腸を健康に保つ事で『恐れを減らす』ことが判明
2022年02月04日(金) 記入者: Virgilio MarinTags: Autoimmune disorders, brain function, brain health, digestion, discoveries, goodhealth, goodscience, gut bacteria, gut health, immune system, inflammatory bowel disease, Mind, research, weird science
ニューヨークのワイルコーネル医科大学が主導した研究により、健康な腸は恐怖の記憶を消して「恐怖を感じ難くする」事ができる事が明らかになりました。
Nature誌に掲載された論文で、研究者はマウスを使って恐怖反応を学習解除する能力を探った方法を詳述しています。
腸内細菌はどのようにしてマウスの恐怖記憶の消滅を助けるのか?
恐怖反応における腸の役割を探る
腸内細菌が脳の健康に重要な役割を果たしている事が、次第に明らかになってきています。
これ迄の研究で、これらの微生物群集の崩壊が、行動の変化や特定の自己免疫疾患及び精神疾患と関連している事が示されています。
例えば、最近の研究では、ある特定の腸内細菌の組み合わせが、脳と神経の病気である多発性硬化症の症状を悪化させることが示されました。
又、別の研究では、炎症性腸疾患(IBD)の子供は、うつ病や不安神経症等の精神疾患を後年発症するリスクが高いことが明らかにされました。
しかし、これらの調査では、腸 - 脳軸の存在は確認できたものの、この軸を支えるメカニズムは依然として不明なままでした。
「炎症性腸疾患(IBD)や」「その他の慢性消化器疾患が」
「行動や精神衛生にどの様に影響するのか」
「未だ誰も理解していません」
と、研究の共同上席著者であるワイルコーネル医科大学の免疫学教授でIBD研究ディレクターのデビッド・アーチス教授は述べています。
研究者達は『恐怖条件付けと絶滅学習』と呼ばれる実験を用いて、マウスが恐怖の引き金をどの程度学習し、どの程度忘れるかに注目しました。
この実験では、マウスに脅威と音を関連付ける様に条件付け、音それ自体が脅威と同じ恐怖反応を引き起こす事ができる様にします。
マウスは、繰り返し音に曝されると、脅威が最早存在しないという事実に脳が適応し、その関連性を忘れる傾向があった。
しかし、生まれた時から腸内細菌がいないマウスや、腸内細菌が大幅に減少したマウスでは、脅威が無くなった事を学習する能力が、著しく低下していたのである。
これは、彼らの脳が新しい条件にアップデートされていなかったことを意味する。
腸が恐怖の記憶に影響を与えるメカニズム
研究チームは、この効果の分子メカニズムを探る為、マウスのミクログリアの遺伝子調査に着手した。
ミクログリアは、脳内の免疫細胞で、神経細胞間の結合を刺激して切断し、脳回路の改造を助ける。
研究チームは、マウスの内側前頭前皮質(mPFC)(絶滅学習に重要な脳領域)の、遺伝子発現を調べた結果、腸内細菌の不在が、mPFCのミクログリアの遺伝子発現を変化させて居る事を突き止めた。
これにより、新しい神経細胞の形成が妨げられ、学習と忘却の際の神経接続が解消された。
(関連記事:うつ病は腸内環境が悪いだけの症状なのか?腸と脳の健康の関連性を確認する研究)
研究チームはまた、無菌マウスの脳内化学物質に著しい変化を見出し、その中には自閉症や統合失調症などの精神疾患に関与する分子のレベルが変化している事も確認した。
研究チームは、無菌マウスの腸内細菌を回復させた処、生後直ぐに腸内細菌を回復させた場合に限り、条件付き恐怖反応を学習解除できる事が判明した。
自己免疫と関連する多くの精神疾患は、脳の発達の初期段階で起こる問題とも関連している為、この発見は重要である。
研究者らは、更に研究を進めれば、今回の発見がいずれ新しい治療目標に繋がるだろうと楽観視している。
「腸が自閉症、パーキンソン病」「心的外傷後ストレス障害、うつ病など」
「多様な疾患にどの様に影響するかについて」
「より深く理解され始めています」
と、アーチス教授は述べています。