「September Colors」@立川Heart Beat
出演:林卓男、荒牧リョウ
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秋風吹き始めた秋分荒牧リョウのラストライブが終わった。
これで「荒牧リョウ」は「無期限休止」。
悲しい。でも荒牧リョウのライブらしく、最後はみな笑顔の別れとなった。
この日、ライブ会場の立川Heart Beatには、続々と客が詰めかけ満杯。物販には、荒牧リョウとしてOne and Onlyになった音源、アルバム「Colorfull」と、新巻稜として昨年リリースした「the new world」が置かれていた。こうして、物販席が設けられるのもこれが最後かと思うと、名残惜しい。
客席には、遠くは兵庫県や新潟県などから集まったファンも。全国を回って歌ってきた彼女だけに、そのファンは全国に多い。その中には、お母さんの姿もあった。最後の姿をこの目で見たいとの思いで集まったのだ。
それに、みな心配していた。8月中旬に突然、ぷっつりと音沙汰が無くなった。そして突然の活動休止発表。理由は大病や大怪我ではと、勝手な妄想ばかり先走っていた。
1番手の林卓男が温もりのある声で、会場を暖めた。暗転、そして再びスクリーンが上がると、そのステージにはいつもと変わらぬ彼女の姿があった。終始、笑顔とパワーを振り撒き、元気いっぱい。取り敢えず、健康問題は杞憂だと分かってひと安心だ。
この日のステージは、予めブログで宣言していた通り、一切のMCなし。事情は聞いてくれるなおっかさん、といったノリで、60分間をノンストップで歌い続けた。その姿は変わらず力強く、勢いがあった。これだけ歌えるアーティストはそうはいない。お客さんも、最後の勇姿を目に焼き付けようと、そのステージを食い入るように見つめ、写真を撮りまくっていた(笑)
<セットリスト>
1)輝いて
2)1,2,3,4
3)time is
4)息もできない
5)tears in the earth
6)the new world
7)Winter Running(新曲)
8)Blue Bird(新曲)
9)Answer
10)Last Chance
11)I Just Say
en. タカラモノ
いつものようライブのオープニングの定番となった「輝いて」で口火を切ると、そこから怒涛の歌、歌、歌。勢いよく「1,2,3,4」「time is」と続けて、女性シンガーソングライターでは珍しい、本物の「ロック魂」を持つ稀有なうた唄いの本領を発揮する。8月中旬からこの日まで関西で1回歌ったきりで、若干サビつきかけたギターが鳴るまで時間がかかったが、3曲目ぐらいからは全開。がんがんと勢いがついていく。特に季節の移り変わりを描いていく「time is」では、彼女自身のこれまでを重ね合わせているのか、時折見せる悲しげな表情が切ない。
前半、一番聞かせたのが「息もできない」。今聞く彼女のバラードは、心に沁みる。いや、そんなこと関係なく、荒牧リョウのバラードはソウルフルなのだ。このバラードを今後聞けなくなるなんて、悲しすぎる。
「tears in the earth」では途中、歌詞を忘れて「忘れちゃったー」と叫びながら歌い続ける、おなじみのあの姿を見せてくれた(笑)
そして、ラストライブだというのに新曲(笑)


「Blue Bird」=青い鳥では、その言葉をメロディに載せる彼女ならではの上手さ、格好よさが全開に。「溢れ出す感情」「はじけでる笑顔」「こぼれそうな涙」などの音韻を揃えた歌詞をアッパーなメロディにのせて、ビシビシとこちらに伝えてくる。その巧みさにゾクゾクする。
一転、やや暗めのキー進行から緊張感を持って歌いだす「Answer」。最新のアルバム「Colorfull」の中から今夜、彼女がきっと歌うと思っていた曲に「カミサマ」がある。これは、純愛の成就を祈るピュアな女心を描いていて、きれいな気持ちになる良い曲なのだが、こちらは歌わず。その代わり、悪魔に魂を売る「Answer」。この2曲のどちらかを選んだという選曲ではなかったと思うが、彼女が今回の活動休止に追い込まれた事情の一端を推察してしまう。
元気よく「Answer」を歌って、「もう終盤です」といって歌い始めたのが「I Just Say」。終盤というからあと2~3曲かとおもいきや、ラストじゃないですか。無期限休止の発表から、この曲を何度も聞き返した。まるで、今日の日を想定して作ったかのような曲なのだ。そして、この曲が彼女のライブの最後を飾るだろうことは想像していた。アンコールは、あの曲に決まってるしね。
そして最後の


拍手の嵐に包まれ、深々と頭を下げて彼女はステージを降りた。
そういえば、この9月25日の誕生花は「烏麦(からすむぎ)」で、花言葉は「音楽が好き」だって。意味深。荒牧リョウは、きっと音楽を止めないということを示唆してないか。彼女の歌を聞けば、いかに彼女が音楽を愛しているか、痛いほど分かる。契約問題など大人の事情があり、「荒牧リョウ」という芸名で歌うことは今後なくなるだろうが、アラマキヨウコという一人の音楽の才能に恵まれ、音楽を心底愛するミュージシャンは消えない。そして彼女のロック魂は不滅だ!
ということで、盛大なアンコールの拍手に応えて、ステージに戻ってきた荒牧リョウから重大発表が(笑)
なんと11月10日にもう1回、神戸で歌うんだって。さらに年明けには、パンクのコピーバンドのイベントでも歌うつもりでいるらしい。「荒牧リョウ」という名前ではないかもしれないけどね。
やっぱり(笑)そりゃあ、今回の決断に至るイザコザで相当精神的に疲れている様子。当面はお休みが彼女には必要なのだとわかった。でも、彼女がそれっきり音楽から離れることなんてないのだ。コピバンドとはいえ、彼女は何らかの形で歌う場をこうして残している。きっと、いずれ、そう遠くない時期に何かの形で動き出すのではないか。そんな期待をたっぷり、抱かせてくれた発表だった。
最後の1曲は「タカラモノ」。みんなで合唱して、彼女は明るくステージを降りた。物販でも賑やかで、とてもこれが最後とは思えない。いや、皆、これが最後ではないと確信を抱いたこの日のライブだったのではないか。それが何年先になるか分からないけど、きっとまた、この日に集まったファンの前で、彼女が元気にステージに立っている、そんな気がしてならない。
荒牧リョウ様、とりあえず、ゆっくり休んで英気養ってね。