瀬尾まいこさんは、1974年生まれの大阪市出身。 中学校国語教師をしながら執筆を行い、2001年に「卵の緒」が坊っちゃん文学賞を受賞して作家デビューしました。

 

その後も、2005年に「幸福な食卓」で吉川英治文学新人賞、2008年に「戸村飯店 青春100連発」で坪田譲二文学賞を受賞するなど、順調に執筆活動を続け、2011年には教師を退職、専業作家となりました。

 

その作風は優しく温かで癒される”ほのぼの系”と言われるもの。 しかし優しいだけでなくて、一抹のせつなさのようなものが入り混じっていて、単なる癒し小説ではありません。

 

ミステリ好きの私ですが、刺激の強いのを連続で読んだ後には、瀬尾まいこさんの優しい小説を読みたくなるんですよね。

 

そんな瀬尾作品のベスト3を選びました。

 

第1位: 「あと少し、もう少し」 (2012年)

中学生の駅伝大会を描いた瀬尾さん唯一のスポーツ小説だと思います。 それぞれの事情をかかえて駅伝に出場する6人の中学生。 駅伝のように語り手が受け継がれていくのですが、顧問の先生も含め、その個性の描き分けが抜群に上手かったです。 メンバーの一人の不良中学生・大田が、2歳の幼児の子守をするという続編「君が夏を走らせる」も大好きな作品で、併せて第1位としておきます。

 

第2位: 「図書館の神様」 (2003年)

第1位と第3位がある意味瀬尾さんらしくない、ぐいぐい読ませる小説なので、第2位は瀬尾さんらしい自然体で優しい物語を選びました。 心に傷を負って地方の高校に赴任してきた主人公が、文学音痴なのに文芸部の顧問となります。 たった一人の部員との遠慮のないやりとりを通じて癒され、徐々に再生していくストーリー。 主人公の再生と成長が、文学への興味と繋がっているところもいいですね。

 

第3位: 「そして、バトンは渡された」 (2018年)

2019年の本屋大賞受賞作です。 主人公は高校3年生の森宮優子。 彼女には、父親が三人、母親が二人いて、17年間で姓は4回、家族の形態は7回変わりました。 そんな境遇にありながらも、「全然不幸ではないのだ」と言います。 その理由は、優子というバトンを渡された父親・母親たちが彼女に心から愛情を注いでくれたから。 大きな事件は起こりませんが、物語の推進力は過去最高。 温かな読後感もこれぞ瀬尾作品と思わせてくれます。

 

次点: 「戸村飯店 青春100連発」 (2008年)

大坂の超庶民的中華料理店・戸村飯店の二人の息子。 要領も見た目もいい兄・ヘイスケと、ボケが上手く単純な性格の弟・コウスケが、交互に語り手となって描かれます。 テンポの良い大阪弁が物語を引っ張り、楽しくて笑える成長ストーリーになっています。

 

瀬尾作品は優しくて癒される小説というイメージがありますが、こうして見ると意外に多岐に渡っていますね。 これからも、ミステリを連続して読んで心がささくれ立った時に、瀬尾作品に手を伸ばすことになりそうです。