XLRコネクタ半田付けテンプレートを委託販売してみた話 | 音響・映像・電気設備が好き

音響・映像・電気設備が好き

「ヒゲドライバー」「suguruka」というピコピコ・ミュージシャンが好きです。

音響映像照明界隈でのちょっとしたお祭りとなりましたので感謝を込めて、事の顛末と販売までの経緯をここに残します。

※これはいつもの記事とは異なります。

 

2024/6 追記

ノイトリック日本法人が運営する公式オンラインショップで取り扱ってもらう事になりました。

 

 

 

事の発端は以下です。これをツイートした際に数人から反響を貰え、Inter BEE直後と言う事もあり、取引先からも反応があるほどでした。(筆者はネット上でも取引先とのつながりが多い)

 

アイデアのツイート

 

 

 

使用イメージ

 

 

後日、試作品を作成してもらい記事にしたのがこちら。

 

 

 

この記事を掲載する前にTwitterで写真を含めツイートしていたのですが反響がとにかく凄かったのです。

そもそもは配布を予定していた物で、知人数名に郵送で配って終わりかな、くらいに考えていましたがあらゆる媒体を介して反応がありました。この問い合わせの数に発送対応をしたらお金がいくらあっても足りないぞ、となり委託販売を考えました。

 

近年では同人誌の販売(業界的には商売ではない為、頒布※はんぷ と呼びます)ソリューションを利用した同人ハードの販売も盛んに行われており、以前より使用している日本国内最大手イラスト投稿サイトであるpixivが運営するBOOTHを使用する事にしました。

BOOTHは自宅から発送も選択できるのですが、仕事が多忙な為に自宅からの発送は最初から考えに無く、倉庫に保管してもらい発送までやってもらえる委託販売を計画しました。

 

 

BOOTHのサイト。他にもソフトウェアを掲載し、なんかそれっぽくなっている

 

 

販売ページ。こうした解説文章に知識を詰め込むのが好きである

 

 

 

こちらがリンク

 

 

値段設定はかなり考え、もし〇〇フェアなどで対面販売をする場合は500円と設定し、代行委託販売は保管量やその他を踏まえ800円としました。あんまり安価に設定しても、買い占め転売が起きそうだなとも考えました。

ただ、実際に検品と梱包作業を行ってみると、かなりの時間を取られることが分かりました。

思い返せばこの初回ロットだけでしたが、XLR 5ピンの開口径が狭いものが40%ほどあり、検品作業の他に開口作業も加わり、梱包用クリスタルパック、説明書用のカード、作業工数を考慮すると黒字とは程遠く感じました。

 

 

検品風景。夜な夜な作業をしていた・・・

 

 

梱包状態1。使用した梱包材はHEIKO OPP袋 クリスタルパック H6-10 (ヘッダー付き) 100枚入り

 

 

梱包状態2。取扱説明書は名刺印刷サービスを利用している。片面モノクロマットの角丸加工品。筆者は元々映像制作会社でB to B流通DVDのパッケージデザインもやっていた。「パッケージ感」は出たと思う

 

 

初回出荷分

 

 

初回は100個を設定し、いざ販売を告知してみると、完売まで1時間掛かりませんでした・・・おそらくは30分程度だったかと思います。倉庫に委託して本当に良かった・・・。この速度ですと、「手に入らなかった」との声がかなり聞こえ、とりあえずXLR 5ピンの開口修正を行った物を二次在庫補完として倉庫に送りました。

 

 

販売用に写真も撮った。本件の為に物撮り用のボックスも購入した

 

 

フォントが試作品とは異なる為、Blogとしては初めて出す写真。ケーブルストリップの図案は実はノイトリックの説明書まんまでスケールは合っていない

 

 

「ペンで保持」は必ずしも有用ではなく、場合によってはマスキングテープなどで固定して欲しい。ペンで保持するデザインのベースにあるのは高橋名人のシュウォッチである

 

 

裏面のデザインは自分でもバランスを取れたと思う。 Neutrikの創業時のコピーである Our main objective is to be „one step ahead“ 「一歩先を行く」。これが沢山の人の手に届いた事は素直にうれしい。実際はここのコピー部分に会社名などを入れて配布する事を想定していた(ノベルティ作成シミュレーションをしていた)

 

 

BOOTHのサイトでは在庫が無い場合のみ、在庫切れの商品の再販要求を管理者に伝える「入荷したらお知らせ登録」が機能します。在庫を復活させている期間(倉庫に送ったらすぐに在庫扱いになるわけではないのです)、この登録数がみるみるうちに加算されて行き、ついには2次在庫補完量を超えてしまいました。こうなってしまうと、「手に入らなかった」との声がさらに大きくなる事が予想できます・・・。ここで追加生産をする事にしました。

 

案の定、在庫が復活しても1時間しないうちに捌けてしまい、再び「入荷したらお知らせ登録」が機能し登録数もまた増えて行き・・・

 

個人でも経験している事ですが、「欲しいのに買えなかった体験」はあまり良いものではありません。ここで出荷の傾向を分析し、即時売り切れにならないだろう量を算出し、3回目の生産依頼をしました。2次生産と3次生産を合算し、一気に在庫を復活させる計画です。「入荷したらお知らせ登録」はこの時点で100件以上あり、購入の係数は1アカウントに付き2であることが分かっていました。すなわち、200枚在庫を補完しても、一瞬で捌ける事を意味します。

 

この計画で問題点は二つあり、それは金銭面と検品と梱包を行う時間です。ただ、必要としてくれている事実が目に見えて数字として確認できる以上、とことんやってやろうと決意しました。アイデアを世に放った社会的な責任があると思っての事です。

 

 

検品セット。ソケットは3ピン < 4ピン < 5ピンの順でサイズが若干大きい

 


メス(ソケット)コネクタの開口はNCルータで行われており、ここが設計より少しでも狭い場合は開口を拡張する手段が無く廃棄するしかない

 

 

検品NG集1、半田レベラー処理の不良

 

 

検品NG集2、レジスト塗装のミス

 

 

検品NG集3、レジスト塗装のミス2

 

 

検品NG集4、シルク印刷の汚れ(実際には版を起こしていない為、インクジェット印刷を採用したシルク風)

 

 

検品NG集5、レジスト塗装の工場による補修。これは2次生産工場でのみ行われた

 

 

検品NG集6、ひっかき傷。傷は補修の手段が無い

 

 

そして、3次在庫復活!何とか在庫を切らすことなく切り抜けた、と言う話でした。

生産数もかなりあり、黒字は間違いなく達成される見通しとなりました・・・。

※歩留まりは77%でした。生産量のうち23%が商品としては機能せず、廃棄しています。

 

今回は、この感謝を込め、臨時で記事を一つ書きました。

自分が考えたものが形になり、多くの人の手に渡る様子が見れた事は今後活動する上での原動力になります。購入してくださった方々、本当にありがとうございました。

また、ガーバーデータを作成して下さり、発注までの流れをご教授して下さった @magicarchtec さんに最大の感謝を。(個人で生産する量じゃないですね、と言われました笑)

 

 

 

おまけ

 

XLR 3ピンはなんで奥まで差し込めないの?との問い合わせがありました。これはこちらも把握している事象でして、ノイトリックのXLR 3ピンは途中からピンの太さか配置の位置が変わっているとの回答をしました。後日、XLRコネクタ半田付けテンプレートを切断し、篏合を調査しました。結果、根元の配置が若干異なる事が分かりました。ITT CANNONのXLR 3ピンはそのままスっと刺さります。何かしらの工夫があるのでしょうね。ノギスでは計測できなかった為、マイクロメータが必要な差異です。(XLR 4、5ピンは根本までストレートな為、できるのにやってない意図的な設計のはずです)

 

 

ノイトリックのXLR 3ピンは規格寸法で開口している穴に軽い力では最後まで差し込めない

 

 

しかし、ピンの太さは均一である

 

 

ITT CANNON XLR 3ピンは根本まで規格通り

 

 

XLRのピン配列一覧

 

 

XLRの規格一覧。現在では筆者は全規格を参照できる立場にある

 

1971年
BTS 4116 丸形ラッチ式コネクター接続方式

※1976年まで単独規格

 

1971年
NAB R005-1971 キャノン形コネクタの接続に関する推奨基準

1989年
BTS 0302 丸形コネクタの接続方式
※1976年(昭和51年10月7日)丸形コネクタに統合

1992年

AES14-1992

AES standard forprofessional audio equipment Application of connectors, Part 1:XLR-type polarity and gender

1999年
EIAJ RC-5236 音響機器用ラッチロック式丸形コネクタ

2004年
IEC 61076-2-103:2004
Connectors for electronic equipment - Part 2-103: Circular connectors - Detail specification for a range of multipole connectors (type 'XLR')

 

 

上記のうち、ピン寸法が記載されているのは、BTS 4116 丸形ラッチ式コネクター接続方式、EIAJ RC-5236 音響機器用ラッチロック式丸形コネクタ、IEC 61076-2-103:2004です。