「場面緘黙が治ったきっかけ」
これまで数多くの「緘黙症状が治った方」「話せるようになった方」に出会ってきました。
場面緘黙の症状が人それぞれなように、緘黙症状が治ったきっかけも人それぞれです。
このテーマではそんな、「話せるようになったきっかけ」を紹介していきます。
【きっかけ】「友だちを家に呼んで「話す練習」」
友だちとの関係から緘黙症状が改善していくケースはとても多いです。
たぶん「場面緘黙が自然に治る」ケースの多くは、友だちからではないかと思っています。
「友だちと遊ぶときに声を出せた」というのも、色々な状況があります。
ここでは、しっかり準備を重ねて、最初の一言を言ったケースを紹介します。
【事例】
小学3年生の子の例です。
保育園から緘黙症状があって、小学校でも声を出すことが出来ない状態です。
保育園時代からの仲の良い友だちが1人いるのですが、まだ話すことができません。
この子は、「友だちと話したい!」という意思がはっきりとありました。
そこで「どうしたら友だちに声が出せそうか」をこの子と一緒に考えました。
前回の記事にも書いた方法で、「人」「場所」「話す内容や活動」の要素を考えました。
人:友だちと2人ではなく、妹も一緒にいるときに。
場所:自分の家で。休みの日に。
話す内容や活動:UNOなど、声を出す要素があるゲーム。
・・・「この条件でできそう?」と聞くと、少し悩んでからうなずいてくれました。
このように本人が「できそう」と感じている場合は、上手くいくことが多いです。
もし1回目で上手くいかなくても、やり方を変えて試せば、そのうち成功します。
ここまでくれば、もう治ったようなものだと私は思っています。
【解説】
「先生と話す」ことと「友だちと話す」こと。
どちらを先に目指したらよいかは、人によって違います。
どちらにも長所があるので、状況によって最善の方を選ぶことが大事です。
「友だちと話す」ができると、生活の質が一気に向上します。
この子のように「仲は良いけど話せない友だち」がいるなら、こちらを先に選ぶのもありです。
こういうときもやはり、「話す練習」として行った方がよいでしょうか?
「普段の生活の中で自然に話せるようになるのを待つ」のではダメでしょうか?
もちろん「ダメ」ではないですが、やはり場面設定をちゃんとした方がいいです。
その理由は、待っていても「友だちと話しやすい条件」は整わないから。
これは前回の「担任の先生との「話す練習」」と全く同じです。
「話しやすい条件」というのは、以下の3つの要素に分解することができます。
1.人
2.場所
3.話す内容や活動
この3つの要素はセットになっていて、場面ごとに連動して変化します。
「友だち」がいるのは、たいていは「学校」で「集団で学校生活を過ごす」ときです。
意識して誘わなければ、友だちが家にくることはありません。
ですが緘黙症状のある子は、「友だちを家に誘う」のがとても難しいのです。
(これが重要なポイント!)
「家にきてくれれば話せるかも・・・」と思っていても、その機会はなかなか訪れません。
だからこそ、話しやすい条件を意図的に作るのです。
これが、「話す練習」が緘黙症状改善のきっかけになる理由です。
「友だちが家に遊びにくる」
この機会を作るだけでも、場面緘黙は治るかもしれないということです。
【注意点】
事例の紹介にあたっては、本人・家族等の同意を得ています。
ただし個人に関わる情報ですので、転載は絶対にしないでください。
また必要に応じて細部を改変していますので、事実と異なる場合もあります。
この「場面緘黙が治ったきっかけ」は、あくまで個別のケースで上手くいったものです。
同様の方法を行っても、他のケースに対しては上手くいかない場合もあります。
緘黙症状改善の方法は、様々な要素を考慮した上で、慎重に判断してください。