技術士合格法(解答【Q10伸縮継手】) | 技術士を目指す人の会

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2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

H30年度技術士二次試験(選択科目)予想問題を作成しました。

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以下は、Q10(管路・伸縮継手)の解答例です。

 

【問題】

伸縮継手の設置を含む水道工事の設計を行う担当責任者として、次の内容について記述せよ。①伸縮継手を設置する目的、②導入時の検討事項、③維持管理上の留意点。

 

【解答例】

1 伸縮継手を設置する目的

伸縮継手は、温度変化による管路の伸縮、地盤の不同沈下、地震による地盤変位等を吸収し、管路に無理な力が作用するのを避ける、安全性を高めるために使用する。

伸縮継手は伸縮可とう継手と伸縮可とう管とに大別できる。

伸縮可とう継手は、管路の継手部分が伸縮性、可とう性を有する構造になっている。鋳鉄管の場合、伸縮可とう継手が一般的であり、離脱防止機構を併せ持つS形、NS形、GX形等の耐震継手が広く普及している。硬質塩化ビニル管の場合、RR形等の継手がある。

伸縮可とう管は、伸縮性、可とう性を備えた継手材料であり、管路にかかる変位応力を軽減できる。水管橋、添架管等において溶接継手の鋼管が使用されている場合、温度変化に伴う伸縮、添架した橋梁の挙動等に対応するため伸縮可とう管を設置する。伸縮可とう管には、クローザー形、ベローズ形、ビクトリック形、ドレッセー形等があり、鋳鉄管では離脱防止機構を併せ持つボール式が存在する。

 

2 導入時の検討事項

(1)設置環境の調査

埋設管路の場合、以下のような場所に伸縮可とう管を設置する。①埋設位置の決定、②支持地盤の軟硬の決定、③推定不同沈下量の検討、④支持力の有無について調査を行う。

・盛土地盤、埋立地、軟弱地盤等により不同沈下が広範囲に生じると予想される場所

・活断層近傍、液状化想定エリア等、地震被害が想定される場所

・急傾斜地、山稜の法面等、地震や豪雨災害により地盤が崩壊する可能性がある場所

・護岸(海・河川)近傍の地盤等、地震により地盤が水平移動する可能性がある場所

・構造物に固定された管路の取り出し部分

・シールドや共同溝内管路等の立ち上がり部分

・地震時に大きなウォーターハンマーが発生する可能性のある部分

露出管路の場合、①屋内・外の決定、②設置位置の決定、③気象条件(布設地域の気温の差、過湿の有無等)の調査を実施する。

 

(2)機能条件の検討

以下のことについて検討を行う。

・使用水圧、上載荷重の決定(土被量を把握する)

・伸縮量、最大変位角、変位量の決定

・設置場所、設置個所数の決定(露出の場合は20〜30m間隔が基本)

・耐久性、水密性に関する安全性の検討

 

(3)形式等の検討

以下のことを検討して、管路が受ける角度変位、伸縮、ひねり等を踏まえて最適な伸縮継手を選択する。

 ・口径、面管長の決定

・仕様(材質、塗装、付属機能等)の決定

・電食防止の必要性について検討

 

3 維持管理上の留意点

埋設管路については、定期的に漏水調査を実施する。鋼管については、電食防止に関する調査を実施する。地震発生後は、適宜、管内カメラを用いて変位量を測定する。

露出管路については、変位量を測定する。さらに、目視点検による管体、伸縮可とう管本体及びボルトナットの腐食・劣化等を調査するとともに、超音波測定器による管厚調査等を実施する。

 

 

【補足説明】

上述の内容は、『水道施設設計指針』、『水道施設耐震化工法指針・解説』に記載されている伸縮継手の内容をまとめたものです。

問題文に「伸縮継手」と書いてあったら、地震対策で設置する鋳鉄管用の伸縮可とう管(離脱防止機構を併せ持つボール式)を一番最初にイメージしてしまいます。

しかし、設計指針では、伸縮継手を「伸縮可とう継手」と「伸縮可とう管」に大別した上で、様々なものを掲載しています。

少なくとも設計指針の伸縮継手のページは読んでおいてください。

それから、平成30年度は給水装置に関する問題が出題される可能性があります。ここ数年間、水道メーターの盗難、誤接合、凍結による漏水等の案件があったからです。伸縮継手については、水道管だけではなく、給水装置においてサドル式分水栓の分岐部に可とう継手を設置します。これも要チャックです。

 

 

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