技術士合格法(解答【Q2高度処理】) | 技術士を目指す人の会

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2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

H30年度技術士二次試験(選択科目)予想問題を作成しました。

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以下は、Q2(高度処理)の解答例です。

 

【問題】

凝集沈殿ろ過処理の浄水場において、原水中の有機物に起因する消毒副生成物の発生が問題になっている場合、既存施設の改良又は廃止という視点で対策するべき事柄について述べよ。

 

【解答例】

1 消毒副生成物

トリハロメタン等の消毒副生成物は、原水中の有機物等と浄水場で注入する塩素剤が反応して発生する。消毒副生成物は、通常の凝集沈殿ろ過処理では除去が困難であり、水質基準値を超過する恐れがある場合、対策を講じる必要がある。

 

2 既存施設の改良による対策

①有機物等を除去するため、オゾン処理(酸化)、粉末活性炭処理(吸着)、粒状活性炭処理(吸着)を導入する。粒状活性炭の延命化を図るため、前段でオゾン処理を行う。有機物等の少ない水源に変更するのも有効である。

 ②消毒剤の注入量を抑制するため、前塩素を中塩素に変更する。浄水場での塩素の大量注入を回避するため、配水施設において追加塩素設備を設ける。老朽化した配水管の更新、ダウンサイジングも有効である。また、配水施設で水が停滞すると消毒副生成物が増加するため、応急措置として、配水池の低水位運用、配水管のドレン量増加を行う。

 

3 施設の廃止による対策

消毒副生成物が問題になっている浄水場を廃止するため、他の浄水場との統廃合を行う。この場合、2つの配水系統を連絡する送水施設等を整備する必要がある。

浄水場を廃止する際、水需要予測を実施し、送水元の浄水場が能力不足にならないことを確認する。また、災害・事故リスクが、統合する浄水場に集中するため、施設の耐震化、予備力強化を図るとともに、隣接する事業体との相互連絡管等の整備を行い、冗長性を確保することが重要である。

 

 

※ 補足説明

高度処理の導入は、以下のような課題があります。

①最適な処理方法の検証に係る実験が不可欠であり時間を要する。

②オゾン、粒状活性炭の導入は費用を要する。

③既存浄水場に高度処理を追加するためには、用地が必要になる。

つまり、「時間的猶予」、「費用確保」、「用地確保」が揃って、はじめて高度処理の導入が可能になるわけです。

そう考えると、高度処理というシステムは、既存施設の改良よりも、浄水場の更新にあわせて導入するのが現実的です。

 

次に、浄水場の更新について考えてみましょう。

同一スペースで浄水場を更新するとしたら、まず1系統分を撤去して、同一スペースに高度処理を含む浄水処理を新設することになります。これを繰り返し実施して、浄水場全体の更新を完了します。

この場合、更新工事が完了するまでの期間、浄水場の能力が半減することになります。この不足を補うため、隣接した他の浄水場からのバックアップが必要になり、こうしたバックアップを長期間、実施可能なのであれば、浄水場の統廃合を進めればいいことになります。多くの水道事業体がこうした選択をするのだと思います。

ただしです。商品を製造する浄水場が減少することは、事業運営上、大きなリスクを背負うことになります。

様々な対策を講じたとしても、災害や事故により一つの浄水場全体が機能停止になる可能性はゼロにはなりません。先程の例で言うと、水源水質が変化して、統合した浄水場でも消毒副生成物が発生する可能性もあります。さらに、統合した浄水場もいずれは更新時期が到来します。その際、バックアップが必要になるわけです。廃止した浄水場の粉末活性炭でも消毒副生成物対策が可能だったのであれば、稼働率を下げて存続しておけばよかったという事態に陥る可能性があるわけです。

このため、施設の統廃合を実施するにあたっては、LCCの算定はもちろんのこと、長期的、広域的な視点で様々な選択肢を用意して、メリット、デメリットについて総合的な評価を行った上で、最善策を決断することが重要になります。


※なお、消毒副生成物を除去する方法としては、高度処理以外に、NF膜、RO膜等もあります。ただし、これら高度な膜処理は、地下水に含まれる硝酸性窒素や海水に含まれる塩分の除去等への導入実績はあるものの、消毒副生成物対策としての導入実績が見受けられない。このため記載しなかったです。

 

 

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