2011/10/7 渋谷めぐみ、倉沢桃子@赤坂Graffiti | 音楽偏遊

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「Secret Girls Talk」@赤坂Graffiti
出演:倉沢桃子→西野花音→キノシタメグミ→渋谷めぐみ
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久し振りに赤坂Graffiti。会社から近いので、立ち寄る優先度が高いライブハウスだが、最近スケジュールとブッキングが噛み合わずご無沙汰だった。さりながら今夜は、優先度最上位に。渋谷めぐみに、対バンが倉沢桃子という素敵な組み合わせなのだから。

フォークとロック、全く違うスタイルの二人だが、ともに聞き応え十分。やはり本物は違うな。

まず、トップバッターで倉沢桃子が登場。いつものように1人でギター弾き語り。比較的落とした照明の中で、彼女がおもむろに歌い出すと、ライブのタイトル通り、密やかで密度の濃い空間が広がる。

素朴で飾り気のない彼女自身のように、その楽曲はシンプルでやや暗め。だが、とつとつと語るように歌う彼女の言葉が、グイグイと頭の中に入り込む。そして忘れていた様々な記憶がイメージとして喚起される。感情にさざ波が広がる。

彼女の場合、音楽の密度の濃さと音符の数は反比例の関係。余計な音を削ぎ落とし、より静かに高揚を抑えて演奏するほど、ライブハウス内の空気がピーンと張りつめていく。語るように歌う彼女の声へ、全てのベクトルが向いていく。目と耳が奪われ、彼女から拡がる柔らかな波紋に
同調している自分がいる。

静寂と緊張感で深い世界観を作り出せるわけは、卓越した表現力におう部分が大きい。最高の役者は、ほんの少し眉を動かすだけで主人公の感情の動きを余すとこなく伝える。倉沢桃子も、静かに淡々と歌いながら、もの凄く細やかな抑揚や声色の変化で雄弁に語りかけてくる。

彼女の歌にはドラマがある。その語り口に引き込まれる。そして、微細な変化を聞き漏らすまいと集中力が高まるのだ。彼女はシンガーであるとともに、小さな動きで心の機微を深く表現できる正真正銘の女優なのだ。

そして、彼女のドラマのほとんどが、実は日常の風景だ。日々の何気ない暮らしの中に、ささやかな幸せが詰まっている。それを救いあげ、自らのフィルターを通し、しみじみと生きる幸せを伝えるその表現に、不覚にも温かいものがこぼれる。

〈セットリスト〉
1)こんな冷たい雨の日には
2)今日は花火大会
3)命の成分
4)鳥肉と塩コショウ
5)奇跡
6)もがいていく

一曲ごとの評価は、ぜひ自分で聞いて感じてもらいたい。私的に感じる事が倉沢桃子の聞き方だとおもうから。

ただ、この日歌った「奇跡」に、何人もの客が、本当に涙を流しているのを見た。この曲は、「トイレの神様」にだって決して負けない感動を呼び覚ます名曲だ。別の日の映像ですが…



倉沢桃子に続いて、ギター伴奏で秋葉系アイドルのような西野花音、ピアノ弾き語りで低音が迫力あるジャズっぽいキノシタメグミが歌って、トリの渋谷めぐみの出番だ。


今夜はアコースティックナイトなので、渋谷めぐみのサポート編成はアコギの三井さんとキーボードたまちゃんの二人だけ。だが、楽曲アレンジはもろにロック。二人共、バリバリに激しい演奏。PAも前の三人と音圧が違いすぎ、音をまとめられず苦戦してる模様。演奏の二人も息の乱れがあったが、返ってくる音のバランスに違和感があり、良い演奏できなかった側面もあったよう。

多分、PA的には今夜は敗北した夜だったろう。客としては、倉沢桃子から渋谷めぐみまでそれぞれの個性や持ち味を引き出す音作りになってなくて、ちょっと残念な夜だった。

Graffitiの音はこれまで結構良かったのに、どうしたのだろう。PAって、音のメーキャップアーティストだと思う。

とまれ、今夜の渋谷めぐみの熱い演奏と迫力は変わらない。1曲目「秘密」の前奏からキーボードたまちゃんの打鍵が炸裂。ここまで三人のゆるやかな流れをバッサリ断ち切り、一気にアッパーな展開へ。そこに、迫力あるグルーヴたっぷりなボーカルがどんっと流れ出し、ライブハウスの空気が一気に変わる。



2曲目は一転してバラード「Day after Day」。迫力あるボーカリストが一転して、かわいらしい若い女性の声を代弁する。渋谷めぐみには、こんな側面もあるんですよ、と初めてのお客さんにアピールするかのよう。

最近、3年ぶりに路上ライブをちょこちょこ始めた話をMC。それを枕にこないだ溝の口路上で歌った絢香の「三日月」。うーん、十分聞かせるが、いつもはもっと感動的なのだが。一つは、艶やかな声がよく出たため彼女自身が気持ちよくなりサビとか引っ張り過ぎ、テンポが少し遅くなってしまったのだろう。生演奏だから、歌手に音を合わせてしまうが、ここは三井さんに引っ張ってもらいたかった。

しかし、4曲目「magic」から最後の「ユメオチ」までは怒濤のアッパーな展開で真骨頂。ジャズロックとでもいえそうな楽曲で、ムードある激しさにワクワク感満載の渋谷めぐみ独自の世界へ、聞くもの引きずり込んでいく。単純なビートでないのも特長。だから、アッパーな楽曲なのに、手拍子が広がりづらい(笑)

〈セットリスト〉
1)秘密
2)day after day
3)三日月(カバー)
4)magic
5)Deep
6)ユメオチ
en.会いたい

アンコールの手拍子を受け、ステージから降りることなく控えてた渋谷めぐみが「ありがとうございます。皆さん、KYじゃなくて良かった」と笑いをとって歌い出す。バラード「会いたい」で、しっとりした空気と余韻を残してくれた。

その「会いたい」の模様をYou Tubeに上げてくれた人がいるので、どうぞご覧下さい。


うーん、いいですなあ。10月10日には日吉nap10周年記念のワンマンライブも開かれます。お時間ある方は是非そちらもどうぞ!