SS 寄り添いめぐり ◇前編 | 有限実践組-skipbeat-

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こちらは蓮キョ中心、スキビの二次創作ブログです。


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 いつもありがとうございます、一葉です。(°∀°)b

 のんびりのほほん思いつき連載。お届けです。


 思いついていた続きを執筆すべく重い腰をあげ、そこで偶然にも見つけちゃったお話をUPしたあとナゼ間が開いたかと言うと、資料が見当たらなかったから(笑)

 そしたらまさかのデータ保存していたっていうね。メモが見つからないはずだよ!


 さてこのシリーズはなかなかタイトルが思いつかなくて苦労しておりますが、今回のお話に関しては長く放置していたせいか案外すんなり出て来てくれました。

 お楽しみいただけたら嬉しいです♡



 前のお話こちら↓

ニヤリはっと …キョーコちゃんside

相宿秒読み …社さんside

親密な夜長 …蓮くんside

明朗な否運<前編 ・後編> …キョーコちゃんside

真夜中の揺籃…キョーコちゃんside

尊敬人…蓮くんside

暗中飛躍 …キョーコちゃんside



■ 寄り添いめぐり ◇前編 ■





 いつもお世話になっているだるまやのお二人が、週に一度ぐらいご夫婦水入らずの時間を過ごせるようにと配慮して始まった敦賀さん家のお泊り、3回目。


 今回もお泊り日は事前に敦賀さんから了解をもらっていて、本来なら前と同じように待ち合わせるのは夕方もしくはそれ以降という流れになるはずだったけれど。

 大先輩の姿を脳裏に思い描きながら、私は窓向こうの景色に視線を移した。



 大地に描かれる雲の影を見れば、かなり良い天気であることは説明されずとも判る。


 朝10時過ぎに東京駅を出発した新幹線は自分の予想よりもだいぶ空いていて、快適そのものの車内で私は一度大きく伸びをした。



 そう。敦賀さんに多大な迷惑をかけてしまった2回目のお泊りから一週間が経過した今日。

 私、最上キョーコは新潟県でロケをするため、先に現地へ出かけてしまった敦賀さんを追いかけて新幹線に乗車していた。



 扉上に設置されている電光掲示板に到着予定時刻が表示され、新幹線特有のポンという軽快な音が耳に届く。

 自分の目的地である燕三条駅に間もなく到着しますのアナウンスが流れた所で、私はたった一つだけの荷物である愛用のトートバックを肩にかけ、出口扉前へ移動した。



「 ふふっ。敦賀さんが言った通りね。地図では遠いけど案外近いって 」


 スピーディに動いていた新幹線が徐々に速度を落とし、スマートな動きで燕三条駅に到着。

 扉が開くと車内に新鮮な空気が入り、即座に私の髪を柔らかく梳いた。


 耳元を滑りゆく心地よい風を感じながら、私は元気よくホームに降り立った。



「 はー、着いたぁ!!すごい。ここが燕三条駅なのね。来たぁぁ! 」



 本来なら敦賀さん宅にお泊りする予定だった今日。


 東京駅から上越新幹線に乗り込み、118分の乗車時間を経て私が燕三条駅にやってきた理由は、もちろん敦賀さんを驚かせるためでも邪魔をするためでもなかった。



 実は二日前、私は敦賀さんとこんなやり取りをしたのだ。




「 ……え?敦賀さん、ロケに行くことになったんですか? 」


 本来であれば、その日の敦賀さんのスケジュールは一日ドラマ撮影に費やす予定だった。

 終了予定時刻もちゃんと決まっていたから、もし予定変更があったとしても大した時間のずれはないだろうと踏んでいたのだ。



「 そうなんだ。それが急遽変更になってね。日帰りロケになるって話だからもちろん君との約束は守れるけど、共演者や監督たちと一緒に新幹線で移動しなければならないから、正直、戻り時間が読めない。

 だから、悪いけど俺がこっちに戻って来てから最上さんに連絡する…って形でいいかな? 」


「 ………はい、大丈夫です 」



 反して。3回目のお泊りとなる当日と翌日。

 私のスケジュールはがら空きだった。


 だから自分が融通を利かせるのは全然苦じゃなくて、いっそ待ち合わせをするより自分が敦賀さんのお仕事現場まで足を運んでしまおうか…と、私はひそかに考えていたのだ。



 けれど偶然のタイミングとはいえこんな事を言われた日には、そんな図々しいことをするな…と言われた気がして返事が遅れてしまった。それでも私は自分の口からやめましょうか、と言い出すことは出来なかった。


 だって、敦賀さんも中止にしようとは言わないし、それどころか私との約束は守れると言ってくれたから。



「 最上さん、ごめんね。東京駅に着いた時点で一度君に電話するから 」


「 そんな…。私こそすみません。敦賀さん、お忙しいのに。あ、だったら敦賀さん。待ち合わせなんかしないで私が敦賀さんの帰宅時間に合わせてお伺いしましょうか? 」


「 いや。俺が君を迎えに行きたいんだ。俺の家に泊まればいいって言い出したのは俺だし、もし遅くなったりしたらやっぱり心配だから。せめてそのぐらいは俺がするよ


「 でもお仕事なのに… 」


「 いいんだよ。それより最上さん。お土産は何がいい? 」


「 へ? 」


「 新潟って言うと久保田、八海山、越乃寒梅とか有名なお酒があるんだけど、君は未成年だからね。やっぱり笹団子?それとも出陣餅がいいかな? 」


「 敦賀さん、ロケって新潟なんですか?! 」



 前のめりになった私の片手がこぶしを握っていた。

 自分の脳裏で欲が走っていたのだ。



「 え?…うん、そう。地図では遠いけど案外近い場所だよな、新潟は。ちなみにロケ現場は燕三条だって聞いてる 」


「 うそっ?しかも燕三条!?敦賀さん、それ私も行きたいです!! 」


「 え? え? 」



 私が叫ぶと電話の向こうで敦賀さんはひどく戸惑った様子だった。


 もちろんそうだろうと思う。私がこんなことを言い出すなんて敦賀さんは予想すらしていなかっただろうから。


 だけど仕方が無いの。

 新潟燕三条と聞いた途端、自分の中で俄然行きたい気持ちが湧き上がってしまったのだから。



「 行きたいって…。でも最上さん、さすがにそれは… 」


「 大丈夫です!!ロケハンに付いていきたいなんて言いませんし、敦賀さんのご迷惑になるようなこともしません。でも、私も後から敦賀さんを追いかける形になってもいいですか?それで帰りの新幹線をこっそり敦賀さんのと同じにして東京に戻れば、待ち合わせの時間だって省けると思うんです 」


「 それはいいけど…。なに?そう言うからにはどこか行きたい場所があるんだろ?どこ? 」


「 もちろん、敦賀さんが行かれる鍛冶の町燕三条です!! 」


「 鍛冶の町? 」


「 はいっ!!! 」




 私が、鍛冶の町として300年以上の歴史を誇る新潟県燕三条に行きたいと思ったのは、日頃からお世話になっているだるまやの大将から聞いていた話がきっかけだった。



 私は以前、LMEのオーディションのために大将から大切な包丁をお借りした事がある。


 包丁は料理人にとって決して欠かす事の出来ない大切なアイテムで、切れ味の有無は料理の味や出来栄えに大きな影響を与えてしまう最も肝要な道具だと言えると思う。


 包丁が切れなくなる主な原因は、包丁がまな板にぶつかったときの衝撃により、徐々に刃が丸くなって切れ味が悪くなるからだと言われている。ましてや料理人が使う包丁の頻度は一般家庭の比ではないのだ。



 包丁の種類によって差は出るだろうけれど、料理人の殆どは自分が愛用している包丁を自らの手で研いでいる。

 もちろん大将もその一人で、大将の場合は二日に一度は必ず研いでいるようだった。



「 知っているか?腕のいい研ぎ師っていうのは、使い手がどんな使い方をするか、どんな刃物となることを望んでいるか、どんな細やかさで仕上げて欲しいかと聞いて来る。

 自分が使う包丁だから自分で研ぐのは当たり前だ。だが、時には腕のいい研ぎ師に研いでもらう、そんな贅沢を包丁にさせてやると、また格別な働きをするもんなんだぞ 」


「 そうなんですね。やっぱりプロは違うんですね 」


「 何でも横文字を使えばいいってもんじゃねぇ。そういうのはな、職人っていうんだ 」


「 職人…… 」



 そのとき私は思った。

 いつか大将の包丁を、腕の良い鍛冶職人さんに研いでもらおうと…。



 日本の鍛冶技術は世界レベルと言われている。

 特に新潟燕三条には名だたる鍛冶職人が存在していることを私は既に知っていたのだ。




「 ……なるほど。大将の包丁をね 」


「 はい!!研いでもらうには持ち込みが一番です。だから大将に話して何丁か預からせてもらって、それで行きたいと思うんです!! 」


「 そう。いいね。大将、喜ぶだろうね。最上さんの希望は判った。じゃあそうしようか 」


「 はい、ありがとうございます!! 」



 細かい事情は語らずに、仕事の都合で燕三条へ行くことになったと大将に告げて、私は三丁の包丁を預かった。

 研いでもらうなら礼儀を整えるべきだと言った大将が私に託してくれた包丁は、以前、大将が燕三条で購入したもの。


 それらをバックに忍ばせて、私は今日、先に敦賀さんが降り立ったはずの新潟県にやって来たのだ。



 新幹線のチケット代は早い出発時間の方が実は安い。


 それが判っていながら私が早朝に出発すると言っていた敦賀さんと敢えて同じ新幹線にしなかったのは、敦賀さんに迷惑をかけたくないからという理由の他に、朝早く行った所で目的地が開店していないからだった。



 新幹線の改札を出て、約束通り敦賀さんの携帯にコールをかける。

 敦賀さんには到着予定時刻を事前に知らせていたけれど、とにかく着いたら連絡することと約束させられていた。



「 もしもし?敦賀さん? 」


「 もしもし、最上さん? 」


「 はい!最上です。敦賀さん、お疲れ様です 」


「 ん、お疲れ様。いま着いた? 」


「 はい。無事に到着していま改札を出た所です 」


「 そう、判った。いま行くから 」


「 へっ? 」


 敦賀さんの口から出た予想外のセリフを受け、私は素っ頓狂な返事を返した。






 ⇒中編に続く


包丁の数え方は現在、一本二本と数える人が多いようですが、本来なら『柄』を使うのが正しいのだそうな。

でも一葉は子供の頃から一丁、二丁と言っていたのであえてそれで行きました。


ところで大将って江戸っ子だろうか(笑)

妙に出身地が気になりました。



⇒寄り添いめぐり◇前編・拍手

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