パンチを打つ時の頭の位置 | 堀 啓のブログ

パンチを打つ時の頭の位置

先に言っておくと、ここにはかなり賛否や、いろんな意見があると思います。
なので、これはあくまで僕個人の経験からくる考え方です。

まず構えですが、基本的には首を立てて、頭を上にすっと伸ばした状態でやや顎を引きながら立ちます。
そしてその位置を基本として頭の位置を体重を乗せたい方向に移動させたり、カウンターを避けるために横にスライドさせたりして打ちます。

「ガードをしやすい様に猫背の様に背中を丸めて頭を低く構え、パンチを打った時も、肩でアゴを守れ!」
と教えられた事がありますが、この構えと打ち方だと肩をすくめる様な体勢になり、無意識に僧帽筋が緊張した、いわゆる「肩に力が入った状態」になります。
肩に力の入った力んだ状態だと、上半身の力でも、それなりに強いパンチは打てるのですが、体力の消耗が激しくなります。
加えて猫背になるので肺が圧迫され、呼吸も浅くなってしまい、スタミナ面でかなり不利になります。
もちろんこれは誰にでも当てはまるわけではなく、ムエタイのトップ選手などでこの様な構えでも非常にバランスが良く、余計な力が抜けた柔らかい動きをする選手もたくさんいます。


逆に頭を上に伸ばすと、相対的に肩が下に下がり、それによって僧帽筋の緊張が緩和されます。
肩が下に下がると脇の下から骨盤までの胴体部分が短くなる為、体幹を一つの塊として意識できる様になります。
体幹を一つの塊として意識する(体幹を固める)事で、下肢で発生させた力を体幹で逃がすことなく上肢に伝え、しっかりと体重の乗ったパンチを打つことが出来るのです。

そして何より、頭を上に伸ばすことで、身体にきれいな一本の軸が通ります。
しっかりした軸が体の中にできると、芯の通った硬質なパンチを打つことが出来る様になります。
また、パンチを打った際の身体のブレが抑えられるため、コンビネーションや連打を打った際の回転が速くなります。

メンタル的な面でも、頭を一段上に置いておくことで視界が広がり、俯瞰的な目線で自分のパンチを見ることができます。
このことで、激しい打ち合いになってもある程度の落ち着きを保つことが出来るのではないでしょうか。


と、この様に「頭の位置を高くする」事のメリットを書き連ねて来ましたが、当然デメリットもあります。
それはやはりディフェンス面での不安感。頭を高くすれば当然その分ガードの位置は下に下がり、最大の急所である頭部がむき出しになってしまいます。
かといって無理にガードを高く上げれば結局肩に力が入り、意味がなくなってしまいます。
頭がむき出しな分視界が広くなり、相手の動きに反応しやすくなっているはずなので、相手の攻撃に瞬時に反応し、その都度適切なディフェンスを選択する必要があります。

こういった不安な面はありますが個人的には、この「相手の動きに対して、その都度適切な対応を瞬時に選択をする」
という部分こそが相手との駆け引きにつながる、対人競技である格闘技の醍醐味なのではないか思っています。