場面緘黙の子は「特別支援学級」と「通級」のどっちがいいの? | 場面かんもく相談室「いちりづか」

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長所と短所があるので、

その子の状態によって選びましょう。

まずは「特別支援学級」と「通級」の違いをしっかり知っておくことが大切です。

 

 「特別支援学級」と「通級による指導」の違い 

「特別支援学級」と「通級」の最大の違いは、「在籍する学級」です。

 

特別支援学級はその名の通り「学級」です。

ですので、学校生活全体を特別支援学級で過ごすのが基本になります。

授業の他、休み時間や給食、掃除、学校行事なども特別支援学級で行うのが基本です。

通常の学級とは、「交流」という形で行き来します。

(この「交流」の時間をかなり長めにとっているケースもあります)

 

通級は「学級」ではないので、通常の学級に在籍します。

学校生活の限られた時間(週1時間というケースが多い)だけ通級して、指導を受けます。

「緘黙症状の改善」「障害の理解」など、障害の内容に焦点をあてた治療的な内容が基本です。

(この指導を「自立活動」と呼びます)

通級以外の時間は通常の学級で他の子たちと同じように学校生活を送ります。

 

 

 「学校生活全般にわたる支援」か、「緘黙症状の改善」か 

では特別支援学級と通級の選択についてはどう考えたらよいでしょうか。

 

考慮すべき要素は多いですが、あえて単純化すれば「緘黙症状だけの問題か」

 

緘黙症状だけが問題の場合は通級がよいでしょう。

学校生活全般に支援が必要な場合は特別支援学級が適しています。

 

とは言え、実際はそれほど単純ではありません。

そもそも「緘黙症状だけが問題」という場面緘黙の子はほとんどいないからです。

大半のケースでは緘黙症状の他に、運動や書字、着替え、食事、排泄などの問題も伴います。

 

ですのでそういった要素を考慮しながら、「生活の場としての特別支援学級」がよいのか、

「緘黙症状の改善に特化した通級」がよいのかを総合的に判断することになります。

 

 特別支援学級の方が、「緘黙症状の改善」に取り組みやすい 

「緘黙症状の改善」に取り組みやすいのは特別支援学級です。

 

まず特別支援学級は利用時間が長いため教師と関係を築きやすいです。

これは緘黙症状の改善にとっては決定的に重要です。

また「話す練習」を行うためのスモールステップも、特別支援学級の方が設定しやすいです。

 

その点、通級は次のような短所があります。

・時間や頻度が少ないため、この時間の指導だけでは効果が出づらい

・通級で指導の成果が出ても、「通常の学級に活かす」(汎化)という段階が必要になる

 

ただし特別支援学級は他の児童生徒もいるため「個別」の指導が確保しづらいことがあります。

一方、通級は必ず「個別」の指導の時間が確保される点が長所です。

 

 その他の考えるポイント 

<在籍する他の児童・生徒との関係(特別支援学級のみ)>

特別支援学級は「自閉症・情緒障害」という分類になっています。

このため「自閉スペクトラム症」の症状のある子たちも多数在籍しています。

多動傾向の強い子や他者との関わりに苦手さのある子も多いでしょう。

そうすると場面緘黙の子にとっては、かえって過ごしづらい場になってしまうことがあります。

 

<自校通級か他校通級か(通級のみ)>

自治体や地域によっては、まだ通級の設置数が非常に少ないです。

地域差が大きく、全校に設置されている地域から5校に1校にも満たない地域まであります。

在籍校に通級がない場合は、「他校通級」または「巡回」という方式になります。

「他校通級」の場合は送迎が必要になるなど、負担が大きくなります。

 

<担当教員の「専門性」>

特別支援学級と通級とで一概にどちらが専門性が高いかは言えません。

ただ通級の方が研修の機会が多く、専門性が向上しやすい傾向はあります。

とは言え、必要なのは「知識」や「経験」だけではありません。

緘黙症状のある子と上手に関わることができるかどうかは、とても重要です。

 

<「雰囲気」や「相性」>

場面緘黙のような症状のある子たちにとっては、「雰囲気」や「相性」はとても重要です。

その子が「ここならよさそうだ」と思える場でなければ、上手くはいかないでしょう。

両方をしっかり見学して、より合っていると思える方を選べることが理想です。

 

<学校や自治体のの特別支援教育の運用方針(ローカルルール)>

特別支援教育の運用は、実は学校や自治体によって様々です。

以前の記事で書きましたが、ある自治体では「インクルーシブ教育」と称して「特別支援学級に在籍する児童も原則として通常の学級で過ごす」という運用をしています。

これでは、せっかくの特別支援学級が台無しです。

 

また機械的に「国語・算数は特別支援学級、それ以外は交流」としている地域もあります。

これは学習面の苦手さが強い子にはいいですが、場面緘黙の症状のある子には向きません。

「国語・算数は通常の学級、給食や掃除、音楽、体育などは特別支援学級」の方が、かえって安心感をもって過ごせるかもしれません。

こういった運用方針も、選択の際の重要な判断基準となるでしょう。