用喫茶コーナーから少し離れた場所で待っていてくれた最上さんに声を掛けたあのとき。
この子の前で腰を落とし、寝ぼけ眼の顔を覗き見た俺が、片手を掬っても頬を抱きかかえても最上さんは平然としていた。
それはボーっとしていたから…と言ってしまえばそれまでかもしれないけど、でもきっとそれだけじゃないんだ。
恐らく最上さんは二度も俺と一緒のベッドで寝たことで、俺との接触に違和感を持たなくなってきているんだと思った。
それでもさすがに額同士をコツン…としたときは覚醒したようだけど。
まあいい傾向だな、と俺は思った。
「 敦賀さん 」
「 うん? 」
「 そういえば本当に敦賀さんが言った通りでしたね。新潟。
地図では遠いけど近い場所って言ってたの… 」
「 ああ、そうだろう?都内で渋滞にハマったら2時間ぐらい動かない時もあるけど、その時間で新潟に着くって考えたら近いだろ? 」
「 はい、そう思いました! 」
「 あ…近いって言えば。君が行きたいって言ってた包丁研ぎの職人さんの店が偶然にも今回のロケ現場から近間だったんだ。そのとき俺、君がここに来ることをうっかり現場でしゃべっちゃったんだよな。だからもうみんな知ってるよ。君が来るってこと 」
「 ええっ?!しゃべっちゃったって、敦賀さん… 」
「 大丈夫だよ。みんな好意的に受け止めてくれたから。ま、一人例外もいたけど。そういうのは無視していいから 」
「 え?それってまさか、私が来るってことで不機嫌になった大御所がいらっしゃったとか? 」
「 違う違う。そもそもアレは大御所じゃないし。
今回、共演者の中に一人、歌手しながら俳優業もしているって男性がいてね。どうやら俺、敵意を持たれているみたいなんだよな。全く身に覚えがないんだけど…。初共演だし 」
「 はぁ?なんですか、それ。敵意?敦賀さんに敵意!?
それ、あれじゃないですか?ただ単に敦賀さんの才能に嫉妬してるとか、俺の方がカッコいいと思いこんでいるとか、そういう身の程知らずじゃないですか? 」
「 くす。真相のほどは定かじゃないけど別にどうだっていいよ、俺は。特に被害も無いし。
はい、最上さん、こっちに曲がって 」
「 はい 」
……そのとき、なんだか敦賀さん、妙にご機嫌…?と小声ながら聞こえた最上さんの呟きに、俺は前を見たまま小さく笑いを漏らした。
そりゃあ、ご機嫌にもなるだろう。
だって俺は嬉しかったんだから。
ロケに行くことになったのは本当に予定外で、だからそれを言ったら最上さんはもしかしたら、今回のお泊りは止めましょうか…なんて言い出すかもしれないと多少なりとも危惧していた。
なのに実際は……。
――――――― 敦賀さん、それ私も行きたいです!!
俺のロケ先が新潟だと聞いて
それがたとえ大将の為だったとしても、この子が自らそのセリフを口にするとは夢にも思っていなかったから、それが単純に嬉しかった。
そんな我儘みたいなこと。
躊躇いもなくこの子が俺に言ってくれるなんて……。
「 最上さん、着いた。ここだよ 」
「 いらっしゃいませー。あ!!敦賀さん、お待ちしておりました!!お席はお二階にご用意させていただきました。どうぞ、どうぞ 」
「 ありがとうございます 」
「 お邪魔します 」
「 きゃ。京子さん?! 」
「 はい、そうですけど。…あ、すみません!私が敦賀さんと二人なのは特別なことでも何でもないんです。噂になると敦賀さんに迷惑が掛かってしまいますのでこのことは内緒にして下さい! 」
「 こら、君は何を… 」
「 …はい!撮影で芸能人の方がいらしているのはもちろん知ってましたし、それに、こういう商売ですからね。お客様のことを口外したりしませんので安心して召し上がって行って下さいね。ではどうぞ 」
「 ありがとう 」
通されたテーブルは確かに個室。
そして俺たちは11品が味わえる、最上さん曰くちょっと値の張るランチコースをチョイスした。
この子との食事は不思議と無理なく箸が進む。
テーブルに所狭しと並べられた、地元野菜で彩られた創作料理を特に苦を感じることなく、俺たちは美味しく楽しく、そして少々ゆっくりめに時間をかけてそれらをすべて平らげた。
⇒今度こそ本当に後編へ続く
このお話、実は全編キョーコちゃんで書く予定でいたのですけれども、流れを頭の中でモワモワしていたらどうしても蓮くんにしたい箇所が出て来て急遽変更いたしました。そしたら予想外に長くなり…。
その部分は次に含まれております。
ということで、後編もどうぞお付き合い下さいね♪
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