幸福な食卓 (講談社文庫)/瀬尾 まいこ
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先月読んだ短編集「優しい音楽 」はとても温かくて、やさしくて、まさに”ほのぼの系”と呼ばれるに相応しい作品でした。 でも、瀬尾さんの筆致は、やさしさの中に一抹のせつなさのようなものがあって、単なる癒し小説ではなさそう。 今度は長編を読んでみたくなりました。
       
そこで、ブログ仲間の皆さんから色々と紹介いただいた中から、「幸福な食卓」を読んで見ることにしました。
     
佐和子の家族はちょっとヘン。父を辞めると宣言した父、家出中なのに料理を届けに来る母、元天才児の兄。そして佐和子には、心の中で次第にその存在が大きくなるボーイフレンド大浦君がいて...
    
それぞれ切なさを抱えながら、つながり合い再生していく家族の姿を温かく描く。吉川英治文学新人賞受賞作。 (文庫裏紹介文)
 
「優しい音楽」と同じく、「幸福な食卓」という題名からして、幸せな物語を予感させます。 主人公・佐和子と、父さん、母さん、兄の直ちゃん、朝御飯は全員そろって食べるという家族の習慣。
     
しかし、ここで描かれるのは、既に歯車が狂ってしまった家族の姿です。 家を出てしまった母さん、仕事も”父さん”もやめという父親、天才児の兄は大学進学せず農業団体で働く。
     
非日常な設定の中で紡がれていく物語です。 そういえば、「優しい音楽」も設定はかなり非日常だったっけ。
     
佐和子のホンワカした性格や、父や兄のどこかユーモラスなムードから、この家族に悲壮感はありません。 むしろお互いを思いやる家族たちは、終盤、大きな不幸に見舞われる佐和子を優しく支えます。 直ちゃんの恋人・小林ヨシコのキャラクターも良かった。
      
ほのぼのとした筆致で、優しいストーリーを紡ぎだす瀬尾作品。 読んでいて心地よいので、その中に秘めたものに気が付きにくい。 でも、彼女の物語の底には切ない感情が見え隠れします。 家族が抱える過去の不幸、佐和子を襲った悲劇、この小説では特にそんな気がしました。
       
瀬尾さんの作品をさらに読んでみたくなりました。 ファンになった・・・・かも。