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田口裕史のブログ

戦争責任や戦後補償の情報を提供します

 第二次大戦後、オランダ軍がインドネシア独立をおさえこむための武力行使を行なったことは良く知られている(インドネシア独立戦争)。オランダのラジオ局「Radio Netherlands」のウェブサイトに、この歴史を批判的に振り返る記事が公開されていた(“Holland's black page ”)。


 当時インドネシアに派遣された元兵士たちは、インドネシアでの蛮行を約半世紀ものあいだ語らずに来た。自らの犯した残虐な行為を、周囲の人間に語ることが出来なかったのだ。そして、元兵士の一人は、半世紀の沈黙を経て、記者の前で自身の蛮行を、深い苦しみとともに語る。彼ら元兵士たちにとってこの出来事は、忘れようとしても、忘れることの出来ないものだったのだ。

 

 もちろん、事実の告白に対しては、オランダ社会の中に強い反発もある。80年代にこの問題を取り上げた歴史家は、著作中に用いた「戦争犯罪」という語を、激しい抗議のために変更させられることとなった。


 しかし、元兵士たちの中には、個人的な償いを続けてきた者もいる。この記事で証言を行なっている元兵士の一人は、インドネシアを訪問し、村人たちに謝罪したという。記事はそのうえで、オランダ政府がこれまで謝罪を行なわずに来たことを、元兵士の言葉を援用しつつ強く批判する。


 取材したDheera Sujan氏は、これらの蛮行と米軍によるイラク人捕虜虐待事件を関連付け、今日的な問題意識をあきらかにしている。

 すぐれた記事だと思う。

 私たちの社会には、「日本だけがなぜ過去を謝罪・反省しなければいけないのか」と言う人がいる。しかし、それぞれの社会で、それぞれの立場で、過去と対峙しそれを乗り越えよう努力する人々がいるのだ。私も、その一人でありたいと思う。

 戦後60年ということで、各新聞社がそれぞれ特集記事を組んでいる。

北海道新聞「戦後60年 戦禍の記憶

東京新聞「戦後60年

神戸新聞「戦争の記し

中国新聞「ヒロシマ60年・記憶を刻む

長崎新聞「原爆・平和連載企画

琉球新報「<沖縄戦60年>戦を刻む

沖縄タイムス「戦後60年平和ウェブ


 このうち、長崎新聞は普段から「原爆・平和連載企画」を続けており、外国人被爆者・在外被爆者問題の報道も継続的に行なっている。こうした良質の記事を載せる、志ある新聞社を大事にしたい。

 ハンガリーのThe Budapest Sun紙によると、ブダペストにあるナチ被害者のためのメモリアルが、何者かによって破壊されたという(Holocaust memorial vandalized 、7月28日付)。

 メモリアルは、1944年から45年の冬、ナチに撃たれてドナウ川に沈んだユダヤ人被害者のために、戦後作られたもの。川沿いに靴のオブジェを並べ、被害者を想起しようというメモリアルのようだ(上記記事の写真参照)。いまのところ、犯行理由は明らかになっていないという。


 日本でも、最近、長野の無言館(戦没画学生慰霊美術館)の石礎にペンキがかけられた事件(今年6月18日)や、広島の「原爆慰霊碑」の碑文が傷つけられた事件(今年7月26日)があった。こちらも、それぞれ、誰がどのような意図で行なったのか不明なままだ。


 ブダペストの件も、日本の件も、たんなる「いたずら」であるとすれば、それはそれで恐ろしい。被害者の痛みや出来事に対する想像力の欠如は、ほかの局面でもつぎつぎと他者への暴力をうみだしていくことになるであろうから。