45:恒
54:益
TP29:法則(ダルマ)
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【45:恒】

【54:益】
このペアには「法則(ダルマ)」という意味を付けた。
いずれも三角めいたカタチが共通のモチーフになっている。
もはやトラディショナルなゼンタングルのルールには則っておらず、ZIA(ゼンタングル・インスパイアド・アート)になってしまっているといえるかもしれない。
カテゴリの話はともかく、なぜ三角かというと別にたいした理由はない。
このタングル描いたときに、たまたま観たファンタジー映画に三角と渦巻きのシンボルが出てきたからだ。
そんなこともあって古代の土器のようなパターンになってしまった。
ポイントはおおきな渦巻きの位置で、「恒」では中心に、「益」では下に、おおきな渦巻きがある。
渦巻きも一応はゼンタングルの公式パターンで「プリンテンプス」と呼ばれる。通常は複数で描かれる。

【プリンテンプスのモノタングル】
プリンテンプスが中心にある「恒」では、この渦が周囲を動かす原因になっている。
地球でもエンジンでも素粒子でも、渦……回転はすべての根源的な動力だ。
この動力が周期を生み、周期が変化を生む。
眼に移る変化は、おそろしくなるほど多様でめまぐるしく、とても「恒」常……と呼ぶことができるほどの一貫性は観てとることができない。
ここに「安定」はない。
「安定」は不動、すなわち死を意味するからだ。
時間は、空間は、人々の活動は、生命のいとなみは、うねり、のたうち、もだえながらも決して静止するこなく流動していく。
決して静止することはない。
すべては、回転し運動する要素から構成されているからである。
「変わり続ける」というその動きだけは「変わらない」。
「恒」という名前は、そんな、深いところにある法則にたいしてつけられた卦名だと思う。
ペアにつけられた「法則」という意味はどちらかというとこの「恒」にひっぱられてつけられている。
「益」は、その「法則」がもたらす恵み……御利益の方にフォーカスされている易卦である。
易卦的には「益」は「否」から来たとされる(交代生卦)。
否の四爻位にある陽爻が、初爻位に「落っこちて」できたのが「損」というわけだ。
それでその「落っこちてきた」陽爻が、高いところから低いところへもたらされた恵み、ほどこし、言い方は文脈によりさまざまだが……なんらかのカタチで「もたらされたもの」ということになる。
偏った視点には賛成しかねるが、伝統的な易では一般に「陰」=わるいもの、「陽」=いいもの、といった観方があるのは確かだ。
でまあ、落ちてきた陽は「恵み」というわけだ。
タングルとしてはその「もたらされたもの」をプリンテンプスであらわしているつもりで、だからその渦巻きは下向きの三角の一番下の頂点に「落っこちて」きている。
悲しんでいる人がいたとして、その悲しみがいつまでも継続するしたとしたら、その人はたぶんストレスでまいってしまうだろう。
では、喜びの感情ならずっと続けばさぞや幸せだと思われるかも知れないが、ずっと喜びつづけるしかないとしたら、おそらくそれはまたストレスだろう。
感情はいつもゆれうごいていて、時々刻々その状態を変えていく。
そのせいで喜びは永遠に続かない。
でも、悲しみも永遠に続くことはない。
よくいわれる「時間が解決する」ということになるのだろうが、もたらされた恵みは変化することそのものであるのかもしれない。
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「ゼンタングル」、「易タングル」については、「六十四卦雑想——はじめに」を参照してください。