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iM@Sとかなんとか(仮)

アイドルマスターSSとか駄文をのっけてます。←とか書いてても、ちっとも更新していないので「サイドストーリー」と言うタイトルはは取り下げました。最近のメイン記事はニコマスの紹介記事が9割を締めています。

「その1」 「その2」 「ある日の風景 その1」 「その3 1/2」 「その3 2/2」 「ある日の風景 その2 1/3」 「ある日の風景 その2 2/3」 「ある日の風景 その2 3/3」 「その4」 「番外編 少しだけ未来のお話 - Christmas For You -」 「その5」


 二人のレッスンに付き合った帰り、俺は直帰せずに事務所に戻った。20時を廻ったところだったが案の定小鳥さんは残っており、
「ただいま帰りました。小鳥さん、お疲れ様です」
「あ、お帰りなさい、プロデューサーさん。お疲れ様です。今日も残業ですか?」
「ええ、ドームはもう明後日ですからね」
「ああ、お帰りなさい、プロデューサー」
 衝立の向こうから声がした。覗いてみると、応接セットの上で書類と睨めっこしている律子の姿があった。
「あれ? 律子お前、こっち戻ってくるのは来週じゃなかったか?」
「呼び戻されたんですよ」
 えらく急な話だな。まあ、美希もデビューすることだし、そう言うこともあるか。
「で、なにやってんの? そんなところで。机使えよ」
「あたしのはまだ無いんですよ」
「ゴメンナサイね、明日には用意するから」
 小鳥さんがチラッとこっちを伺う。
「いえいえ、お構いなく」
「適当なの使えばいいのに」
「嫌ですよ。そんなとっちらかった机使うの」
 確かに。見渡してみると、事務所内の机はどれも惨憺たる有り様だった。
「締め日ですからね。仕方がないですよ」
「あたしは忙しいからこそ整理整頓に努めるべきだと思いますけどねー。って言うか、締め日はもう過ぎているんじゃないですか? 経理が泣いてますよ?」
「オホ、オホホホホ……」
 帰って早々にこれだ。まあ、こう言うところが頼もしくもあるんだけどさ。
 そこへ社長が顔を出した。
「ああ、帰ってきたかね。よろしい。では、帰って早々で悪いが、こっちに来てくれたまえ。律子くんもな」
「はい」
 律子も、か。と言うことは、やっぱりあの企画のことだろうな。
「なんです?」
 律子は怪訝な顔で俺に訊いてきた。
「行けば分かる」
 俺達は、律子を先に通す形で社長室の扉を開いた。

「昨日のことだがね」
 社長はそう切り出した。律子にはそれでは分からないだろうから「なにが?」と訊き返すかと思ったが、黙って聴く体勢に入っている。珍しい。
「あー、先ほど社長から連絡があってね。結果から言うと、君の提案した企画は通ったそうだ」
「そうですか。それはよかった」
「しかし、事情は随分と変わった。まず、一社提供ではなくなった。そして時間帯も23時半からの45分ではなく、24時からの30分になった」
「それはまた……」
「そして一番大きな変更は、当初は春からの放映予定だったものが、年明け早々からのスタートに前倒しになったと言うことだ」
「え? それは……」
「うむ、随分と急な話だ。我々にとっては余り好ましい状況ではない」
「なんでまた」
「つまり、こう言うことですか?」
 そこで律子が口を挟んだ。
「年明けの放映用の枠が一つ飛んでしまい、そこを頂けることになった。当初の話は、不景気かなにかでご破算になった、と」
「うむ、さすが律子くんだね。概ねその通りだ」
「それで? その企画というのは、なんです?」
 そこは俺が引き取って、経緯から説明した。律子は黙って聴いていた。企画のことにしてもそうだが、千早の海外デビューの話に驚いた顔の一つでも見せるかとも思ったけど、そう言うそぶりは見せなかった。ちょっと寂しいなあ。
「なるほど。そう言うことですか。それであたしも呼ばれたと」
「美希くんのプロデューサーは君だからね。それに……」
 社長は俺に目線を送った。ああ、そう言うことですか。
「企画は俺と律子の共同プロデューという形になる、と言うことですね」
「共同と言うよりもサブとメインと言った方が正しいかな。まあ、今後のことを踏まえてのことだ。まだ未定ではあるのだが、打てる手は打っておこう。いずれにせよ、君一人では手に余る様になるだろうから」
 まあ、それはそうだな。仮に俺が千早について行くことになってしまえば、765に専属プロデューサーはいなくなってしまうんだから。それまでに律子をいっぱしに育てろ、と。
「いずれにせよ、番組一つ丸々預かるというのは、765プロ始まって以来のことだ。一丸となって乗り切ろうじゃないか」
「はい」
「分かりました」

 それから俺達は社長室を後にした。
 そうして机で一息ついているところへ、律子がお茶を淹れてくれた。
「ああ、すまん」
 返事をする変わりに律子は、俺の隣の椅子に座り、
「これは、プランを見直さないといけないわね」
「だな。他の娘と違って、こまめにオーディション受けて勝ち抜くという戦略は取れなくなるからな」
「ええ。先に番組で色が付いてしまいますからね」
「結構キツイかもな」
「それはどうでしょう? あたしは美希なら問題ないと思いますよ?」
「だったらなにを見直すんだよ」
「あたしですよ。美希が売れていくスピードに、あたしが追いつけないようじゃ意味無いでしょ?」
「お前……」
 そんな楽観的な、と言いかけて、俺は口をつぐんだ。楽観という言葉がもっとも似合わないヤツだと言うことを思いだしたからだ。その証拠に、律子はもう、目まぐるしく思考を働かせている様子で、顔つきはアイドルでも事務員でもなく、まさしくプロデューサーのそれだった。俺が言うのもなんだが。
「とにかく、状況は動き出しているわ。あたしも乗り遅れない様にしないと」
「……そうだな」
 まあ、俺がとやかく言えるこっちゃない。放って置いてもこいつは、俺なんか一足飛びで追い抜かしちまうだろう。
「そう言うわけですから、これからはより一層、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いしますね、プロ……先輩!」
 前言撤回。そう言うこいつの笑顔は、俺にとってはアイドルのままだった。


蒼い鳥 その7 1/2
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 今日は集中力が冴えている。自分でもビックリするくらい。周りの音も、千早ちゃんの声も動きも良く見えている。
 ピアノがアクセントを入れた。千早ちゃんのトーンが少し上がる。ここのハモリは少し抑えよう。うん。やっぱり、千早ちゃんの声が延びた。千早ちゃんの歌に併せるのは難しい。何度も何度も唄ってきた曲なのに、いつも違う歌い方で、わたしを引き上げてくれる。やっぱり、千早ちゃんは凄い。そもそもこのわたしが、千早ちゃんと歌う様になるまで、難しい、なんてこと、言える様になるなんて思わなかったな。
 それにしても、今日は高音が凄く出ているなあ。ミキサーさんも調整に戸惑うくらい。
 1…、2…、3…、ここでターン……。あれ? ちょっとずれた? 息も上がってきている。こんなところで?
 そう思った途端、わたしの視界から千早ちゃんが消えた。

「39度2分」
 スタッフさんは体温計を見ながら、機械的な声でそう言った。
 千早ちゃんはスタジオの隅に横たえられ、たくさんのスタッフさんに囲まれていた。
「今日は、プロデューサーさんは?」
 スタッフさんの一人がわたしに尋ねた。
「少し遅くなるそうです」
「そう。だったら、レコード会社の人に一緒に行って貰おうか。プロデューサーさんには私から連絡しておくから」
「あ、あの……」
「点滴を打ちにね。千早ちゃん? 歩ける」
「はい……、大丈夫です。すみません、ご迷惑をおかけして」
 そう言う千早ちゃんは、すごく辛そうだった。でも、なんでそんな体で……。そう言いかけて、止めた。だって気持ちは分かるから。同じだから。
「タクシー来たよ」
 スタッフさんの一人がスタジオに声をかけた。
「あの! わたしも」
「あなたはここに残っていなさい。大丈夫よ。点滴ぐらい、すぐに終わるわ」
「大丈夫よ、春香。すぐに戻ってくるから」
「え? 千早ちゃん、戻ってくるんですか?」
「当たり前でしょう? もう明後日には本番なんだから。一秒だって無駄に出来ないわ」
「だって、でも!」
 体を壊したら元も子もない。そう言いかけたわたしに千早ちゃんは、わたしのほっぺにそっと手を当てて、
「大丈夫。信じて」
 手のひらから伝わる体温が、すごく熱かった。
「……わかった」
 そして千早ちゃんは、スタッフさんの肩を借りてタクシーに乗り込んだ。

 結局、千早ちゃんは戻ってこなかった。
 リハーサルはわたし一人で行われた。プロデューサーさんは、一度病院に顔を出してからスタジオに来た。その後のリハーサルは、やっぱり千早ちゃん一人抜けただけで、まったく別のものになっていた。みんな一生懸命なんだけど、どこかしっくり来ないと言うか、なにか物足りない感じがして、結局は消化不良のまま、予定の時間を終えた。
「お疲れさん」
「……はい」
「……ここに来てジタバタしても始まらない。やれることをやろう」
「ええ、わかってます。言われなくても」
「……」
 どうしてそんなキツイ言い方になったのか、自分でも分からなかった。リハーサルが上手くいかなかったことのイライラでもないし、その八つ当たりでももちろんない。なにか、なにかが納得いかなかった。
「これから俺は千早の所に行くけど、お前はどうする? 時間も遅いけど」
「……」
「……迷っているなら来い」
 わたしはプロデューサーさんに促されるまま、千早ちゃんの居る病院へと向かった。

「あ、プロデューサー」
 空きのベッドを借りていた千早ちゃんは、プロデューサーさんとわたしの姿を見つけると、ベッドから身を起こした。
「本当にすみません。大事な時なのに、みなさんにご迷惑をおかけして……」
 プロデューサーさんは、傍にあった椅子に腰掛けた。
「なに、たまにはこう言うことだってあるさ。まあ、今日のところは寝てろ。疲れだって溜まっていたんだろうし」
「はい、すみません、本当に……。春香も……、迷惑かけて。ダメですね、わたし。こんな時なのに……」
「そう思うのなら、早く治しなさいよ」
 気が付いた時にはもう、そう口走ってしまっていた。でも、もう止められない。
「こんな大事な時に、一人だけ休んでるなんて、いい気なもんだわ」
「おい、春香」
「春香……」
「今日のリハーサル。千早ちゃんのせいで台無しだった。みんなテンションがバラバラで、呼吸も合ってなくて。今までで最悪の出来だったわ」
「そんなこと言ったって、お前……。千早は病人なんだから仕
「みんな明後日の本番の為に必死なのよ。みんなそれぞれにこれまでの人生とか、培ってきたものとか、そういうたくさんのことを背負って集まって来ているの。きっと、今日来たスタッフさんの中にだって、倒れそうな人だって居たはずよ。でもみんな、本番を成功させたいから、わたし達のライブを最高のものにしようと思ってくれているから、その場所に立っていられるの!」
 わたしは千早ちゃんの目を見据えた。千早ちゃんは、それを真っ向から受け止めている。
「そしてなにより、わたし達には、ステージの向こうで待ってくれているファンがいるんじゃないの!? 千早ちゃ……如月千早!」
「……」
「あなたはアイドルよ。ツライところなんて見せちゃいけないの! あなたはその命が燃え尽きるまで、ステージに立ち続けなければいけないの!」
 わたし達は、しばらくお互いに黙って見つめ合っていた。
 そうして、どれくらいの時間だったか分からないけど、千早ちゃんは口を開いた。
「……あなたの言う通りよ、春香。はあ……わたしは、みんなに甘えていたのね。そうなんでしょ? ホント、こんなままじゃ、最高のステージなんて、とてもじゃないけど……。ありがとう、春香。あなたのお陰で……って、ちょっとちょっと、なに泣いてるのよ」
 千早ちゃんの言葉を聞いているうちに、耐えきれなくなったわたしは、ボロボロボロボロと涙をこぼしていた。千早ちゃんやプロデューサーさんにキツイ言葉を言ったことや、今日一日、張り詰めていた緊張感が解けたこと、そう言うことが全部押し寄せてきて、もうなんで泣いているのかなんて分からなくて。
「ううん……ううん……」
 そんな風に、子供みたいに泣きじゃくるしかなくて。
「もう、春香ったら……。あの、プロデューサー」
「ん?」
「今から取れるスタジオってありますか?」
「え? 今からやるのか? もうバンドメンバーもスタッフも解散しちまったぞ」
「いいんです。二人だけでやりますから。いいのよね? 春香」
 わたしはただ、頷くしか出来なくて。
「もちろん、プロデューサーも、ですよ」
「しょうがない奴らだな」
 そう言うとプロデューサーさんは、携帯電話を取り出し、病室を出て行った。堪えきれなくなったわたしは、千早ちゃんに抱きついて
「ごめ゛ん゛な゛ざい゛~~」
「馬鹿ね……。ほら、支度するんだから、そこをどきなさい」
「うわぁぁぁ~~ぅぅぅ……」
「それから、顔っ。アイドルの顔じゃないわ」
「いいんだもん……。グスッ……、千早ちゃんの、前だから……」
「勝手なんだから……」
 千早ちゃんは、少しだけ笑って、そう言った。
 それからわたし達は、プロデューサーさんが迎えに来るまで、ずっとそうしていた。


蒼い鳥 その6
「その1」 「その2」 「ある日の風景 その1」 「その3 1/2」 「その3 2/2」 「ある日の風景 その2 1/3」 「ある日の風景 その2 2/3」 「ある日の風景 その2 3/3」 「その4」


「はぁ、はぁ、はぁ……」
 夜半から降り始めた雪のおかげで、街は大渋滞だった。わたしはタクシーで移動することを諦め、運転手さんが止めるのも聞かずに、イルミネーションの目映い街の中へ飛び出していった。
 うう……、雪はもう溶けて無いんだけど、それでもところどころ凍り始めていて
「うわっ! わたっ! どんがらがっしゃーん☆」
 アイッタタタタ……。
 ああ! お洋服が! せっかく、オシャレしたのに……。
 尻餅をつくと、途端にわたしは悲しくなった。
 イルミネーションのきらめきに反して、わたしはなんだかとっても惨めで。時折そこここからこぼれ聞こえてくるジングルベルも、ちっともわたしをなぐさめてくれなくて。
 こんな日に限って……。もう、最悪……。
 
「おい、あれ天海春香じゃね?」
「ホントだ、なにやってんだろこんなところで」
「撮影?」
「ドラマかなにか?」
「これ録ってんの?」
「おい、写メ写メ」
 うわぁぁ~~、やばいよやばいよ……。せめて帽子だけでも被っておけば良かった、なんて思ってもあとの祭り。
 あわわわわ、見る間に人が集まってきたぁ~~。って、わっ! もう7時半? 完全に遅刻だぁ~~!! これをかき分けて行くのぉ? そんなんじゃ間に合わないよ……。
 もぉ~~、目と鼻の距離なのにぃ~~。
 プロデューサーさぁ~~~ん……。



 6時45分……。そろそろあいつも店に向かってる頃かな。このままじゃ遅刻は決定的だな。連絡の一つも入れておきたいが、スタジオで携帯を使うわけにもいかないし、ここで出て行くわけにもいかないし。参ったな……。こんなことならもう少し遅めの時間にしておくんだった。
「6時46分」
「ん?」
 横で律子がそうつぶやいた。
「さっきから時間ばかり気にしてますね」
「いや……。うん、集中力がな」
「美希なら大丈夫ですよ。本番での集中力の高さは並じゃありませんから。ま、その後が非道いんですけどねぇ~」
 知ってるさ。
 今日は美希のプロモーション・ビデオの撮影だ。ハリウッドから特殊効果スタッフを呼んだ大がかりな撮影で、ウチの社長を含め、関係各所から偉いさんが多数やってきている。撮影は昨日の朝からほぼぶっ通し。今日の昼には終わる予定だったんだが、まさかこんなに時間が押すとは思わなかった。
 アメリカ人が怠け者なんて誰が流した噂か知らないが、彼らは一切の妥協と手抜きを許さず、とことんまで最高のものを仕上げようとしてくれている。そのお陰か、日本人スタッフはもちろん、美希も集中力を切らすことなく、最高のテンションを維持し続けている。
 まったく、大したモンだよ、あいつは。

“Hey Miki! You alight?”
“Light. Get start early. I’m so so hungry”
“Yap. You go do it!”
“Let it go”
“Yeah! Mikki-Mikki-ni-shiteyan-YO!”

 最後のテイクに入った。俺と律子は画面に集中した。



「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……う、うぉ! っとと」
 か、革靴で雪道を走るのがこんなに大変とは……。

『なんでそんなこと早く言わないのよ!』
『言えるわけねーだろ! 俺はこれでもエグゼグティブ・プロデューサーなんだぞ!』
『765プロでエグゼグティブもへちまもあるか! もう……。良いから先輩は、早く春香のところに行ってあげて下さい』
『そうはいかない。偉いさんに挨拶して廻らなきゃいけないし、向こうのスタッフにも……』
『い~から! それはあたしと社長でやっておきます。だから、ね?』
『でも』
『ほら、早く行け、色男』

「ハッ、ハッ、ハッ……」
 7時35分。完全に遅刻だ。それにしても、さっきから携帯を鳴らしているのに全然出ない。こう言うことで怒るヤツじゃないから、なにかトラブルにでも遭ってるのかな。とにかく、早く行ってやらないと。
 辺りはすっかり真っ暗だ。さすがにここまで街中に来ると、雪はほとんど消えているので走りやすい。それにしても、街路樹を彩ったイルミネーションが本当に綺麗だ。飯食ったあとにでも春香に見せてやりたい。が、そうも行かないか。
 プロデューサーさぁ~~~ん
 ん? 今なにか聞こえたぞ? って、なんだ? あの人だかりは。



「ふぇ~~、プライベートなんですぅ。待ち合わせしてるんですぅ~」
「おい! 閣下のお通りだ! 道をお開けしろ!」
「うるせえ愚民!」
「愚民自重!」
「乙゛女゛よ゛~゛大゛志゛を゛抱゛け゛~゛♪゛ ふわふわ!」
「ヴァい! ヴァい! ヴァい!」
 人混みはどんどん増えていって、次第に大通りまで溢れそうになってきた。こうなってくると、そろそろ警察の人が来てしまうだろう。そうなったら、今日はもうお食事どころじゃなくなる。
 ごめんなさい、プロデューサーさん……。せっかく誘ってくれたに、これじゃあ……。
 春香!
「え?」
「春香!」
「プ、プロデューサーさん!? どこ?」
 その時、誰かがわたしの手を掴んだ。
 見慣れた腕時計。
「走れ!」
「は、はい!」
 プロデューサーさんは、一気に人波をかき分けると、わたしの手をグイっと引っ張った。

「遅くなってすまん!」
「いえ……」
 光のアーチの下を、二人で駆け抜ける。風が街路樹を揺らす。枝先を電球達が踊り、キラキラと降りそそいだ。
 ファンのみなさん、ごめんなさい。今日は、今日だけは、アイドルをお休みさせて下さい。
 駅前の広場に出たところで足を止めた。お店はもう目の前。
「もう……、追ってこないな……」
 繋いだ手が汗ばんでいる。
「春香」
「はい」
 聖歌隊が歌う賛美歌が聞こえてくる。
「メリークリスマス」
 なぜだか、嬉しさで一杯になって。汚したお洋服のことも、もうよくて。
「えへへ。メリークリスマス、プロデューサーさん」

 リンゴーン リンゴーン
 何処からか鐘の音が聞こえた。


蒼い鳥 その5