ぼくのゆめ
ぼくの夢は絵を描くこと。
おおきなアトリエを建てて、
そこでおおきなキャンバスに黒い線で絵を描く。
庭には木が植わっていて、犬もいる。
仕事もないし義務もない。
あるのは地球がゆっくり回っているという実感だけ。
夕方には暗い小さな四畳の部屋にこもり、瞑想。
窓から街の風景が見渡せる風呂に入り、
風呂上がりに近くの川沿いの道を散歩しながら、
太陽が沈むのを感じる。
そんなに多くを望んでいないような気がする。
ある晴れた日
路上で死んでいた
ある晴れた日に
太陽は笑っていた
祝福していた
7000円
その持ち金が全財産だった
部屋を出るときは気づいていた
今日が祝福の日になることを
救急車で運ばれて
すでに死体になっているのに
蘇生措置を延々と施された
それから暗い霊安室に運ばれ
次には行き倒れということで警察に運ばれ
身元確認のために2日が経過した
オレはもう誰でもないのに
オレはすでに誰でもなくなったのに
あの祝福の瞬間から
オレはもう誰でもなくなったのに
この世に生きていることは辛くはなかった
いや、辛いという感覚が麻痺していただけかもしれない
ただ
本当の生き方を知らなかっただけだ
単純に生きてきた
生きるというだけで生きてきた
最低の生活だったかもしれない
喰って、寝て、煙草を吸って、酒を飲んだ
ただそれだけ
ただそれだけ
それでもオレは生きた
そしてある晴れた日
オレは死んだ
たとえ雨が降っていたとしても
かっこいい言葉がまるで詩のように出てくればいいのに
そうしたら僕は詩人になれる
そして詩を歌ってるときは気持ちがいいにちがいなく
きっと石ころを蹴って天にも昇るほど有頂天
死も苦しみも憎しみも忘れているだろう
たとえば
雲と空
もくもくと湧きあがる雲は黙示録
ラピス色の空は啓示の祭壇
たとえば
”もし”と言った途端
夢から覚めた冷凍保存宇宙飛行士
時間旅行のタイムカプセルが軌道を外れ
”今ここ”に戻ってこれなくなる
だから
今すぐに、裸になって、
肉体と肉体を絡め合わせよ!
新しい太陽が透明な海の端から昇る前に
アクアマリーンの結晶に閉じ込められて
もしルビーが流れる血のように川に漂うなら
薄まって透明になって
海に注ぐとしたら
生命は今のようには
青くなかったろう
だから
あなたは宇宙から来るのだ
僕が空を夜、見上げるのはそのためだ
たとえ雨が降っていたとしても
たとえ雨が降っていたとしても
みにくい今日と、うつくしい明日
言葉なんて無意味だから
言葉を書いてみる
生きていることが無意味にみえる生だから
生きるしかない
それでも
醜くても
醜悪でも
美があるところに憧れる
美が感じられるから
ほとんどすべたがみにくい
でも、そうかんじる感性がある
よっぽどその感性ってやつは美しいに違いない
そのほかのすべてがみにくく見えるのだから
それでも明日に望みを賭けるしかない
なにかきっと奇跡が起きるに違いない
考えてもみなかった幸運が訪れるに違いない
そして、美しい世界が、急に目の前に開けるに違いない
そう
そうに違いないのだ
片づけ
明日は片づけに行く
片づけなければならない
片っ端から片づける
片づけるのは得意だ
不要なものを消すのは得意だ
必要なものだけが残る
そうなると、キレイになる
いらないものがなくなったとき、キレイになる
自然界にはいらないものは一切ない
動物が死ぬと
骨になるまで誰かが喰う、ついばむ、たかる
骨になっても虫が、ハエが来て全部、きれいさっぱり、なくなる
自然界はキレイだ
不要なものは一つもない
人間社会もそうなればいいのに
キレイになればいいのに
不要な政党
不要な議論
不要なインフォメーション
不要な商品
溢れかえっているから
汚い
片づけなければならない
片っ端から
片づけなければならない
ボロアパート住まい
古いアパートが、うらぶれた裏路地に建っている。
誰が住んでいるのかわからない汚い出窓。
見上げると、なぜか四階もある。こんなボロアパートなのに。
しかも、驚いたことに、その四階にぼくは住んでいるらしい。
でも、考えてみれば、いいかもしれない。
近くに広場があって、祭日になると市が立つ。
鳥や豚肉を売る商人、葱やトマトを売る商人。
ぼろい衣類を売る商人、古道具をどこからか運び込んでくる商人。
土の地面の広場はちょっとしたにぎわいになって、どこからともなく人が集まってくる。
四階の出窓からその広場がよく見える。
上からどんな品物があるか一通り見てから、下に降りて行く。
夕方になる頃には、商人は商品を片づけ始め、
日が沈むと、すっかり薄暗くなった広場には、もう誰もいない。
僕ひとりなら、このボロアパート住まいも悪くない。
市が立つと、出店の中に、肉を焼いて売る店があって、
香ばしい匂いが立ちこめると、思わずそれを買って喰ってしまう。
それがなかなか美味い。塩味の肉。なんの肉だかわからない。
豚でも牛でもマトンでもないような気がするが、美味ければいい。
誰もいなくなった広場には、ゴミが落ちている。
焼いた肉を刺した串も落ちている。
それらを踏んで広場を横切ると、銭湯がある。
高い煙突の先から黒煙が上がっている。
碧い夜空を黒く流れる黒煙。
プラチナ色に光る星。
銭湯から上がって来た下駄を穿いた爺さんの禿げ頭から、
湯気が立っている。
気持ちよさそうだ。
数百円で極楽気分。
ジャージのポケットに入れた五百円玉を取り出し、
空に投げ上げてみる。
それを両手で挟みこんで受け止めて、
表か裏か一人で賭けてみる。
裏。
当たり。
裏。
この辺りには、裏路地しかないから。
この辺りには、日は当たらないから。
出窓があっても部屋の中は暗い。
それでも、そんなに悪くない。
薄暗いのも悪くない。
あとから変わるもの
二時だから、もう寝よう
温かいエアコンの風が吹いてくる
外は静か
なんの音も聞こえない
眠たくて、瞼が鉛のように重い
さっきまで絵を描いていた
でも、絵具が乾くと、ぜんぜん別のものになってしまう
乾かないままだとイメージしたとおりの美しさなのに
乾くと、ぜんぜん美しくなくなってしまう
小川で拾った石ころのようなもの
夢を見ている時は楽しいのに
後から思い出すと楽しくない
でも逆もある
そのときは辛いのに
後から思い出すとなつかしく楽しい
断崖絶壁のイメージでも想い浮かべながら
眠よう
あと24時間しかないから
あと24時間しかないから
きみと過ごす時間を大切にしたい
つまり、きみと心中するわけじゃないけど、夜が明けてしまう
つまり、夢が覚めてしまう
つまり、二人は引き離されてしまう
それって死ぬよりつらいこと、死ぬよりつらいこと
ぼくが夜中じゅう高速を飛ばして帰って来たって
きみはぼくと飛び立てない
飛び立てない
それって臆病だと思うよ
それなのにきみは逆のこと言う
ぼくは逃げてるって言う
それって逆だよ
キリンだって逃げるだろ
シマウマだって逃げるだろ
それに
あのバッファローだって逃げるよ
それって、弱いからじゃない
ぼくは飛びたいんだ
きみはがんじがらめ
ぼくは自由
だから、飛び出すんだ
飛び出すだけ
飛び出すだけなんだ
この狭苦しい檻の中から逃げるだけ
サーカスの檻から逃げるだけ
それがなぜ悪いの?
ここでどうやって闘えって言うんだい?
ただの見世物になってるだけじゃないか!
ぼくが夜中じゅう高速を飛ばして帰って来たって
きみはぼくと飛び立てない
飛び立てない
それって臆病だと思うよ
それなのにきみは逆のこと言う
ぼくは逃げるんじゃないよ
飛び出すだけ
ドロップ・アウト
悪いかい?
きみはここで闘うんだね
ぼくはドロップ・アウトする
一抜けた、するんだ
悪いかい?
その先に何があるか、脱け出して見てみるんだ
悪いかい?
さようなら
あと24時間しかないけど
それって死ぬよりつらいこと
だから最後の
きみと過ごす時間を大切にしたい
つまり、きみと心中するわけじゃないけど、夜が明けてしまう
つまり、夢が覚めてしまう
つまり、二人は引き離されてしまう
それって死ぬよりつらいこと、死ぬよりつらいこと
でもぼくは行くよ
もうこんな時間
こんばんわ。こんな時間。もう寝る時間。だよね。なのに起きてる。やることあるんだ。
それってまだまだ終わらない、形にしなきゃならない、感覚にしなきゃならない。
つまり見る、聞く、味わう、嗅ぐ、感じる。そのために、時間を費やす。快楽のために。
つまり快楽。
アタラクシア。
快楽が一切ない、ところの、快楽。
わかるかな? あなたのような真面目なひとにはわからないかもね。
つまりぼくは、そんなこと求めてるわけじゃなのに。誤解してるよね。ぼくは知ってる。
つまりぼくは、快楽の一切ない、ところの、アタラクシアを
あなたと味わいたいってことなんだけど、
それって想い出みたいに遠いところにあって
憧れてるだけの存在だから。
つまりあなたが
遠い遠いところにいて
憧れているだけの存在だから
それなのに
時間だけはどんどん過ぎていって
だんだん老いぼれて
死に近づいていく
そんなことも知らないなんて
あなたはどうにかしている
そんなことも知らないなんて
あなたはどうにかしている
もうこんな時間なのに
眠ろうとしているなんて
あなたはどうにかしている
ぼくはどうにかしている
つまりどうにかしている
どうにかなっちゃって
明日が来なくてもいいって言ってくれたら
あなたと夜汽車に乗って
夜汽車に乗って
抱きしめて
外国に行く
インドのゴアに行こうよ
チャイでも飲みに行こうよ
ガンジャもいいけど
それよりベッドの上で瞑想しようよ
どう? そういうの? したことある?