音楽偏遊 -36ページ目

音楽偏遊

最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

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「花鳥香月 レモングラスの平日・六」@高田馬場・四谷天窓
出演:小倉さちこ(ライアー弾き語り) →野澤佐保子(箏・謡+三味線)
→蘭華(歌+ニ胡+ピアノ) →フルハシユミコ(馬頭琴&ダルシマー弾き語り)
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この日が来るのを、待ち焦がれてた。本当に心から。蘭華、8か月ぶりの東京ライブだ。

今夜はその慶事に相応しいオリエンタル、かつ花鳥風月、薫りかぐわしき雅やかなステージに。和魂華才で麗しき蘭華には、お似合いの舞台となった。

東京以外では夏に一度、逗子の言霊に出演したが、平日のため行けなかった。思えば、まだ寒い2月の代官山Loopで活動休止前のラストライブを見て以来で、本当に8か月間一度も彼女を見る機会は無く淋しかったよ。

ブログは更新していたので、彼女の状況はフォローできた。震災や身内の不幸、ミュージシャンとしての環境激変、被災地支援、そして制作からレコーディングへ。振り返れば、この8か月間に、もしかしたら彼女は人生最大の分岐点に直面したといっても外れてはいまい。

ブログの文章から、彼女の心が弱り、震えてる様子が伝わってくる時期もあった。できることがないのが歯痒く、ただ心の中で応援するだけというのももどかしかった。もう少し親しい間柄なら、もっと直接的に力付けられたのだか。人生において、8か月なんて一瞬に過ぎない。しかし、彼女にとって密度の濃い時間であったろう。それが、彼女の歌にどう現れているか。そこは今夜、やはり気になっていたところだ。

天窓にたどり着くと、柑橘系の心地よい香りに空間が満たされている。花鳥香月のイベントはこの香りがポイント。この日のテーマや出演者に合うようアロマテラピー空間演出家(!)の日向真晴さんが、特別に調合した香が焚かれているのだ。そして今夜のテーマは月と日本をつなぐスケールの大きいむかしばなし「竹取物語」だ。客席左後方にはハンドアロママッサージのコーナーも。そして超満員の客席には着物姿の上品なおばさま方がちらほら。僕の知っている天窓ではない。

当然、ギバラさんや見田村千晴が出てくる訳もない(笑)まずは、静かにつまびかれる竪琴のようなドイツ楽器ライアーの音色と、ゆったりとした細糸のような奏者小倉さちこさんの歌声に、ひとときの安らぎが訪れる。あたかも、かぐや姫が静かに天空から山深き村の竹林の中に舞い降りたかのようなcelestial voice。やはり天窓じゃないな、ここは(笑)

続いて純和風の琴の調べ。小倉さんがクラシック音楽をベースに演奏されたが、十七弦を奏する野澤佐保子さんは、伝統的な筝曲を演奏するかと思いきや、かなり創作的。中には「琴をやられる方はこの奏法はマネしないで下さいね」と断ってから、ギターの絃を強くはじくように琴の絃を弾くなど自由な演奏。素晴らしい技量だと思うが、個人的には伝統的な和の楽曲をその技量で迫力たっぷりに聞かせてもらいたかったかな。

テーマにそって言えば、この演奏は、竹林で拾われた赤子が、日本の田舎家ですくすくと育っていく様子を奏でたもの。和の階調にのっとりながら、健やかに養父母の愛に包まれて、徐々に華やかさを身につけていく少女時代のかぐや姫そのものといえようか。

さあ、そして折り返し。ここで匂いが変わる。前半の香りのタイトルは「天真爛漫」。オレンジ、伊予柑、甘夏、レモンといった青々しく爽やかな柑橘系が香りの中心。そこに華やかなプチグレン、優しい香りのローマンカモミール、森を想起するヒノキや杉をブレンドしたという。

後半、香りは「高嶺の花」に変わる。フローラルだが苦味があるベルガモット、同じく甘さの中に苦味をもつライム、純粋というより芳醇な甘さがあるポンカン、バラのような香りのバルマローザ、甘くて妖艶なイランイラン、さらにブラックペッパーのスパイスも。そう、魅惑的ながら容易に近づけない、成長した女性の清冽な香りで男性を惹きつける高嶺の花なのです。

その香りの中、まさに現代のかぐや姫のような魅力を湛えた蘭華が登場。素敵なステージを見せてくれた。一番後ろの座席で見ていたので、写真撮り損ねたが、お世辞でなく美しい、白地に紅の花々が咲きこぼれるチャイナドレス。あ、いや本人ももちろん美しかったですよ(笑)ちなみにこの写真は最後にみんなで「蘇州夜曲」をコラボしているときのものですが。



久しぶりに聞いた彼女の歌声は、やっぱり心を震わす細く強く艶やかなな響きに満ちていた。色々感じたけど、一番に去来した感情は懐かしさ。8か月ぶりということが第一の要因でもあるのだが、彼女の歌は昭和歌謡なんだよね。その音色はやさしく、郷愁と愛情に満ちていて、思わず涙がこぼれそうになるのだ。昭和アイドル路線の麗しき響アン奈とはまた違い、蘭華は清潔な色香漂う、まさにかぐや姫の様なのだ。

<セットリスト>
1)草原情歌
2)黄昏のビギン(カバー)
3)大切なものへ
4)白い色は恋人の色(カバー)
5)あの街を離れて
6)希望という花を

「草原情歌」を除き、すべて蘭華がライブで歌うのは音霊を除き初めての曲たち。この8か月の間に、彼女が身にまとってきた音楽がそこにあった。

それらの曲は、10月19日に蘭華が発売する新アルバム「昭和を詠う~大切なものへ~」に収録れた曲が中心。それはそれは、たおやかに、悠久の時さえ感じさせる素晴らしい楽曲たちだ。

その中で個人的にとても気に入ったのが、彼女オリジナルの新曲「大切なものへ」であり、作曲家・村松崇継さんとのコラボで生まれてきた「希望という花を」だ。

「大切なものへ」は、彼女がこの間、失った父親のことを、そして被災者への炊き出しで訪れた福島県・郡山市で出会った人のことを思い作った曲。感受性豊かな彼女が、心の深いところから絞り出してきたような心の声が、歌詞となって美しく切々と歌われていく。彼女の言葉が心に響く。

そして「希望という花を」は、まさに壮大な時の流れを感じる天平の音楽か。今の時代に必要なものは何なのか、大上段にはけっして構えていないが、じっくり聞いていると、心に寄り添うように、耳元に囁いてくるようなゾクゾク感がある。

これからの蘭華の音楽活動において、きっとこの2曲は欠くことのできない曲に育っていくだろうと、今宵、初めて聞いて思った。

こうして、また彼女が歌う姿をライブで見ることができる幸せ。今宵はそれに尽きる。そして、彼女がいよいよ、沢山の人々の上にその歌を響かせる日が近いことも、しっかり予感できたライブだった。

細かい事は、次のライブを聞いたときにでも書こうと思う。まずは、復活、そしてアルバム発売、そしてTV番組タイアップ、その他もろもろのめでたいをひとまとめにして、万感の思いでひとこと。

おめでとう。
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「Secret Girls Talk」@赤坂Graffiti
出演:倉沢桃子→西野花音→キノシタメグミ→渋谷めぐみ
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久し振りに赤坂Graffiti。会社から近いので、立ち寄る優先度が高いライブハウスだが、最近スケジュールとブッキングが噛み合わずご無沙汰だった。さりながら今夜は、優先度最上位に。渋谷めぐみに、対バンが倉沢桃子という素敵な組み合わせなのだから。

フォークとロック、全く違うスタイルの二人だが、ともに聞き応え十分。やはり本物は違うな。

まず、トップバッターで倉沢桃子が登場。いつものように1人でギター弾き語り。比較的落とした照明の中で、彼女がおもむろに歌い出すと、ライブのタイトル通り、密やかで密度の濃い空間が広がる。

素朴で飾り気のない彼女自身のように、その楽曲はシンプルでやや暗め。だが、とつとつと語るように歌う彼女の言葉が、グイグイと頭の中に入り込む。そして忘れていた様々な記憶がイメージとして喚起される。感情にさざ波が広がる。

彼女の場合、音楽の密度の濃さと音符の数は反比例の関係。余計な音を削ぎ落とし、より静かに高揚を抑えて演奏するほど、ライブハウス内の空気がピーンと張りつめていく。語るように歌う彼女の声へ、全てのベクトルが向いていく。目と耳が奪われ、彼女から拡がる柔らかな波紋に
同調している自分がいる。

静寂と緊張感で深い世界観を作り出せるわけは、卓越した表現力におう部分が大きい。最高の役者は、ほんの少し眉を動かすだけで主人公の感情の動きを余すとこなく伝える。倉沢桃子も、静かに淡々と歌いながら、もの凄く細やかな抑揚や声色の変化で雄弁に語りかけてくる。

彼女の歌にはドラマがある。その語り口に引き込まれる。そして、微細な変化を聞き漏らすまいと集中力が高まるのだ。彼女はシンガーであるとともに、小さな動きで心の機微を深く表現できる正真正銘の女優なのだ。

そして、彼女のドラマのほとんどが、実は日常の風景だ。日々の何気ない暮らしの中に、ささやかな幸せが詰まっている。それを救いあげ、自らのフィルターを通し、しみじみと生きる幸せを伝えるその表現に、不覚にも温かいものがこぼれる。

〈セットリスト〉
1)こんな冷たい雨の日には
2)今日は花火大会
3)命の成分
4)鳥肉と塩コショウ
5)奇跡
6)もがいていく

一曲ごとの評価は、ぜひ自分で聞いて感じてもらいたい。私的に感じる事が倉沢桃子の聞き方だとおもうから。

ただ、この日歌った「奇跡」に、何人もの客が、本当に涙を流しているのを見た。この曲は、「トイレの神様」にだって決して負けない感動を呼び覚ます名曲だ。別の日の映像ですが…



倉沢桃子に続いて、ギター伴奏で秋葉系アイドルのような西野花音、ピアノ弾き語りで低音が迫力あるジャズっぽいキノシタメグミが歌って、トリの渋谷めぐみの出番だ。


今夜はアコースティックナイトなので、渋谷めぐみのサポート編成はアコギの三井さんとキーボードたまちゃんの二人だけ。だが、楽曲アレンジはもろにロック。二人共、バリバリに激しい演奏。PAも前の三人と音圧が違いすぎ、音をまとめられず苦戦してる模様。演奏の二人も息の乱れがあったが、返ってくる音のバランスに違和感があり、良い演奏できなかった側面もあったよう。

多分、PA的には今夜は敗北した夜だったろう。客としては、倉沢桃子から渋谷めぐみまでそれぞれの個性や持ち味を引き出す音作りになってなくて、ちょっと残念な夜だった。

Graffitiの音はこれまで結構良かったのに、どうしたのだろう。PAって、音のメーキャップアーティストだと思う。

とまれ、今夜の渋谷めぐみの熱い演奏と迫力は変わらない。1曲目「秘密」の前奏からキーボードたまちゃんの打鍵が炸裂。ここまで三人のゆるやかな流れをバッサリ断ち切り、一気にアッパーな展開へ。そこに、迫力あるグルーヴたっぷりなボーカルがどんっと流れ出し、ライブハウスの空気が一気に変わる。



2曲目は一転してバラード「Day after Day」。迫力あるボーカリストが一転して、かわいらしい若い女性の声を代弁する。渋谷めぐみには、こんな側面もあるんですよ、と初めてのお客さんにアピールするかのよう。

最近、3年ぶりに路上ライブをちょこちょこ始めた話をMC。それを枕にこないだ溝の口路上で歌った絢香の「三日月」。うーん、十分聞かせるが、いつもはもっと感動的なのだが。一つは、艶やかな声がよく出たため彼女自身が気持ちよくなりサビとか引っ張り過ぎ、テンポが少し遅くなってしまったのだろう。生演奏だから、歌手に音を合わせてしまうが、ここは三井さんに引っ張ってもらいたかった。

しかし、4曲目「magic」から最後の「ユメオチ」までは怒濤のアッパーな展開で真骨頂。ジャズロックとでもいえそうな楽曲で、ムードある激しさにワクワク感満載の渋谷めぐみ独自の世界へ、聞くもの引きずり込んでいく。単純なビートでないのも特長。だから、アッパーな楽曲なのに、手拍子が広がりづらい(笑)

〈セットリスト〉
1)秘密
2)day after day
3)三日月(カバー)
4)magic
5)Deep
6)ユメオチ
en.会いたい

アンコールの手拍子を受け、ステージから降りることなく控えてた渋谷めぐみが「ありがとうございます。皆さん、KYじゃなくて良かった」と笑いをとって歌い出す。バラード「会いたい」で、しっとりした空気と余韻を残してくれた。

その「会いたい」の模様をYou Tubeに上げてくれた人がいるので、どうぞご覧下さい。


うーん、いいですなあ。10月10日には日吉nap10周年記念のワンマンライブも開かれます。お時間ある方は是非そちらもどうぞ!





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「大塚でちょっと贅沢な夜」@大塚Allinfun
出演:響レイ奈withイーガル(ゲスト:橘京子ofサロメの唇)→チャラン・ポ・ランタンとちょっとしたカンカンバルカン
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渡しそびれていた、チャランポが出演したFM世田谷のラジオ放送の録音を届けがてら、大塚のライブカフェ「All in Fun」へ。今夜はツーマンだ。

こじんまりした洋風のライブカフェは、鰻の寝床のように、奧へ細長い。その一番道路側にグランドピアノと、ステージスペースがあり、マイクスタンドが客席との仕切り。そこからテーブルが2列、奧へと続く。30席ほどあった座席は、予約席を除き、間もなく一杯に。予約なしだと、断られていたほど。

早めに着いたので、一番前のテーブルで、相席の素敵なお姉さんと話しながらビール。名物の焼きチーズリゾットが適度に塩分利いていて、ビールが進む。

彼女は今夜、先に出る響レイ奈さんと、そのゲスト橘京子さんが目当て。京子さんのユニット「サロメの唇」のファンなの、など話していると、そのサロメの唇のチーフ、清水氏が来店。空いていた我々wの席でご一緒することに。お二人で話が弾んでおり、時折混ぜてもらってるうちにスタート。

すると目の前に、紅いレトロなハイカラワンピ姿の響レイ奈嬢。う、う、美しい(笑)







ここでゲストの登場だ。見目麗しき橘京子嬢fromサロメの唇だ。





後半戦は、チャラン・ポ・ランタンとちょっとしたカンカンバルカンの登場だ。saxオカピがお休みで、全部で6人とフルメンバーではない「ちょっとした」編成。それでもカフェのステージには、-1の編成でもきつ過ぎる。チューバが奥の隙間で小さくなってて、可笑しい。クラリネットやトランペット、パーカスが両端で窮窮としている。

しかし、賑やかに演奏を始めれば、他の誰も追随できぬ彼女たちの独創的なステージだ。小春のアコーディオンがジャカジャカ昭和の香りやロシア民謡の調べを響かせ、ビックバンドのド派手で楽しげな分厚い音が高らかに咆哮。いつものように「ただ、それだけ」のインストで幕を開ける。

1曲終えて、太鼓のふーちんがウォッシュボードに装備を変えるのに手間取る様を、小気味よく小春が突っ込む、突っ込む(笑)そして、勢いよく前奏を掻き鳴らしながら、ボーカルを「モモちゃーん」と呼び込み、大歓声の中で「ムスタファ」
だ。






最後は全員登場して、「この素晴らしい愛をもう一度」。麗しき橘京子嬢と、昭和のアイドル然とした美しき響レイ奈嬢に、総じてチビッ子のチャラン・ポ・ランタンとカンカンバルカンの面々が勢揃いした様子は壮観。イーガルのピアノがリードし、三人の歌姫が代わる代わる歌い継いでいく。






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