H29 技術士試験 予想問題の解答(Q10広域化) | 技術士を目指す人の会

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2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

【予想問題 Q10】

小規模水道の事業運営が難しくなってきている現状を踏まえ、

①複数の小規模水道を事業統合する際の課題を多面的に述べ、

②これら課題のうちあなたが最も重要と考える課題を1つあげ、解決のための技術的提案と、

③あなたの技術的提案がもたらす効果、実行時の留意点について述べよ。

 

【解答例】

1 小規模水道の事業運営が難しくなっている背景

近年、全国的に少子高齢化が進んでおり、小規模な市町村では、過疎化の問題も加わり、料金収入は減少傾向である。

水道を維持するための予算と技術者の不足は、水道品質の低下を招き、事故災害時のライフラインを確保できなくなる。

また、小規模な水道事業は、山間部等に集落が点在している場合が多い。このため、複数の小規模浄水場を有しており、人口に対して管路延長が大きく、維持管理の効率性は低い。

さらに、施設の老朽化が進んでおり、大きな問題となっている。

こうした小規模な水道の抱える問題を解消する手段として、広域化が有効である。

広域化は、一般に、施設の共同化、管理の一体化、経営の一体化、事業統合の4種類がある。ここでは事業統合について述べる。

 

2 複数の小規模水道を事業統合する際の課題

事業統合する場合、以下のような課題がある。

①施設水準の統一

(施設の老朽度が異なる場合、全体の施設について評価を行った上で、適切に更新・補修を行い、レベルの統一を図る必要がある。アセットマネジメントの実施、施設台帳の整備等が課題になる。)

②水道品質の統一

(統合前の事業体間で、供給している水道の水質や水圧が異なる場合、目標となる水準を明確にした上で、統一を図る必要がある。水安全計画の策定等が課題になる。)

③維持管理レベルの統一

(統合前の事業体間で、点検、清掃等の頻度、セキュリティーレベル、水質監視レベル等が異なる場合、統一を図る必要がある。維持管理のマニュアル等が課題になる。)

④施設の最適化

(事業統合により施設数が増大する。統合前と同じ人数で維持管理をしたのでは統合したメリットが得られない。管理する施設数を縮減する必要がある。省力化等が課題になる。

⑤料金差の是正

(事業体間で水道料金が異なるため、料金アップするエリアの住民説明が必要になる。説明責任、財政収支計画の策定等が課題になる。)

 

3 重要課題の解決に係る技術的提案

前述した課題のうち、施設数の最適化を進めることは、維持管理の省力化と更新費用の抑制が可能になるため、最も重要であると考える。

施設の最適化を図るため、複数の小規模浄水場を一か所で統括管理できるよう、中央監視制御装置を整備し、遠隔で施設を集中管理できる体制を整える。施設と水質を監視できるよう、監視カメラの設置し、魚類自動監視装置、水質モニター装置等を設置する。

さらに、水需要予測を行った上で、余剰水量が発生する場合、隣接した浄水場、配水池、ポンプ所の統廃合を推進する。管路についても、系統連絡を行い、更新にあわせてダウンサイジングを行う。

 

4 技術的提案の効果と実行時の留意点

中央での集中管理により、施設に常駐していた運転管理要員の人件費を削減できる。

施設の統廃合により、維持管理費の抑制、更新費用の抑制が可能になる。

中央での集中管理は、インターネット回線を使用することが一般化している。この場合、ウィルス感染や不正アクセスへの対策を万全にする必要がある。

また、施設を無人化した場合、事故発生時に、速やかに技術者が現場出動し、応急対応できる体制を整えておく必要がある。

施設の統廃合は、将来的な水需要予測を実施した上で行わなければならない。また、適切な時期に統廃合を行うため、アセットマネジメントを実施することが不可欠である。

無人化、統廃合によっても、縮減できる施設数は限られている。このため、施設を効率的に管理するため、事業統合にあわせて、官民連携を推進することも重要である。

 

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