近年、日本で働く外国人労働者が増加しています。
外国人の同僚や上司、取引先と関わる機会は今後も増えていくことが予想されます。

これまでホテルの職場環境やホテル学校で見てきましたが、外国人スタッフは相対的にチームビルディング、コミュニケーション、プレゼンテーションを得意とする人が多いのに対し、意外と「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」を(優秀な外国人スタッフでさえ)難しいと感じているように思います。

これまでの日本人にとっては当たり前だったホウレンソウ。なぜ外国人は苦手なのでしょうか。
今回のコラムでは、なぜ外国人がホウレンソウを苦手とするのか、その背景を海外のマクロマネジメントと日本のマイクロマネジメントの違いから探っていきたいと思います。そして、本当にホウレンソウが、今後、日本人にとっても本当に必要なのかを考えていきたいと思います。
※ちなみに、外資系ホテルで働いていた私は30歳を過ぎたころになるまで、この「ホウレンソウ」という言葉を全く知らず、日系企業に勤めていた後輩スタッフから教えてもらったという過去があります。

 

 

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マクロマネジメントの「ホウレンソウ」とマイクロマネジメントの「自由裁量」

 

 マクロマネジメントとは


マクロマネジメントとは、組織や組織のリーダーがチームに対して自由度と自主性を与えて仕事を任せるスタイルのことを言います。
※私が長らく勤務したリッツカールトンはこのスタイルをとっており、スタッフ個人における「自由裁量(決裁権)」という言葉がホテル業界でも広がりました。組織として、個々のタスクについて具体的な行動指針を提供するのではなく、大きな方向性のみを示し、スタッフは顧客にどのようにサービスをすればよいか、その仕事内容はスタッフ本人にゆだねられています。
外国人スタッフにとって、従業員の自立性を高め、それにより生産性も向上するという点から、特にこの仕事環境は好まれています。

では、これに対し、マイクロマネジメントとは何でしょうか。
 

 

 マイクロマネジメントとは


マイクロマネジメントとは、組織のトップがチームの活動を監督するスタイルで、日々の労働内容を設定し、定期的なフィードバック(ホウレンソウ)などを求めるスタイルです。外国人スタッフにとって、このやり方はスタッフの意欲や満足度を低下させるため、離職を高める傾向にあるようです。なぜなら、プロフェッショナルとして雇われているスタッフにとって、自分の仕事は自分の裁量に任せてほしいという気持ちが強いからです。


ただし、マクロマネジメントにも、情報共有という概念は存在する
とはいえ、海外におけるマクロマネジメントにもホウレンソウとまではいかないですが、情報を共有する概念は存在します。
マクロマネジメントでは、上司は仕事内容に常に介入しすぎない程度に、仕事のプロセスについて情報の共有をおこなっており、その途中段階でフィードバックします。またプロセスの進捗確認が、日本式のように「常に上司の監視化の下で行われる」わけではなく、定期的なミーティングなどで確認するという方法が一般的です。
 

接客業における「ホウレンソウ」の危険性と「自由裁量」への転換

 

外国人にとって苦手なホウレンソウ。常に上司の管理のなかで行う手法がこれまで日本社会では一般的となっておりましたが、今後の日本において、それは本当に必要でしょうか。息苦しい環境の中で仕事は楽しく行えるでしょうか。
たとえば、これを「接客業」という観点から考察してみると分かりやすいのではないでしょうか。

やり方が一辺倒の接客が行われる日本の接客風土
接客現場でよく聞かれるのが、以前から行われているやり方ばかりにこだわり続けたり、常に先輩の指示通りにしか行えず、それ以外のやり方は許されないというものがあります。そして、常に指示どおり機械的に働くスタッフは、ただ真似するだけのコピーロボットや指示待ちのロボットとなっています。

毎日、現場監督の指示だけに従って仕事していて、クリエイティブなものは生まれますか?
良い部分は見て盗む。そのやり方も大切ですが、単に上司の指示通りの仕事は自分の仕事ではなくなってしまいます。いつしかそれが、日本におけるサービスのマニュアル化につながっていったのではないでしょうか。
勿論、接客業におけるホウレンソウは、事故や問題が起きたときは重要です。しかし、それ以外のサービスのマニュアル化(画一化)は、日本のサービス産業にどのような弊害をもたらしたでしょうか。心のこもっていない単なる接客が今や当たり前になったのは言うまでもありません。

ホテルサービスはアート
ひとりひとりのお客様は違い、その接し方は千差万別にならなければならない。しかし、マニュアル通りの接客が一般化してしまった日本の接客は本当に良いものと言えるのでしょうか。
都合の良い時だけ、「自分で考えて行動するスタッフを求めている」ということを口にする上司が居ますが、その言葉を発する前に、まずはスタッフが「自由裁量(自分のやり方で、何がベストな方法かを考えて出来る)」環境をまずは作ってあげることを考えてください。

プロフェッショナルとは、「とにかくず自分の裁量でその時にベストと思えるものを完成させる人たち」です。そして、「必要があればフィードバックから修正を行い、よりクオリティの高いものへと変えていくことができる人」のことです。
ホテルなど高度なレベルで接客を行う企業体においては、そういった形で様々なスタイルのスタッフを多く存在させることが必要になってきます。
もちろん、日常的に彼らの成長のための定期的な研修や育成活動は必要ですが、優秀な人材に育てていくのであれば、まずは彼らにヴィジョンをしっかりと示し、その目標に向かうまでのプロセス上での他からの干渉を取り除いてあげることも必要だと思います。

外国人労働者だけでなく、日本人のスタッフを定着化させるために必要なこと
ホウレンソウを完全にやめてしまうべきだとは言いません。良い部分を残し、働きやすい環境を整えていくことで、スタッフの自立性を向上させ高い人材が育ちます。そうすることで、スタッフの仕事に対する幸福度が増し、離職率も低下することが期待できます。
わたし自身のホテル経験でも、自由裁量の与えられた環境にあった時、仕事が毎日楽しく、残業という概念もなく、楽しいからもっと働かせてほしいと思える毎日を過ごしていました。「楽しみながら好きな仕事をして、お金ももらえる。しかも毎日、自分が成長しているという実感」そんな想いの中、職場に不満などいだくはずもありません。

優秀な人材育成をするためには、まず組織がいかにビジョンを示すことかが大切で、日常的な仕事を任せる場合も、自由裁量の中で、常に方向性はしっかり示してあげる勇気が必要ではないでしょうか。
弊社では、これまで培ってきたノウハウにより宿泊業界における人材育成のためのコンサルティング等も行っております。
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