堀 啓のブログ -5ページ目

頭の位置

キックボクシング、格闘技に限らずあらゆるスポーツにおいて、頭の位置というのはかなり重要な役割を持っています。

その理由は大きく分けて3つあります。


一つ目は情報収集、処理能力。
目があり耳があり鼻、口がある頭部には、味覚、聴覚、嗅覚、触覚、視覚の五感のうち、触覚以外の全てが集中しています。
(もちろん顔にも触覚はありますが、触覚は全身、というか手がメインだと思います。)
 そのため、頭の位置によって外から得られる情報の質が大きく変わってきます。
例えば視覚ですが、頭が高い位置にあるか低い位置にあるか、前にあるか後ろにあるか、顔の向きはどうか、などの状況によって視界に広がる光景はまるで違いますよね。
また、それらの得た情報を処理する脳があるのも頭です。
外部からの情報を適切に得て、適切に処理するために、頭の位置は非常に重要になってきます。


二つ目は呼吸。
頭部にある口と鼻は呼吸の窓口でもあります(皮膚呼吸もありますがここではちょっと無視します)
頭が体軸の上にまっすぐ乗っていれば気道も確保されて自然な呼吸が可能です。
しかし頭が体軸の上からズレてしまうと、猫背になったり身体が歪んだりして肺を圧迫し、呼吸が浅くなってしまいます。
呼吸が浅いと、脳や身体に酸素が行き渡らなくなるので集中力もなくなり、身体の動きも悪くなる、いわゆるスタミナ切れの「ガス欠状態」になりやすい状態す。
そのような状態に陥らないためにも、呼吸を妨げない頭の位置が大切になって来ます。


そして三つ目は重心とバランスです。
成人の頭の重さは、体重の約10%だと言われています(個人差はありますが)。
そんな重い部位が身体の一番高いところについているので、この頭の位置をしっかりコントロールして、バランスを取る必要があります。

鏡の前で足を肩幅に開いて背筋を伸ばして立ってみて下さい。
そしてどちらか片方の足をそっと地面から浮かしてみましょう。
このとき、片足で安定して立てていれば、その足の上に重心が来ているということになります。
その状態で、鏡で自分の姿を確認してみて下さい。
立っている方の足のほぼ真上に、頭が来ているのではないでしょうか。
確認のため、反対の足でも立ってみましょう。
やはり体重を支えている足の真上に、頭が来ると思います。
つまり、背筋を伸ばした状態でどちらかの足の垂直線上に頭がある時、身体の重心もその線上にある。ということになります。
それほど頭の位置は身体の重心位置に対して大きな影響力を持っています。
そして、この法則を上手く利用する事で、体重移動を伴なう様々なスポーツの動作をよりスムーズに行うことができるようになります。


格闘技に関して言えば、人体の最大の急所でもある頭部をどこに置くかというのは、ディフェンスの要にもなってきますね。


この様に頭の位置を意識することで、スポーツのパフォーマンスは大きく変わってきます。

次回から、この頭の位置について具体的に書いて行こうと思います。



伸張反射を使ったフック(2)

2ヶ月空いてしまいましたが前回の続きです(^^)

肘を肩甲平面の後ろに引いて肩、胸周りの筋肉に伸張反射を起こさせてバネを弾くように打つフック。
しかし、文字通り肘を後ろに引いてしまうと、腕を後ろに引いてから前に振り出す切り返しの瞬間に大きく隙ができてしまいます。
後ろに引いていたものを反対方向に振るので、エネルギーもたくさん使い体力の消耗も激しいです。

ではどうすればいいでしょうか?

を後ろに引くのではなく、パンチを打つ側の腕以外の部分(体幹部分)を強く前に振り出すことで、肩、胸周りの筋肉が引きのばされ、伸張反射が起こり強いフックを打つことが出来ます。
この打ち方なら後ろに引いてそのまま前に出すという、切り返し動作がないぶん隙ができにくいのと、エネルギーの消耗も少なくて済みます。

しかし、もう一つ気をつけなければいけないことがあります。
この状態は腕が肩甲平面の後ろにある不安定なポジションのため、この状態でパンチが当たると肩に大きな負担がかかりかねません。
肩、胸周りの伸張反射はあくまでパンチを加速させるためで、当たる瞬間の肩関節の角度はあくまで肩甲平面上か、肩甲平面の内側であるべきだと考えます。
フックを打つときに体幹から加速させますが、当たる瞬間には腕が身体の前面に来るように、体幹には急ブレーキをかける必要があります。
この急ブレーキによって、伸張反射に加えて慣性の法則が働き、フックのスイングのヘッドスピードが上がってバネの効いた鋭いフックを打つことができます。
身体の前面で売っているので肩関節が安定したポジションになりインパクトでも強い力を発揮できます。
この場合、フックを打つ腕は極力リラックスし、肘の角度だけ注意して、あとは肩からぶら下げた石(=拳)を振るようなイメージで打ちましょう。

全身の力を使ったフックを打つ為には、更に下半身で発生させた力を上手く連動させて体幹を通じて上半身に伝える必要があります。
下半身から伝わってきた力に、上半身のバネを上乗せしてフックを打つにはこのような打ち方が有効ではないでしょうか。



※ただし、この打ち方もやはり肩関節には大きな負担がかかるので、肩周りの筋肉が十分に鍛えられていない方、肩の脱臼癖がある方は注意して使ってください。

伸張反射を使ったフック

前回の最後にちょっとだけ触れた、腕を背中の方に引いてから打つフックのメカニズムについて書きます。


筋肉には、様々な防衛機能が備わっています。


その一つが伸張反射です。


筋肉は急激に引き伸ばされた時、引き伸ばされすぎてその筋肉が傷ついたり、関節に過剰な負担がかかったりするのを防ぐ為に、強い力で縮もうとします。


この伸張反射を上手く使うことが、より強いフックを打つ秘訣になります。


肘を外に開いて腕を背中の方に引いていくと、胸や肩、上腕の前側の筋肉が伸びているのを感じられると思います。


腕が肩甲平面の後ろに行ってしまうと危険なので、腕を後ろに行かせないよう、これらの筋肉がバンドのような役割をしているのです。


ここで、敢えて腕を不安定で危険なポジションである肩甲平面の後ろに引くことで、肩関節の安定感を守っている胸、肩、上腕の筋肉に伸張反射を引き起こさせ、バネの効いた強いフックを打つ事ができます。


次回に続きます。