木内一裕さんの小説は、先月「キッド」という作品を初めて読み、ぶっ飛んだスピード感に魅了されてしまいました。 本作は漫画家・映画監督だった木内さんが執筆した初の小説。 映画化もされました。

 

2人の少女を惨殺した殺人鬼の命に10億の値がついた。 いつ、どこで、誰が襲ってくるか予測のつかない中、福岡から東京までの移送を命じられた5人の警察官。 命を懸けて「人間の屑」の楯となることにどんな意味があるのか?  警察官としての任務、人としての正義。その狭間で男たちは別々の道を歩き出す。 (文庫裏紹介文)

 

「この男を殺してください。御礼として10億円お支払いします」という朝刊の見開き広告。 依頼主は、孫娘を殺された日本財界の大物・蜷川隆興で、ターゲットとなったのは連続幼女殺人犯・清丸国秀。

 

まず、この設定が独創的で驚かされます。 福岡で捕まった清丸は、主人公のSP・銘苅ら5名の警察官によって東京へ護送されることに。 しかし10億をゲットするためなら、警察関係者も含め、誰に襲われてもおかしくない。 はたして無事に東京にたどり着けるのか・・・

 

こういう緊迫状況下、清丸の命を狙う者が次々と襲い掛かり、護送手段も変遷、刻々と変わる状況変化。 スピード感のあるストーリー展開は、デビュー作から健在でした。

 

ただ、物語の中へ引き込まれるように没入できた「キッド」と比べると、ちょっと荒い文章や、設定とか心理描写に少しずつ違和感があって気になりました。 警察内部の意思決定なども描いてあると、もっと重層感が出たかも。

 

デビュー作から6年後の「キッド」は、ずいぶん進化してたんですね。