H30技術士二次試験解答例(Ⅲ-1 問題文の読み込み) | 新見一郎

新見一郎

勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

H30年度の技術士二次試験で実際に出題された試験問題の解答例を作成しました。

上下水道部門の上水道及び工業用水道に関するもので、今回は【Ⅲ-1】。

新水道ビジョンに関する問題です。

これからの口頭試験対策、来年に向けての勉強等の参考にしてください。

 

問題】

【Ⅲ-1】

平成253月に新水道ビジョンが策定されて5年が経過した。この新水道ビジョンでは、水道を取り巻く環境の大きな変化に対応するため、将来を見据え、水道の理想像を明示するとともに取組の目指すべき方向性やその実現方策、関係者の役割分担を提示している。これを受けて水道事業体では、様々な取組を行っている。このような現状を踏まえ、以下の問いに答えよ。

(1)水道事業を持続するうえでの課題を多面的に挙げ、将来を見据えた水道の理想像についえ説明せよ。

(2)(1)に示したそれぞれの理想像に到達するために、水道事業体が行うべき取組を挙げ、その実現のための具体的な技術的提案を示せ。

(3)あなたの技術的提案を実行する際の取組面及び技術面の留意点について述べよ。 

 

 

【問題文の読み込み】

 問題文は、「リード文」と「問い」で構成されています。「リード文」では問題の背景や前提条件を説明し、「問い」は(1)〜(3)の3つの質問を設けています。

 

●リード文

リード文では、平成25年に策定された新水道ビジョンについて説明されています。

質問は水道の理想像についてなので、この文言だけなら、自由に自ら考える理想像を書いてもいいのでしょうが、この試験問題では、リード文で、新水道ビジョンについて言及されています。このため、新水道ビジョンに基づいて解答を作る必要があります。

新水道ビジョンについては厚生労働省のHPでダウンロードできます。必ず閲覧しておいてください。

 

 

●(1)について

(1)では、2つのことを問われています。「水道事業を持続する上での多面的な課題」と「将来を見据えた水道の理想像」です。

まず、問題文前半の「水道事業を持続する上での多面的な課題」ですが、「水道事業を持続する」、これを言い換えると、いろいろな課題がある中で将来に渡って水道を適切な状態で維持し続けるという意味になります。それから「多面的な課題」は、ちゃんと分類した上で、少なく3項目以上の課題をピックアップすることを求められています。このことを踏まえて、解答を作成する必要があるわけです。

新水道ビジョンでは、いろいろなページで課題が示されています。P1~P2【第1章 はじめに】、P4の図1、P7~P10【第3章 水道の現状評価と課題】、P11~P12【第4章 将来の事業環境】、それぞれで課題が列挙されています。

このうち、P11~P12【第4章 将来の事業環境】で、ちゃんと課題が分類されて、まとめられています。これを参考したらよいでしょう。

この章で掲げられたテーマは7項目です。具体的には、人口減少、②施設の効率性低下、③水源の汚染、④利水の安定性低下、⑤施設の老朽化、⑥資金の確保、⑦職員数の減少という7項目です。これをそのまま書いてもいいですが、個人的には、自然災害の多発を加えたいところです。解答は、先述の8項目について、課題を述べていけばいいと思います。

次に、後半の「将来を見据えた水道の理想像」です。これについては、新水道ビジョンのP13~P16の【5.1 水道の理想像】を参考にすればいいでしょう。

これによると「将来を見据えた」とは、50年後、100年後を見据えることを意味します。「水道の将来像」は、「時代や環境の変化に対して的確に対応しつつ、水質基準に適合した水が、必要な量、いつでも、どこでも、誰でも、合理的な対価をもって、持続的に受け取ることが可能な水道」を意味します。これを言い換えると、①安全、②強靱、③持続の実現です。解答は、この3つの観点で、将来のあるべき姿を述べていけばいいでしょう。

●(2)について

 (2)も、2つのことを問われています。「それぞれの理想像に到達するための取組」と「これを実現するための技術的提案」です。

 まず、問題文前半の「それぞれの理想像に到達するための取組」ですが、「それぞれの理想像」とは、安全・強靭・持続、3つの観点です。「取組」とは、技術的、財政的、組織体制的、法的、市民サービス的なものも含め、トータルでの対策だと考えてください。3つの理想像に到達するための具体的な取組については、新水道ビジョンのP17~P21の【5.2 取り組みの方向性と当面の目標点】に示されています。これを要約して述べればいいでしょう。

 次に、後半の「これを実現するための技術的提案」についてです。この技術的提案がこの問題のメインになります。先ほどの「取組」はトータルでの対策でしたが、「技術的提案」となると、技術的なものに限定されます。

「提案」と書いてありますが、独自の提案をする必要はありません。新水道ビジョンのP24~P44の【5.1 重点的の実現方策】に書いてある内容を述べればいいです。【5.1 重点的の実現方策】は、15の方策と細分化された対策が計上されています。以下のとおりです。

 

 

これら15方策の具体的な対策は、技術的なものだけではなく、それ以外のもの(財政的、組織体制的、法的、市民サービス的等)も含まれています。このため、技術的な側面が強いものをピックアップする必要があります。

それから、これら15方策は、安全・強靭・持続という3項目できっちり分類されているわけではありません。安全と強靭を満たすことも持続の前提条件なので、安全又は強靭、単独での方策といは言い難いですし、1つの方策が安全と強靭の両方に効果があるものも存在するからのです。

このため、15方策の具体的な対策の中から、安全、強靭、持続に特に関連深いものを示せばいいでしょう。

安全ならば、4)危機管理対策-①水源事故対策
 強靭ならば、4)危機管理対策-②施設耐震化対策 がいいでしょう。

持続ならば、2)資産管理の活用 がいいでしょう。
 他にも、技術的提案になりうる対策がありますから、自分の説明しやすいものを書けば大丈夫です。

ただし、必ず、技術的な対策について記述する必要があります。

 

●(3)について

(3)では、「技術的提案の実行時における取組面と技術面の留意点」を問われています。技術的提案の実行時とは(2)で提示したプランを実行する際です。

取組面の留意点とは、技術的提案だけで安全、強靭、持続を確保できるわけではないため、財政、組織、制度等の取組面について、実行するべき事柄で述べればいいです。

また、技術面の留意点とは、対策実施時に見落としてがちな事柄、工事中に注意するべき事柄、施設整備後の維持管理等を見越した対策について言及すればいいです。

 

具体的な解答例は、こちら をどうぞ。

 

 

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