木内一裕さんの小説は、スピード感あふれるアクションサスペンスの第4作「キッド」を初めて読んで驚愕。 次にデビュー作「藁の楯」を読みましたがそれほどでもなく、1作目→4作目で進歩が大きかったんだなーと思っていたのですが・・・・

 

今回、第2作目の「水の中の犬」を読んでまたビックリ! 爽快な「キッド」とは別の方向性を持った傑作でした。 アンダーグラウンドで、ダークで、バイオレンス(暴力)に溢れ、そして虚無感・・・

 

探偵の元にやってきた一人の女性の望みは恋人の弟が「死ぬこと」。 誰かが死ななければ解決しない問題は確かにある。 だがそれは願えば叶うものではなかった。 追いつめられた女性を救うため、解決しようのない依頼を引き受けた探偵を襲う連鎖する悪意と暴力。 それらはやがて自身の封印された記憶を解き放つ。 (文庫裏紹介文)

 

「取るに足りない事件」、「死ぬ迄にやっておくべき二つの事」、「ヨハネスの手紙」という3篇の連作短編集(中編集かな?)です。

 

それぞれの事件は、不倫、レイプ、虐待、ヤクザ、誘拐、麻薬などなど、アンダーグラウンドで救いのないものばかりです。 それでも探偵は依頼人やその子供を守るため、立ち向かっていくのです。

 

元刑事であった探偵は何度も痛めつけられ、ボロボロになる。 命を捨てているような探偵の行動に、知り合ったヤクザまでもが「止めろ! もうこれ以上危険なマネする必要はねえだろ!」と叫びます。

 

この探偵の行動は、最後の「ヨハネスの手紙」で理由が明らかになってきます。

 

実は本作、シリーズ作品の第1作であり、次作「アウト&アウト」へ繋がると思って読んでいたのですが、このような痛ましいラストになるとは・・・・・。 正統派ハードボイルドとはまるで異なります。

 

救いのないストーリーながら、際立つキャラクター描写とラストへ向けての緊迫感、計算されたプロット。 そして痛ましいけれどホロッとくるラスト。

 

暴力に溢れたハードボイルド小説は過去に色々読みましたが、本作が一番心に響いたかも。 お勧めです。