音楽偏遊 -39ページ目

音楽偏遊

最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

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「Kiss!Hug!!Love!!!」@渋谷Milkyway
出演:スキルアップ→ヒグチアイ→Jigenn→矢沢洋子
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今夜は矢沢洋子&Milkyway企画、毎月恒例の「Kiss!Hug!!Love!!!」だ。毎回、矢沢洋子がホストとなって、勢いにのってるロックバンドを3組を招いて計4組でガンガンとロックしちゃうこのイベント。

矢沢洋子ファンの自分は彼女だけでも聞く価値ありなのだが、対バンがいつも実力派ばかりで、新たなバンドとの出会いも楽しみの1つ。それだけに、このイベントには予定がなければ、いつも来たいと思っている。いるのだが…

そこに先月、ふとキスハグの予定を見てたら出演者にヒグチアイの名前が。それに気付いた時の興奮といったら!矢沢洋子と、ヒグチアイが対バンする、しかもロックなイベントで。考えただけでも、ニタニタ笑いが止まらない(笑)ヒグチアイもついにここまで昇ってきたかー。感慨深し。

会場のMilkywayはオールスタンディング。ロックだから、それも当然。ただ、ピアノ弾き語り中心に着席の客を相手に歌っているヒグチアイが、百戦錬磨のロッカーに挟まって、場を盛り下げないか、親心で心配だった。

が、それは杞憂に。ガツーンとかましてくれた!彼女の音楽は文法的には、彼女の後に出たJigennや矢沢洋子のようないわゆる「ロック」ではないが、ただでさえパワフルなヒグチアイのボーカルが、バンドが作り出す劇的なグルーヴで、ぐんと前に押し出された時の迫力といったら!彼女の前に出たスキルアップも耽美的でかつ骨格しっかりしたバンドで魅力的だったが、ヒグチアイは全くひけをとらず。

ステージの向かって左手前にキーボードとヒグチアイ、その彼女から衛星のように距離をおいてギター、ベース、ドラムが右奥に並ぶという、明らかにヒグチアイを際立たせるシフト。以前のバンドライブより、その傾向が顕著に。これはもしやサインなのかなw

暗いステージから、おもむろにキーボードだけがキラキラ鳴り初め、「ココロジェリーフィッシュ」の前奏が。そこにガツンとバンドサウンドが入り、音圧がドンと高くなる中に、彼女の強い歌声が会場を圧するように響く。PA さんも、よく心得た音作りで、彼女のロックな部分をうまく引き出す。

サビにかけて、テンポが速い!ぐいぐいと、聴衆を引っ張る牽引力がいつにも増して強く、体を持っていかれる。やるねー。どの曲も勢いがちがう。

さらにMCにも張りがある。いつもの「MCの声が小さいキャラ」はそこになく、ハキハキとトークもアッパーな感じ。アドレナリンが出ているのだろう。

今日、特に出色だったのは「巡るキオク」。いつもよりかなり速いテンポで言葉を叩きつける。が、雑ではなく、一言ひとことを大切に歌っていて、歌詞が頭に入ってくる。演奏がタイトで、聞く側の集中力も上がっているためか、よそ見させない。このときの映像はないけど、代わりに前回、Milkywayでバンドでやった時の映像がこれ。今回は、このときより激しく、テンポもよく、演奏がより凝縮していて熱かったけどー!


今回は、ピアノ弾き語りの時でも難しそうなサビの導入部を、パワフルに怒涛のようにかけあがりながら乱れない。そして、最後のフレーズに入るところで、前回のバンドライブと変えて、あえて入らずバンドの音でさらにテンションを高めていくアレンジ。こっちの方が良いかも!

〈セットリスト〉
1)ココロジェリーフィッシュ
2)君とそのまま
3)巡るキオク
4)東京
5)永遠のウオーカー

いつものように「東京」の前に出身地で音楽を始めた長野の話題でMC 。ただし今夜は同じ長野のライブでも、ツアーの一環。これから関西巡って、さらに沖縄へ飛ぶと話すと、オォーとどよめく。彼女は全国区の歌手なんだという目でみているお客さんがいる。

ちなみに、彼女にとり本格的なツアーは初めて。ツアータイトルは「ヒグチアイと申します」ーーストレート過ぎて、意表をつかれる(笑) まさに、全国に自分の存在を紹介しよう、って魂胆だ。バンドツアーではなく、ピアノ弾き語りの旅だが、今の彼女の実力なら間違いなく、行く先々でお客さんの心を鷲掴みしてくるだろう。

そして、ラストに歌ったのが「永遠のウオーカー」。最近は歌う機会減っていたが、今夜のウオーカーはキレキレ!跳ね上がりたい衝動も。スタンディングでのれて良かった。ツアー真っ最中の彼女にとっても、ぴったりの内容の曲。一歩一歩、止まることなく歩き続けよう!自分自身への応援歌だね。

ツアー先の各地でどれだけファンを増やし、名前を売ってこれるか。歌で食っていくことができるか占う試金石となるだろう。ガンバレー!関西や沖縄へは行けないが、東京から応援してます。

さあ、そしてキスハグだ。ヒグチアイだけに気を取られてる場合ではない。他の出演者も魅力的だった。

まず1番手のスキルアップから意表をつかれた。

ゴスロリ風な衣裳やメイク、ステージに置かれたシャンデリア。オープニングBGMの耽美な調べ。後ろ向きでカラクリ人形のようなポーズのシルエットで姿を現す演出。 ああ、あれね、と先入観をもって期待せずに聞き始めたらオドロキ。すごく、しっかりした骨格ある音楽じゃないか。演奏の技量もコーラスワークも、何よりひーちゃんの歌唱力のしっかりしていることといったら。絶対音感を持っているのかもしれない。1曲目の「流心」でもう虜に。

vocal>時々keyのひーちゃん、chorus&baseのひなの女性2人で、この日はサポートのドラムも。実はベースの方が女性だと物販で話すまで気付かなかった。道化師のようなメイクで、長身で、動きが男っぽいから。ごめんなさい。で、ググってみたら、彼女たちは「ゴシックガールズロック」なる分野を自分たちで切り拓こうと活動しているらしい。それは、聞いていてよく分かった。その完成度もかなり高い。見事にゴシロリの世界観を音に落とし込んでいるのだ。ロックだが、耽美的で、それでいてグルーヴもしっかりあってノレるし。

全体的には暗めの曲(マイナー調?)な曲が多いが、結構好きなタイプだ。素顔はよく分からないが(笑)

そして何より調べて興味を惹かれたのが、彼女たちがSecondlifeで活動していたこと。あそこは、先鋭的なファッションをやろうと思ったらうってつけ。僕も3~4年前にデジハリの杉山さんや三淵先生、シャ乱Qハタケさんらとセカンドライフを通じて交流させてもらい、どっぷりSecondlifeにはまっていた時期があった。あの頃よくM2J Coreやソラさん、Uri Kuriさんなどのライブをセカンドライフで見たなあ。Infinityなんてイベントも会って、そういえば六本木のどこかのライブハウスに行ったなあ………なんて、遠い記憶を思い出してしまった。

スキルアップも、Edo吉原でライブやっていて、その映像が検索すると出てくる。なんと衣装はBare Rose!羨ましい!


てか、知っている人は知っているが、たぶんこれ読んでくれる人は全く知らないだろう固有名詞の連発すみません(笑)地球上には、リアルライフと違う世界が厳然と存在していて、そこにすごい文化が発達しつつあるということなんだけどね。一度ははまってみることをオススメしたい。

ただ注意が必要。仮想空間で流れる時間は、リアルライフで流れる時間と実は同じ。うっかり仮想空間に生み出された無限の奇想天外、想像力極まる建築物や世界の「観光」を楽しんだり、多くの人と交遊し始めると、長い長い時間をそこで過ごすことになって、実生活に影響が出ます。魅力あふれるファッションやインテリア、乗り物などで溢れるショップを巡ると物欲が刺激され、購入し始めるとお金もかかります。だから自分、最近やってないのですが(笑)

まあ、世界にいまや100以上ある仮想空間の中で、アメーバピグのような初心者向けの2次元の小さい世界なら安全そのもの。ところがSecond Lifeのように広大無辺な3次元仮想空間にはまると、もはや何年間でも遊び倒せるほど。サイバーエージェントという会社が遊び場を作っているピグとは違い、SecondLifeは世界中の何百万という参加者自身が、次々と新たな世界を構築し続けているからね。広がり続ける宇宙の果てを追いかけて旅をするようなもの。スペックの高いPCと、高速通信環境が必要という点が相変わらずネックだけどね。


と、大きく脱線したが、話をライブに戻そう。スキルアップ、ヒグチアイに続いて登場したのがJIGENNだ。さっきまで、客席の前方でスキルアップやヒグチアイの音楽に合わせてほとんど踊っていたワイルドなお姉さんが、気づくととステージに。ヒュー、格好いい。

JIGENNは現在、3ピースバンドとか。ボーカル、ギター、ベースの3人というが、今夜はドラムサポートを加えて爆音演奏。ヘビメタやパンクに近い自称「オルタナティブ・ガレージ・ロックバンド」。ボーカル、アヤの爆走する歌がものすごいパワー。ギンギンに盛りあげていく。

しかし、何がすごいって彼女の爆発力。しかも、そう若くはない。実は35歳とか。そのしゃがれ声はもう少し上にも聞こえるが、ステージではシャウトしまくり。吠えている。すごいなー。すごい、気のいいお姉ちゃんって感じで、飲み友にいたら面白そうだ。

もはや、JIGENNのステージでは曲名をひかえる余裕などはなく、客席は跳ねていた。ヒグチアイまでの2組では、その余裕があったんだけどねー。その勢いは、そのまま矢沢洋子にも続いて、もう自分自身、前列に加わり手をたたき、振り上げ、のってたからねー。生粋のロッカーのステージはやはり違うねー。

ということで、本日の真打、矢沢洋子の出番だ。

サポートには熟練のギター、ベース、ドラムらを迎え、初っ端から激しくビート利かせて全開モード。
今日は革ジャンではなく、緑のタータンチェックのシャツをざくっと。その姿で激しく歌う姿がまた格好いいー!身長167cmもあるのだがかわいく、それでいてクール。時に見せる表情があどけなくコケティッシュでさえある。さまざま的な顔が同居し、単なる美形ではなく、野性味が跳ねている感じ。魅力的なのだ。

そして、矢沢洋子に力を抜くとか、リラックスとかいう言葉はない。バラードもあるけど、その疾走感、ジャンピングフィールな勢いは、けっして止まらない。所狭しと動き回り攻めに攻めるのだが、そのステージはすべてエンターテイメント。計算もあるだろうが、どう魅せたらお客さんも喜ぶか肌で知っているのだ。これは真似しようったって、簡単ではない。ここまで魅せるロックなボーカルは、あまりいないのではないか。さすが鷹の子。

ヒグチアイとかに見習えっていっても真似できるもんじゃないし、そもそも個性が違う。自分の路線で突き詰めればいいのだが、盗めるところは盗んでいい。例えば、人間、マックスパワーでステージの最初から突っ込んでも、気合や自覚次第で最後まで行けるという所。矢沢洋子のステージは本当に最初から最後まで全開バリバリ。それでいて息切れしない。すごい体力、すごい気合い、そして完ぺき主義!ここまでやるからプロなのだ。これがメジャークオリティなのだ。見習うべきところだ。

今日のステージもすごかった。曲順はまったく覚えてないが、8月3日にリリースしたアルバムの曲を中心にぐいぐいもっていく。「GIVE ME」や「アドレナリン」「アゲハ」などの激しいロックに「羅針盤」などのバラードを織り交ぜ、まったく飽きさせない構成。彼女のパフォーマンスがすごくて目が釘付けだ。

当然のようにアンコールの手拍子も。本日唯一、1stアルバム「YOKO YAZAWA」から「Honey Bunny」で勢いよくのせていく。音譜バニー音譜のところで、お客さんに手でウサギ耳を作らせ、会場も一緒に盛り上がった。

ライブ後には、ポスターやTシャツ、自分の革ジャン、携帯ケースなどありとあらゆるものにサインを求めるファンの行列が。写真のリクエストにも気さくに応じ、決め顔?で答えてくれるサービス精神。プロだねv



キスハグ、やっぱり今夜も素晴しくエキサイティングなイベントだった。次が楽しみだ





音譜目をつむって唱えてみよう パトラメロコリラ~音譜(←魔法の言葉)

いま、Jiminy Cricketのライブ終わった~。気持ちいい!

ご機嫌なポップロック「パトラメロコリラー♪」で、フルハウスの六本木Morphの客をノリノリにする魔法をかけ、最後のアンコールを締め括ったJiminy Cricket。盛り上がったステージを見終えた今の気分は最高にハッピー!彼らの魔法にかかったよ。幸せな余韻に浸ってる。ジミニー、いいバンドになったなあ。

今夜は、着々と力をつけてきた彼らが満をじして制作した初アルバム「Do You Know」のレコ発だ。

そのリリースに合わせ、初めて自分たちで企画したライブは、さすがにまだワンマンとはいかなかったが、若くイキのいいバンドが結集。全員が21歳前後のジミニーの5人と同世代の若いお客さんが沢山入り大盛況。企画は成功といってもいいかな。

ライブは「キオク」からスタート。ステージを隠していたスクリーンがするするとあがりきるのを待ちながら、無言で静かに集中力を高めるメンバーたち。訪れた数瞬の静寂を、小玉しのぶのシャウトが切り裂く。
音譜ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねえぇぇ音譜

ちょと固い(笑)さすがの爆発力たっぷりのボーカル、しのぶちゃんも緊張したか。いつものように、その一声で会場を虜にするような迫力に乏しい。

それは他のバントメンバーも同じで、みんな深刻そうな表情。「リラックスして音楽たのしめー」と声をかけたくなる。

しかし、2曲目の「脳内エクスタシー」で、「キオク」で奏でていたアコギを置いた小玉しのぶが、ステージ狭しとハンドマイク持って動き始め、客席に乗り出すように歌い始めると、ベースのK-t@を始めバンドメンバーがイキイキと躍動し始める。そこからは怒涛の展開。とにかく、小玉しのぶが魅せるねー。



〈セットリスト〉
1)キオク
2)脳内エクスタシー
3)存在価値
4)Livu
5)青い空と少年(新曲)
6)Torn (メンバー紹介)
en.魔法のパトラメロコリラー

特にいま、小玉しのぶの魅力が一番堪能できるのがアッパーチューンの「存在価値」と、バラードの「Livu」かな。作詞作曲している彼女の、いい意味で青臭い素の部分を隠さずぶつけてくる。見栄も恥も、すぱっと脱ぎすて、全てを晒すその潔さに、とにかく好感。全力で応援してやろう、と思ってしまう。


そして、Jiminy Cricketの魅力がぐんと上がってきたもう1つの要因が、彼女を支える男たちの成長だ。
1年くらい前は、とにかく小玉しのぶばかり目立って、演奏してる男4人がしもべのようだった。

それが、この数ヶ月間で、特にベースのK-t@のステージでの存在感がぐんと向上。堂々とフロントに出てきてソロを決めたり、気のきいたリフやちょっとしたベースラインの刻み方が、ツボをくすぐるように。彼が強くなったことで、バンドとしてのバランスがすごく良くなった。

当然、裏では技術向上へすごく練習したという。自信もって演奏できるようになったからか、少し上の次元で音楽を楽しんでいる。さらに余裕持って、他のメンバーとアイコンタクト取るようになり、演奏中の意思の疎通が上がった様子。

背が高過ぎて(笑)孤高な感じだったギターのヒデも、輪に加わる。何よりドラムの健太郎が「楽しいー!」って言いながら、自在に叩くドラムの響きが弾むように。元々、ジミニーのお調子者役だったキーボードの岩ちゃんも、ピョンピョン弾みながら客席に手拍子を求め、盛り上げる。

小玉しのぶの後ろで、彼らが空気を作っていく。ステージを見ていて目移りする。もう小玉しのぶだけのバンドではない。

それでも、彼女の才能と器が、JiminyCricketのレベルを決めてることは間違いない。さっき書いたように、彼女の書く楽曲が、彼女のステージでのパフォーマンスが青ければ、いつまでもJiminyは青いままになってしまう。

1年後か、2年後か、いつかは分からないが、2ndアルバムを出す時もこのままだったら、きっと飽きられる。バンドとして成長するためには、メンバーの1人ひとりが自立し、音楽的に成長すること、それが最大の、そして最難関の課題だろうな。皆の奮起が、これまでにも増して必要な、これからの1年になるだろう。ガンバレ!

そして、小玉しのぶは、泳げなくても前に進めー(笑)持って産まれたモノに磨きをかけ、スケールのでかい大人の女へ。すごいポテンシャルあるシンガーだと思うから、もっともっと大きな歌手になって欲しいなあ。

そんなこと思った、宵どきだった。ガンバレ、みんな!










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「September Colors」@立川Heart Beat
出演:林卓男、荒牧リョウ
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秋風吹き始めた秋分荒牧リョウのラストライブが終わった。

これで「荒牧リョウ」は「無期限休止」。

悲しい。でも荒牧リョウのライブらしく、最後はみな笑顔の別れとなった。

この日、ライブ会場の立川Heart Beatには、続々と客が詰めかけ満杯。物販には、荒牧リョウとしてOne and Onlyになった音源、アルバム「Colorfull」と、新巻稜として昨年リリースした「the new world」が置かれていた。こうして、物販席が設けられるのもこれが最後かと思うと、名残惜しい。


客席には、遠くは兵庫県や新潟県などから集まったファンも。全国を回って歌ってきた彼女だけに、そのファンは全国に多い。その中には、お母さんの姿もあった。最後の姿をこの目で見たいとの思いで集まったのだ。

それに、みな心配していた。8月中旬に突然、ぷっつりと音沙汰が無くなった。そして突然の活動休止発表。理由は大病や大怪我ではと、勝手な妄想ばかり先走っていた。

1番手の林卓男が温もりのある声で、会場を暖めた。暗転、そして再びスクリーンが上がると、そのステージにはいつもと変わらぬ彼女の姿があった。終始、笑顔とパワーを振り撒き、元気いっぱい。取り敢えず、健康問題は杞憂だと分かってひと安心だ。

この日のステージは、予めブログで宣言していた通り、一切のMCなし。事情は聞いてくれるなおっかさん、といったノリで、60分間をノンストップで歌い続けた。その姿は変わらず力強く、勢いがあった。これだけ歌えるアーティストはそうはいない。お客さんも、最後の勇姿を目に焼き付けようと、そのステージを食い入るように見つめ、写真を撮りまくっていた(笑)



<セットリスト>
1)輝いて
2)1,2,3,4
3)time is
4)息もできない
5)tears in the earth
6)the new world
7)Winter Running(新曲)
8)Blue Bird(新曲)
9)Answer
10)Last Chance
11)I Just Say
en. タカラモノ

いつものようライブのオープニングの定番となった「輝いて」で口火を切ると、そこから怒涛の歌、歌、歌。勢いよく「1,2,3,4」「time is」と続けて、女性シンガーソングライターでは珍しい、本物の「ロック魂」を持つ稀有なうた唄いの本領を発揮する。8月中旬からこの日まで関西で1回歌ったきりで、若干サビつきかけたギターが鳴るまで時間がかかったが、3曲目ぐらいからは全開。がんがんと勢いがついていく。特に季節の移り変わりを描いていく「time is」では、彼女自身のこれまでを重ね合わせているのか、時折見せる悲しげな表情が切ない。

前半、一番聞かせたのが「息もできない」。今聞く彼女のバラードは、心に沁みる。いや、そんなこと関係なく、荒牧リョウのバラードはソウルフルなのだ。このバラードを今後聞けなくなるなんて、悲しすぎる。

「tears in the earth」では途中、歌詞を忘れて「忘れちゃったー」と叫びながら歌い続ける、おなじみのあの姿を見せてくれた(笑)

そして、ラストライブだというのに新曲(笑)音譜目指すゴールに待っている人がいるから~見えない未来へ ゆっくりでいい 歩みを止めず行こう音譜と、今の自分の境遇を歌っているのかな、と思わされる歌詞。「次から次へと新曲のアイディアが湧いてきて困るんだよねー」と言い訳w。やっぱり、彼女が歌を止めることなんて有り得ないだろうなあ、と改めて確信する。

「Blue Bird」=青い鳥では、その言葉をメロディに載せる彼女ならではの上手さ、格好よさが全開に。「溢れ出す感情」「はじけでる笑顔」「こぼれそうな涙」などの音韻を揃えた歌詞をアッパーなメロディにのせて、ビシビシとこちらに伝えてくる。その巧みさにゾクゾクする。

一転、やや暗めのキー進行から緊張感を持って歌いだす「Answer」。最新のアルバム「Colorfull」の中から今夜、彼女がきっと歌うと思っていた曲に「カミサマ」がある。これは、純愛の成就を祈るピュアな女心を描いていて、きれいな気持ちになる良い曲なのだが、こちらは歌わず。その代わり、悪魔に魂を売る「Answer」。この2曲のどちらかを選んだという選曲ではなかったと思うが、彼女が今回の活動休止に追い込まれた事情の一端を推察してしまう。

元気よく「Answer」を歌って、「もう終盤です」といって歌い始めたのが「I Just Say」。終盤というからあと2~3曲かとおもいきや、ラストじゃないですか。無期限休止の発表から、この曲を何度も聞き返した。まるで、今日の日を想定して作ったかのような曲なのだ。そして、この曲が彼女のライブの最後を飾るだろうことは想像していた。アンコールは、あの曲に決まってるしね。

そして最後の音譜I Just Say Goodbye音譜は、ちょっと辛すぎる。彼女も満感の思いを込めて、この曲を最後まで歌い上げた。感情が爆髪しそうなのを、ぐっとこらえている様子が伝わってきた。それでも、最後まで笑顔だった。彼女らしい。

拍手の嵐に包まれ、深々と頭を下げて彼女はステージを降りた。

そういえば、この9月25日の誕生花は「烏麦(からすむぎ)」で、花言葉は「音楽が好き」だって。意味深。荒牧リョウは、きっと音楽を止めないということを示唆してないか。彼女の歌を聞けば、いかに彼女が音楽を愛しているか、痛いほど分かる。契約問題など大人の事情があり、「荒牧リョウ」という芸名で歌うことは今後なくなるだろうが、アラマキヨウコという一人の音楽の才能に恵まれ、音楽を心底愛するミュージシャンは消えない。そして彼女のロック魂は不滅だ!

ということで、盛大なアンコールの拍手に応えて、ステージに戻ってきた荒牧リョウから重大発表が(笑)

なんと11月10日にもう1回、神戸で歌うんだって。さらに年明けには、パンクのコピーバンドのイベントでも歌うつもりでいるらしい。「荒牧リョウ」という名前ではないかもしれないけどね。

やっぱり(笑)そりゃあ、今回の決断に至るイザコザで相当精神的に疲れている様子。当面はお休みが彼女には必要なのだとわかった。でも、彼女がそれっきり音楽から離れることなんてないのだ。コピバンドとはいえ、彼女は何らかの形で歌う場をこうして残している。きっと、いずれ、そう遠くない時期に何かの形で動き出すのではないか。そんな期待をたっぷり、抱かせてくれた発表だった。

最後の1曲は「タカラモノ」。みんなで合唱して、彼女は明るくステージを降りた。物販でも賑やかで、とてもこれが最後とは思えない。いや、皆、これが最後ではないと確信を抱いたこの日のライブだったのではないか。それが何年先になるか分からないけど、きっとまた、この日に集まったファンの前で、彼女が元気にステージに立っている、そんな気がしてならない。

荒牧リョウ様、とりあえず、ゆっくり休んで英気養ってね。