木内一裕さんは、1960年福岡市生まれ。 東京デザイナー学院九州校を卒業後、1983年に「ビー・バップ・ハイスクール」でデビューし、一躍人気漫画家になりました。

 

その後1991年からは映画監督、2004年からは小説家と、マルチな才能を発揮しています。

 

木内さんの小説はエンタメ系のサスペンス小説で、とにかくテンポが良くて読みやすい。 また、漫画家や映画監督としての才能からか、アクションシーンなど情景が目に浮かぶようです。

 

私が木内作品と出会ったのは、2年ほど前なのですが、そのスピード感と先の読めないストーリー展開に魅了され、刊行されている文庫13作はすべて読みました。

 

年に一作という執筆ペースを守っているので、どの作品もクオリティが高くハズレなし。 もう少し人気になっても良い作家だと思いますね。

 

第1位: 「キッド」 (2010年)

初めて出会った木内作品で、そのスピード感にぶっ飛びました。 ただのチャラい若者かと思われた主人公が、死体遺棄、リフォーム詐欺、誘拐など様々なトラブルに巻き込まれ、そこから目覚ましい活躍を見せます。 絶体絶命の窮地に追い込まれてもあきらめない根性がカッコイイ。 まるで漫画のような激しい展開で話が二転三転、まだ未読の方は是非この疾走感を味わって欲しいですね。

 

第2位: 「アウト&アウト」 (2009年)

木内さんの唯一のシリーズ作品「矢能シリーズ」の第2作です。 元ヤクザの探偵・矢能が、依頼人が殺された現場に居合わせたことから窮地に追い込まれます。 矢能と敵対する側の若者・池上の悲惨な生い立ちや好感の持てるキャラで、感情移入してしまいました。 ラストのどんでん返しも含め、スピード感溢れるエンターテインメント小説です。

 

第3位: 「小麦の法廷」 (2020年)

主人公は25歳の新人女性弁護士・杉浦小麦。 小柄で童顔だが、高校時代はメンタルの強さでレスリングのオリンピック候補になったという硬軟併せ持つキャラが絶妙です。 初めて扱う刑事事件として楽な事件を選んだつもりが、実は殺人のアリバイ作りの偽装事件。 窮地に追い込まれた小麦がどのように反撃するのか? 登場人物すべてがキャラ立ちしていて、エンタメ性の高いサスペンスです。

 

次点: 「水の中の犬」 (2007年)

「矢能シリーズ」の第1作はシリーズの前日譚のような位置付けでした。 木内さんの作品の中でも最もダークな作品。 不倫、レイプ、虐待、誘拐、麻薬などアンダーグラウンドな事件の中で、命を捨てているような探偵の行動は何故なのか? 救いのないストーリーながら、際立つキャラクター描写と緊迫感、そして痛ましいけれどホロッとくるラストは心に響きました。

 

木内作品はエンタメ系アクション小説として、私の中では最も信頼できるブランドになっています。 文庫化されていない作品があと2作。 これを読んでしまうともう読めないのかー。 新刊に期待しています!