【問題14】
災害があった場合でも、上下水道システムの機能を維持する必要がある。
このことを踏まえ、
①上下水道における災害リスクとその影響を列記し、
②このうちあなたが重要だと考えるものを1つあげ、上水道、下水道それぞれと、協働で実施するべき技術的対策を提案し、
③あなたの提案がもたらす効果と実行時の留意点について述べよ。
解答例
1 災害リスクの影響
(1)地震
①地震動、液状化、津波による損壊・折損・漏水・浮上等(汚水処理不能、雨水排除不能、浄水処理不能)
②陥没やマンホール浮上による道路被害等が招く二次災害
③電力や薬品の供給停止(汚水処理不能、浄水処理不能)
(2)豪雨・落雷・土砂災害
①内水氾濫(一般家屋や施設の浸水)
②土砂災害による施設被害の発生
③合流管の越流水の増大(公共水域の水質悪化)
④河川や浅井戸の濁度上昇(浄水処理不能)
⑤施設被害(汚水処理不能、雨水排除不能、浄水処理不能)
⑥電力や薬品の供給停止(汚水処理不能、浄水処理不能)
(3)渇水
①取水制限や給水制限
こうした災害による上下水道の機能停止は市民生活、経済産業に甚大な影響を及ぼす。中でも地震は広範囲で甚大な被害が発生するため、その対策が特に重要になる。
2 重要と考える災害リスク(地震)
(1)下水道
①施設の耐震化(耐震設計、耐震補強、耐震管の布設、伸縮可とう管、セメント固化改良土を用いた管路の埋戻し等)
②バックアップの確保(下水処理施設間のネットワーク化、連絡管の整備、自家発電設備)
③応急用資機材の確保(修理用材料、仮配管、仮設トイレ、マンホールトイレ等)
(2)水道
①施設の耐震化(耐震設計、耐震補強、耐震管の布設、伸縮可とう管、重要給水施設管路の耐震化、給水管においてポリエチレン管等の採用等)
②バックアップの確保(浄水場間のネットワーク化、相互連絡管の整備、系統の複数化、自家発電設備、予備水源の確保)
③飲料水の確保(緊急遮断弁、耐震性貯水槽)
④応急用資機材の確保(移動式小型浄水場、給水車、応急給水用の仮設水槽、応急給水栓、仮設ポンプ、修理用材料、仮配管等)
⑤その他(配水池容量の増強、燃料タンクの増強)
(3)上下水道協働で実施するべき対策
①取水口・排水口の再編(排水口が水道の汚染リスクになるため、取水口の上流移設、排水口の下流移設を実施)
②災害発生時における上下水道の相互応援協力体制(人員の融通、復旧作業の合同実施)
③通水時期の調整(下水道の復旧状況を考慮した給水の再開)
④市民参加型総合防災訓練の共同実施
3 提案がもたらす効果と実行時の留意点
上下水道の施設の耐震化やバックアップの確保を進めることにより、震災時に被害を未然防止することが可能になる。これにより市民生活、経済産業活動を維持できる。
ただし、こうしたハード面の整備は完了までに長期間を要する。
このため、ハード面の整備と並行して、応急対応の充実を図ることにより、被災時の影響を最小限に抑制する必要がある。
全ての災害共通の対策として、応急用資機材の確保を推進するとともに、以下のようなソフト面の対策を進める必要がある。
①地震被害想定シミュレーションの実施とBCP策定
②マニュアルの整備・災害対応訓練の実施
③市民への災害関連情報の早期伝達
④非常時における広域連携・官民連携の推進
【参考】豪雨に関する対策
(1)下水道
①雨水排除(管渠や雨水ポンプの増強、河川改修等)
②雨水貯留(雨水貯留管、雨水貯留施設、校庭貯留)
③雨水浸透(浸透性舗装、浸透桝の普及)
④浸水時の対応強化(浸水シミュレーション、雨量監視と警報設定、ハザードマップ)
⑤バックアップの確保
⑥応急用資機材の確保
(2)水道
①水道施設の浸水土砂対策(安全場所への施設の移設、法面補強、防水堤、防水扉)
②バックアップの確保
③河川増水に備えて添架管や水管橋部分の推進工法・シールド工法の採用
④河川の濁度上昇に備えた原水調整池、高分子凝集剤注入設備の整備
⑤応急用資機材の確保
【参考】渇水に関する対策
(1)下水道
①雨水や下水処理水の再利用
(2)水道
①配水ブロック化による水圧調整、漏水修理
②未利用水利権の転用
③複数水源の確保及びバックアップの確保
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