蒼い鳥 その6 | iM@Sとかなんとか(仮)

iM@Sとかなんとか(仮)

アイドルマスターSSとか駄文をのっけてます。←とか書いてても、ちっとも更新していないので「サイドストーリー」と言うタイトルはは取り下げました。最近のメイン記事はニコマスの紹介記事が9割を締めています。

「その1」 「その2」 「ある日の風景 その1」 「その3 1/2」 「その3 2/2」 「ある日の風景 その2 1/3」 「ある日の風景 その2 2/3」 「ある日の風景 その2 3/3」 「その4」 「番外編 少しだけ未来のお話 - Christmas For You -」 「その5」


 二人のレッスンに付き合った帰り、俺は直帰せずに事務所に戻った。20時を廻ったところだったが案の定小鳥さんは残っており、
「ただいま帰りました。小鳥さん、お疲れ様です」
「あ、お帰りなさい、プロデューサーさん。お疲れ様です。今日も残業ですか?」
「ええ、ドームはもう明後日ですからね」
「ああ、お帰りなさい、プロデューサー」
 衝立の向こうから声がした。覗いてみると、応接セットの上で書類と睨めっこしている律子の姿があった。
「あれ? 律子お前、こっち戻ってくるのは来週じゃなかったか?」
「呼び戻されたんですよ」
 えらく急な話だな。まあ、美希もデビューすることだし、そう言うこともあるか。
「で、なにやってんの? そんなところで。机使えよ」
「あたしのはまだ無いんですよ」
「ゴメンナサイね、明日には用意するから」
 小鳥さんがチラッとこっちを伺う。
「いえいえ、お構いなく」
「適当なの使えばいいのに」
「嫌ですよ。そんなとっちらかった机使うの」
 確かに。見渡してみると、事務所内の机はどれも惨憺たる有り様だった。
「締め日ですからね。仕方がないですよ」
「あたしは忙しいからこそ整理整頓に努めるべきだと思いますけどねー。って言うか、締め日はもう過ぎているんじゃないですか? 経理が泣いてますよ?」
「オホ、オホホホホ……」
 帰って早々にこれだ。まあ、こう言うところが頼もしくもあるんだけどさ。
 そこへ社長が顔を出した。
「ああ、帰ってきたかね。よろしい。では、帰って早々で悪いが、こっちに来てくれたまえ。律子くんもな」
「はい」
 律子も、か。と言うことは、やっぱりあの企画のことだろうな。
「なんです?」
 律子は怪訝な顔で俺に訊いてきた。
「行けば分かる」
 俺達は、律子を先に通す形で社長室の扉を開いた。

「昨日のことだがね」
 社長はそう切り出した。律子にはそれでは分からないだろうから「なにが?」と訊き返すかと思ったが、黙って聴く体勢に入っている。珍しい。
「あー、先ほど社長から連絡があってね。結果から言うと、君の提案した企画は通ったそうだ」
「そうですか。それはよかった」
「しかし、事情は随分と変わった。まず、一社提供ではなくなった。そして時間帯も23時半からの45分ではなく、24時からの30分になった」
「それはまた……」
「そして一番大きな変更は、当初は春からの放映予定だったものが、年明け早々からのスタートに前倒しになったと言うことだ」
「え? それは……」
「うむ、随分と急な話だ。我々にとっては余り好ましい状況ではない」
「なんでまた」
「つまり、こう言うことですか?」
 そこで律子が口を挟んだ。
「年明けの放映用の枠が一つ飛んでしまい、そこを頂けることになった。当初の話は、不景気かなにかでご破算になった、と」
「うむ、さすが律子くんだね。概ねその通りだ」
「それで? その企画というのは、なんです?」
 そこは俺が引き取って、経緯から説明した。律子は黙って聴いていた。企画のことにしてもそうだが、千早の海外デビューの話に驚いた顔の一つでも見せるかとも思ったけど、そう言うそぶりは見せなかった。ちょっと寂しいなあ。
「なるほど。そう言うことですか。それであたしも呼ばれたと」
「美希くんのプロデューサーは君だからね。それに……」
 社長は俺に目線を送った。ああ、そう言うことですか。
「企画は俺と律子の共同プロデューという形になる、と言うことですね」
「共同と言うよりもサブとメインと言った方が正しいかな。まあ、今後のことを踏まえてのことだ。まだ未定ではあるのだが、打てる手は打っておこう。いずれにせよ、君一人では手に余る様になるだろうから」
 まあ、それはそうだな。仮に俺が千早について行くことになってしまえば、765に専属プロデューサーはいなくなってしまうんだから。それまでに律子をいっぱしに育てろ、と。
「いずれにせよ、番組一つ丸々預かるというのは、765プロ始まって以来のことだ。一丸となって乗り切ろうじゃないか」
「はい」
「分かりました」

 それから俺達は社長室を後にした。
 そうして机で一息ついているところへ、律子がお茶を淹れてくれた。
「ああ、すまん」
 返事をする変わりに律子は、俺の隣の椅子に座り、
「これは、プランを見直さないといけないわね」
「だな。他の娘と違って、こまめにオーディション受けて勝ち抜くという戦略は取れなくなるからな」
「ええ。先に番組で色が付いてしまいますからね」
「結構キツイかもな」
「それはどうでしょう? あたしは美希なら問題ないと思いますよ?」
「だったらなにを見直すんだよ」
「あたしですよ。美希が売れていくスピードに、あたしが追いつけないようじゃ意味無いでしょ?」
「お前……」
 そんな楽観的な、と言いかけて、俺は口をつぐんだ。楽観という言葉がもっとも似合わないヤツだと言うことを思いだしたからだ。その証拠に、律子はもう、目まぐるしく思考を働かせている様子で、顔つきはアイドルでも事務員でもなく、まさしくプロデューサーのそれだった。俺が言うのもなんだが。
「とにかく、状況は動き出しているわ。あたしも乗り遅れない様にしないと」
「……そうだな」
 まあ、俺がとやかく言えるこっちゃない。放って置いてもこいつは、俺なんか一足飛びで追い抜かしちまうだろう。
「そう言うわけですから、これからはより一層、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いしますね、プロ……先輩!」
 前言撤回。そう言うこいつの笑顔は、俺にとってはアイドルのままだった。


蒼い鳥 その7 1/2