最後には
こんばんわ。
ぼくは世紀末って言葉好きなんだけど
マヤ歴も終わってしまって
世紀末的なものがなくなってしまって
少し残念な気もするが
そんなでもない
つまり、「明日、世界が終るとしたら」っていう問いがあったけど
その問いの雰囲気が好きななんだけど、
つまり、もし、明日、世界が終るとしたら
ぼくは、自分の一番好きなことをずっとしているだろう
たぶん、風呂に入って、身体をきれいにしてから
ベッドに横になって、好きな音楽をガンガンに聞きながら
アシッドとか、眠剤とか、それに類するものを飲んで
夢と現実の狭間で
地球が揺れ動き、火山が爆発し、それらをTVで報道するのを見ているだろう
とても、興奮して
たぶん愛する人と一緒に布団にくるまって
「本当に世界が終るんだね」ってわくわくしながら
愛し合いながら、抱き合ったまま
眠剤とか、トランキライザーとか、鎮痛剤とか、眠剤とかを飲んで
すこし、意識を変容させて
ベッドの上で抱き合いながら、TVを見ながら
人類が地球の天変地異で滅びていくニュースを見て
興奮しながら、コーラを飲んで、でポテトチップスを食べながら
溺れること
藝術と心中する
酒に溺れるように
藝術に溺れる
それができる環境にいるということに感謝する
ぼくが持っているものには、そういう傾向がある
つまり、自分で創造したものに自分で酔い、さらに深酔いし
終に、溺れてしまうこと
そこまでの状況にまでならない限り
ぼくが描く線
ぼくが塗る色彩と色彩の配列
それらが自由にならない
だから、危険なのは覚悟でやるのだ
新しい時代の始まり
新しい時代が始まりましたね。
さながら別の汽車に乗り換えたような
あるいは、電車からバスに乗り換えたような
これから、今迄とはまったく違った旅が始まります。
神の光を受け止めて、
思い出していきます。
本来の自分と、かつて私がいた所を
金の砂粒に満たされているような、光り輝く空間
複雑で美しい幾何学模様のような雲
ぼくはただ砂浜に横になって、漂っているだけ
壮大な景色の中をゆっくりと上昇し、下降しながら、こちらの完璧な景色から、あちらの完璧な景色に移動しているだけ
詩人は言葉を忘れ、ただ感嘆するのみ
絵かきは色を忘れ、ただ呆然と鑑賞するのみ
光そのものの創造の美しさは、計り知れない
それを受け取る私の魂も計り知れない
快楽
春紫苑とあるこほるを飲むと、記憶がなくなったり変な行動をしたりするから危険だ。
そう言って、医者は春紫苑を処方してくれなかった。
でも、僕はもうさんざんよくそれをやったんだよ。だから、
脳がおかしくなってしまったのかもね。
やっぱりね。
それで、気分が塞ぎ込んで、うつになってしまったのかも。
でも、僕は、10代で既に、
誰もいない、車で4時間も走らなければ町に辿りつかない原生林の中で、
アシッドをやりながら、アルカロイドが普通の何十倍というシンセンミアをふかしながら、
テキーラをストレートでガラス瓶からがぶ飲みして
まったく見知らぬ山の中を走り回った。
太陽が地平線に沈んだ後、寒い山のなかの道もない林をかきわけ、
崖を昇り、心臓が破裂しそうになり、暗くて冷たい小川を越え、
やっと見えてきたのは、インディアン式のティピの明かり。
中に入ると、夜中なのにドープをプクプクふかしている頭が半分おかしくなったジャンキーが2人。
僕もその輪に加わって、
親指よりも太いフランクフルトのようなジョイントを根元まで吸い切って、
驚く二人を見ながら「今、ウインドーペンやってんだ」と言うと
二人は喜んで、十代の僕に、面白がって、
どんどん上等のバッズのジョイントを巻いてくれる。
あまりにもティピの中が狭いから、「ちょっとでかけてくる」と言ってまた夜空の下に出る。
またあてどもなく、山の中を彷徨う。
テキーラのビンは空っぽ。
酔っぱらって脚はふらふら、シンセミヤが効いて気持ちよく、アシッドが効いていくら走っても疲れない、
でも、心臓が破裂しそうになっていることに気付いて、デジタル的に崖の途中で突然立ち止まる。
どこを彷徨っているのかもわからない。
ただ、何キロも続く原生林を吹きわたる風がゴウゴウと吹いている音が自分の息とシンクロしてくる。
息を大きく吸い、吐き出す。
山全体が僕の呼吸に合わせて呼吸し始める。
いや、逆に、山々を吹きぬける風に、僕の呼吸がシンクロする。
莫大な山全体、遠くにかすむ山々までも、真夜中の夜空が上空にあって、
全部が風に合わせて呼吸している。
ゴーーーーと何十キロにもわたる木々の無数の葉や枝を揺らし、森を渡る風は息を吸い込み、
やがて静かになって息が止まり、
今度は逆に、ゴーと暴風のように吹きぬける風となって息を吐き出す。
森と一体になって呼吸していた僕は思わず、バカみたいに夜空を見上げ、遠くにまたたく光をみながら、大声で叫ぶ。声の限りに、気違いのように叫ぶ。
急に気持ち悪くなって、胃の中を全部吐き出して、瞬間的にデジタル的にすっきりして、また、わけもなく走り出す。
そんなことをやっていたこともあるから、僕の脳は免疫ができていて、
春紫苑にアルコールくらいじゃ、すぐには気を失わなかった。
でも、ジンのストレートを飲んで春紫苑を喰っていると、
だんだんと気が遠くなってきて、やがて自分が何を考えているのかわからなくなってくる。
それが面白いから、よくやっていた。
でも、僕は、ジャンキーというわけじゃない。
みんな、だいたい、バカなジャンキーはドラッグに溺れるけど、
僕は、十代でそんなものは止めたし、
あんなに中毒性がある煙草もやめた。
アルコールだって止めようと思えばやめられる。
どんな快楽だって、やめられる。
どんな禁欲だって、できる。
でも、逆に、だんだん、快楽というものを感じなくなってきているから、
何が本当の快楽なのか、それを熟考し、吟味している。
たとえば、瞑想なんかしているが、
それは常に快楽というわけじゃない。
ほんのたまに、とっても静かになる。
そんなときは、
怖いくらいに自分の精神が静まりかえってきたりすると、、
なんか逆にとっても楽しくなってくる。
まるで、死に限りなく近づいたように。
そんなこともあるし、
一番面白いのは、絵を描いていて、乗ってきたとき。
乗って来るって言うのは、自分を忘れてしまうっていうことだけど、
それって、性的快楽ととても似ているんだよね。でも、
面白いのは、いろんな記憶がどんどんどんどんと
脈絡もなく甦ってきたりする。それも、とてもリアルに。
陶酔と創造が一体化して、創造の欲望がとめどもなく増殖する。
そんなとき描いた絵は、とっても他人に見せられないような
精神異常者のような絵だけど。
例えば、色をいろいろと塗っていると、
色彩に陶酔したりする。
赤とか、緑とか、青とかの色の意味が強烈に感じられてきて、
それらの色彩の響き合いが光を発しているように見えてきて、
瞳孔が開いて、恍惚としてくる。
それに比べて言葉は、そんなに陶酔することはないけど、
訓練して訓練して、考えて考え抜いて文章を書いたりすると、
快感を感じることもある。
難しいレポートのようなものを、いろいろ調べて書いているときとか。
それとは別に、
思いついたことをただ書きなぐっているとき、
だんだん、なにを書いてるのか、自分でもわからなくなってきたりすると、
とても面白いと自分でも思って、快感を感じることもある。
まあ、僕にとって、陶酔することが快感なんだろうなと思う。
そして、陶酔することは、別に悪いことじゃないと思う。
他人に迷惑をかけなければ、例えば、どんな化学物質やナチュラルな麻薬を使ってもいいんじゃないかと思ったりする。
それが犯罪になったり、麻薬を売りさばく売人のシンジゲートができて、抗争があったり、中毒になって廃人になったり、麻薬欲しさに犯罪に手を染めたりするから、まずいけど、
純粋に、誰もいない、それこそ車で4時間走らなければ人に出会うことのないような山の中で、自己責任でやる分には、別にいいんじゃないかと思う。もちろん、習慣性があるから、その苦しみを克服するのも自己責任だが、部屋に閉じこもって、誰にも接触しない状態でやるんなら、別に害にはならないんじゃないかと思う。
そう、僕は一度、徹底的にそれらを使って、感覚を研ぎ澄ませて、あるいは、感覚を変容させて、陶酔したまま、藝術を創造してみたいと思ったりする。
意識の変容、集中力、非日常的感覚、コントロール不能の随意運動、神経系の予期しない反射。
藝術を創造するのに、それらを使う。それらを純粋に藝術のためだけに使う。
そんな使い方なら、犯罪にはならないのではないかと、思ったりする。
もちろん、それらの作品は、精神異常者の作品のように見えるかもしれない。多くの人が批難するだけで、誰もその真価を評価する者がいないかもしれないが、理性でコントロールされ計算され尽くされた職人技のアートだけがアートだとは思えない。
むしろ、そうした、無意識の、あるいは、混沌とした下意識からの噴出、壊れた知性によって構成される秩序、原初の快感による表現、異常なまでの集中と弛緩によって描かれるマチエール。そうしたコントロールを超えたところで自由に解放された意識状態で創造されたものこそ、混沌の中に無限の可能性が秘められているような気がする。
そして、案外、そのようなものの中に、人間の本質的な、性、暴力、狂気、叫び、聖なるもの、生命と死の矛盾、理性の届かない抹殺された記憶の意味、言葉と感情の叫び、存在の本当の意味などが隠されているような気がするのだ。
死に直面する神秘
間違って、睡眠薬だと思って別の安定剤を飲んでいたから眠れないことに気付いて
睡眠薬と鎮痛剤を飲んだ。
鎮痛剤は痛みを和らげるため。
べつに怪我をしたわけじゃない。
ただ、睡眠薬だけでは心の痛みは和らがない。
寝くなったとしても、痛みはなくならない。
だから、あれこれと流しこんではみたが、
それでもそんなに眠くはならない夜。
夜通し、眠れない苦しみを感じるのかもしれない夜。
窓を閉め切っているから、当然、夜空も星も見えない。
電気スタンドの光、ノートパソコンの光。
夜が白々と明けてくるまでただ眠ることができない夜が続く。
これって、眠れない夜があるわけじゃなくて、
眠れない自分がいるだけなんだけど
その自分は、自分で直視したくない類の自分であって
他の自分を捜している
だから眠れないんだよね
僕に与えられた僕はこの僕でしかないけど
そんな自分の本当の姿なんて見たくない
あまりにも醜く、今にも消えそうな存在感、楽しみも実現できない弱さ
ただ状況に流されているだけ
死ぬまで状況に流されて
どこに辿り着くのだろう
きっと、自分の死に直面するのだろう
無力な死に直面し、そこから神秘をいくらかでもいただけたら
それはそれで、なかなかのもの
創造の矛盾の中に秘めた美
そんな美を発見できるのは、偶然じゃない
自らの精神も死を通過して、死は生に対立していないという矛盾に気付いたとき
はじめて矛盾に秘められた美を発見できる
もうひとりの聖子2
僕のコーヒーは冷めている。
聖子のブルーマウンテンは運ばれてきたばかりで湯気が立っている。
「僕は、今、5人くらいと付き合ってるんだ」
聖子が砂糖をコーヒーに入れるの見ながら言った。
「そんなに彼女がいるんですか? もてるのね」
聖子がコーヒーにミルクを注いだ。
「別にもてるわけじゃないけど、沢山いた方が面白いから、いろいろと」
「いろいろって、なにが面白いの?」
「だから・・・いろんな女がいるからさ」
聖子は、顔をしかめた。
「女ってさ、いろんな顔かたちの奴がいるじゃん。だいたい知能は同じくらいでさ、だいたいバカなんだけど、自分じゃそう思ってないんだよね。その割には、いろんな体つきの女がいるじゃん。それが面白いんだよ。わかる?」
「あー。なるほど、そうですね・・」
「きみは聖子っていうそうだけど、どうせ本名じゃないだろ。でも僕は本当に聖子って名前の子と今付き合ってんだ。偶然だね。その聖子って女、きみよりずっと背が高くてスタイルがよくて、もっとずっと色っぽいけどさ」
「あー、そうなんですか」
聖子の顔つきがどんどん悪くなってくる。
「でも、そいつ孕ませてから、一度も会ってないんだよね。今頃どうしてるか、わかんないけどさ」
聖子は黙って、コーヒー、否、”ブルーマウンテン”を唇の間に注ぎ込んだ。
「きみは、いろんな男と寝て稼いでるみたいだけど、病気もらったりしないの?」
「ちゃんと、検査も受けてるし、ゴムつけてもらってるし、そんなことないですよ」
「それを聞いて安心したよ。病気貰ったら踏んだり蹴ったりだもんな」
聖子はコーヒー、否、”ブルーマウンテン”をすすり終えるか終えないうちに、怒ったように言った。
「踏んだり蹴ったりって、どういう意味ですか? あたしで悪ければ、交代もできますけど・・」
怒って高飛車に出てきたから、思わず苦笑してしまった。
「いや、いいんだ。我慢するよ。どうせ溜まったものを吐き出すだけだから」
今度は女が嘲笑して言った。
「そうよね。たまってんのよね。でしょ。じゃあ、早く吐き出したら」
「ああ、そうするよ。じゃあ行くか」
「え? どこ行くの? トイレで一人で吐き出すんじゃないの。あたし見ててあげるわよ」
「え?」
「だから、吐きだすんだったらトイレに行けばって言ったの」
怒りを現しやがった! 飛んで火に入る夏の虫!
「なんだ? ふざけんなよ! このアマ! 金払ってんだぞ!」
「まだ払ってないでしょーに! 延長分!」
「まだ延長してないだろ!」
「先払いなの! 悪いけど!」
喧嘩腰になってきた。
「じゃあ、今、払ってやるよ! 幾らだっけ?」
「3万よ!」
「1時間3万か? 高いな!」
「アンタが言ったんでしょ!」
「お前にしては高いなってことだよ。払ってやるよ。ほら。チップも1万やるよ。ほら。これで満足だろ」
「ありがとうございます。でも、乱暴したら、迎えにくるからね。怖い人が」
「上等じゃん。呼んで来いよ! でも、乱暴なんかしない、ただオマエに吐き出すだけだよ」
自称聖子の腕をきつく掴んで立たせ、そのままレジで勘定を済ませ、エレベータに乗った。
もうひとりの聖子
年の瀬も迫って来た頃、僕は孤独だった。
安アパートで一人暮らし。
毎日の派遣のプログラマーの仕事は飽きてきたし、
でも、やめる訳にもいかず、
彼女もいないし、友達もいない。
そんなとき、銀座のホテルに誘われた。
(いや、さそったのは僕だったかも。)
でも、女が指定したホテルは、銀座にあった。
僕は、そんなホテルが銀座にあることさえ知らなかった。
ホテルのロビーは、若い男女が大勢いて、
みんな着飾っていた。
(中身がないのに、外見だけ着飾った男女。なんだか、金を多く払うことがステイタスのような顔をしている。)
ロビーに隣接するカフェがあって、
メニューには割高の数字が並んでいる。
茶色いストライプの背広を着た僕は、一番安いコーヒーをたのんで、
どんな女がくるのか待っていた。
なかなか来ないから、
天井からぶら下がっている照明機器を見ていた。
変った形をしていた。
きっと買うと高いんだろうなと思った。
内装はそれほど凝っていないが、この照明器具だけは高さそうだった。
開店当時、この照明器具にずいぶん投資したのだろう。
それで、このカフェの独自性を演出して、客が増えれば、費用対効果で減価償却できると
だれか計算した人間がいるに違いない。
それに、内装専門のデザイナーもいただろう。
どこから、こんな照明器具を調達してきたのだろう。
そんなことを考えていたら、僕の席の前に女が立っていた。
少し、緊張しているらしい。
僕は座りながら、女を見上げた。
それなりに着飾っていた。
ただ、特別に着飾っているというわけではなく、
僕から見たら、オレンジっぽい赤い襟のついたブラウスは、
ちょっと他のに変えた方がいいと思った。
濃紺のスーツをボタンを留めて着ていたが、
胸の下のを締め付けているボタンがきつそうだった。
Aラインの同じ濃紺のスカートは、似合っていた。
脚が長く見える。
ブラウスは、さっきも言ったたように赤オレンジの襟はちょっといただけなかったが、
シルクの光沢のスカイブルーの色は、とっても清々しかった。
僕も、できるかぎり着飾っていた。
銀座のホテルだからって、別にジャージで来たってよかった。
でも、なぜか僕は着飾って来た。
イタリアで買った手書きの模様が入った黒いワイシャツに、ベルサーチのネクタイ。
スーツはドルガバ。ボーナスを全部はたいて買ったやつだ。
さっきも言ったとおり、濃紺と黒が微妙に混ざった下地に、こげ茶色のストライプが微妙に入っいる。
「お電話した聖子です」
髪の毛は黒く、光沢があって、長い。
でも、聖子という名前を聞いた途端、僕は嫌な気持ちになった。
周りに着飾った男女がたくさんいた。
みんな、かっこつけて、偉そうにしている。
さもステータスが高そうにふるまっている。
それを見ていて、僕は余計に、こんな高級なスーツを着ている自分が嫌になった。
どうせ、これからやることは、決まっている。
その前に、腹ごしらえか?
フランス料理、それともイタリアン?
どこかで狩りをしてきた鹿でも焼いて食うのなら僕にとってハッピーだろうが、
そうじゃない。
このカフェを出たちょっと先にある、ちょっと名前の知れたシェフがやっているというフレンチレストラン。
そこで食事してから、お泊りか?
なにもかも、このホテル内で事足りるという安易さ。
そんなことにも、辟易していた。
しかも、初対面の彼女の名前が聖子だって。
名前を聞いた途端、性的な欲望よりも、暴力的な欲望の方が目覚めてきた。
たった二人で、密室で裸になるということは、暴力的でもある。
無防備な状態で、優しくなって、相手を癒すこともできるし、
暴力的になって、相手を傷付けることもできる。
でも、聖子と言う名前をきいて、僕は、決めた。
ベッドの上で、締めてやろう。
柔道の値技をつかって、脱け出せないように、徐々に、いろいろな技で体位を変えながら、締め付けて、窒息させ、痛みと恐怖を味あわせてやろう。
そう思いながら、コーヒーを飲みながら、相手を見ていた、
「なんか、飲む?」と訊くと「あたしも、コーヒー。ホットで」と言うので、
着たボーイに、「ホットコーヒーひとつ」と言うと、
「ブレンドでいいですか?」と言う。
他に種類があるのかと思ったが、メニューも見ないで注文すると、いちいちこれだ。
彼女にメニューを渡すと、一通り目を通した聖子は、
「ブレンドじゃなくて、ブルーマウンテンにしてください」と言った。
僕が飲んでいる”ホット・コーヒー”とブルーマウンテンって、そんなに違うのか?
いったい何がちがうんだ? 味か? 香りか? 値段か? センスか?
まー、どうでもいい。好きにしてくれよ。
きみを犯したらそれで終わりなんだから。
きみはそれ以上でも以下でもない。
裸にして、セックスする。ただそれだけのために、存在する存在。
それが、何を飲もうが、名前が何だろうが、たいした違いはない。
ただ、聖子という名前を名のるブルーマウンテンを飲んだ女を裸にして、僕の欲望を吐き出せばそれでお終い。
ブルーマウンテンくらいおごってやるよ。
もしかしたら、延長するかもね。
「今日は、これから、予定あるの?」と訊いてみた。
「ううん」と、タメ口をきいてきた。
俺はお前とそんなに親しくなったわけじゃないぞ。敬語を使えよとは言わなかった。
言わなかったが、タメ口をきかれて、可愛いとも思わなかった。
「じゃあ、1時間延長しようかな。今、言わないとダメなの?」と言うと、
ボーイがコーヒーを持ってきた。僕のとは違ったコーヒーカップだった。
形はシンプルな円筒形だが、色とりどりのイスラミックな模様がはっている高級そうなコーヒーカップだ。
それに比べ、僕のは、大きな花柄が描かれている、底がすぼまった形をしている。
「じゃあ、先に、連絡をしておきます。ちょっと電話してきます」
と言って、彼女は席を立った。
戻って来た彼女は、「1時間延長大丈夫です」と言って、コーヒーに砂糖とミルクを入れて、スプーンでかきまわした。
犬が走って行く所
事件の起きている匂いを嗅ぎつけて、犬が走っていく。
宇宙的なミステリーな事件が起きているんだけど、
犬にとっては理解を超えてるし、腹の足しにもならないけど
それでも犬は、本能に引きずられて行くのだ。
腹の足しにもならないけど・・。
なににつけても、今起きている不条理な出来事があれば、それに向かって吠えるために犬は走る。
僕はかつて犬だったから、犬の気持ちがわかる。
どうしてもそこにたどり着かなければならないのだ。
強い衝動は自分のものじゃない。自分では抑えられない。
それがどこかわからないまま、目的もなくただ走り出す。
何に向かって何のために走っているのかもわからないまま・・。
衝動が心臓を鼓動させる。
全身を巡るアドレナリンが筋肉を硬直させる。
脚が疾走を始める。
起きていることは、その事件の背景が分からなければ理解できないのだけど、
犬には理解できなくても、現象だけは、見える、聞こえる、感じる。
人間以上に見える、聞こえる、感じる、そして、匂う。
海辺のモダンな二階建の白い家が燃えている
オレンジ色の炎は二階の屋根を突き破って、風にあおられて、青い空に舞い上がっている。
それはある意味、とても綺麗な光景だ。
犬がその”美”を認識できるかどうかわからない。
人間だから、その光景を綺麗と感じるのかもしれない。
でも、それを事件だとか、人命にかかわることとか、被害総額とか、そういうことを一切考えずに見るならば、の話だ。
真っ白い2階建てのモダンな木造住宅が、青空の下で、オレンジ色の炎に燃えている。
その光景は、美しい感動を呼び醒ます。
ところで、なにがあったのだろうと、人間はすぐに考える。
きっと不吉なことに違いないと誰もが想像するだろう。
家が燃えるのは不吉なことだ。
でも本当は逆に、とても素敵な原因があったのかもしれない。
破壊はときに美しい。
新たな創造のためには、その前に、必ず破壊が必要だ。否、必要とされる創造が起きなければならないのだとしたら、その前に破壊が起きることは美しい。
だから、破壊が美しいのも当然である。創造よりも美しいことすらある。しかも、そこに人間が誰も関与していなければいないほど、破壊は美しさを増す。
僕は犬だから、否、犬は僕だから、燃え盛る白い木造住宅に向かって吠える。
理由は、単純だ。
燃え盛る炎の”美”に感動したから、破壊の匂いを嗅いだから。
若い男女が愛し合ったことに嫉妬した別の若い男が放火した。否、放火したのは女だった。
放火した女だって、男と愛し合っていたのに、同じ男が別の女と寝ているのは許されない。
二人ともまとめて焼き殺したかった。
美しい女なのに、残酷なことを考える。
「わたしの愛のために、すべてを破壊するの。二人とも死ねばいいのよ」
犬になった僕は、放火した女に向かって吠えた。
「あなたの破壊は成功した。あなたは、あなたの愛した男を焼き殺した。しして、その男が愛した女もまとめて殺してしまった。自分の愛のために、二人を焼き殺した。あなたが新しい愛を求めたあまり、あなたが愛した対象まで失ってしまった。もう二度とあなたはあなたが愛した男を愛することはできない。あなたはあなたの愛を葬ったのだ。そして、自分自身を葬ったのだ」
燃え盛る炎の中に女は飛び込んで行った。
犬が走って行く所。
そこではいつも、宇宙的なミステリーな事件が起きている。
割り切れない、男女の不可解な事件。
燃える愛憎と。
破壊と創造。
言葉はごまかせても行動はごまかせない
スマホであれやこれや見てるのって、ただの逃避でしかない。一番大切なことを忘れるための。なぜなら、一番大切なことは、もう、どうしようもないから。自分では、もう、何もできず、ただ、嘘っぱちのいいが掛かりで、非難されるだけだから。
言葉はいくらでもきれいごとが並べられる。でも、行動はごまかせない。そして、行動を見ているのは、神しかいない。
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言葉はいくらでもきれいごとが並べられる。でも、行動はごまかせない。そして、行動を見ているのは、神しかいない。
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藝術
藝術を売って歩く
誰も買ってくれない藝術を
トラックの荷台に乗せて
助手席にはお腹が大きくなった女
ぼくの子を腹んでいる
なぜなら二人は愛し合ったから
そしてぼくは愛し合う男女を描く
たくさん描く
そ して、誰もそれを称賛しない
そして、やがて新しい命が生まれる
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