●「ひろげる」とはどのようなことをすることなのか
「8.2 くっつける」のところで前述したとおり、試験本番では、「くっつける」のみで対応できるのが理想なわけですが、もちろん、そうならないことがあります。出題されたテーマに関連した解答を1つしか用意できていなくて、くっつけるための解答が存在しない場合です。
例えば、3枚記述する場合、2枚分は書けそうだが、残り1枚が埋まらないというケースです。ここであきらめてしまうと、試験の結果は明らかです。合格するためには、こうした状況下でも次のように考える必要があります。
『どうにかして、文章を書き足そう』
試験本番で新たな解答を作るわけですが、限られた時間でこれをやるには、主題されたテーマについて頭の中に残っている情報とフレーズを最大限に引き出す必要があります。どうにかして文章化して書き足す、これが「ひろげる」という作業です。
それでは、「ひろげる」という作業において、書き足すべき文章はどこに存在するのか?
次の2つの場所です。
①これまでに作った解答の一部
②これまでに整理した情報
予想問題が完全的中しない以上、「ひろげる」を念頭においた準備が必要です。合格するためには、勉強段階から「ひろげる」作業を念頭においた準備が必要です。そして、勉強するなかで、「ひろげる」ための準備を行うことができるのが、解答を作る作業と情報の整理する作業なのです。
●これまでに作った解答の一部をひろげる
これまでに作ったことがある解答であれば、記憶が残っているはずです。
この記憶があれば、比較的容易に「ひろげる」作業ができます。
これまで述べてきたとおり、解答の作成は、「70%の解答」の作成と「100%の解答」という二段階で行います。
「70%の解答」の段階で、多くの文章を作成したとしても、「100%の解答」の段階で、原稿用紙以内にまとめるため、文章の一部を削除することになります。
「ひろげる」ネタは、編集作業を経た後の解答には残っていません。「ひろげる」ネタは、削除した文章の中に存在します。削除した文章が存在するからこそ、「ひろげる」ことができるわけです。削除した文章に関する記憶を頭の片隅から手繰り寄せるわけです。
「ひろげる」ためには、「70%の解答」の作成段階において、できるだけ多くの文章を作成することが重要になります。文法は気にせず、調べたこと、思いついた情報をとくにかく書き綴ってください。1枚物の問題であれば1枚半、3枚物の問題であれば4枚程度の解答を作るくらいが目指です。
できるだけ多くの文章を作成してください。
この地道な努力により、試験本番で「ひろげる」ことが可能になります。
●これまでに整理した情報をひろげる
予想問題が的中していない状況下では、前述した「これまでに作った解答の一部を活用」だけでは、対応できない可能性もあります。つまり、一度も文章を作っておらず、原稿用紙が埋まらない状況です。それでも、試験本番では何とか文章を作成して、原稿用紙を埋める必要があります。そんな時は、次のように考えるはずです。
『どうにかして、あの情報を文章化しよう』
では、その情報はどこに存在するのでしょうか?
それは「情報の体系化」の段階です。
「情報の体系化」では、多くの情報を目にしているはずです。予想問題が完全的中しない以上、「ひろげる」を念頭においた準備が必要だと言いましたが、まさに、その準備を行おうのが「情報の体系化」の段階なのです。
特に重要なのが、各テーマに関する「現状・課題・対策」です。
例えば、以下のようものです。
この「現状・課題・対策」を作成する際、様々な情報を整理したはずです。そして、これに記されている情報を記憶できていれば、試験本番で「ひろげる」作業が可能になります。
このため、できるだけ自分目線で「現状・課題・対策」を作って、これをベースにアレンジできるようにしておくこと大切です。
そのためには、「現状・課題・対策」の内容を頭の中に刷り込むことを意識することが重要になります。
また、試験直前、「現状・課題・対策」の内容をチェックすることも重要です。試験直前は、勉強時間の累積がピークになります。自ずと知的な感度も高くなっていますから、記憶に残りやすいです。最後の最後のちょっとした工夫が、合否を決めたりします。
●抽象的な問題を考えることによって「ひろげる」能力を磨く
①これまでに作った解答の一部、②これまでに整理した情報という方法以外に、もう一つ「ひろげる」能力を向上させる方法があります。
この方法は簡単ではないですが、効果的な方法です。
その方法は、抽象的な問題を用意して、解答を作成するというものです。
例えば、「8.1 合格するためにやるべきこと」で述べたような問題が出題されたとします。以下の問題です。
①送配水管の「漏水防止」に関する方法を数例挙げ、その内容を説明せよ。
この時、受験生が「漏水防止」ではなく、「漏水修理」について解答を用意していた場合、その解答をそのまま書いたら不合格になってしまうという話をしたと思います。
これに対して、受験生が「漏水」に関する解答を作っていたらどうでしょうか。「漏水」ならば、漏水調査、漏水修理、漏水防止、漏水率等について文章を作成することになります。そうならば、この解答の中から、「漏水防止」の部分を抜き出せば、ある程度の解答を作ることが可能です。
つまり、「漏水修理」や「漏水防止」よりも「漏水」の方が、範囲が広く、抽象度が高いため、様々な問題に柔軟に対応できるわけです。
そう考えると、予想問題の抽象度を高めて解答を作成しておけば、多種多様々な問題に、柔軟に対応できることになります。例えば、次のよう抽象的な予想問題を用意して、解答を作成していたとします。
③送配水管の「維持管理」について説明せよ。
この解答は、送配水管の「維持管理」について述べる必要があります。漏水だけではなく、管路の機能診断、アセットマネジメント、残留塩素管理、流量・水圧管理等についても言及する必要があります。
こうした解答を作っておけば、試験本番で出題されたのが、「漏水修理」であっても、「漏水防止」であっても、何らかの文章を書くことができるはずです。
抽象的な予想問題の解答を作っていれば、予想が完全に外れるという事態を回避できます。抽象度を上げることにより、どのような問題にも柔軟に対応できる能力を身につけることも可能になります。
★★★ 次回は、平成30年度の技術士2次試験の予想問題を発表したいと思います。
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