蒼い鳥 番外編 少しだけ未来のお話 - Christmas For You - | iM@Sとかなんとか(仮)

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アイドルマスターSSとか駄文をのっけてます。←とか書いてても、ちっとも更新していないので「サイドストーリー」と言うタイトルはは取り下げました。最近のメイン記事はニコマスの紹介記事が9割を締めています。

「その1」 「その2」 「ある日の風景 その1」 「その3 1/2」 「その3 2/2」 「ある日の風景 その2 1/3」 「ある日の風景 その2 2/3」 「ある日の風景 その2 3/3」 「その4」


「はぁ、はぁ、はぁ……」
 夜半から降り始めた雪のおかげで、街は大渋滞だった。わたしはタクシーで移動することを諦め、運転手さんが止めるのも聞かずに、イルミネーションの目映い街の中へ飛び出していった。
 うう……、雪はもう溶けて無いんだけど、それでもところどころ凍り始めていて
「うわっ! わたっ! どんがらがっしゃーん☆」
 アイッタタタタ……。
 ああ! お洋服が! せっかく、オシャレしたのに……。
 尻餅をつくと、途端にわたしは悲しくなった。
 イルミネーションのきらめきに反して、わたしはなんだかとっても惨めで。時折そこここからこぼれ聞こえてくるジングルベルも、ちっともわたしをなぐさめてくれなくて。
 こんな日に限って……。もう、最悪……。
 
「おい、あれ天海春香じゃね?」
「ホントだ、なにやってんだろこんなところで」
「撮影?」
「ドラマかなにか?」
「これ録ってんの?」
「おい、写メ写メ」
 うわぁぁ~~、やばいよやばいよ……。せめて帽子だけでも被っておけば良かった、なんて思ってもあとの祭り。
 あわわわわ、見る間に人が集まってきたぁ~~。って、わっ! もう7時半? 完全に遅刻だぁ~~!! これをかき分けて行くのぉ? そんなんじゃ間に合わないよ……。
 もぉ~~、目と鼻の距離なのにぃ~~。
 プロデューサーさぁ~~~ん……。



 6時45分……。そろそろあいつも店に向かってる頃かな。このままじゃ遅刻は決定的だな。連絡の一つも入れておきたいが、スタジオで携帯を使うわけにもいかないし、ここで出て行くわけにもいかないし。参ったな……。こんなことならもう少し遅めの時間にしておくんだった。
「6時46分」
「ん?」
 横で律子がそうつぶやいた。
「さっきから時間ばかり気にしてますね」
「いや……。うん、集中力がな」
「美希なら大丈夫ですよ。本番での集中力の高さは並じゃありませんから。ま、その後が非道いんですけどねぇ~」
 知ってるさ。
 今日は美希のプロモーション・ビデオの撮影だ。ハリウッドから特殊効果スタッフを呼んだ大がかりな撮影で、ウチの社長を含め、関係各所から偉いさんが多数やってきている。撮影は昨日の朝からほぼぶっ通し。今日の昼には終わる予定だったんだが、まさかこんなに時間が押すとは思わなかった。
 アメリカ人が怠け者なんて誰が流した噂か知らないが、彼らは一切の妥協と手抜きを許さず、とことんまで最高のものを仕上げようとしてくれている。そのお陰か、日本人スタッフはもちろん、美希も集中力を切らすことなく、最高のテンションを維持し続けている。
 まったく、大したモンだよ、あいつは。

“Hey Miki! You alight?”
“Light. Get start early. I’m so so hungry”
“Yap. You go do it!”
“Let it go”
“Yeah! Mikki-Mikki-ni-shiteyan-YO!”

 最後のテイクに入った。俺と律子は画面に集中した。



「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……う、うぉ! っとと」
 か、革靴で雪道を走るのがこんなに大変とは……。

『なんでそんなこと早く言わないのよ!』
『言えるわけねーだろ! 俺はこれでもエグゼグティブ・プロデューサーなんだぞ!』
『765プロでエグゼグティブもへちまもあるか! もう……。良いから先輩は、早く春香のところに行ってあげて下さい』
『そうはいかない。偉いさんに挨拶して廻らなきゃいけないし、向こうのスタッフにも……』
『い~から! それはあたしと社長でやっておきます。だから、ね?』
『でも』
『ほら、早く行け、色男』

「ハッ、ハッ、ハッ……」
 7時35分。完全に遅刻だ。それにしても、さっきから携帯を鳴らしているのに全然出ない。こう言うことで怒るヤツじゃないから、なにかトラブルにでも遭ってるのかな。とにかく、早く行ってやらないと。
 辺りはすっかり真っ暗だ。さすがにここまで街中に来ると、雪はほとんど消えているので走りやすい。それにしても、街路樹を彩ったイルミネーションが本当に綺麗だ。飯食ったあとにでも春香に見せてやりたい。が、そうも行かないか。
 プロデューサーさぁ~~~ん
 ん? 今なにか聞こえたぞ? って、なんだ? あの人だかりは。



「ふぇ~~、プライベートなんですぅ。待ち合わせしてるんですぅ~」
「おい! 閣下のお通りだ! 道をお開けしろ!」
「うるせえ愚民!」
「愚民自重!」
「乙゛女゛よ゛~゛大゛志゛を゛抱゛け゛~゛♪゛ ふわふわ!」
「ヴァい! ヴァい! ヴァい!」
 人混みはどんどん増えていって、次第に大通りまで溢れそうになってきた。こうなってくると、そろそろ警察の人が来てしまうだろう。そうなったら、今日はもうお食事どころじゃなくなる。
 ごめんなさい、プロデューサーさん……。せっかく誘ってくれたに、これじゃあ……。
 春香!
「え?」
「春香!」
「プ、プロデューサーさん!? どこ?」
 その時、誰かがわたしの手を掴んだ。
 見慣れた腕時計。
「走れ!」
「は、はい!」
 プロデューサーさんは、一気に人波をかき分けると、わたしの手をグイっと引っ張った。

「遅くなってすまん!」
「いえ……」
 光のアーチの下を、二人で駆け抜ける。風が街路樹を揺らす。枝先を電球達が踊り、キラキラと降りそそいだ。
 ファンのみなさん、ごめんなさい。今日は、今日だけは、アイドルをお休みさせて下さい。
 駅前の広場に出たところで足を止めた。お店はもう目の前。
「もう……、追ってこないな……」
 繋いだ手が汗ばんでいる。
「春香」
「はい」
 聖歌隊が歌う賛美歌が聞こえてくる。
「メリークリスマス」
 なぜだか、嬉しさで一杯になって。汚したお洋服のことも、もうよくて。
「えへへ。メリークリスマス、プロデューサーさん」

 リンゴーン リンゴーン
 何処からか鐘の音が聞こえた。


蒼い鳥 その5