致命的な農薬は、何世代にも渡ってミツバチの個体群に悪影響を及ぼす可能性がある事が研究で判明
2021年11月28日(日) by: Mary VillarealTags: agriculture, bad science, badpollution, bees, Collapse, disaster, earth science, Ecology, Endangered species, environ, Good science, honey bees, pesticides, pollination, pollinators, science, wildlife
最近の研究で、農薬がハチの個体群に何世代にも渡って悪影響を及ぼすことが明らかになりました。
米国科学アカデミー紀要に掲載された論文によると、ハチが生後1年目に一般的な農薬にさらされると、ハチの個体群は何世代にもわたって打撃を受ける可能性があるという。
米国で合法的に使用されている致死性の農薬は、何世代にも渡ってハチの個体群に悪影響を及ぼす可能性があるとの研究結果を発表
主著者であるカリフォルニア大学デービス校の生態学博士課程のクララ・ストゥリグロス哲学博士は次のように述べています。
「特に農業地域では、農薬は年に何度も」
「また何年も続けて使用される事がよくあります」
「今回の調査では、その事がミツバチの個体群にとって」
「どの様な意味を持つかが、よく判りました」
と、述べています。
ストゥリグロス哲学博士と彼女のチームは、ミツバチと同じの大きさですが、単独で生活し、青くメタリックな色をしているブルー・オーチャード・ビーと呼ばれる特定のハチの種を研究しました。
ブルー・オーチャード・ビーは、米国に自生するワイルドフラワーや、リンゴ、チェリー、アーモンド、モモなどの農作物の重要な受粉者です。
研究チームは2年間の実験を行い、米国で最も一般的に使用されているネオニコチノイドであるイミダクロプリドをミツバチに投与しました。
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ネオニコチノイドは、ミツバチの神経細胞に影響を与え、電気信号の伝達を妨げる為、ミツバチにとって有害である事が知られています。
今回の研究では、特に「キャリーオーバー効果」と呼ばれる、曝露が何世代にも渡って蜂の個体群に影響を与え続ける事に焦点を当てています。
「植物の全組織に存在する浸透性の農薬で」
「ミツバチの神経系に影響を与えます」
「その為、ハチの行動や生理に」
「様々な影響を及ぼす可能性があります」
と、ストゥリグロス哲学博士は述べています。
研究チームは、様々なライフステージのミツバチに農薬を投与し、異なる結果を得ました。
生後1年目に農薬を浴びたハチは子孫が20%減り、成虫になってから一度でも農薬を浴びたハチは子孫が30%減り、幼虫と成虫の両方で一度でも農薬を浴びたハチは子孫が44%減りました。
また、巣作りの確率や割合、ハチの雌雄比などを考慮すると、連続した年に曝露した場合、全体で71%も個体数の増加が抑えられたことになります。
殺虫剤への一度の曝露から回復するには、ミツバチは何世代もかかる可能性がある
以上のことから、研究チームは、ネオニコチノイドが、ここ数十年で激減したミツバチや昆虫の個体数に悪影響を与えていると結論付けました。
「私達、養蜂家や孤高の養蜂家の多くが」
「農地で起こっているのではないかと」
「疑っている事を裏付けるものです」
研究者で養蜂家のスティーブ・ピーターソン氏は
「過去数十年の間に」
「あらゆる種類の昆虫が激減しており」
「その多くは環境中の」
「残留農薬が原因ではないかと考えられます」
「EPA(米国環境保護庁)が」「この様な研究を見直し」
「リスク評価の際に、この様な影響を」
「慎重に検討する事を期待しています」
「私は、農薬のリスク評価の一環として」
「多世代に渡る研究や非直接接触の研究を」
「要求する必要があると思います」
と述べています。
失われるミツバチの個体数
1990年代以降、ミツバチの4分の1の種が目撃されなくなり、昆虫は過去30年間で約25%も個体数が減少しています。
農薬は、生息地の喪失、汚染、気候変動などのストレス要因と並んで、昆虫の個体数を減少させる大きな脅威と考えられています。
この最新の研究結果は、米国の規制当局がEUに倣ってネオニコチノイドの農薬配合を禁止するための新たな論拠となります。
米国では、イミダクロプリドを含む400以上の製品があり、それらは全てミツバチに悪影響を及ぼしている。
(関連記事:殺虫剤カクテルは予想以上に蜜蜂には危険である事が判明)
「影響は累積的なものです」「天才でなくても」
「何年も連続して農薬を散布するだけで」
「個体数が危険なレベルにまで低下する事を」
「理解できるでしょう」
と、ロンドン大学クイーン・メアリー校の生態学教授で、今回の研究には参加していないLars Chittka氏は言う。
「例え、2022年のシーズンに農薬散布が禁止されたとしても」
「2021年の散布による悪影響が出てくる事が判りました」
「今日成熟し、来年の作物の受粉に備える幼虫は」
「既に取り返しのつかない影響を受けているのです」
ストゥリグロス哲学博士らのチームは、殺虫剤への曝露をできる限り減らす事が重要であり、農薬の「キャリーオーバー効果」を研究に取り入れる事も重要であると指摘しています。
研究チームは、農薬が環境中でどの様に蓄積され、複数年に渡ってミツバチの個体群に影響を与えるかについて科学者が理解を深めていく中で、受粉媒介者に対するリスクを害虫管理戦略に組み込むことが引き続き重要であると述べています。