SS 双対の追 | 有限実践組-skipbeat-

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こちらは蓮キョ中心、スキビの二次創作ブログです。


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 やっと書けた…。続きまへん( ̄▽+ ̄*)…って自分で明言したくせに、それ終わりだろーの後に尻尾をつけるのは一葉の得意技です汗


 ちなみに、すでに目次をチェック済みで「いつUPになるんだよー?」とヤキモキしていらした方がいらっしゃったらお待たせしました!なのです。


 いやー…一応ね、こんな拙い文章ですけれど、自分が納得いくまで推敲しないと気が済まない性分なもんであせる長いのよ…。削ってみたけど長いのよ…

 てな訳で、本日のSSは先日UP致しました「双対の想」の続き物です♪


 でもすみません…。あろうことか、ACT215のネタバレが含まれております。小さなものではありますが、コミックス派の方、ネタバレはいやん、な方は自主的な回れ右をお願いいたします…。


 前話リンクこちら⇒双対の想〈 前編 後編


■ 双対の追 ■





 親愛の情を態度で表してみた…。

 そう口にした敦賀さんの甘やかな笑みを思い出すたび、私は人知れず何度も顔面爆発を繰り返した。


 自分の恋心をひたすら隠すつもりでいたのに


 好きな人からあんな事をされてしまえば、押し流す様に時間が容赦なく過ぎ去ろうとしたところで、私の脳内で信じられないほど鮮明に、この出来事が何度もリフレインをし続ける。



 自分の頬に触れた敦賀さんのくちびる。

 腰を抜かした私に向かって額へと落とされた優しいキス。


 その温みを思い出せば心が歓喜の悲鳴を上げて、全身が甘く痺れてゆきそうな感覚に襲われていく。



 問答無用でその記憶を呼び起こした、そもそもの原因ともいうべき先日の現場付近で歩みと視線を止めた私は、自身を戒めようと人目も気にせず蜂の羽音のような音を生み出し何度も景気よく頭を振った。



 …ダメよ、キョーコ!!

 いま私がこの現場に来たのは、敦賀さんに会うためではないのだから!


 それなのに、ふと過ぎっていくのはあれから何日経っただろう…ってことばかり。そのたびに時間がゆっくりと通り過ぎていることに驚いて、思わず自分の口から大きなため息がこぼれ落ちる。




 ―――――― そのうち判るよ、嫌でもね




 何度も蘇った敦賀さんのセリフ。意味をどれだけ考えようとも、あの人の真意が自分に見えるはずもない。



 …そのうちって、どのくらい経てば私にも判るようになるんだろう?



 素朴な疑問は幾度も私の頭を駆け巡ったけれど


 その時の私は、まさかこの直後にそれを思い知る事になるなんて


 もちろん、予想などしていなかった…。






「 ―――――― 最上さん。いや、キョーコ…ゆるさないよ… 」


 人目の多い現場内。遠く離れた私に向かって敦賀さんが意味不明なセリフを吐き捨てる。

 浮かんだ笑顔はキュラキュラ紳士。怒っている事だけはその笑顔と態度ではっきりと判った。


 けれど本当にずれたことに

 敦賀さんのその声が自分の耳に届いた瞬間、私の心にポン!っと浮かんだのは、敦賀さんが私を芸名で呼ぶなんて珍しい…という感想だった。





 そもそも私がこの現場へと足を運んだのは、ラブミー部員として依頼された任務をこなすためだった。


 現在、敦賀さんが主演を務めている某TVドラマ。

 それに共演中のLME所属の男優さんが、事務所に忘れ物をしてしまった…と連絡をしてきたのがそもそもの発端で、正直、そのタイミングが良かったのか悪かったのかは自分で判断のつけようもないけれど、幸い今日は学校も無く、午後の予定はさっぱり皆無で、帰ろうと腰を上げた所で椹さんに声を掛けられたのがスタート地点。


 帰宅直前に悪いな…と言いながら差し出された手提げの紙袋を受け取って、これもお仕事ですから、と自分の薄い胸を勢いよく叩いたのはもちろん真新しすぎる記憶。


 そして私はその撮影現場へと身を滑り込ませたワケですが、ここに到着して最初に思ったことは、自分は本当に愚か者だな、ということだった。




 ――――― あ、敦賀さん…。





 目的地は決して敦賀さんではないと判っていたのに


 想いを認めた自分の恋心がそれを抑えることはなく、そっと踏み入った撮影現場で私が見つけた最初の人は、忘れ物の主などではなく主演をはっている敦賀さんだった。



 撮影現場の奥の奥。

 敦賀さんはまるで守られるように遠い場所に存在していた。


 本当ならきっとこれが本来の距離で、私と敦賀さんにはこれほどまでにはっきりとした隔たりがあるのだと実感する。


 休憩中なのかイスに座っている敦賀さんが、すぐ隣にいる社さんと何か言葉を交わしていた。

 きっと何気なく視線を泳がせたんだろう敦賀さんは、順繰りと撮影現場に視線を巡らせていくと、ふと入り口付近で視線を止めた。




 ―――――― あ、私に気付いた…




 そりゃあ気付きもするだろう、と思う。

 ラブミー部員御用達のドピンクツナギに身を包んだ私は、どこのお笑い芸人かと間違われるほど悪目立ちする格好で、自慢にもならないけどこの服装で京子と認められたことは一度も無い。


 事務所の大先輩であり、尊敬すべき役者として頂点に君臨する敦賀さんに向けて、撮影現場の入り口であるこの場所から、私はいかにも事務所の後輩らしく、行儀よくペコリ…と頭を下げた。



 ここまでにおいて不遜な態度は一つもないはず。それに関しては間違いないという自負もある。

 なぜなら顔を上げたとき自分の視界にいた敦賀さんは、じっと私を見つめながらほんの少しだけ目を細め、そして花びらが開くようにゆっくりと、穏やかに微笑んでくれたのだから。




「 あ!来た!!きみ、ラブミー部の子だろ? 」


 声を掛けられたのはその直後だった。

 どうやらこの人が忘れ物の主なのだと私はすぐに思いつく。


「 はい!お待たせしました。どうぞ… 」


 お受取り下さい…と口を開き、持っていた紙袋を両手で持ち上げ男優さんを見上げて笑顔を作る。

 うん、ありがとう、と言ってそれを受け取ろうと紙袋の持ち主が右手を上げたまさにその時…




 よく通る敦賀さんの美声が、撮影現場に厳かに響いた。




「 ―――――― 最上さん。いや、キョーコ…許さないよ… 」




 リアルな世界の中にいて、騒然とした撮影現場を一瞬で静止画像に変えてしまった敦賀さんの影響力はとてつもなく凄いと思う。


 誰もかれもが驚いた顔で敦賀さんに顔を向け、次いで追いかけた視線の先にいる私のことを凝視する。



「 …おい?敦賀さんの言う、きょうこ…?って、誰だ?あの娘か? 」


「 いや、自分にはさっぱり… 」


「 え?知んないの?京子だよ。京子!LME所属の…ほら、美緒とかやって話題をさらった… 」


「 ああ、あの?…って、え?あの目に痛いツナギ着ている子が? 」


「 あらそうよぉ。ラブミー部に所属しているのよねっ!けっこう有名よ。君たち知らないの? 」



 そんな噂話に似た会話がきちんと私の耳に届いたのは、もちろん口を開いた集団が近くにいたってこともあるだろうけど、やっぱり一番は周囲がほとんど静まり返っていたからに他ならない。



 だけど、どうして敦賀さんが私を芸名で呼んだりするの?



 瞬時に巡った小さな疑問。


 かつてダークムーンで現場を共にしていた時でさえ、敦賀さんが私を呼ぶ時は常に、最上さん…だった。


 けれど私は不意に気付く。

 もしかしたら敦賀さんは、こんな恰好をしているけれど、この子が京子なんですよ…とお知らせしてくれたのかも知れないな…と。


 だから私は率直に、敦賀さんが私を芸名で呼んでくれるなんて本当に珍しい…という感想を導き出した。



 ただ、この時点で判らない事がたった一つ。


 ゆらりと陽炎が揺らめくように椅子から大きな身体を持ち上げた敦賀さんは、紛う方なきキュラキュラ似非紳士スマイルを前面に打ち出した状態だった。


 そう。どうして似非紳士スマイルなのか、ってこと。



「 いますぐ、こっちにおいで 」


 酷く穏やかに聞こえたそのセリフは主語が完璧に抜けていた。

 けれど敦賀さんが視線をそらさずじっと自分を見ている以上、それは私に向けられたセリフなのだと嫌でも判る。


 撮影現場だと言うのに撮影はおろか休憩すらもとうに中断された状態で、緊張のあまり私はゴクリ…とつばを飲み込んだ。


 この場合、逆らうのはもっとも危険な行為に違いない。

 ラブミー部員として請け負った任務を素早く遂行し、大先輩の意思に従い即座に敦賀さんのそばに行かなければ…!!



 了解の意思を示すため、急いで一回首を縦に振ると、すっかり私と同じように敦賀さんへと向き合っている本来の目的地であった忘れ物の主さんに向けて、私は再度、意識と身体を向き直らせた。



「 あの…すみません、荷物を… 」


「 ん…?ああ、そうだよね。何だか敦賀君に見入ってボーッとしちゃった。助かったよ、ありがとう… 」



 荷物を受け取ってもらった瞬間、敦賀さんの口から鋭い言葉が走った。


「 キョーコ!早くこっちにおいで! 」



 ザワリ…と澱んだ空気が現場内に充満する。まず間違いなく私を始めとするこの場にいた全員が、顔色を一瞬で青に変えた。



 …敦賀蓮は温厚紳士。

 その見目麗しい造形美の相貌に浮かぶのは、いつだって春の陽射しのような笑顔。


 柔らかい口調、深い思いやりを感じさせる態度。

 それが大体の人が抱いているだろう、敦賀さんのイメージなのに…


 そんな彼はいま、どこにもいない。




 ――――――― …い、やだ…信じられないほど真剣に怒ってる…。




 二度見した敦賀さんの顔には、人を射殺せるような凄味のある表情が浮かんでいた。


 どうしてあんなにも真剣に怒っているのか、もう本当に判らない。



「 いま!!伺いますっ!! 」



 こんな理不尽にも思える状況なのに、そのとき私の感情を支配していたのは、嫌われたらどうしよう…。ただそれだけだった。


 ごく自然に左足を軸に立ち、左手を自分の腰に置いた敦賀さんは、右手をゆっくりと持ち上げて、天に向けた手の平の上で二本の指を何度も折り畳んで私を呼ぶ。


 この現場にいる誰もが自分のすべき仕事の手を止め、ぎこちなく敦賀さんへと向かっていく私と、かつて想像したこともないだろう初めて見る大魔王、敦賀蓮の言動を見守っている。



 一歩進んで行く毎に、私の呼吸は難しくなっていくようだった。




 どうして、ですか

 なんでそんなに怒っているんですか…?


 挨拶はきちんとしました。

 私と視線を交わしてくれたあなたは、私が顔を上げた時、それこそ優しい笑顔を浮かべて満足そうに口元を緩めてくれた。


 なのに自分の何が敦賀さんの怒りスイッチを押したのかが判らない。



 心細さを感じながら、異世界に紛れ込んだ哀れな主人公のように場違いな恰好のまま現場の奥へと歩みを進めた。

 耳に届くひそひそ声。あれが京子?…と囁いている声が聞こえる。



 そうだった…。そう言えば、なぜ敦賀さんは私を芸名で呼んだんだろう?



「 ようやく来たね、キョーコ 」


 表情はまだ厳しさを伴ったままだった。私を見下ろした敦賀さんが、それでも静かに私の名を呼ぶ。


 見上げた自分の目に映る、敦賀さんの瞳に宿った優しい輝き

 なぜだかそのとき、ふとあの時の言葉が鮮明によみがえった





 ――――――― そのうち判るよ、嫌でもね




 全身を甘い感覚が突き抜けてゆく

 もしかしたら…という予感が私の背筋を震わせている



 ……もしかして、違うんだとしたら…?


 敦賀さんがいま口にしているその名前は、私の芸名なんかじゃなくて…



 キュン…と心臓が激しく軋む

 照れくささと嬉しさに、赤く染まろうとする頬が熱い


 逸らすことも敵わない視線の先

 一度瞼を閉じた敦賀さんの瞳が静かに、厳かに開かれてゆく


 射抜くように怒っていた真顔がだんだんと緩んでいって

 そうして敦賀さんは甘くて神々しい笑顔を浮かべた



「 …敦賀さん。どうしてさっき怒ったんですか?どうしていま、敦賀さんはそんな嬉しそうに笑っているんですか 」


「 怒ったのは、ここに俺がいるのに俺より先に君が他の男に近づいたから。いま取り敢えず満足しているのは、君が俺のお願いを聞いて、ちゃんとこっちに来てくれたから 」



 …え?お願い…?

 あれってお願いだったんですか?


 ものすごーく強制的な命令だと思ってた。



 溢れた笑顔を見つめながら、それでもどうしようもなく自分の胸が甘く疼く。

 嫌われた訳ではないのだと判って、拡がる安堵から私はホッと息をついた。



「 あれ?よく判らないけど敦賀君の怒り、とけたんだ。忘れ物を届けてくれたお礼に一肌脱ごうかなーと思ったんだけど、要らぬおせっかいだったみたいだね? 」


 荷物を受け取った男優さんが、いつの間に近づいてきていたのかニッコリと笑って私の顔を覗き込んだ。

 良かったね、と目を細め、その人が気さくに私の肩を叩こうとしたそのとき…


 敦賀さんへと引っ張られる重力が発生すると同時に、再び敦賀さんの声が現場内を駆け抜けた。



「 申し訳ありませんけど、彼女がプライベートな状態のとき、俺の了解なしにこの子に触れるのは遠慮して下さい 」



 私を引き寄せたのは間違いなく敦賀さんで

 私を両手で抱き締めているのも間違いなく敦賀さんだった。



「 わ…あわわ…っ!!つ…つるがさーん…! 」



 これは一体、何の冗談?

 この間からもう、敦賀さんはおかしなことばかり



「 ふうん…この子に触るのに敦賀君の許可が必要なんだ 」


「 はい、必要です。もっとも、求められてもまず間違いなく認可しませんけどね 」



 もう!!敦賀さん、やめて下さい!

 そもそもどうして敦賀さんが許諾をするんですか


 自分の本名を呼ばれただけで、充分甘い罠だったというのに


 これ以上なにかを言われたら、もう私、正気でいられる自信がない…



「 つ…敦賀さん、私いま、ラブミーツナギですよ?私がここにいるのは事務所に荷物を忘れたこの方へそれをお届けするためであって、従っていま私はプライベートではありません 」


「 君こそ何を言ってるの?君はさっき荷物を無事に渡し終えたはず。その時点でもう仕事は終わっているでしょ。それに、忘れちゃった?俺はこうと決めたら絶対に譲らない。俺の許可を求める必要がある、いま俺がそう決めた。異論、ある? 」


「 なっ!! 」


 変わらず私は敦賀さんの腕に抱え込まれたまま

 心臓がかつてないほど高鳴りを覚えて息苦しさは最高マックス



 撮影現場は先ほどと変わらず、人の目は全てこちらに向いているのが私の視界に鮮明に映った。


 抗う事は難しく、このままどうにかなってしまいそう…



「 異論、唱えたら聞いてくれるんですか? 」


「 ん?正直なところ、難しいね 」


「 ……じゃあ、言っても無駄じゃないですか… 」


「 判ってくれたならそれでいいよ。言っておくけど、君がこの世に生まれ落ちた瞬間から、君の総ては俺のものだから 」



 瞬間、ざわめきが冷やかしのそれに取って代わった。

 静まり返っていた撮影現場に再び溢れんばかりの活気が満ちる



「 やっ!!!信じられないこと言わないで下さいっ!! 」



 真っ赤になった顔を隠す様に、両手で自分の顔を覆って、更に逃げるように敦賀さんの大きな胸に縋り付いた。

 守るように抱きしめてくれたのは、やっぱり優しい笑顔を浮かべた敦賀さんで


 本当に不意に

 あの日、敦賀さんが私に言った、もう一つのセリフが蘇った





 ――――――― まあ、対策は立てようがないだろうけど




 本当に、確かに!!!


 予想もしていなかった、こんなこと。


 きっと誰に話したところで誰だって私が夢を見たとしか思わない。



 だって、信じられないでしょう?




 こんな人前で堂々と


 あろうことかあの敦賀さんが


 よりにもよってこの私に向かって


 こんなにも強烈な言葉をいくつも口走るなんて…




「 …もぉぉぉ…心臓、苦しいー…敦賀さんのせいなんだから… 」


「 そう?俺のせいだった?じゃあ、責任取るよ。ごめんね? 」


「 信じられない。何が、じゃあ…ですか 」



 勢いをつけて顔を上げるとクスリと笑った敦賀さんのくちびるが私の頬に優しく触れた。


「 そんなに怒らないで笑って… 」


「 この状況で笑えませんー 」


 でも、許してはあげよう、と思った。


 なぜならキュンキュンに泣き叫んでいる私の心臓と同じように


 私の耳に届く敦賀さんの心音も

 同じようにいま、早鐘を打っているから…






   E N D


これで本当の終話です。よし!о(ж>▽<)y ☆いちよー頑張った!!

次もガンバロー!!


判る人には判るネタバレ。判らない人には判らないネタバレ…。それは全て心にしまっておいてください(。-人-。)Σ\( ̄ー ̄;) おい


そして間をあけたつもりはないけれど、日付を確認すると結構あいてて驚いた(^▽^;)


⇒双対の追・拍手

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※さらに間をあけて続きが出来ました⇒「双対の護」 


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