【世界史人物15】ハルシャ王「利他的な行動」 | 新見一郎

新見一郎

勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

世界史の人物を紹介します。

今回は、ハルシャ王 です

は、山川の教科書のP60、《インド古典文化の黄金期》で登場します。

 

●いつの時代?

AD630年頃(玄奘と親交)

 

●どこの人?

ヴァルダナ朝

インド人

 

●何をした人?

ヴァルダナ朝はインドの王朝で、ハルシャ王はその王様です。

 

 

●インドの歴史

ハルシャ王の話をする前に、インドの歴史について話をしておきます。

インドの歴史は、次の4つ王朝で説明されています。

 

①マウリヤ朝(BC317〜BC180年)

②クシャーナ朝(AD1〜3世紀)

③グプタ朝(AD320〜414年)

④ヴァルダナ朝(AD606〜647年)

 

まず、マウリヤ朝ですが、インドをはじめて統一した王朝です(マウリヤ朝については、こちら をどうぞ)。

マケドニアのアレクサンドロス大王、その後のセレウコス朝シリア、さらにその後のパルティアと同じ時代です。 

このためヘレニズム文化(ギリシアとメソポタミアの文化が融合したもの)の影響を受けます。

同時に、仏教が誕生し、広まりはじめた時代でした。

マウリヤ朝は、内乱によって滅びます。

 

次に、クシャーナ朝です。インド北部を支配しました。

この時代、インド南部はサータヴァーハナ朝が支配していました。

2つの王朝が存在していたわけですが、インドは南部よりも北部が栄える傾向があります。

クシャーナ朝は、ローマ帝国の五賢帝と同じ時代です。

平和な時代でしたので、ローマとの交易が盛んでした。

このためローマの影響を受けます。

同時に、大乗仏教が誕生し、中国等に普及が進んでいった時代でもあります。

クシャーナ朝は、ササン朝ペルシアに滅ぼされます。

 

※画像参照元:山川の世界史

 

次に、グプタ朝です。インド北部を支配しました。

グプタ朝は、ローマ帝国が東西に分裂した頃と同じ時代です。

この頃、インドではヒンドゥー教が流行しました。

インド独自の文化を作り上げました。

グプタ朝は、エフタルに滅ぼされます。

 

次に、ヴァルダナ朝です。

エフタルはインド西部を支配していましたが、インド東部にまで力が及んでいませんでした。

このためインド東部には小さな国家が存在していました。

その後、AD563年、エフタルはササン朝ペルシアに滅ぼされます。(ササン朝ペルシアについては、こちら をどうぞ)

この後、インド東部でインド人による王朝が興ります。

これがヴァルダナ朝で、最初の王様がハルシャ王です。

 

 

※画像参照元:山川の世界史

 

●ハルシャ王

ハルシャ王は、隣接の国家と争うことを避け、修好すること重視しました。

このため、この時代に有力だったササン朝ペルシア、中国の唐と国交がありました。

特に、唐との関係が良好だったようです。

唐の玄奘は、インドに訪れ、ナーランダー僧院というところで、仏教を学びます。

ハルシャ王も、玄奘に会っていて、手厚くもてなしたそうです。

この玄奘ですが、中国に帰った後、インドまでの旅を『大唐再域記』という書籍にまとめました。

船を使うことなく、全て陸路で往復しました。

実は、玄奘の別名は三蔵法師です。

そして、『大唐再域記』をモデルに作った冒険小説が『西遊記』なんです。

 

ハルシャ王に話を戻します。

この時代、インドはヒンドゥー教徒が多かったようです。

当初、ハルシャ王は、ヒンドゥー教を信仰していました。

その後、ハルシャ王は仏教を信仰します。

ハルシャ王は、仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教、全ての宗教を保護しました。

普通の王であれば、宗教を政治利用することが多いので、一つの宗教に絞り込みます。

ハルシャ王は寛容だったわけです。

『大唐再域記』によると、ハルシャ王の時代、30年間、戦争はなかったそうです。

このため、アショーカ王以来の名君と言わたそうです。

ちなみに、アショーカ王については、 こちら をどうぞ。

 

●ハルシャ王の名言

ハルシャ王について、ネットで検索しても名言がヒットしません。

ただ、ハルシャ王は「ナーガーナンダ」という戯曲(演劇の台本)を作っています。

多才な王様だったわけです。

この「ナーガーナンダ」は、主人公が、自分の命を犠牲にして、ある親子を敵から守るというストーリーです。

つまり、ハルシャ王は、次のことを重視していたわけです。

 

利他的な行動

 

利他とは、自己の利益よりも、他者の利益になることを優先することです。

利他行というのが大乗仏教の教えにあります。

つまり、「ナーガーナンダ」は、演劇を通じて大乗仏教を普及することが大きなテーマだったわけです。

利他の反対語は、利己です。自己中心です。

昨今、コロナウィルスが流行しています。ネガティブな気持ちになると、人間どうしても利己的になりがちです。

しかしながら、少しだけ客観的に物事を見て、他者への配慮や優しさを保つことが大切ですね。

 

●ハルシャ王の画像

※画像出典元:ウィキペディア

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%80%E3%83%8A

 

●玄奘の画像

※画像出典元:ウィキペディア

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8E%84%E5%A5%98%E4%B8%89%E8%94%B5

 

 

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