「場面緘黙に効果のない治療法」5つのタイプ | 場面かんもく相談室「いちりづか」

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 「場面緘黙に効果のない治療法」の分類 

「場面緘黙に効果のない治療法」には、色々なものがあります。

まったく効果のないものから、「ちょっと惜しい」ものまで。

 

これまでの多くの方からの相談から、5つのタイプに分類しました。

 

 

 場面緘黙に効果がある手法だが、その子に適していないもの 

緘黙症状を改善させる方法には、様々なものがあります。

 

代表的なものは、

「放課後に学校で音読の練習」

「録音した声を担任の先生に聞かせる」

「友だちと家で遊ぶ機会を作る」

「お店で声を出して注文する練習」

などです。

どれも、使い方によっては効果があります。

 

ただし、「どの方法でも必ず効果がある」訳ではありません。

その子に合った方法をしっかり選ばなければ、効果がありません。

 

先輩の保護者の手記などで「○○の方法で治った」という話を聞くこともあると思います。

これは情報としては有用です。

ですがそのまま真似をしても上手くいきません。

その子に合った、最適な方法を考える必要があります。

 

心理療法として確立した手法だが、場面緘黙には向いていないもの

心理療法として確立した手法であれば何でも効果がある訳ではありません。

場面緘黙に適していなければ、当然効果はありません。

 

相談でよく出会うのは「箱庭療法」「プレイセラピー」を受けているケースです。

 

「プレイセラピー」を受けている子は、相談にくるケースでは最も多いです。

「自治体の相談機関でプレイセラピーを受けているが、一向に改善しない」

これはもう「場面緘黙あるある」です。


「箱庭療法」を受けている場面緘黙の子にもたまに出会います。

こちらも同じで、ほとんど無意味だと私は考えています。

 

これらの手法で改善しない理由は明白です。

「園や学校で話せるようになること」に取り組んでいないからです。

プレイルームでカウンセラーと遊んでいても、学校で話せるようにはなりません。

 

ASDやADHDなど他の障害に効果があっても、場面緘黙には効果がないものもあります。

例えばASDの子によく使われる「SST」が一例です。

場面緘黙は一般的に「ソーシャルスキル」の問題ではないので、SSTでは改善しません。

もちろん緘黙症状の原因がソーシャルスキルの不足だという子の場合は、効果が期待できます。

 

 知識のない「専門家」が独自に考案した方法 

「関連する分野に精通していても、場面緘黙については詳しくない」という専門家は多いです。

これは私は悪いことだとは思いません。

発達の問題や心身の問題は多様ですから、何でもオールマイティに対応できる人はいません。

私も、自分の専門分野ではないことは詳しくありません。

 

問題なのは、「知らない」ことを素直に認められない「専門家」がいることです。

これは自治体の相談窓口や小児科など、色々な子が相談にくるところで起きやすいと思います。

 

場面緘黙についての知識がない「専門家」に、場面緘黙の相談があったらどうなるでしょう。

「申し訳ありません。場面緘黙については詳しくありません。代わりに○○を紹介します」

と素直に言ってくれれば問題ありません。

 

有害なのは、その場凌ぎでいい加減な方法を編み出して、提案してしまうことです。

そして、よせばいいのにその後も月2回くらいカウンセリングに通わせ続けてしまうことです。

一度この罠にかかってしまうと、長期間この効果のない治療法に費やすことになります。

 

通っても通っても、緘黙症状は改善しません。

改善しなければ暗い気持ちになり、親子共々疲弊します。

そして子どもに「いくらやっても話せるようにならない」という思いを植え付けます。

最悪の展開だと私は思います。

 

 疑似科学的な「治療法」 

「インナーチャイルド」「ホメオパシー」など、多くの非科学的な「治療法」が存在します。

もともと保護者自身がこういうのが好き、というケースが多いのではと推察します。

 

残念なことに、こういった疑似科学にハマっている方は、私のところには相談にきません。

ですのでこういうケースの相談を受けることは多くないのですが、話にはよく聞きます。

 

子どものために、どうか効果のある方法を選んで下さいと願うばかりです。

 

 「治さなくてもいい」という考え方 

これは「治療法」ではないので、厳密には「場面緘黙に効果のない治療法」とは言えません。

ですが緘黙症状の改善を妨げる強力な障壁であるため、ここに加えました。

 

学校の先生や自治体の相談機関などで、これを言われるケースが多いように感じます。

「共生社会だから」

「障害も個性の一部」

「ありのままを受け容れて」

「障害は「治す」ものではない」

「場面緘黙があっても社会で活躍できる」

「場面緘黙があっても自分らしく生きることが大切」

「話せなくても支援機器を使えばコミュニケーションができる」

「障害があっても困らないように支援するのがインクルーシブ教育」

など聞こえのいいことを言われて、追い返されてしまうケースはよくあります。

 

もっとも危険なのは、保護者がこの考え方に納得してしまう場合です。

保護者が「場面緘黙は治さなくてもいい」と思ってしまったらどうなるでしょう。

親の協力がなく、子ども自身の力だけで緘黙症状を改善させるのは、非常に困難です。

 

この考え方が間違っている理由は、とても簡単です。

「場面緘黙は「治らない障害」ではないから」

 

場面緘黙の症状は治すことができます。

緘黙症状に気付いたら、できるだけ早く改善に取り組むことが大切です。