堀 啓のブログ -4ページ目

キックを蹴る時の頭の位置

パンチのように両足を地面につけた状態では、足と足の範囲の上に頭があると安定する、と前回の投稿で書きましたが、キックとなるとちょっと事情が違ってきます。


キックの場合、どちらかの足を「武器」にするので、当然片足立ちになります。

では軸足になる足の上に頭を持って来ればいいのかというと、そうではありません。

なせなら、蹴る時に「武器」として相手の方に伸ばして行くことになる蹴り足にも、質量があるからです。

上半身を軸足の上で真っ直ぐ垂直に保ったまま、片足だけ浮かせて前に伸ばすと、足の重さで重心は大きく前に移動してしまいます。

壁を背にして、踵とお尻、両肩、背中、頭を壁につけて離れないようにしながら片足を伸ばしたまま前に上げてみてください。

なかなか難しいと思います。ほとんど上がらないのではないでしょうか?

これは、後ろに壁があって頭を後ろに下げる事ができないため、足を上げた分、重心が前に移動しバランスを保てないからです。
本当に重心だけの問題なのか検証のために自分で色々試してみました(^^)
この状態でも真横には足は上がります。また、ドアノブなどにつかまれば、前にも足を上げることができました。


蹴る時は、軸足側の股関節を支点に、天秤のように蹴り足と上半身が釣り合っている必要があります。

蹴り足が伸びていく方向の反対側に上半身、頭を移動させることで、キックに安定感が生まれてきます。

ちなみにキックの種類や高さによって、釣り合いを取るための頭の位置も変わってきます。

例えばハイキックであれば、足が高く上がる分、シーソーのように頭を反対側に大きく移動させる必要があります。

逆にローキックの場合、頭を後ろに引きすぎると体重の乗らない、軽い蹴りになってしまいます。


いろいろな蹴りによって、それぞれ最適な頭の位置を見つける必要があります。

そのためには、蹴りそのものも大切ですが、蹴った後、いかに無理なく元の構えに戻れるか、という事を意識してみると良いかもしれません。

蹴った後に素早く安定した構え、つまり両足の範囲内に自分の頭がある状態に戻れる事が重要になってくると思います。

パンチを打つ時の頭の位置(2)

前回はパンチを打った時の頭の位置の「高さ」について書きましたが、今回は平面で考えた場合の頭の位置を考えていきたいと思います。

以前の投稿で書いたように、背筋を伸ばして両足で立った状態では、どちらかの足の垂直線上に頭を持ってくると、その足の上に重心を移動させることが出来ます。

しかしこれは、頭が両足の外に出てしまうと、重心も両足の外に出てしまい、安定しなくなってしまうということでもあります。

例えば相手のパンチを頭を振って避けようとしたとします。
この時にパンチを警戒するあまりに頭を大きく振りすぎ、大きく両足の外に頭がはみ出してしまうと、両足の間に重心がないため、振った頭を元の位置に振り戻すのが容易ではなくなります。
そのため、その後に続く攻撃に対してバランスが崩れた状態で対応しなければならなくなります。
相手の攻撃をかわす時は、なるべく最小限の動きで、自分の構える両足の範囲内で頭を振る、大きく動きたい時は、頭だけでなく足も一緒に移動させる、と言ったことが必要になってくると思います。

また、右ストレートを打った時に、遠くまで届かせようとするあまりに頭が前足である左足よりも前に出て、つんのめるようなパンチになる事があります。
これもやはり重心が両足の間より前に出てしまったためにバランスが取れず、身体が前に引っ張られてつんのめる形になっているのです。
このような打ち方だとパンチを打った後、前足のブレーキが効かず身体が前に流れてしまいます。
バランスを崩しているので、打った後の相手のカウンターに対応出来なかったり、自分の攻撃も続かなかったり、勢い余って頭が当たってしまったりします。
逆に、敢えて思い切って頭から突っ込むようにパンチを打つ選手もいます。
そういう場合には、パンチを打った後に元の位置に体を戻すのは難しいので、足を重心の下に引き寄せるように前に送り出す(前に踏み込む)事でバランスを保ちます。

このように、動きの中で両足の範囲の外に頭が出てしまう場合、頭を移動させた方向に身体(足)も移動しながらであればバランスを保つことは可能です。
しかし基本的には両足の範囲内で頭の位置、重心をコントロールする事が重要になってくると思います。


パンチを打つ時の頭の位置

先に言っておくと、ここにはかなり賛否や、いろんな意見があると思います。
なので、これはあくまで僕個人の経験からくる考え方です。

まず構えですが、基本的には首を立てて、頭を上にすっと伸ばした状態でやや顎を引きながら立ちます。
そしてその位置を基本として頭の位置を体重を乗せたい方向に移動させたり、カウンターを避けるために横にスライドさせたりして打ちます。

「ガードをしやすい様に猫背の様に背中を丸めて頭を低く構え、パンチを打った時も、肩でアゴを守れ!」
と教えられた事がありますが、この構えと打ち方だと肩をすくめる様な体勢になり、無意識に僧帽筋が緊張した、いわゆる「肩に力が入った状態」になります。
肩に力の入った力んだ状態だと、上半身の力でも、それなりに強いパンチは打てるのですが、体力の消耗が激しくなります。
加えて猫背になるので肺が圧迫され、呼吸も浅くなってしまい、スタミナ面でかなり不利になります。
もちろんこれは誰にでも当てはまるわけではなく、ムエタイのトップ選手などでこの様な構えでも非常にバランスが良く、余計な力が抜けた柔らかい動きをする選手もたくさんいます。


逆に頭を上に伸ばすと、相対的に肩が下に下がり、それによって僧帽筋の緊張が緩和されます。
肩が下に下がると脇の下から骨盤までの胴体部分が短くなる為、体幹を一つの塊として意識できる様になります。
体幹を一つの塊として意識する(体幹を固める)事で、下肢で発生させた力を体幹で逃がすことなく上肢に伝え、しっかりと体重の乗ったパンチを打つことが出来るのです。

そして何より、頭を上に伸ばすことで、身体にきれいな一本の軸が通ります。
しっかりした軸が体の中にできると、芯の通った硬質なパンチを打つことが出来る様になります。
また、パンチを打った際の身体のブレが抑えられるため、コンビネーションや連打を打った際の回転が速くなります。

メンタル的な面でも、頭を一段上に置いておくことで視界が広がり、俯瞰的な目線で自分のパンチを見ることができます。
このことで、激しい打ち合いになってもある程度の落ち着きを保つことが出来るのではないでしょうか。


と、この様に「頭の位置を高くする」事のメリットを書き連ねて来ましたが、当然デメリットもあります。
それはやはりディフェンス面での不安感。頭を高くすれば当然その分ガードの位置は下に下がり、最大の急所である頭部がむき出しになってしまいます。
かといって無理にガードを高く上げれば結局肩に力が入り、意味がなくなってしまいます。
頭がむき出しな分視界が広くなり、相手の動きに反応しやすくなっているはずなので、相手の攻撃に瞬時に反応し、その都度適切なディフェンスを選択する必要があります。

こういった不安な面はありますが個人的には、この「相手の動きに対して、その都度適切な対応を瞬時に選択をする」
という部分こそが相手との駆け引きにつながる、対人競技である格闘技の醍醐味なのではないか思っています。