これができれば場面緘黙は治る、と思ったこと | 場面かんもく相談室「いちりづか」

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始業式の日に新しい担任の先生と話せたら、

もう場面緘黙は治ったようなもの

 

たくさんの緘黙症状のある子を見ていると「この子はすぐに治るな」と思うことがあります。

相談を続けている中で、「これでもうこの子の緘黙症状は治るな」と感じる瞬間もあります

 

今回は、「始業式の日に新しい担任の先生と話せた子」の紹介です。

新年度を迎える前後のことを中心にご紹介します。

 

【対象】

まどかさん(仮名)男性

小学1年生で相談開始

 

【概要】

当初は学校ではほとんど話せない状態でしたが、練習を重ねて話せる場面が増えてきました。

新年度になるタイミングで、新しい担任の先生と春休み中に会う機会を設定しました。

初対面の先生と、質問に答えたりしりとりをしたりすることができました。

 

【3学期の時点での状態】

1年間を通してご両親とオンラインで面談を続けて、少しずつ話せる場面を広げていきました。

3学期の時点ではこんなことができるようになっていました。

 

・クラスで仲の良い友だち2人とは話せる(もともとできた)

・担任の先生に限られた条件でなら音読を聞かせることができた(以前から少しできていた)

・通級の先生に録音した音声を聞かせることができた(3学期になってから)

・学習発表会ではクラスのみんなの前で原稿を読むことができた(3学期になってから)

・話せなくなっていた祖母とまた話せるようになった(3学期になってから)

・ファーストフード店で声で注文することができた(3学期になってから)

 

これだけできることが増えていれば、新年度のタイミングで症状をかなり改善させられます。

そのためには大事になるのが「新しい担任の先生と話せるようになる」こと。

 

まどかさんの場合は初対面の人となら話せることがあります。

(例えばファーストフード店で注文できる)

このため、上手に場を設定すれば「新しい担任の先生」と話せる可能性があると考えました。

 

そこで、新学期早々に懇談の機会を作ってもらうように、学校にお願いすることにしました。

 

【始業式の日】

年度が替わって、担任は新しい先生になりました。

 

そして始業式の日の午後、さっそく新しい担任と時間をとって会うことができました。

参加者は「まどかさん」「両親」「担任の先生」の4人。

 

担任の先生からまどかさんに質問してもらい、それに答えるのにチャレンジ。

(もちろん質問内容は事前に打ち合わせ済みで、答える準備もしてあります)

とても緊張して小さい声ではありましたが、答える準備をしておいたので

「好きなスポーツは何ですか?」

「応援しているチームはどこですか?」の質問に単語で答えることができました

次に4人でしりとりをして、まどかさんも2回声を出して言うことができました。

 

昨年度の先生とは直接質問に答えることはできなかったので、これは大きな進歩です。

まどかさん本人も、先生に声を出せてとても自信になったようでした。

 

 

【解説】

年度の替わり目で計画をしっかり立てて、よいスタートを切ることができました。

 

新しい担任とこのように話せる状態でスタートできたので、もう緘黙症状の改善は近いです。

担任に声が出せるなら、そこから「話せる条件」を広げていくのはわりと簡単だからです。

 

ここから先はこんなことを行っていきます。

・話す練習の機会を今後も継続して作り、担任の先生と話すことに慣れていく

 (慣れたら時間や場所を変えることにチャレンジ)

・クラスで音読や発表の機会を上手に作り、周りから見ても「話せる子」にしていく

・話せる相手を増やすために、新しいクラスで友だちを作る

 

ここから大事なのは話せる友だちが増えていくこと。

上手くいけば、1、2学期のうちにもまどかさんの緘黙症状は解消できるかもしれません

 

 【注意点】

事例の紹介にあたっては、家族の同意を得ています。

ただし個人に関わる情報ですので、転載は絶対にしないでください

また必要に応じて細部を改変していますので、事実と異なる場合もあります。

 

この事例の紹介はあくまで個別のケースに対して上手くいった方法です。

同様の方法を行っても、他のケースに対しては効果がない場合もあります。

練習メニューを考えるにあたっては、様々な要素を慎重に考慮した上で、個々に応じた方法を選択するようにしてください。